シリア政権側が化学兵器未使用なら、ロシアの化学兵器国際管理移行提案とその受け入れは意味を失う

2013-09-20 09:42:34 | 政治



 米国の推計で1400人超の死者が出たとしているシリア首都ダマスカス郊外での8月21日の化学兵器使用疑惑に関して国連調査団は9月16日、調査報告書を公表、猛毒神経ガス・サリン積載のロケット弾が使用されたと断定している。

 但し化学兵器使用がアサド政権か反政府側かについての言及はないというから、肝心なところが抜けていると言わざるを得ない。

 国連調査団は再度のシリア入りを検討しているというから、使用者の特定に動くに違いない。 

 米英仏はロケットの軌道や化学兵器の量、そしてロケット弾に「ソビエト製」との刻印があることから、アサド政権側の攻撃としているが、アサド政権側の反体制派が仕掛けた攻撃だとする真っ向からの否定は当然のこととして、独裁者アサド政権の守護神であるプーチン・ロシア大統領は「ソビエト製」を逆手に取って、政権側と思わせる挑発行為だとし、反体制側が使用との主張を譲らない姿勢を貫いている。

 アメリカは直ちに軍事行動によるシリア懲罰の構えを見せたが、イギリスが議会の承認を得ることができずに軍事行動計画から撤退、アメリカの国内世論も反対が多数を占め、オバマ大統領は9月1日、議会の承認に軍事行動の拠り所を求めることにした。

 オバマ大統領「アメリカがシリア政権に対して軍事行動を取るべきだと決断した。しかし、この政府は、人民の人民による人民のための政府なので、米国民の代表である議会の承認を求める」(テレビ朝日

 しかし議会の承認は難航した。

 一方ロシアは9月9日、アメリカが化学兵器使用に対してシリア攻撃の構えを見せていることに対抗してシリア側に化学兵器を国際管理下に置き廃棄するよう提案。

 シリア側は攻撃回避とシリア国民を守るという口実でロシアの提案を受け入れる考えを示し、9月12日になって、独裁者アサドがアメリカの軍事攻撃準備停止と反政府側への武器供与停止を条件に受け入れを表明し、尚且つご丁寧にも、そう、ご丁寧にも、同じロシア提案である化学兵器禁止条約加盟への手続きを開始することを明らかにしている。

 この独裁者アサドのロシア提案受け入れ表明の9月12日以前にロシアはアメリカに対して提案を実行するための具体的な計画を提示、アサドの受け入れ表明と同じ9月12日に米ロ外相会談が行われ、9月14日、米露はロシア提案実行に合意している。

 猛毒神経ガスを積載したロケット弾がダマスカス近郊に撃ち込まれたのは8月21日。

 国連調査団が現地入りし、調査を開始したのが8月26日。その調査団が化学兵器の種類を特定して公表したのが9月16日。但し使用したのが政府側か反政府側か特定していない。

 いくらアメリカが構えを見せていた軍事行動を回避するためであったとしても、9月16日の国連調査団の調査報告書公表前の9月12日にシリアはなぜロシア提案の受け入れを表明したのだろう。

 考えられる理由は国連調査団が化学兵器使用者を特定した場合に備えてとしか思えない。特定に備えて、いわば国連調査団が報告書を公表する前にロシアの化学兵器国際管理移行への提案を受け入れ、ロシアはアメリカをも提案に巻き込んで、アメリカのシリアに対する攻撃を封ずる手に出たのではないだろうか。

 シリアはそのようなシナリオを完成させるためにご丁寧にもこれまで拒否してきた化学兵器禁止条約にまで加盟する態度を見せた。

 だが、調査団は特定していなかった。

 シリアが自国の化学兵器を国際管理下に移し、廃棄するロシア提案に賛成し、アメリカがロシア提案で合意した以上、例え国連調査団が使用者を特定したとしても、アメリカはシリアに対する軍事行動はできなくなる。

 もし独裁者アサド側が神かけて化学兵器を使用していないのなら、独裁国家の立場上、ロシア提案に賛成する必要もないし、ロシアも提案する必要もない。賛成する意味も、提案する意味も失う。

 国連調査団が使用者を特定するまで全面的に協力するだけで済む。いずれ明らかになることである。胸を張って、正々堂々としていればいい。

 使用していないければ、化学兵器を保持し続けることは可能なはずだ。ご丁寧に化学兵器禁止条約に加盟することもない。

 いわば使用しない場合に限って、化学兵器所持を守ることができる。独裁者としてはそのような選択を望んでいたはずだ。

 だが、そういった態度は取らなかった。

 逆に国連調査団が報告書を公表する前に化学兵器の国際管理移行と廃棄のロシア提案に賛成し、化学兵器の放棄を選択した。

 政権側が使用したと明らかになることに備えたと見なければならない。

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