8月29日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開催の「消防団を中核とした地域防災力充実強化大会」(主催・日本消防協会)で、安倍晋三が挨拶した。
《首相 消防団の加入促進と処遇改善図る考え》(NHK NEWS WEB/2014年8月29日 17時11分)
安倍晋三「広島市では今このときも、多数の消防団の方々が昼夜を分かたず救命救助活動にご尽力いただいており、心から敬意と感謝を表したい。消防職員が救命救助活動中に殉職されたことは痛恨の極みであり、謹んでお悔やみ申し上げる。
東日本大震災などの大災害を経験し、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの発生が予測されるなか、政府としても地域防災体制の強化は喫緊の課題だと認識している。消防団への加入の促進や、団員の処遇改善、それに装備の充実が図られるよう、全力で取り組んでいく」――
確かに消防団は地域に密着して、地震を除いて豪雨や台風の接近が予想される際、災害に備えて前以て見回り・監視を行い、地震災害を含めて洪水や土石流等の災害が発生した場合、直ちに現場に駆けつけて人命救助等の活動を第一番に行う体制を担っている。
だが、日本全国全ての地域で毎年大災害が発生するわけではない。地震にしても首都直下型にしろ、南海トラフにしろ、東海地震にしろ30年単位で発生確率が70%とか、80何%かであって、その備えのために日本全国すべての地域の消防団の人数を増やしておくというのは金銭的にも人材の面でもムダをストックするようなものである。
公的な災害活動従事者が消防団以外に存在しないのなら理解できる。災害出動に於ける活動能力の点では消防団よりも自衛隊の方が遥かに優れているはずである。自衛隊が災害現場に出動後は、全体的には活動の主力は消防団ではなく、自衛隊が担うことになるはずである。
だが、問題は消防団程には地域に密着していないことであろう。
今回の広島市の土砂災害にしても、広島県知事が自衛隊に対して災害派遣要請した8月20日午前6時30分に対して要請を受けて陸上自衛隊第46普通科連隊(海田市)が駐屯地を出発したのが1時間10分後の8月20日午前7時40分である。
しかも人員は30名。
そして30名8月20日午前7時40分派遣から2時間35分後の8月20日午前10時15分に新たに約60名の人員を派遣して、それ以後、人数にバラつきはあるが、順次小刻みに時間を置いて増やしている。
8月20日のみの派遣を見てみる。
《広島県広島市における人命救助に係る災害派遣について(8月20日22時00分現在)》(防衛省/平成26年8月20日)
10時15分 第46普通科連隊(人員約60名、車両約15両)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
10時30分 第46普通科連隊(人員約70名、車両約10両)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
12時10分 第13施設隊(人員約10名)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
12時17分 呉造修補給所の部隊(人員約10名)が基地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
14時00分 第47普通科連隊(人員約110名、車両約30両)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
14時10分 第46普通科連隊(人員約60名、車両約10両)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
14時30分 第13施設隊(人員約20名)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
16時00分 第13後方支援隊(人員約20名、車両約10両)が駐屯地出発。現地到着後、給水支援活動を準備。
16時15分 第13施設隊(人員約20名、車両約5両)が駐屯地出発。現地到着後、行方不明者捜索活動を実施。
18時30分以降 第305施設隊(人員約20名 車両約10両)が駐屯地出発。23時13分までに順次、海田市駐屯地に到着。
19時30分以降 第304施設隊(人員約20名 車両約10両)が駐屯地出発。21日02時26分までに順次、海田市駐屯地に到着。
広島県知事の8月20日午前6時30分派遣要請から出発まで1時間10分も要したのは大臣または大臣が指名する者の承認を経由して派遣命令が下されるシステムとなっていることと、出動部隊の派遣準備に時間を必要としたからだろう。
小刻みに時間を置いて人員を増やしていったことは災害規模が明らかになっていったことに対応した措置でもあろうが、準備に時間を要したことも含まれているはずだ。
地震の場合は突然のことでそれなりの準備の時間を必要とするが、豪雨や豪雪、台風の場合は気象庁が前以て出す予報に従って、予報地域、または予報コースに所属する自衛隊は訓練として前以て災害出動部隊に召集をかけ、招集をかける時点で県知事の要請があった場合の出動の承認を大臣または大臣が指名する者に得ておけば、県知事の要請次第直ちに出動ができ、より地域密着型の体制とすることができる。
要請がなかったとしても、訓練とすることはできる。
要請があった場合の最初の出動は例えムダになったとしても、多めの人員を派遣すべきだろう。そして必要に応じて順次派遣人員を増やしていく。
どこかの地域で大規模な地震が発生した場合は、発生した時点で日本全国すべての陸上自衛隊の基地・駐屯地は防衛大臣の出動準備命令がなくても出動準備態勢を整えて、いつ何時の出動命令にも即応できるシステムとしておけば、より地域密着型の活動が可能となる
大型重機の運搬が基地・駐屯地から災害現場まで遠い場合は、災害現場の地域、あるいはその近辺にある建設機械レンタル大手と連携して、夜中でも手配できるシステムにしておいて借り出し、レンタル会社に災害現場近くにまで運搬して貰っておけば、準備や運搬の手間を省くことができて、より少ない時間で移動ができる。
借り出すことができない場合のみ、自ら運搬することにする。
このような体制にしておけば、活動する機会が出てくるかどうかも分からない消防団員を抱えておいて、予算をムダにするケースが生じることを可能な限り抑えることができる。
消防協会の大会だからと言って、消防団員を増やすことと待遇改善を約束するのは、票にする意図もあるからだろうが、利益誘導とならない保証はない。