猪瀬知事の安倍発言「状況はコントロールされている」の言葉の詐術を包み隠す「コントロールされていない」

2013-09-25 09:41:44 | Weblog



 どうでもいい話だが、テレビドラマ『相棒』の杉下右京でもないし、その聡明さに程遠いにも関わらず、ちょっとしたことが気になって、どうでもいいことをどうでもいいなりに記事にしてみた。

 安倍晋三は9月7日夜(日本時間)、オリンピック東京招致最終プレゼンテーションで福島原発の汚染水について次のように発言している。

 安倍晋三「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、如何なる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」(NHK NEWS WEB)――

 英語でのプレゼンテーションだったというから、「統御」はコントロールと発言したことになる。「NHK NEWS WEB」記事も英文のプレゼンテーションを併記させていて、「under control」と発言、コントロール下(=統御)にあることを示唆している。

 大方のマスコミが「状況はコントロールされている」とか、「状況はコントロールされており、全く問題はない」と要約したのも当然である。

 だが、何を対象とした「状況」なのかと言うと、英文スピーチで「about Fukushima」と言い、{NHK NEWS WEB」記事が「フクシマについて」と書いているように、福島という場所を特定した「状況」であり、汚染水の海洋流出が問題となっていた以上、「Fukushima」にしても「フクシマ」にしても、福島第1原発が立地している場所――敷地内を指すはずだ。

 要するに「福島第1原発の敷地内に於ける汚染水の状況はコントロールされている」と発言したとしなければならない。

 その上で、後段の「東京には、如何なる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」の無影響は福島第1原発の敷地内に於ける汚染水の状況がコントロールされていることの結果としていると見なければならない。

 以前この発言を取り上げてブログ記事にしたときは迂闊にも気づかなかったが、プレゼンテーションのときには「福島第1原発の敷地内に於ける汚染水の状況はコントロールされている」との趣旨で「福島第1原発敷地内」を場所とした状況をプレゼンテーション後の各国IOC委員との質疑では、「福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内」へと場所をすり替えていることに気づいた。

 安倍晋三「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている。福島の近海で行っているモニタリングの数値は最大でもWHO=世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。また、わが国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しいが、被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1だ。健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない。

 (汚染水対策について)抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、すでに着手している。責任を完全に果たしていく」(NHK NEWS WEB)――

 「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲で完全にブロックされている」とは、汚染水は「0.3平方キロメール」の外の外洋には出ていないという意味であって、港湾内の汚染水が福島原発1~3号機で発生させている汚染水が地下に漏れていることを原因として、地下水と一体化して港湾内に流れ混んでいる結果としてある状況を示している以上、「港湾内の0.3平方キロメールの範囲」を汚染水の流れに遡った上流区域は汚染水はコントロールされていないことを示すことになる。

 いわば福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲で完全にブロックされている」ことを以って、「フクシマについて」(=福島第1原発について)、「状況は、統御されています」とは決して言えないということである。

 だが、言っている。当然、ウソでしかない事実と異なる云々となり、「福島」(=福島第1原発)という場所を「港湾内の0.3平方キロメール」という場所にすり替えて、さも福島第1原発自体もコントロールされているように思わせるゴマ化しを働いたことになる。

 福島第1原敷地内の汚染水がコントロールされていないからこそ、コントロールできていない場所の汚染水を政府が乗り出して解決すると安倍晋三はプレゼンテーション後の内外記者会見で言明したはずだ。

 安倍晋三「(汚染水を)完全に問題ないものとする抜本解決に向けたプログラムを既に政府は決定し、かつ、既に着手している。私が、責任をもって、実行していく」(首相官邸HP

 「私が、責任をもって、実行していく」と断言しているが、汚染水解決を東電任せにし、政府として果たさなければならなかった東電に対する管理・監督を満足に「責任をもって、実行して」こなかった怠慢を棚上げしていることに変わりはない。

 このような安倍晋三の「状況はコントロールされている」発言に対して、猪瀬東京都知事は9月20日の定例記者会見で、「コントロールされていない」と発言している。

 《【猪瀬直樹知事会見詳報】福島第1原発「『アンダーコントロール』にするという意志表明が大事」》MSN産経/2013.9.23 07:00)

 記者「五輪招致に向けたブエノスアイレスでのプレゼンテーションで安倍総理が『原発は完全にコントロールされている』と世界に発信したが、知事はこれで世界に理解されたと考えているか」

 猪瀬都知事「ぼくは、安倍首相がブエノスアイレスに着く前の日に会見をやっている。その前の日に(JOC会長の)竹田(恒和)さんが記者会見をやっている。そこで『風評はだめだよ』ということを外国人ジャーナリストに言いました。『一部真実があるとしても、全体が風評になっているような表現の質問はだめですよ。経済産業省のホームページに英語で書いてありますから見てくださいね』と言いました。そうしたら静かになった。つまり基本的なことは書いてある。

 但し、安倍首相が『アンダーコントロール』だと宣言して、今、必ずしもアンダーコントロールではありませんよ。だからアンダーコントロールにする、アンダーコントロールになるんだと意思表明したことが大事で。東電の現場はいっぱいいっぱいなんです。ここでやっぱり政府はきちっとやるんだという意志を示して実際に金を出す、その姿勢が今回非常に大事。外国人もそういうやりますということで、風評たくさん混ざってましたが、一旦それは解決した。われわれ国内問題としてはこれからやっていく、ちゃんとやっていただくのはそれは良いことだと思っている」――

 「安倍首相が『アンダーコントロール』だと宣言して、今、必ずしもアンダーコントロールではありませんよ」と言っている。

 安倍晋三が事実と異なる「福島第1原発の汚染水の状況は、コントロールされている」との趣旨の発言をし、その具体的説明として「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲で完全にブロックされている」と、そのことによって福島第1原発敷地内の汚染水自体がコントロールされているかのように思わせたのだから、「必ずしもアンダーコントロールではありませんよ」と指摘するのは間違っていない。

 だが、「だからアンダーコントロールにする、アンダーコントロールになるんだと意思表明したことが大事」とするのは、安倍晋三の言葉の詐術を包み隠すことで安倍発言を擁護する狡猾なゴマ化し以外の何物でもないはずだ。

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