民主党の海江田代表が、〈来年春の統一地方選挙や国政選挙に向けて野党間の協力関係を強化するため、秋の臨時国会に政府・与党が提出する法案への考え方が一致する政党と、統一会派を組むことを模索する考えを示し〉たことに対して小沢一郎生活の党代表が、〈「大変結構なことだ」と述べ、民主党から打診があれば前向きに対応したいという考えを示し〉たと、次の記事が伝えている。
《小沢代表 統一会派打診あれば前向きに》(NHK NEWS WEB/2014年8月18日 16時56分)
8月18日の愛知県豊橋市での記者団に対する発言である。
小沢一郎生活の党代表「野党第1党の代表である海江田氏が、『野党が協力していかなければならない』と公然と話すようになったことは、大変結構なことだと思っている。
野党間の連携は、国家的な基本の問題が一致していればよく、集団的自衛権を巡っては民主党とわれわれの考え方は同じだ。消費税の問題についても、私は税率の引き上げに反対しているわけではなく、『民主党が政権を取る際に掲げた約束を破ってはいけない』と言ったのであり、その面でも何ら支障はない」
小沢一郎代表は集団的自衛権に関しては一内閣による憲法解釈変更ではなく、国民の意思を問う憲法改正で行使容認へ持っていくべきだと主張している。
また、民主党時代の消費税増税反対は、民主党が4年間は消費税増税は行わないというマニフェストのもと2009年総選挙を戦い、安定多数を獲得する圧倒的な議席獲得で勝利し、政権交代を成し遂げた関係から、マニフェストに忠実であるべきだとの姿勢を貫いたに過ぎない。
勿論、当時の小沢氏には政局もあっただろう。政治は議席が深く関係することも強く認識している政治家でもあった。政権交代が単なる4年間ではなく、せめて2期8年はと考えていたはずだ。
政治が議席でもあることは現在の民主党が一番悔しい思いで噛みしめているはずだ。議席を失うということは政治の手足をもぎ取られるに等しい。
4年間は消費税増税は行わないというマニフェストにも関わらず、鳩山首相の後継の菅無能は2010年7月の参議院選挙のたった1カ月前の参院選マニフェスト発表の2010年6月17日記者会見で、突然消費税増税を表明した。
党で何の議論もせず、何の準備もしていないかった。このことは増税率に現れている。
菅無能「なお、当面の税率については、自由民主党のが、提案されている、ジュウ、10%という、この、数字、10%を、一つの、参考とさせていただきたいと、考えております」
単なる官僚ではなく、国民の生活を預かっている政治家なのだから、国民の生活及び経済への影響と必要税収との兼ね合いで重い気持ちで算出すべき税率を野党の税率を参考にし、それを「当面の税率」と言うお手軽さからは周到な準備も前以ての議論も窺うことはできない。
お手軽だったからこそ、菅無能は参院選の遊説で発言がコロコロと変わることになった。
年収に応じて消費した金額にかかる消費税分を全額還付するという逆進性緩和対策を打ち出したのはいいが、秋田市内での遊説では、「年収が300万円とか350万円以下の人」を対象とし、青森市での遊説では「年収200万円とか300万円」、山形市では「年収300万~400万円以下の人」と遊説の先々で年収に違いを見せた。
大体がはっきりしないことを言う「とか」という言葉で年収を打ち出す曖昧さは何の準備もないままに消費税増税を言い出し、参院選挙中も準備のない状態だったことの証明でしかない。
何というお手軽な国家リーダーだったのだろうか。そのお手軽さゆえにマスコミや国民の嘲笑の対象となった。内閣支持率は下がり、2010年7月11日投開票の参院選は現有54議席を下回る44議席、過半数を失うねじれ状態の大敗は当然の結果だった。
菅無能はこの参議院与野党逆転状態を政策を成立させるためには“熟議”を必要とする新しい局面を迎えた「天の配剤」だと言い放った。自身の無能の結果を天が与えた良い結果だとしたのである。
そして菅無能の後継の野田首相も4年間は消費税増税はしないとしたマニフェストに違反して消費税増税を言い出した。
国民の「マニフェスト違反」という批判にも耳を貸さなかった。
ところが、野田首相の民主党幹事長代理時代の2009年衆院選選挙での大阪16区民主党森山浩行候補応援演説のビデオがインターネット上に出回ることになって、菅無能同様に国民やマスコミの嘲笑の対象となった。
野田佳彦幹事長代理「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。
それがルールです。
書いてないことを平気でやる。これっておかしいと思いませんか。書いてあったことは4年間何にもやらないで、書いてないことは平気でやる。それはマニフェストを語る資格がないと、いうふうに是非みなさん思って頂きたいと思います。
その一丁目一番地、税金の無駄遣いは許さないということです。天下りを許さない、渡りは許さない。それを、徹底していきたいと思います。
消費税1%分は、2兆5千億円です。12兆6千億円ということは、消費税5%ということです。消費税5%分のみなさんの税金に天下り法人がぶら下がってる。シロアリがたかってるんです。
それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか?消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれませ ん。鳩山さんが4年間消費税を引き上げないと言ったのは、そこなんです。
シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。徹底して税金の無駄遣いをなくしていく。それが民主党の考え方です」――
「鳩山さんが4年間消費税を引き上げないと言ったのは、そこなんです」と言いながら、その舌の根をまるきり別人のものに変えてしまった。
マニフェスト違反という批判に対しては、法律は通しても、実際の増税時期は衆院任期4年後の2014年8%、2015年10%だからマニフェスト違反ではないと強弁した。
民主党が2009年8月30日総選挙投開票で圧勝して政権を獲得した際の議員の任期は解散がなかった場合、2013年8月29日が任期満了である。自民党にしても消費税増税をマニフェストに掲げていたのだから、途中解散であっても、任期満了後の解散であっても、解散後に双方同じスタートラインに立って、ヨーイドンで消費税増税を国民に問い正しても良かったはずだ。
少なくとも国民からマニフェスト違反の批判は受けることはなかった。つまり失点を少なくすることができた。ねじれ国会下、消費税増税法案を成立させるために自公の協力を得る必要上、「近いうちに国民の信を問う」と解散を交換条件にすることもなかった。
また、その「近いうちに」をズルズルと伸ばして、「近いうちとはいつのこと」だと、なおマスコミや国民の嘲笑を誘い、さらに失点を重ねることとなったが、そういったこともなかったはずだ。
失点を可能な限り抑えて、嘲笑の対象となることをできるだけ避けていたなら、自民党に大敗した2012年12月総選挙はまた違った様相を呈することになっただろう。
政治には政局をも必要とするという考えに立って政局を政権運営の駆引きに利用することも満足にできなかったばかりか、政局との連携がないままに政策だけで突っ走る単純さが災いして民主党の凋落を招くことになった。
菅無能にしても野田首相にしても、特に菅無能は民主党が評判を下げていく過程で小沢氏を悪者にして自分たちを正義の人に位置づけ、政権浮揚を謀ったが、所詮政治の素人に過ぎなかった。
マスコミや野党も野田や菅無能の遣り方を真似た。小沢氏の民主党からの離党は周囲が追い込んだ側面もあったはずだ。
海江田執行部は統一会派を組むことができるかどうか協議の結果、生活の党と組むことができるということなら、小沢氏から政局を少しは学ぶべきだろう。キレイゴトばかり言っても、政治は成り立たない。