安倍政権は福島県民ひいては日本国民の健康の安全・安心よりも東京五輪開催の日本の名誉を優先させている?

2013-09-02 03:47:45 | 政治

 

 民主党が東電の汚染水漏出は深刻な問題だとして、国会に開催決定権がある、いわば与党の決定にかかっている閉会中審査を行うよう求めている。

 民主党「政府からこの問題について国会に報告があって然るべきであり、茂木経済産業大臣がきちんと説明すべきだ」

 自民党「委員会を開く必要性は認識しているが、政府が近く対策を纏めるとしているので、それを踏まえて対応を協議したい」(以上NHK NEWS WEB)――

 政府が対策を纏めることと何がどう行われていたのか、政府の対応の是非を問い、国民に広くしらしめる閉会中審査を行うかどうかの協議は別問題なのだから、纏めることを踏まえるという言い方自体矛盾した文脈となる。

 対策を纏めることで、果たしてこなかった場合の責任を不問に付したら、あるいは不問に付すことができるなら、責任の不履行を対策を纏めることで逃れる責任回避の体制(=仕組み)が出来上がることになる。

 要するに自民党は責任追及を恐れて閉会中審査に逃げの姿勢だということなのだろう。

 次の記事は与党の閉会中審査先送りは五輪開催への影響を恐れてのことだとしている。

 《汚染水漏れ審議、国会先送り 五輪招致への影響考慮》asahi.com/2013年8月30日23時2分)

 〈東京電力福島第一原発の放射能汚染水漏れをめぐり、衆院経済産業委員会の閉会中審査が30日、9月中旬以降に先送りとなった。経産省が来週中に打ち出す汚染水対策を見極めてから、審議日程を再調整する。9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会前に、委員会審議が紛糾すれば、2020年の東京五輪招致に影響しかねないとの判断も働いた。 〉云々。

 平将明経産省政務官「来週中に現地対策本部を立ち上げ、具体的な対応に入る」

 与党「対応策をしっかり見て、もう少し時間をとったうえで、閉会中審査を検討したい」

 野党「政府の対策を邪魔するつもりはないので、対応が決まったら委員会を開いてほしい」

 かくして先送り決定。

 この野党がどの野党を指すのか、野党の総意としているのか分からないが、政府の対策と閉会中審査は別物だという認識がないらしい。

 もし野党が与党と同様の考えで東京五輪招致に影響する危険性を考慮しての先送りであり、与党に対する協力ということなら、福島県民ひいては日本国民の安全・安心よりも東京五輪開催の日本の名誉を優先させた先送り決定となる。

 但し大畠民主党幹事長が、幹事長ということだから、民主党を代表してということになるのだろう、閉会中審査の開催を要求している。《大畠幹事長 汚染水問題で閉会中審査を》NHK NEWS WEB/2013年8月31日 15時20分)

 大畠幹事長「「福島は待ったなしの状態が続いている。国民や世界に対し、事実関係を明らかにし、対策についても発信する責任があるにもかかわらず、政府も与党も真剣さが足りない。

 秋の臨時国会の開会まで委員会を開かないということはありえない。これだけ深刻な状態なので、国会は国会として動くべきだ」――

 勿論、東京五輪への影響は朝日新聞の穿った見方に過ぎないと与党も閣僚も否定することもできるが、影響の有無が避けて通ることはできない問題であることは猪瀬東京都知事が記者の質問を受けていること自体が証明することになる。

 《猪瀬知事 五輪招致に影響出ないよう説明》NHK NEWS WEB/2013年8月30日 19時18分)

 8月30日の記者会見――

 記者「汚染水の問題が来月8日に開催地が決定する2020年夏のオリンピックとパラリンピックの招致に影響するかどうか」(下線個所は解説文を会話体に直す)

 猪瀬知事「東京の放射線量はニューヨークやロンドン、パリと変わらず、それをデータとして公開していることが非常に重要だ。

 食料品も出荷や入荷の際にチェックし、水道も毎日データを公開していて全く安全である」――

 現在のところ東京は「全く安全である」としても、原子力規制委員会が8月20日に汚染水貯蔵タンクから300トン余りの汚染水の漏出の判明を受けて8月28日に原子力事故評価基準をこれまで評価していた「レベル1」から「レベル3」に危険度を引き上げているのだから、今後の安全の保証まで引き受けるとは限らないし、原子力規制委員会の原子力事故評価基準の引き上げ決定前の、引き上げるかどうかの検討中に、ブログに既に取り上げたが、欧米メディアは猪瀬知事の安全説とは真っ向から異る受け止め方を示しているのだから、影響がないとは断言できないはずだ。

 《汚染水漏れ 欧米メディアでも関心高く》NHK NEWS WEB/2013年8月22日 5時6分)

 〈イギリス・BBCは、東京にいる特派員と中継をつなぎ、原子力規制委員会が原子力事故の深刻さを表す評価を引き上げることを検討していると伝えたうえで、この状況は、おととし福島第一原発の原子炉でメルトダウンが起きて以来の深刻な状況だと報告し〉た。

 〈アメリカのCNNテレビは、原発の元技術者をゲストに招いて、「汚染水漏れはどれだけ危険なのか」と題して、現在の福島第一原発の状況について詳しく解説し〉た。

 〈現場は高濃度の放射性物質のため、なかなか近づくことができず、事態を収拾するためにどれだけの時間がかかるか分からないなどと、事態の深刻さを伝え〉た。

 〈ロイター通信は、福島第一原発がおととしの事故以降、最大の危機に陥っていると伝え〉た。――

 そして「レベル1」から「レベル3」へ危険度を引き上げたのである。福島県民ひいては日本国民の健康に関わる安全・安心にしても2段階分、危険度を増したと見なければならないはずだ。

 少なくともそういう受け止め方の想定を行って危機管理に務め、汚染水問題に終止符を打ち、福島県民ひいては日本国民の健康に関わる安全・安心を保障しなければならない。

 ところがこの保障が程遠いことを知らせる事態が発生している。8月31日になって、約300トンの汚染水漏出タンクとは別のタンクから1時間当たり1800ミリシーベルトという極めて高い放射線量が確認された。

 この1時間当たり1800ミリシーベルトという線量は、〈原発作業員の年間被ばく上限に1分あまりで達する線量〉だと、「毎日jp」記事が解説している。

 また同じ日にこのタンクとは別の場所でタンク同士をつなぐ配管下部から最大で毎時230ミリシーベルトを検出している。

 更に東電は9月1日になって、この配管に付着していた水滴から、1リットル当たり3億ベクレルの放射線量を検出したと公表したことを9月2日付の「毎日jp」記事が伝えている。

 いわばどこまで進むか分からない汚染水の漏出となっている。問題は海への流出がどの程度の量に達しているかだろう。

 決して世界に影響しない問題ではなく、当然、五輪開催にも影響を与えない保証はない。 

 最悪なのは東電のこのような汚染水の管理不全に対して安倍政権は汚染水対策に関しては東電任せにしてきた。そのことが影響しない「レベル1」から「レベル3」へ危険度引き上げというわけではないはずだ。

 と言うことは、福島県民ひいては日本国民の健康に関わる安全・安心をも放置してきたことを意味する。

 その責任は放置していいわけのものではないはずだ。

 その上、東京五輪開催への悪影響を恐れて、閉会中審査を先送りするというのでは 福島県民ひいては日本国民の安全・安心よりも東京五輪開催の日本の名誉を優先させていると非難されても仕方はあるまい。

 非難されないためには、つまりは東京五輪開催の日本の名誉よりも福島県民ひいては日本国民の健康に関わる安全・安心を優先させていることの意思表示として閉会中審査を開催して、政府の対応と東電の対応の何が原因なのか、原因ではないのか、明らかにし、政府と東電の今後の対応の参考に付すべきだろう。

 「責任」という言葉には自身の行為の結果に対して負う償いの意味と、自身に課せられた義務を果たすという意味がある。政府にしても東電にしても、それぞれに課せられた義務を的確に果たす政府は政治的責任を負い、東電は社会的責任を負っている。

 政府にしても東電にしても、先ずは課せられたすべての義務を果たす、責任ある姿勢を具体的行動に変えていくべきだろう。

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