日本の政治の無責任と東電の無責任が響き合った原発事故対応に於ける長引く混乱

2013-09-21 09:16:03 | Weblog



 馬淵民主党選挙対策委員長が9月18日午前の党の汚染水対策に関する会合で、2011年6月に汚染水の流出を防ぐため、東京電力が遮水壁の設置を遅滞なく進めると約束していたにも関わらず、その後、工事が進まなかったと指摘したとマスコミが伝えている。

 次の記事から見てみる。《「遮水壁約束も工事進まず」》NHK NEWS WEB/2013年9月18日 15時20分)

 2011年6月とは東日本大震災が発災、福島第1原発の1・2号機で原発事故が発生した2011年3月から3カ月目のことで、その早い時点で既に汚染水対策が重要な課題となっていた。

 2011年6月に民主党政権と東京電力の間で汚染水流出防止のため、建屋を囲む形で遮水壁を設置する方針を決定し、発表する段取りになっていた。
 
 だが、東京電力から遮水壁を設置すれば、新たに1000億円の債務が加わることになり、市場の混乱を招くとして、発表を控えるよう要請があり、発表は見送られた。

 馬淵民主党選対委員長「総理大臣官邸などの判断で発表は取りやめたが、東京電力は遅滞なく計画を進めることを約束していた。だが、工事は進まなかった」(下線個所は解説文を会話体に直した)

 会合出席の東京電力担当者「当時のいきさつについては、まだ確認できていない」――

 「確認できていない」は東電の常套句となっている。

 原子力規制庁が東電に対して2012年9月から今年2013年2013年6月にかけて汚染水対策に関して、「パトロール体制の強化」、「監視カメラの増設」、「全タンクへの水位計の設置」等、具体的方法を挙げて10回前後、文書や口頭で指示や指導したにも関わらず、東電側は満足に対応しなかった。

 規制庁「指導の形が明確にできなかった部分もあり、今後は徹底したい」

 東電「規制庁の指導内容を確認できていないのでコメントできない」(毎日jp)――

 規制庁は約9カ月間も指導・指示を徹底履行させることができなかったことの無能力・無責任、東電は重要な地位にいる者の発言だろうから、その地位にふさわしい情報共有を果たしていなかった無責任ということになるが、10回前後という再三に亘る指導・指示の情報を上層部全体で共有していなかったとは考えにくく、責任逃れの「確認できていない」の疑いが濃く、両者の無責任と無責任が響き合ったそれぞれの役割の不徹底といったところであるはずだ。

 遮水壁設置の約束未遂の問題だが、当時の民主党政権の東電の約束を監視し、履行させるべきを履行させることができなかった無責任が結果として約束を履行しない東電の無責任を誘発、許すことになり、「当時のいきさつについては、まだ確認できていない」とする東電側の原発事故発生から今日までの東電対応の履歴の大体の情報を把握していない無責任まで引きずらせることとなった、両者間の無責任の響き合わせの構造を見て取ることができる。

 しかし無責任は民主党政権にとどまらない。政権交代して発足した安倍政権に於いても無責任は続いている。

 2011年3月15日、菅政権は「政府・東京電力統合対策室」を設置。東電本社内に政府と東電本社と第1原発現場との情報共有・情報一元化の機能を持たせることとした。

 2011年12月16日、野田政権は事故収束宣言を行い、同日付で「政府・東京電力統合対策室」を廃止。後継組織として「政府・東京電力中長期対策会議」を設置。

 「東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の決定及びその進捗管理並びに発電所の安全維持を政府と東京電力株式会社が共同で実施していく組織として位置づけている。

 2013年2月8日、安倍政権は野田政権設置の1~4号機廃炉に向けた「政府・東京電力中長期対策会議」を廃止。代替組織として、「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」を設置。

 組織設置のテーマは野田政権の「政府・東京電力中長期対策会議」とほぼ同じである。

 野田政権の「政府・東京電力中長期対策会議」議長は経産大臣と原発事故収束・再発防止担当相の共同議長、安倍政権の「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」議長は茂木経産相。

 両組織共、原子炉建屋内への地下水の流出入防止対策を議題としている。

 馬淵民主党選挙対策委員長が東電が地下水の原子炉建屋内流出入防止対策として設置約束しながら不履行状態に放置したと明かした建屋を囲む形での遮水壁について、野田政権の「政府・東京電力中長期対策会議」は、〈海洋汚染拡大防止計画 万一地下水が汚染した場合の海洋流出を防止するため、遮水壁の構築を2014年度半ばまでに完了。〉と書いている。

 一方の安倍政権の「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」は遮水壁については一言も触れていないが、「滞留水に係る総合的対策」として、〈地下水流入による滞留水の増加への万全な対策として、地下水の流入抑制対策(サブドレン、地下水バイパス、建屋止水等)、水処理システムの強化(多核種除去設備等)、処理水タンクなど貯蔵設備の増強計画の策定等の総合的な対策を講じていくための全体計画を検討すること。〉としている。

 地下水対策はイコール汚染水対策である。安倍政権にしても地下水の流出入防止対策を議題としている以上、その対策に取り組まなければならなかったはずだが、汚染水問題に関しては東電任せにしてきた。

 汚染水の漏出が世間を騒がすようになっていた8月7日(2013年)、政府は安倍晋三を本部長とする原子力災害対策本部会合を開催。

 安倍晋三、「汚染水問題は、国民の関心も高く対応すべき喫緊の課題だ。東京電力に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく。

 スピード感を持って東京電力をしっかりと指導し、迅速かつ確実に重層的な対策を講じてほしい」b>NHK NEWS WEB)――

 要するに東電任せにしていた。

 茂木経産相が8月26日(2013年)、福島第1原発を視察。

 茂木経産相「汚染水の対策は東電任せで、もぐらたたきのような状況が続いてきたが今後は国が前面に出る。

 新たに経済産業省の幹部を汚染水対策に充て、対応していく」(NHK NEWS WEB

 茂木経産相は、自身を議長とする安倍政権の「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」が地下水対策イコール汚染水対策を課題として取り上げていながら、はっきりと、「汚染水の対策は東電任せで」と言っている。

 そして9月10日、政府は茂木経済産業相がトップとする「廃炉・汚染水対策チーム」を内閣府に新設すると発表。

 9月7日のアルゼンチン・ブエノスアイレスでのオリンピック東京招致IOC総会プレゼンテーションで安倍晋三が「東京は安全」だとした国際公約の発言を受けた新設なのは明らかである。

 安倍晋三「(汚染水問題の)抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、既に着手している。責任を完全に果たしていく」(NHK NEWS WEB

 果たすべき責任を果たさずに、これからは「責任を完全に果たしていく」と言う。

 かくかように野田政権ばかりではない菅無能政権まで含めた民主党政権の無責任、そして安倍政権の無責任は日本の政治の無責任と表現可能で、そのような無責任と響き合った東電の無責任を構造とした、汚染水問題だけではない原発事故処理対応の停滞や混乱のように見えて仕方がない。

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