――東日本大震災の菅無能の危機管理対応を何ら学習していないようだ――
2013年9月1日「防災の日」に午前6時5分、静岡県から日向灘を震源とするマグニチュード9.1、最大震度7の南海トラフ巨大地震発生を想定、首相官邸に於いて安倍晋三を本部長とする第1回緊急災害対策本部会議を設置、安倍晋三は全閣僚に指示を出している。
安倍晋三「大規模地震の発生という重大な局面に当って被害を極力軽減し、国民のみなさんの安全を確保するためには、地方公共団体及び関係機関・団体と連携しつつ、政府が総力を上げて迅速に対策を実施する必要があります。
各府庁に於いては、早急に状況を把握すると共に人命救助を再優先とした迅速且つ的確な対応に全力をつくすよう、指示します」――
そして同じく首相官邸で国民に南海トラフ巨大地震発生を知らせ、政府対応の報告と国民はどう行動すべきかの訓示の記者会見を開く。
司会「只今から平成25年度防災の日の訓練として南海トラフ地震について安倍内閣総理大臣の記者会見を行います。冒頭総理からご発言がございます」
安倍晋三「本日6時5分、静岡県から日向灘を震源域とするマグニチュード9.1の南海トラフ巨大地震が発生しました。太平洋側を中心として広い範囲で、甚大な被害が発生し、多数の死傷者がは発生しています。
政府は人命の確保を第一に、持ち得るすべての力を結集し、この事態に立ち向かっています。国民の皆様には困難をも強いるこの事態を乗り超えるために力を合わせて頂くようお願いします。
既に沿岸部の多くの地域で非常に大きな津波が観測されております。決して沿岸には近づかないでください。沿岸部では引き続き大きな津波が押し寄せる危険性があります。
津波警報等の情報に注意し、命を守る行動を直ちに取ってください。
また、各地で火災も発生しています。延焼の恐れもありますので、火災の情報に注意し、関係機関の指示に従って、落ち着いて行動してください。
屋内で被災された方は無闇に移動すると、建物からの落下物等により負傷する恐れがあるので、大変危険です。事態が落ち着くまでは駅や周辺の公共施設などの安全な場所に一時退避するなど、関係機関の指示に従って、安全を確保するよう、冷静に行動してください。
引き続き余震の恐れもあります。テレビ・ラジオ・インターネットを通じて正確な情報の把握に努め、関係機関の指示に従って、お互いに助け合って、落ち着いて行動してください。
政府では災害緊急事態の布告を発し、私を本部長とする緊急災害対策本部を直ちに設置して事態への対応に当たっています。被害状況の把握を早急に行うと共に被害者の救出、救助活動、消火活動に全力を尽くしていきます。
そのため全国から被災地に自衛隊・警察・消防・海上保安庁や災害派遣医療チームを最大限に投入致します。
また、被災された方々の食糧・飲料水及び生活必需品の確保に早急に全力を尽くします。
政府としてはあらゆる手段を使って、逐次迅速に情報を提供してまいります。
繰返しになりますが、国民の皆様にはお互いに助け合いながら、落ち着いて行動をして頂くよう、お願いします。
私からは以上です」
司会「これを持ちまして訓練としての総理の記者会見を終了いたします。総理大臣はご退出されます」
記者との質疑応答なし。
安倍晋三は首相官邸から自衛隊ヘリコプターで首都圏9自治体の首都直下地震を想定した合同の防災訓練会場である千葉市に移動、起震車体験や消火訓練等の視察。会場内の展示・体験コーナーでの自衛隊の炊き出しや日本赤十字の非常食などを視察。最後に訓練閉会式の挨拶で、次のように発言している。
首相官邸HPから。
安倍晋三「「本日は、地元千葉市民・千葉県民の皆様をはじめ、警察、消防、海上保安庁、自衛隊、民間事業者など多数の方々の参加を得て、このような大規模な防災訓練が実施されたことは、大変意義深いものがあります。
この度の訓練は、過去最高の124機関、1万1千人が参加する大規模な訓練となりました。また、「救出・救助訓練」や「広域医療搬送訓練」など、様々な訓練が関係者の協力・連携の下、一体として行われ、頼もしく感じました。
今年は各地で「経験したことのないような大雨」による被害が多発したように、我が国は、その自然条件から、地震、台風、豪雨などによる災害が発生しやすい環境にあり、これらの災害により、これまでも多くのかけがえのない命と貴重な財産が失われております。
政府としては、引き続き、本日の訓練でも想定とされた首都直下地震をはじめとする将来の大規模な災害に備え、国民の生命・財産を守るため、我が国全土にわたって災害に強い強靭な国づくりを進めて参ります。
また、想定を超える災害に備え、その被害を軽減するためには、国民の皆様一人一人の心構えと準備が大事です。その上で、平素から、関係機関と地域の方々が、連携して実践的な防災の取組や、その点検を行うことなどにより、その備えをさらに確かなものとしていただきたいと思います。
終わりに、本日の防災訓練に熱心に取り組んでいんで頂いた皆様に感謝を申し上げ、私からのご挨拶とさせていただきます」――
安倍晋三が取り上げた政府対応と国民の取るべき行動は極々当たり前の一般論となっている内容を改めて述べたに過ぎない。政府はこうします、国民はこうしてくださいといった既に一般論となっている内容をどう取り上げようが、月並みで、紋切り型の指示・訓示、あるいは形式化した陳腐な指示・訓示を宿命とする情報となる。
安倍晋三はそのことに気づかずに、防災訓練とは言え、巨大地震発生に際しての政府緊急災害対策本部会議本部長の役目を緊張した面持ちで尤もらしげに演じていた。
国民が知りたいことは「大規模地震の発生という重大な局面に当って被害を極力軽減し、国民のみなささんの安全を確保するためには、地方公共団体及び関係機関・団体と連携しつつ、政府が総力を上げて迅速に対策を実施する必要があります」とか、「既に沿岸部の多くの地域で非常に大きな津波が観測されております。決して沿岸には近づかないでください」とか、「各地で火災も発生しています。延焼の恐れもありますので、火災の情報に注意し、関係機関の指示に従って、落ち着いて行動してください」とか、「屋内で被災された方は無闇に移動すると、建物からの落下物等により負傷する恐れがあるので、大変危険です。事態が落ち着くまでは駅や周辺の公共施設などの安全な場所に一時退避するなど、関係機関の指示に従って、安全を確保するよう、冷静に行動してください」とか、政府は「被害状況の把握を早急に行うと共に被害者の救出、救助活動、消火活動に全力を尽くしていきます」とか、「全国から被災地に自衛隊・警察・消防・海上保安庁や災害派遣医療チームを最大限に投入致します」とか、「被災された方々の食糧・飲料水及び生活必需品の確保に早急に全力を尽くします」といった、政府の責任・義務として当たり前の対応としている情報や、気象庁や自治体が警報情報等で喋るのと同じレベルの情報ではない。
国民が知りたい情報は阪神・淡路大震災や東日本大震災で政府や自衛隊・消防等の対応の不味さ・危機管理不全から人命被害の拡大や、福島原発事故では放射能物資飛散方向への知らされないままの避難の混乱・渋滞、知らさないことによる情報の混乱、生活物資配布の遅滞や配布先と配布物資のミスマッチによる生活困窮の長引き、あるいは瓦礫処理の遅延、あるいは役所からも多くの死傷者を出したことによる人員不足からの行政業務の遅滞・遅延等招いたが、それらをどう学習し、どう対策を講じて、同じような事態が発生した場合は、どう対応するのか、そのことの具体的方法であり、具体的報告であるはずだ。
例えば、「各地で火災も発生しています。延焼の恐れもありますので、火災の情報に注意し、関係機関の指示に従って、落ち着いて行動してください」と、取るべき行動として当たり前のことになっていることを総理大臣からの注意事項とする陳腐でお粗末な発言を行っているが、阪神・淡路大震災では水道が断水したり、水道管が破裂して消火栓が使用不能となり、消防士が水の出ない消火ホースを握ったまま燃え盛り、延焼範囲を刻々と拡大していく巨大な激しい火炎を呆然と眺めていたテレビ映像が映し出さていた。
このような消火活動の放置に対してヘリコプター使用による消火活動をなぜ行わなかったのか批判が起きた。消防当局や防災関係者の反論は投下した水量の圧力によって倒壊家屋のなお一層の倒壊を助長、倒壊家屋内に生存していた場合の被災者を圧死させる危険性とか、炎がつくり出す上昇気流に機体が翻弄されてヘリ操縦が困難となり、操縦士の生命を危険に曝すことになるといったものだった。
だが、1994年1月17日(太平洋標準時)のロスアンゼルス地震で建物消火にヘリコプター消火が活躍し、効果を上げたことがマスコミが報道している。ヘリコプターから投下した水は霧状化するために塊のまま落下することはなく、圧死の危険性を否定している。
また、実際に効果ある消火活動を行ったということは火災がつくり出す上昇気流はヘリ操縦の障害とはならなかったことを証明する。
以上のことを教訓としたからだろう、調べたところ、総務省消防庁は2009年3月に、《消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会》を開催している。
消防防災ヘリコプターは、〈消火の分野では、阪神・淡路大震災級の直下型地震や海溝型の巨大地震が発生し、市街地に同時多発火災が発生した場合の空中消火はどのようにして行うのか、消防防災ヘリコプターと自衛隊ヘリコプターの連携はどのようにして行うのかといった課題がありました。〉と言って、ヘリコプターによる空中消火に積極的に取り組む姿勢を見せているが、だからと言って、空中消火が万全というわけではなく、「空中消火に適する市街地火災」とか、「適さない火災」とかがあり、その適否の選定と、選定によって地域防災計画が変わってくるために選定の地域防災計画への反映と具体的行動の際の連携等を課題として挙げている。
また、ロスアンゼルス地震でヘリコプター消火が効果を上げたからと言って、今月8月17日に発生した米カリフォルニア州のヨセミテ国立公園に隣接するスタニスラウス国立森林公園の山火事はヘリコプターが空中から水を盛んに投下していたが、21日までの5日間で約65平方キロメートルが延焼、延焼範囲の約5%しか消火できていないかったばかりか、火勢が優って延焼範囲が人家にまで差し迫っているということだったから、空中消火にしても火災の状況に応じて常に効果があるわけではなく、そのような場合は関係機関の間でどのような対策を考えているとか、国民が真に知りたい情報とは既に経験した大災害に於ける危機管理不全から学習した、次の大災害に備えた的確な危機管理の具体的な対策であって、安倍晋三が口にした誰でもが言えるような月並みな形式的一般論ではないはずだ。
ヘリコプターの空中消火がうまくいかないスタニスラウス国立森林公園の山火事のニュース映像を見ていて、延焼している最終地点から風下側に一定の距離を置いた樹木をヘリコプターで吊り下げて送り込んだ何10台もの木材伐採の重機で切り倒し、切り倒した樹木をヘリでピストン輸送する方法で地続きで延焼を免れることのできる緩衝地帯を設けることをなぜしないのだろうかと思った。
炎が樹木から樹木へと地続きで延焼していく火勢と緩衝地帯を飛び越えて火の粉が飛び火して火事を発生させる火勢とでは自ずと違い、後者はヘリ消火で簡単に消化できるはずだから、緩衝地帯の前で延焼を食い止めることは決して不可能ではない。
過去の山火事を習って、風の強さと空気の乾き具合、風向き等から延焼速度と延焼範囲を計算して、その計算に基づいて延焼範囲外のどのくらいの距離で何台の重機を送り込んだなら、延焼がその場所に及ぶまでにどのくらいの緩衝地帯を設けることができるかの計算を行う方法も消火活動の一つとし得るはずだ。
この方法の大災害時の地域住宅への応用である。消火設備の整っていなかった江戸で行われていた、火消しによって人為的に風下側の建物を一定距離範囲で解体して緩衝地帯を設け、延焼を免れる消火方法である。
火事が発生して地上からも空中からも消火が捗らなかった場合、火災地域の風下に位置する、延焼区域から一定の距離を置いた倒壊家屋の生存者の有無の調査を救助犬や遠隔操作の小型カメラを大量に投入して、生存者がいた場合は救助し、救助し得たところでブルドーザーで倒壊家屋を、解体中に遺体を発見した場合は可能な限り収納するが、例え漏れがあったとしても、次の生存者を焼死から救うために一定の場所に寄せ集めめるなりして延焼を免れることのできる緩衝地帯を設ける。
頭で考えたことで、うまくいくかどうか分からないが、国民が知りたい情報とは過去の大災害で満足に対応し切れなかった危機管理を学習して、可能な限り満足のいく危機管理を再構築した具体的な情報であることに変わりはないはずだ。
そういった情報こそが国民の生命や安全を守るのであって、安倍晋三が記者会見を開いて発言した月並みで形式的な情報ではないことだけは確かである。
お粗末な限りだという印象を受けた。