マスコミが今朝9時頃のニュースで、広島市の土砂災害の死者が50人、行方不明者38人と伝えていた。
8月20日午前3時20分頃、広島市安佐南区山本の住民から住宅の裏山が崩れて、2階建ての住宅の1階部分に土砂が流れ込み、5人家族のうち子ども2人の行方が分からなくなったと消防に通報が入った。
これが最初の土砂崩れと予測されている。
どれ程の雨が降ったのだろうか。
▽8月19日午後8時~9時までの1時間雨量19ミリ
その後断続的に雨が降る。
▽8月20日午前1時~午前2時までの1時間雨量29ミリ
▽8月20日午前2時~午前3時までの1時間雨量92ミリ
▽8月20日午前3時~午前4時までの1時間雨量115ミリ
場所によって多少の違いはあっても、既に総雨量が優に200ミリを超えていた。そして土砂災害が発生した一帯は花崗岩が風化してサラサラとなった、雨が降ると水を含み崩れやすくなる真砂土に覆われていた。
政府は8月20日4時0分に首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置。情報収集に当たったという。
つまり首相が不在でも、内閣自体は早くから対応していた。だから、安倍晋三がゴルフを始めようが、何ら問題はないとしたいのだろう。
では、どんな情報を収集していたのだろうか。
大雨の範囲と各地区の時間雨量と各地区の総雨量は勿論のこと情報収集していたはずだ。さらに一帯が大雨が降ると崩れやすい花崗岩風化の真砂土を土質としていること。
特に過去を学ぶ点で、15年前の1999年(平成11年)6月に大雨で広島市や呉市を中心に325個所で土石流や崖崩れが発生、31人死亡、1人行方不明の情報は収集漏れがあってはならない。
この時呉市は広島県知事に対して海上自衛隊と陸上自衛隊の出動を要請している。
海上自衛隊の出動要請は呉市にその基地があったからだろうが、海上自衛隊が陸上自衛隊程には災害活動の装備を備えているとは思えない。だから、後から陸上自衛隊に対してまで出動要請をしたのだろうか。詳しいことは分からない。
そして国土交通省が把握している広島県内土砂災害危険箇所。全国最多の3万2000個所だと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。
この過去の災害を参考にして、何よりも前以ての避難活動が行われていなかったことを情報把握していただろうから、殆どの住民が住宅に取り残されていることを考えて、刻々と判明していく1時間当たりの雨量とその時々の総雨量と一帯の土質等、これらの情報を総合して、土砂災害が発生した場合の人的被害が決して小さくはないことを想定しなければならなかったはずだ。
残酷なことを言うことになるが、地震で倒壊した家屋に閉じ込められた場合、木材に圧し潰されずに偶然にできた木材と木材の隙間に恵まれて一命を取り留めたなら、一定時間かそれ以上息を吸い続けることができて、火災が発生しな限り、助けを待つことができるが、大規模な土石流を受けて倒壊した家屋に閉じ込められた場合、倒壊した木材に圧し潰されなくても、水混じりの土砂が柔らかな泥となって隙間の殆ど全てを埋め尽くす形を取り、呼吸できない状態を作るから、住宅と共に大量の土砂に一旦埋められてしまうと、必然的に救命率は低くなる。
最悪の場合、行方不明者数がそのまま死亡者数になりかねないことになる。
こういった点を政府情報連絡室は各種情報収集と同時に頭に入れていたはずだ。単に報告される情報を収集していただけでは情報収集とは言えない。以後の活動に活かすことができる形で同時進行で情報処理することが含まれて、初めて情報収集と言うことができる。
政府情報連絡室は以降、行方不明者の人数の情報が報告されるたびに、やはり残酷なことだが、無事を願いつつも、少なくとも頭の中では最悪の事態として死者数に置き換える情報処理を行わなければならないことになる。
政府情報連絡室が行っていただろうこのような情報収集と情報処理の中に当然、8月20日午前3時20分頃の土砂崩れによる子ども2人の行方不明者発生の情報も含まれていたことになる。
そして8月20日午前4時過ぎ頃から土砂崩れと住宅が埋まって行方不明者が出たという通報が消防局に相次いで寄せられる状況が続くことになる情報の把握も行われたであろう。
広島市消防局が、8月20日午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が午前5時15分頃心肺停止の状態で発見されたと発表。この発見は広島市にも伝えられただろうから、いずれかの機関から政府情報連絡室は情報を把握していなければならない。
政府情報連絡室はこのような行方不明者の情報と遺体発見の情報に接したなら、住宅にいて大規模な土石流災害を受けた場合、残酷なことではあるが、生存率が低いという情報処理を施していかなければならないことになる。
そしてこの処理した情報は大規模な人的被害を予想した時点で危機管理の最終責任者の首相たる安倍晋三に報告することになったはずだし、報告していなければならない。
だが、「国民の生命と財産を守る」第1位の最高責任者たる安倍晋三は広島市の土砂災害の被害報告が拡大する方向で進行中、夏休み中の山梨県の別荘から富士河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」に向かい、8月20日午前7時26分に到着、ゴルフを開始している。
そしてゴルフを中止したのは午前9時19分。
古屋防災担当相は、「最終的に死亡者が出た8時37分とか8分に総理にも連絡をして、その時点ではこちらに帰る支度をしてます」と安倍晋三のゴルフに問題はないとしたが、大規模な災害が発生した場合、安倍晋三が首相官邸に駆けつける基準を最初の死者が出てからとしたことになる。
安倍晋三は8月20日午後5時54分、公邸を発って別荘に戻っている。官邸関係者は「資料などを取りに行くためで、休暇を切り上げることはすでに決めていた」と説明。実際には葛西敬之JR東海名誉会長と別荘で昼食を取ってから、東京に向かった。
安倍晋三が公邸を発つ午後5時54分を26分遡る午後5時28分の発信時間で、「NHK NEWS WEB」が警察の発表として、「32人死亡9人不明」を伝えている。
行方不明者の9人にしても、こういった場合の災害として生存率が小さいことを考えなければならない。
このことは前以ての避難が如何に大切か教えることになる。
だが、安倍晋三はゴルフを行った行動にしても、別荘に戻った行動にしても、行方不明者に対する生存率を考えない行動――いわば被害の規模を考えない行動となって現れている。
8月20日午後の市消防局幹部の記者会見。
金山健三広島市消防局危機管理部長「1時間に115ミリという急激な雨で同時多発的に土砂災害が発生した」
この情報が8月20日午後以降の把握となったとしても、8月20日午前3時から午前4時までの1時間雨量115ミリに達した時点で同時多発的に土砂災害が発生したことを教えている。
この時間の近辺で、現在の死者50人、行方不明者38人、合計88人の殆どが土砂に埋められた可能性を考えることができる。
例え結果論であったとしても、安倍晋三は88人が埋められているにも関わらず、ゴルフを楽しんでいた。少なくとも過去の災害や時間当たり雨量や総雨量、土砂災害が発生した一帯の土質、さらに前以ての避難が行われていない等々の点から被害が拡大方向に進行すると予想される情報処理を官邸で行っていたとしても、そのような情報処理に反してゴルフを行っていたことは、「国民の生命と財産を守る」第1位の国家責任者として到底許されることではない。