朝日新聞従軍慰安婦報道謝罪と石破茂国会招致言及と強制連行政府・軍資料不存在の関係

2014-08-07 08:25:00 | Weblog


  朝日新聞が8月5日の朝刊で、従軍慰安婦強制連行の根拠の一つとしてきた吉田証言を「虚偽と判断」したとして、吉田証言に基づいて書いてきた記事を取り消した。

 但し朝日新聞は従軍慰安婦強制連行説を捨てたわけではない。〈これまで慰安婦問題を報じてきた朝日新聞の問題意識は、今も変わっていない。〉とする言葉に自分たちの立場を要約している。

 一方、朝日新聞等の従軍慰安婦強制連行説に対立して軍や官憲による従軍慰安婦の強制連行を示す政府や軍の資料は一切見つかっていないという立場を採ってきた安倍晋三やその他、日本民族優越主義を血としているがゆえに大日本帝国軍隊の無謬性・絶対性を信じる復古主義者たちは自分たちの立場の正しさの改めての証明として、表面的には隠しているだろうが、内心、鬼の首でも獲ったかのように欣喜雀躍したに違いない。

 このことは石破茂自民党幹事長の8月5日の党本部での記者会見の発言に現れている。次の記事――《慰安婦問題:朝日記事巡る自民・石破幹事長の一問一答》毎日jp/2014年08月06日 00時37分)から、発言の全てを引用してみる。

 記者「朝日新聞が従軍慰安婦問題を巡る報道の一部に事実の誤りがあったと認めた。どう受け止めているか」

 石破茂「私どもとして、この記事は非常な驚きをもって受け止めている。今まで有力紙たる朝日新聞が(慰安婦狩りをしたと証言した)吉田(清治)さんという方の証言に基づいて慰安婦問題を世論に喚起して、そしてそれが国際的な問題となってきました。

 それを取り消すということになれば、今までの報道は一体何であったのか、ということだ。(朝日新聞は)どうしてこういうことになったのか紙面で述べておられますが、これだけ大きな問題になっている。我が国がそういうことをする国家であるということで国民も非常に苦しみ、そしてまた国際的な問題ともなっている。

 なぜ十分な裏づけが取れない記事を今日に至るまで、ずっと正しいものとしてやってこられたのか。その検証はこれから先、日本国の国益のためにも、この地域を友好の地域として確立をしていくためにも、極めて重要なことだと思っている。

 これは、これから国会の中で、我が党としていろいろと議論をしていくことですが、場合によっては、これだけ大きな地域の平和と安定、あるいは地域の隣国との友好、国民の感情に大きな影響を与えてきたことですから、検証というものを議会の場でも行うということが必要なのかもしれません。真実がなんであったのかということを明らかにしなければ、これから先の平和も友好も築けないと思っております。それは書かれた社の責任としてその責任を果たされたいと考えている」

 記者「(朝日新聞報道の)関係者の国会招致も検討するのか」

 石破茂「要は糾弾するとかいう話ではなくて、国民の苦しみや悲しみをどうやって解消していくのか。我が国だけではない。そうやって取り消しちゃえとされてしまいましたが、そういう報道に基づいて日本に対して怒りや悲しみをもっている国々の、特にこの場合は韓国ですが、人に対する責任でもあると考えている。それはいつにかかって、その地域の新しい環境を構築していくために有効なものであるとすれば、そういうこともあり得るでしょう。現時点においてなんら確定しているものではない。

 記者「朝日新聞は十分説明を尽くしたと思うか」

 石破氏 (検証記事は)まだ続きがあるんでしょう。読んでみなければ判断できません。ただ、どうして社会の木鐸(ぼくたく)、社会の公器たる新聞が十分な裏づけも取れないままこういうことをやったのか、疑問が氷解したわけではない」

 記者「議会で明らかにすべきなのは、朝日新聞の報道がなぜこうなったかということか。

 石破茂「私がすべきだといっているのではなくて、議会のことですから、(自民党)会派の責任者たる私が一存で決めるわけには参りません。これから、我が党のそれぞれの現場の担当者がどのように判断するかということにかかっているので、私としてすべきだと申し上げているのではない。しかし、これだけ多くの国民、日本だけではない、そういう人たちがこの報道を前提にいろんな議論をしてきた。それによって怒りや悲しみや苦しみが生じている。なぜこういう経緯になったのかということは、この取り消された報道に基づいて生じた関係の悪化、怒りや悲しみや苦しみ、それを氷解させるのに必要なことであれば、議会がその責任を果たすことはあり得るということだ」――

 要するに公正・公平でなければならない公共の報道機関が誤った歴史認識を国民に植えつけた結果、「我が国がそういうことをする国家であるということで国民も非常に苦しみ、そしてまた国際的な問題ともなっている」のだから、国会で検証、あるいは関係者の国会招致もあり得ると発言している。

 但しこの石破発言は、当然のことながら、従軍慰安婦の強制連行は一切なかったとする文脈の歴史認識を前提としている。一切なかったからこそ、朝日新聞はそういうことをする国家であるかのように誤った歴史認識を植えつけたために国民を精神的に傷つけたばかりか、国際的な信用を失わせたとすることができる。

 朝日新聞の謝罪を内心鬼の首でも獲ったかのように欣喜雀躍していなければ、このような発言とはならなかったろう。

 石破のこの歴史認識は日本民族優越主義との関連で大日本帝国軍隊の無謬性・絶対性を信じる復古主義が背景にあるものの、具体的な根拠として軍や官憲による従軍慰安婦の強制連行を示す政府資料は一切見つかっていないという自分たちの事実に基づいているはずだ。

 安倍晋三や石破たちが事実と認めざるを得ない資料が存在したなら、いくら日本民族優越主義や大日本帝国軍隊の無謬性・絶対性の強がりを以てしても、強制連行の事実は否定できないことになる。

 従軍慰安婦の強制連行はあったとする立場の歴史認識者は軍や官憲による従軍慰安婦の強制連行を示す政府や軍の資料が存在しない理由を戦前の日本政府が敗戦を決意して1945年8月14日に重要文書類の焼却を閣議決定、1945年8月15日午前0時を以って焼却処分開始と連合国軍進駐までの約2週間の間に終了の指示を出していることから、焼却に付されたか、強制連行という軍や官憲にとっての不都合・不名誉を理由として資料として最初から記録していなかった、口頭で処理していたからではないかと見ている。

 但し強制連行を示す外国の資料は存在する。周知の事実だが、日本軍が占領中のインドネシアでオランダ民間人抑留所から未成年を含む若いオランダ人女性を日本軍が強制連行して、日本軍人が強制的に性行為を強要した事件の戦後1948年のオランダ軍によって開廷されたバタビア臨時軍法会議の公判記録である。

 そこに関係した日本軍人の証言が記録されている。

 「Wikipedia」、その他のインターネット記事を参考にすると、例えばスマランなる地域には既に4個所の慰安所が開設されていたが、性病が蔓延していて、現地南方軍の幹部が4個所から性病に罹っていないオランダ人女性を選抜して新たな慰安所の開設を計画、インドネシアに於ける軍政担当、ジャカルタに本部を置いていた第十六軍司令部に認可申請し、認可を受けているという。

 当然、認可申請から認可までの経緯を記録した資料が第十六軍司令部に残されていなければならない。ごく一般的な事例なら、文書で認可申請を受け、文書で認可したはずだからだ。現地南方軍幹部はその認可を記した文書に基づいて部下や業者に慰安所開設の指示・命令を出すことになる。

 新たに開設されたスマランの慰安所は1944年3月1日から営業開始したものの、自分の娘を連れ去られたオランダ人リーダーが陸軍省俘虜部から抑留所視察に来た小田島董大佐に慰安所の存在と強制連行というその実態をだろう、訴え、同大佐の勧告により16軍司令部は1944 年4月末にすべての慰安所を閉鎖したとされているが、現地日本軍兵士のオランダ人女性に対する強制連行と性行為の強要は第十六軍司令部の認可を受けた慰安所開設である以上、閉鎖に至る経緯とその実態を臭い物には蓋の姿勢でなければ、記録しておいたはずだ。

 もしそのような記録や資料の類いが存在しないとしたら、軍の不都合・不名誉となる事実だからという理由で臭い物には蓋を実行して記録しなかったか、記録しておいたが、重要文書類焼却の閣議決定を受けて不都合・不名誉な事実として証拠隠滅の焼却処分としたか、いずれかになって、このような予測し得る事実を政府や軍の資料が存在しないことの理由としてきた歴史認識者の立場は正当性を得ることができる。

 軍や官憲による従軍慰安婦の強制連行を示す政府や軍の資料は一切見つかっていないという事実を以って強制連行はなかったとする安倍晋三等の日本民族優越主義を血としているがゆえに大日本帝国軍隊の無謬性・絶対性を信じる復古主義者たちは、当然のこと、インドネシア・ジャカルタの第十六軍司令部に残されているべき慰安所開設とその実態の資料が存在しないことの理由を証明しなければならないことになる。

 もし記録や資料が存在するなら、軍や官憲による従軍慰安婦の強制連行を示す政府や軍の資料がないことを以って従軍慰安婦の強制連行を否定する立場の正当性は失われることになる。

 絶好の機会である。朝日新聞を国会に参考人招致して、徹底的に検証、そろそろシロ・クロをつけるべきだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする