安倍晋三の熊本視察中止を推測 余震を想定外に置いた安易で安請け合いの危機管理が原因ではないか

2016-04-17 11:32:38 | Weblog


 4月14日21時26分頃熊本で発生した震度7の前震とその後の本震・余震によって4月17日未明のネット記事は死者41名に達したと伝えている。

 これだけの強い余震が続くことや、本震と思えた4月14日の震度7の地震(マグニチュード6.5)が気象庁が発表するまでは実は前震で、4月16日午前1時25分頃発生の震度6強(マグニチュード7.3)の地震が本震だと気づく者は少なかったはずだ。

 今朝早くの各マスコミ記事は千人孤立や9万人の避難を伝えている。熊本で発生した地震は 福岡、大分、佐賀、宮崎と各県に広がり、今まで例にないような広範囲への拡大状況を見せている。

 多分、政府もこのような異常とも言える様相を呈するとは予想もしていなかったに違いない。

 だが、地震発生から約41分後の22時07分に震度6弱の地震を観測、その33分後の22時40分に熊本県知事が陸上自衛隊第8師団長に対して人命救助に関わる災害派遣要請を行ったのは引き続いた地震によって被害が拡大したからだろう。

 どちらの地震も内陸型であることから津波情報は発せられなかったから、当然考えられるのは家屋の倒壊や土砂災害といった被害であって、自衛隊の手を借りなければならない程にその被害は大きかったことになる。

 気象庁は4月14日21時32分に4月14日21時26分頃の震度7の地震を伝えてから1時間58分後、熊本県知事が自衛隊に災害派遣要請を行ってから50分後の4月14日23時30分から記者会見を開いて、「今後1週間、震度6弱程度の余震が発生する恐れがある」と警戒を呼び掛けている。

 震度6弱程度の余震ということなら、家屋の倒壊や土砂災害は更に広がる可能性を想定しなければならないし、倒壊を免れた家屋であっても、そこでの居住は不安を誘うことになって、屋外生活を余儀なくされる被災者も出てくることも想定しなければならない。

 我が首相安倍晋三は時事ドットコム記事の「首相動静(4月15日)」によると、4月15日午前7時6分から同22分まで河野太郎防災担当相と首相官邸で面会している。  

 面会後の対記者団発言を「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 河野太郎「全員、今日(4月15日)中には、屋内の避難所にきちんと入れるようにしていきたい。熊本の避難者が2万数千人で、益城町からも相当数、避難しているのではないかと思う。そのへんの現状をしっかり確認し、午後、また安倍総理大臣に報告したい」

 この発言を記事は河野太郎が確認済みの被害状況の報告を行った後、安倍晋三が現在屋外で避難しているすべての人が15日中に屋内の避難所に入れるよう指示したことを受けた発言として紹介している。

 この指示がどのような言葉でなされたのか、午前8時8分から同20分まで出席した第3回「地震非常災害対策本部会議」での発言から見てみる。  

 安倍晋三「また、依然として、多くの方々が避難を余儀なくされています。

 明日以降の天候悪化の予報に鑑みると、今日中に安全な避難先を確保することを最優先に、全力で対策に当たる必要があります」

 天候悪化を前提とした「今日中に安全な避難先を確保することを最優先」の言い回しは“今日中の屋内避難”の公約そのものであろう。

 気象庁が4月14日の深夜に記者会見で「今後1週間、震度6弱程度の余震が発生する恐れがある」と警戒を呼び掛けたその翌日の朝も早い7時、8時の時間帯に、いわば地震につきものである余震の回数や規模が判断できない内に、当然、それらの事態に応じて屋外避難者がどう増えるのか分からない状況下で全員の屋内避難を公約とした。

 確かにそうありたい。だが、この約束の裏を返すと、約束した時点で以後余震も何も起きない過去完了形の地震と見ていなければならない。屋外避難者を4月15日朝7時8時の人数程度と見て、これ以上家屋倒壊も土砂災害も発生しない、当然、屋外避難者も増えないと想定した危機管理を発動させていたということである。

 そして河野太郎はこの日(4月15日)の午後1時前に首相官邸で安倍晋三と面会、〈被災状況などを報告したあと、記者団に対し、現在屋外で避難している人のための屋内の避難所について、15日夜までに確保できる見通しが立ったことを明らかにし〉たと「NHK NEWS WEB」(2016年4月15日 14時28分)が伝えている。  

 屋外避難者の人数を現状のまま把握した危機管理に依然として立っていることを意味することになる。

 安倍晋三のこの屋外避難を全員屋外避難に振り替える方針に蒲島熊本県知事が反発している。

 熊本県庁での松本文明副内閣相との会談。

 松本文明副内閣相「河野(太郎)防災担当相に『今日中に青空避難所というのは解消してくれ』と強く言われて参った」

 蒲島県知事「避難所が足りなくてみなさんがあそこ(屋外)に出たわけではない。余震が怖くて部屋の中にいられないから出たんだ。現場の気持ちが分かっていない」(毎日jp

 河野太郎の「今日中に青空避難所というのは解消してくれ」という発言自体が屋外避難者数を現状のまま把握した危機管理となっている。鉄筋コンクリートの頑丈な建物であっても、余震で揺れを経験する内に不安になって、屋外避難と変わらない保証はない。ましてや木造となると、それまでの地震に耐えたとしても、安全・安心は限りなく不確かとなって、いつかは外に逃げ出す可能性は否定できない。

 逃げ出しても、屋内避難所に余裕がなければ、屋外避難を余儀なくされる。

 つまり、屋外避難の解消は日を限って一度に片付く性質の危機管理ではない。片付かない部分をテントとか雨具を早急に用意して補うのが配慮ある危機管理というものであろう。

 だが、安倍晋三も河野太郎も一度に片付く性質の危機管理と思い込んだ行動を取っている。

 結局4月15日中に屋外避難者全員を屋内避難に振り替えることはできなかった。

 翌4月16日、安倍晋三との面会後なのだろう、首相官邸を出る際に記者団に発言している。

 河野太郎「「今夜から、かなり強い雨が予測されるので、とにかく下敷きになっている方の救出を徹底的にやる。6万9000人を超える方が避難されているので、きちんと屋内に収容するか、最悪、自衛隊のテントに収容することに全力を挙げる」(NHK NEWS WEB)/2016年4月16日 13時20分)  

 「時事ドットコム」記事の「首相動静(4月16日)」を見ると、河野太郎は午前5時半前後から6時半前後の間に安倍晋三と会っているが、上記記事配信は13時20分だから、午前11時18分から同31分まで危機管理センターで行った安倍晋三との面会後であろう。

 「6万9000人」全員が厳密な意味での屋外避難者かどうか分からないが、少なくとも「きちんと屋内に収容」できていない準屋外避難も含めた屋外避難者の数ということになる。この存在自体も公約を違えていることになるが、4月15日の河野太郎の対記者団発言では「熊本の避難者が2万数千人」と言っていたから、屋外避難者が一定限度でとどまったわけではなく、確実に増えていった状況を示すことになる。

 確かにこれ程までに規模の強い、回数も多い余震を前以て想定することは困難である。だとしても、気象庁が地震発生2時間4分後の4月14日23時30分からの記者会見で「今後1週間、震度6弱程度の余震が発生する恐れがある」と警戒を発している以上、地震には震度の強い余震を付き物としなければならない危機管理を常に頭に置いていなければならなかったにも関わらず、4月15日午前7時過ぎの時点で規模も回数も不明の以後の余震の可能性と対応させた屋外避難者の増加を想定するきめ細かな危機管理ではなく、それらを想定せずに屋外避難者が一定程度に収まるとする安易な、あるいは安請け合いの危機管理で4月15日中の屋外避難から屋内避難への公約を振りかざした。

 増加を想定した危機管理なら、その数は不明なのだから、とても4月15日中は公約できなかったろう。

 だからなのだろう、翌4月16日の昼前の時点で早くもその公約の破綻を明らかにすることになった。

 この公約破綻は、〈防衛省は被災地で雨が予想されているため、熊本県南阿蘇村など特に被害が大きい地域の住民のうち屋内の避難場所を確保できない人たちについて、本人の同意があれば、陸上自衛隊の車両で屋内の避難場所がある別の地域まで輸送することも検討してい〉ると伝えている「NHK NEWS WEB」/2016年4月16日 17時57分)記事も証明することになる。 

 安倍晋三は16日未明の震度6強2回、6弱1回の余震を理由に16日に予定していた熊本の被災地視察を中止することを決めた。

 いくら安倍晋三が図々しく仕上がっていたとしても、一旦は振りかざした15日中の屋外避難から屋内避難の公約を破綻させておきながら、あるいは今後も増えるかもしれない屋外避難者を前にして、さらには公共施設の玄関外軒先下に雨露を凌ぐ形で避難している準屋外避難者を前にしておめおめと視察で御座いますなどとどの面下げてでかけることができるだろうか。

 視察に出掛けて、厳密な意味での屋内避難者ではなく、屋外避難者や準屋外避難者を万が一にでも目にした場合、自身の公約違反と対面することになる。

 この不都合な事実を避けるためには視察を中止する以外にない。

 例え実際には他の理由であったとしても、地震発生後早々に住民の生命の安全に関わる公約を掲げたものの、それが安易な安請け合いの危機管理から発した公約に過ぎなかったために自ら公約違反を犯すことになったという事実は変わりはないはずだ。

 安倍晋三の危機管理がこの程度なら、安倍晋三がいくら「きめ細かな支援」の徹底を言おうと、行政の行政による事務的で機械的な支援しか期待できないだろう。

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