安倍晋三の拉致解決は決意表明を役割としていることと古谷拉致担当相が拉致問題に精通しているとする認識

2013-09-18 09:53:44 | 政治

 

 一昨日9月16日(2013年)、翌9月17日が小泉元首相が訪朝してから11年目ということで、日比谷公会堂で、『すべての拉致被害者を救出するぞ!国民大集会』(首相官邸HP)が開かれ、安倍晋三も挨拶に立った。

 その挨拶の最後の部分を見てみる。

 安倍晋三「私達の使命はすべての拉致被害者のご家族の皆様が、自分のお子さん達を、そしてご親族を、自らの手で抱きしめる。その日を目指して、そしてそのことが可能になるまで、安倍政権の使命は終わらない。こう決意を致している次第です。

 なんとしても安倍政権の間にこの問題はなんとか解決をしていく決意であります。安倍政権におきましてはこの問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております。そして古屋大臣の下で、まさに今日も出席をしておられる松原仁さんや多くの各党の皆さんにも参加をしていただいて党派を超えて、オールジャパンでこの問題を何とか解決をしていきたいと思います。まさに知見を集めて、情報を集めていかなければこの問題は解決をしません。

 私は総理に就任をいたしまして、すでに20カ国訪問をしているわけですが、必ず拉致問題について説明をし、各国首脳の理解と支持を訴えているところです。幸い、国連にも新たな調査委員会ができて、カービーさんがこの前、日本へやって来られました。

 しかしまだまだ、世界各国のこの問題に対する理解は十分と言えないわけですから、我々もさらに、しっかりと、国際社会と私達の認識を、共通の認識を持てるように努力を重ねながら、北朝鮮に対する圧力を強めていかなければならないと思います。

 この問題を解決をするためには、なんといっても北朝鮮側にこの問題を解決をしなければならないと、この問題を解決をしなければ国家として今後繁栄をしていくことはできない、と認識させなければならない。まさに圧力をかけながらなんとか対話に持ち込みたいと思っている次第です。

 我々は、拉致被害者、そしてご家族の皆様と常に共にある。

 この思いで、この問題の解決に全力を尽くしていくことをお誓いを申し上げまして、私のごあいさつとさせていただきたいと思います。皆様、共に頑張りましょう。」――

 拉致被害者のすべての帰国の日まで「安倍政権の使命は終わらない」、「この問題を解決をするためには、なんといっても北朝鮮側にこの問題を解決をしなければならないと、この問題を解決をしなければ国家として今後繁栄をしていくことはできない、と認識させなければならない」云々は何度も聞いている決意表明に過ぎない。

 決意表明で終わっているから、何度も言うことになるし、何度も聞くことになる。

 特に後者の発言は金正恩に対して「認識」させるに至っていない決意表明であって、逆に安倍晋三及び安倍政権の力不足を露呈していることになる。

 普通、決意表明は決意した目標の実現可能性への契約であり、契約である以上、その実現可能性は具体化へ向かっていかなければならないが、具体化へ向かっていかない実現可能性は単なる決意表明で終わっている証拠としかならない。

 いわば勇ましいことを言っているに過ぎない。

 大体が拉致解決を目的として飯島勲内閣官房参与を5月半ばに訪朝させておきながら、それから4カ月経過しているにも関わらず、その成果・未成果を国民に何ら説明もせずに決意表明だけを続けているのだから、その認識にしても責任にしても、いい加減と言わざるを得ない。

 この認識・責任は拉致「問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております」と言っていることの認識と責任に通じている。

 古屋圭司は9月14日、拉致事件を取り上げた演劇「めぐみへの誓い」を鑑賞後、記者団に次のように発言している。《「金正恩は日本人を帰さなければ」 古屋拉致問題相》asahi.com/2013年9月14日19時17分)

 古屋圭司「何の罪もない幸せな暮らしをしている人を拉致することは、国家テロに等しい。北朝鮮の故金正日(総書記)がやった犯罪は許しがたい。金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない。そうしなければ、日本から支援を得ることはできないし、世界からの厳しい制裁を解くこともできない」――

 何を今更、「国家テロに等しい」などと言っているのだろう。北朝鮮を支配していた独裁者金正日を首謀者とした国家テロだからこそ、解決を難しくしているという認識がない。

 そして現在北朝鮮を支配している独裁者金正恩が独裁者金正日の息子であり、権力父子継承の正統性を金正日とその父親の金日成の正義と絶対性に置いているからこそ、金正恩は拉致問題で簡単には日本と妥協できない立場に立たされているという認識もない。

 その認識のなさは「金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」という発言に如実に現れている。

 権力父子継承の正統性の手前、金正日を正義と絶対性の象徴と位置づけていなければならない金正恩なのだから、「お父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」などということは、「めぐみへの誓い」という演劇を見た後で涙もろくなっていたのか、甘っちょろい情緒的な期待でしかない。

 だが、いくら涙もろくなっていたとしても、政治家である以上、政治が持つ冷徹な側面を忘れてはならないはずだ。

 その認識と責任の程度を疑うが、各都道府県の拉致問題啓発の取り組みに点数をつけて上下の評価をつけるに至っては、最悪である。

 《拉致問題啓発に「通信簿」 古屋担当相、都道府県別に》asahi.com/2013年9月14日7時51分)

 〈古屋圭司拉致問題相は9月13日の記者会見で、北朝鮮による日本人拉致問題の啓発活動への各都道府県の取り組み状況を初めて公表〉、〈「通信簿」を示して動きの鈍い自治体の尻をたたく狙いもあり、ホームページ上での公表も検討している。

 都道府県の申告に基づいて政府の拉致問題対策本部が取り組みの一覧表をまとめた。署名活動やパネル展示のほか、拉致問題解決を願うブルーリボンの着用呼びかけといった9項目について、2012年度に実施した項目を記している。実施が二つ以下だったのは秋田、山形、福島、山梨、愛知、三重、奈良、和歌山、長崎の9県。拉致被害と関わりが薄い地方で動きの鈍さが目立つという。〉――

 核となる肝心な必要事項は拉致解決に向けた議論のテーブルに如何に北朝鮮を引き出すかであって、そのことにかかっている拉致解決に各都道府県の啓発活動の熱心度がどう関わってくるというのだろうか。

 IOCがオリピック開催立候補国の国民がどれくらい開催を希望しているのかの世論調査で、その開催期待の熱心度を見て、開催国決定の参考にすることはあっても、金正恩が日本の自治体の拉致問題啓発活動の熱心度に心打たされるとでも思っているのだろうか。

 この程度の認識と責任しか持たない古屋圭司を拉致「問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております」と言うことのできる安倍晋三の認識と責任も、拉致問題が決意表明で終わっていることと併せて、同程度としか言い様がない。

 いや、拉致解決の最終責任者であると同時に閣僚任命の最終責任者である安倍晋三が閣僚と同程度のお粗末な認識と責任しか持たないということは大問題である。

 古屋圭司が「金正恩(第1書記)はお父さんのやった犯罪をわびて、日本人を帰さなければいけない」と言っていることは安倍晋三のかつての発言の焼き直しであって、似たような発言しかできない点からも両者の認識と責任の程度の一致を見ることができる。

 以前ブログで取り上げた安倍晋三の発言だが、古屋圭司発言が如何に焼き直しか理解して貰うために再度引用してみる。

 2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」から。

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 (拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親の拉致犯罪を)否定しない。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 父親金正日の拉致犯罪を否定する答を出さなければ北朝鮮は崩壊するからと圧力をかけて、答を出す方向に促していくと言っているが、その否定が同時に権力父子継承の正統性の否定となる危険性を金正恩は抱えることになり、そう簡単にはできないという認識がない。

 だからこそ、拉致解決が何ら進展しない状況に陥っている。

 《【再び、拉致を追う】小泉訪朝10年、停滞する交渉 安倍元首相に聞く 正恩氏に決断迫ること必要》MSN産経/2012.9.17 10:36)から。

 安倍晋三「金総書記は『5人生存』と共に『8人死亡』という判断も同時にした。この決定を覆すには相当の決断が必要となる。日本側の要求を受け入れなければ、やっていけないとの判断をするように持っていかなければいけない。だから、圧力以外にとる道はない。

 金正恩第1書記はこの問題に関わっていない。そこは前政権とは違う。自分の父親がやったことを覆さないとならないので、簡単ではないが、現状維持はできないというメッセージを発し圧力をかけ、彼に思い切った判断をさせることだ。

 つまり、北朝鮮を崩壊に導くリーダーになるのか。それとも北朝鮮を救う偉大な指導者になるのか。彼に迫っていくことが求められている。前政権よりハードルは低くなっている。チャンスが回ってくる可能性はあると思っている」――

 要するに金正恩は父親の金正日の拉致に関わる情報操作・情報隠蔽を白日のもとに曝さなければならないと言っているが、前の発言と同様にそれをすることは権力父子継承の正統性の根拠としている父親金正日の正義と絶対性を崩せと言っていることと同じで、出来ない相談だという認識がない。

 認識と責任の程度に関して安倍晋三も古屋圭司も似た者同士であることが分かる。

 何れにしても両発言は安倍晋三の拉致解決の方法論であることに変わりはない。拉致解決の方法論である以上、今年5月半ばの飯島勲訪朝はこの方法論の具体化であったはずだ。

 だが、今以て何の発表も説明もない。具体化の失敗は方法論の間違いを示す。

 だからこそ、ここでは「そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」と言い、「圧力以外にとる道はない」、あるいは「圧力をかけ、彼に思い切った判断をさせることだ」と圧力一辺倒だった姿勢が、「国民大集会」では、「圧力をかけながらなんとか対話に持ち込みたいと思っている次第です」と圧力一辺倒から少し後退することになったのだろう。

 飯島勲自身が7月14日の日本テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」で直接的に圧力一辺倒を否定している。 

 飯島勲「安倍総理は自分の内閣で拉致問題を解決するといった。ところが実態は、圧力、圧力、圧力、制裁。叩き潰せば解決みたいな気持しかなかった。なぜかって言ったら、10年間も閉ざされた扉、ミサイル、核、拉致ですから、そういう状態の中で行ったら(北朝鮮へ行ったとしても)、ただ圧力だけでは無理でしょうと」――

 この発言からすると、圧力一辺倒否定は訪朝前に判断していた認識となるが、安倍晋三の拉致解決方法論が圧力一辺倒を取っていたことから判断して、この男の胡散臭ささも加味すると、訪朝して気づいた認識の疑いが濃い。

 例え訪朝前の認識であったとしても、飯島勲が安倍晋三が拉致解決の方法論の一つの手段としていた圧力一辺倒を否定していること自体が安倍晋三の拉致解決の方法論そのものの間違いの指摘となるし、飯島訪朝の失敗をも意味することになる。

 成功なら、成功に導いた方法論だけを宣伝すれば済むからだ。

 以上見てきたことからすると、金正恩に対しては権力父子継承の正統性の根拠としている父親金正日の正義と絶対性を傷つける如何なる拉致解決の有効な方法論は存在しないということである。

 矛盾し、民主義国家の正義に反するが、拉致を解決したいなら、独裁者金正日の正義と絶対性を金正恩と共に守る方法を創造しなければならないだろう。

 そういった認識と責任を持つことができるかにかかっているはずだ。

 持つことができなければ、いつまで経っても決意表明で終わる。

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