安倍晋三も犯している、オリンピック招致だけを考えた「東京は安全」の独善性を改めて考える

2013-09-09 03:00:25 | 政治

 

 7年後の可能性として考え得る政治的変動や経済的変動を見通した場合、日本が一番その要素が少ないという無難な選択が決定させた東京ということではないだろうか。

 但し、《【東京五輪決定】「安倍首相演説が決め手」ロイター通信が絶賛》MSN産経/2013.9.8 06:58)が題名通りに演説の功績だと持ち上げている。

 ロイター通信「安倍晋三首相の演説が2020年東京五輪大会決定への決め手となった。
 
 東京は、安倍首相がカリスマ的な嘆願を国際オリンピック委員会(IOC)に行った後、実施された投票で接戦だったイスタンブールを破り、2020年夏季五輪の開催地の地位を獲得した。

 国家指導者の滑らかな演説は、IOCが懸念する福島原発問題の不安を解消するために行われた。日本は60対36でイスタンブールを大差で勝利したことから、演説はその目的にぴったりと合っていたようだ」――

 この演説内容については次の記事が紹介している。《首相 汚染水問題「政府の責任で対策」》NHK NEWS WEB/2013年9月8日 0時56分)

 IOC総会のプレゼンテーション。

 安倍晋三(汚染水の)「状況はコントロールされており、全く問題はない」

 プレゼンテーション後に於ける質疑。

 安倍晋三「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている。福島の近海で行っているモニタリングの数値は最大でもWHO=世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。また、わが国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しいが、被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1だ。健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない。

 (汚染水対策について)抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、すでに着手している。責任を完全に果たしていく」

 プレゼンテーション後の記者会見。

 安倍晋三「福島の課題や問題に対する答えはできた。懸念は完全に払拭(ふっしょく)できたのではないかと思う。会場の皆さんからは私が質問に答えたあと、拍手をもらうことができた。私たちは福島と東北を復興させていくことで、世界からの支援に応えていきたい」――

 汚染水の放射能の管理に関わる科学的根拠にしても、汚染水に対する不安や懸念の払拭に関しても、安倍晋三の言っているとおりだろう。

 この演説が安倍晋三の外交ブレーンの一人である谷口智彦内閣審議官が外交スピーチなどの作成に当たっていると言うことだから、自身の作か、誰かの作なのか分からないが、竹田JOC会長が先月末、「東京の空気や水、放射線量の数値はすべて通常どおりで、東京は安全だ。原発のタンクから汚染水が漏れ出た問題についても政府が責任を持って解決すると表明している」(NHK NEWS WEB)という内容の手紙をすべてのIOC委員に送って「東京の安全」だけを主張したことの批判や、東京の招致委員会が9月4日、ブエノスアイレス市内のホテルで記者会見を開いたとき、竹田JOC会長が「東京の放射線レベルは世界の他の都市と同じで全く問題ない」と答えたことに対して外国のマスコミから受けた、「東京は安全性を強調するばかりで、この問題に正面から答えていない」(NHK NEWS WEB)といった批判を反面教師とした、いわば批判が幸いした演説内容の側面も有しているはずだ。

 だが、安倍晋三が「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている」と言っているように、「東京は安全だ」の竹田発言と同様に東京を中心に置いた独善的な安心・安全の主張であって、福島を中心に置いた安心・安全の上に立って、「東京は安全だ」の脈絡とは決してなっていない。

 確かに「東京は安全」だろう。だが、福島は例え「福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされてい」ようとも、「福島の近海で行っているモニタリングの数値は最大でもWHO=世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1」だろうと、「被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1」だろうと、そのようにも放射能をコントロールできている反面、福島第1原発内の放射能はコントロールできている状態にはなく、また福島第1原発外に於いても除染を手段として放射能を完全にコントロールし得ていると言えない地域も存在し、その結果として福島の被災者の多くが放射能問題に日夜支配されることになっている不安な実態は、「東京は安全」に対して少なくとも心理的・精神的に“福島は安全ではない”という状況を突きつけているはずで、そのことへの視線を欠いて「東京は安全」だと、“東京だけの安全”を言っていることはやはり東京中心の独善性を疑われても仕方はあるまい。

 「東京は安全」に対して“福島は安全ではない”ことの一つの例として次の記事を挙げることができる。《震災関連死:福島県内で直接死上回る 避難生活疲れで》毎日jp/2013年09月08日 06時52分)

 避難生活の長期化と長期化による肉体的・精神的疲労困憊も、そのような事態の背景を遠因として支配しているのは福島原発事故を原因とした放射能の目に見えない跳梁跋扈であって、「福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内」のみの問題ではない。

 福島第1原発内外の放射能を完全にコントルできて初めて、例え避難所生活を送っていても事態の背景を支配している放射能問題から解放され、元の生活の場への帰還、あるいは新たな生活の場を求めなければならないとしても、何らかの希望は湧いてくるだろうから、絶望や不安に向かうのではなく、心理的にも精神的にもプラスのベクトルを取るはずだ。
 
 だが、多くの被災者にとってそういったプラスのベクトルに向かうに至っていない。

 記事は福島県内の地震や津波による直接死者数1599人(県災害対策本部調べ)に対して福島県内自治体が「震災関連死」と認定した死者数が8月末現在で1539人。少なくとも109人について申請中であることから、近いうちに直接死を上回るのは確実だと解説している。

 この関連死者数の1539人は、復興庁3月末公表の関連死者1383人から5カ月で156人増えた数だという。

 原因は避難所生活長期化による体調悪化が主で、中には自殺者もいるという。

 すべての背景を完全にはコントロールできていない放射能問題が覆っているはずだ。

 南相馬市――431人
 浪江町――291人
 富岡町――190人

 回答が得られた355人のち年代別人数。

 80歳代以上――233人(65.6%)
 70歳代――79人(22.3%)
 60歳代――32人(9.0%)

 死因については多くの市町村が「今後の審査に影響する」と回答を避けた。

 復興庁の昨年3月末のデータを基にした福島県内734人の原因調査。

 「避難所などの生活疲労」――33.7%
 「避難所などへの移動中の疲労」――29.5%
 「病院の機能停止による既往症の悪化」――14.5%
 「自殺」――9人

 今年8月末時点での宮城県都岩手県の人数。

 宮城県――869人
 岩手県――13人

 馬奈木厳太郎弁護士「原発事故による避難者数が多い上、将来の見通しも立たずにストレスがたまっている。今後も増える可能性がある」――

 広い意味で、特に福島は未だ安全とはなっていない。

 14.5%を占める死因の一つとなっている「病院の機能停止による既往症の悪化」を招いている「病院の機能停止」にしても、福島県に限って言うと、背景にあるのは原発事故であり、放射能物質の拡散であろう。

 低下した医療状況を次の記事が伝えている。

 《沿岸部、戻らぬ医療=再開遅れ、公立も病床減-増える患者負担・被災3県》時事ドットコム/2013/09/07-15:26)

 岩手、宮城、福島3県沿岸部は元々医療過疎地であったが、被災によって病院や診療所の再開が遅れ、2年半経った現在もなお厳しい医療環境が続き、特に原発事故の影響が残る福島県は医師や看護師の確保に悩んでいると書いている。

 看護師不足に対しては国は人手不足に対応するため、看護師の配置基準緩和など特例措置で支援しているが、支援が追いついていないということであり、拠点の公立病院の病床数減少の影響、さらに病院自体が失われたことによる通院断念の事態も出ているということは医療の面からも被災地は安全な状況にはないことを意味し、福島に関して言うと、放射能から発して未だ影響している、医療面で安全は保障されていない地域状況となっているということを示しているはずだ。

 こういった被災地、特に“福島は安全ではない”様々な状況を考えもせずにオリンピック招致を果たすためにのみ「東京は安全」だと、“東京だけの安全”を言った。

 このような福島への視点を忘却した“東京だけの安全”に独善性を見ないわけにはいかない。安倍晋三が「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている」と言って、「東京は安全」だとしていることも、いわば“東京だけの安全”を問題としていることも、同じ独善性に侵されているからだろう。

 兎に角、オリンピック東京招致だけを優先させた。汚染水問題がマスコミに取り上げられて国内外を騒がすようになって初めて、オリンピック招致に障害となるからと、安倍政権は対策を打ち出した。

 だからこそ、「東京は安全」だと、“東京だけの安全”を言う羽目に立たされた。

 こういったことが実態だったはずだ。

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