自民党の民主党との「社会保障と税の一体改革」修正協議参加には解散の密約があったのではないのか

2012-08-09 12:58:12 | Weblog

 ――野田首相解散「近いうちに」を菅仮免退陣「一定のメドがついたら」の言葉の類似性から占う、その信用性――

 昨日8月8日(2012年)夜午後7時半からの民自党首会談前の8日午後、民主党は両院議員総会を開催、そこで野田首相は自民党谷垣総裁が求める解散について次のように話している。

 《民主両院総会での野田首相発言》時事ドットコム/2012/08/08-19:57)

 野田首相「自民党の関心事は、一体改革の実現後に解散時期を明示することだ。ここが一番問題だ。首相の専権事項、大権として、解散時期を明示することはどんな事情があってもできない。先例もないし、大事な局面だがあってはならない。

 政局に絡む話を公党間で協議して確認文書を作るのも、私はふさわしくないと思っている。自民党として内閣不信任案を出すのか出さないのかぎりぎりの段階を迎えている。皆さんにさんざん苦労を掛けて3党合意を結び、あと一歩まで来ている。何としてもこれはやり遂げたいし、できれば自民、公明両党にもそれを確認していただきたい」――

 解散は「首相の専権事項、大権として、解散時期を明示することはどんな事情があってもできない。先例もないし、大事な局面だがあってはならない」と言っているが、ではなぜ、谷垣総裁以下自民党は「首相の専権事項、大権」を侵すことになる解散時期の明示を求めているのだろうか。

 ここに一つの疑問がある。

 藤村官房長官も8日午前の記者会見で野田首相と同じ趣旨の発言をしている。《【政治混迷】藤村官房長官「時期明示はあり得ない」 今日中に党首会談の見通し》MSN産経/2012.8.8 11:44)

 藤村官房長官(自民党の衆院解散時期明示要求に対して)「常識的にあり得ない。あくまでも野田佳彦首相が決めることだ。確約を求める方も無理があると承知していると思う」

 要するに谷垣総裁以下自民党は「常識的にはあり得ない」ことを要求していることになる。

 この疑問はどう解いたらいいのだろうか。

 経済界からも同趣旨の発言が出ている。《一体改革関連法案めぐり政局混乱 経済界から批判相次ぐ》FNN/2012/08/08 23:50)

 米倉経団連会長の発言も伝えているが、異なる趣旨で発言しているゆえに省略。

 長谷川経済同友会代表幹事「明確に、『いついつまでにやる(解散する)』と言ったら、総理としての政治生命は終わり。それを本気で求めること自体、無理がある。しかもパブリックで。無理筋、大人の知恵を働かせて、ましな方法を考えたら」――

 だが、谷垣総裁以下自民党は「本気で求めること自体、無理がある」「無理筋」の解散時期明示を求めた。

 この場合の「筋」とは「物事の道理、筋道」を意味する。いわば「道理として無理がある」、あるいは「筋道が通っていない」ということになる。

 2つ目の疑問の発端は野田首相の8月1日、首相官邸で支持母体である連合の古賀会長との会談発言に発している。《首相“一体改革と予算編成に全力”》NHK NEWS WEB/2012年8月1日 22時6分)

 野田首相「引き続き、社会保障と税の一体改革の関連法案の成立に全力を尽くしたい。また、一体改革と同時に達成しなければならないのが日本経済の再生であり、平成25年度(2013年度)の予算編成では、環境、健康、農林漁業などに予算を重点的に配分したい。衆議院の任期中、最後の予算編成となり、政治主導でやり抜きたい」――

 政府予算案は毎年1月中に国会へ提出し、3月末日までに成立させる法律の規定がある。
 
 いわば「平成25年度(2013年度)の予算編成」を「政治主導」が口先だけで、官僚主導で終わろうと何だろうと、「やり抜きたい」と言っていることは、成立を見届けて、ハイ、解散ですということは余程の突発的な事態が発生しない限りあり得ないことで、予算執行にまで視野を向けた意欲表明と見做さざるを得ず、衆議院議員任期満了の2013年8月29日まで政権担当を意思表示した発言であろう。

 この憶測が当たっていないとしても、来年の3月まで政権の座に就いていることを意図しているはずである。

 野田首相のこの発言が消費税増税案その他の法案成立後の早期解散を求めていた谷垣自民党総裁を痛く刺激したのは誰もが承知のとおりである。《自民・谷垣総裁「けんか売っているのか」と激怒 首相の解散先送り姿勢を強く牽制》MSN産経/2012.8.2 18:34)

 記事題名は「解散先送り姿勢」と書いているが、“解散なし姿勢”の可能性すらある。内閣支持率や民主党支持率の現状からしたら、衆院任期終了まで解散しなくて済むなら解散したくないと思っているはずだ。

 谷垣総裁「首相の足元の状況を見ると、来年度の予算編成なんておやりになる力はもう残っていない。足元をよくごらんになる必要がある。

 (予算編成への協力について尋ねられて)俺に喧嘩売っているのかという気持ちを正直、持っている」

 ここでの「俺に喧嘩売っているのかという気持」とは、来年度の予算編成までやるのか、じゃあ、解散はいつになるんだという不快感、あるいは怒りが誘発した感情であるはずである。

 いわば来年度予算編成が解散時期を不明確にすることからの不快感であり、怒りであろう。

 果たして何らの解散密約がなくして、「俺に喧嘩売っているのか」といった不快感、あるいは怒りを誘発するだろうか。誘発されるとしたら、何の根拠もない感情ということになって頭のおかしい男と見られる。

 そして社会保障・税一体改革関連法案が成立した場合には今国会中に衆院を解散すべきだとの考えを示したという。

 第180回今国会会期末6月21日が79日間延長、9月8日までの解散を要求したということである。

 解散が「首相の専権事項、大権」でありながら、このように要求すること自体が解散の密約がなかったとしたら、疑問が生じることになる。

 だが、谷垣総裁は当然の要求のように早期解散を求めている。解散の密約を前提としなければ、当然だとする態度を取ることはできないはずだ。

 ところが野田首相が「不退転」を言い、「決める政治」を言いながら、早期解散に道筋をつけるために自民党が法案の参院採決8月8日を求めたのに対して民主党は8月20日以降採決の提案に出た。

 平成25年度(2013年度)予算編成にまで意欲を見せたことと併せて、当然、採決先送り=解散引き伸ばしの疑心暗鬼が生じる。

 そこで自民党は消費税増税法案その他の参院賛成と引き換えに野田政権が解散に応じる確約を示すよう求めた。求めに応じなければ、法案の参院反対ばかりか、衆院内閣不信任案の提出、参院問責決議案の提出までちらつかせた。

 民主党からのその回答が8月8日朝の民主・自民・公明3党の国会対策委員長会談で示された。《自民 現状では党首会談応じられない》(NHK NEWS WEB/2012年8月8日 12時22分)

 民主党の提案は、民自公3党の党首会談の開催を打診、党首会談の席で、野田首相が「社会保障と税の一体改革の関連法案が成立したあかつきには、近い将来、信を問う」という考えを示すというものであった。

 2つ目の疑問とは、「近い将来」という曖昧な期限設定ではあっても、解散時期を提示したことである。何月何日と決めた明示ではなくても、そこに一定の期限を設定して解散を制限することは「首相の専権事項、大権」そのものを制限することになり、当然、首相としての自身の政治行動にまで制限を加えることになる。

 解散時期を提示したことの疑問の中には、なぜ提示を断らなかったのかの疑問も含まれる。国対委員長会談で民主党国体委員長に民主党両院議員総会の野田首相自身の発言である「首相の専権事項、大権として、解散時期を明示することはどんな事情があってもできない。先例もないし、大事な局面だがあってはならない」という言葉をそのまま伝えさせて、解散時期明示はできない相談であるとなぜ拒否しなかったのだろう。

 「社会保障と税の一体改革の関連法案」を参院で成立させるための妥協だとするのが以上の疑問を解く分かりやすい説明になるが、ではなぜ衆院で賛成した同じ法案を自民党の8月8日参院採決案に対して民主党が8月20日以降採決を持ち出し、野田首相が古賀連合会長と会談、2013年予算編成に意欲を見せた途端に強硬に解散時期の明示を求め出したのだろうか。

 解散は「首相の専権事項、大権」でありながら、解散時期を法案成立の妥協の道具に使うこと自体が異常である。

 但し自民党が民主党の要求に応じて「社会保障と税の一体改革」の修正協議に参加するそもそもの時点で法案成立の暁には解散するという密約があったなら、その時点で既に法案成立の道具にしていたのであり、自民党が解散は「首相の専権事項、大権」でありながら、「無理筋」の解散時期明示を求めたとしても、「無理筋」ではなくなり、最も至極尤もな要求ということになる。

 そして8日午後7時半から野田首相と谷垣自民総裁が国会内で党首会談。

 ここでも両院議員総会で発言したように「首相の専権事項、大権として、解散時期を明示することはどんな事情があってもできない。先例もないし、大事な局面だがあってはならない」との発言で谷垣総裁の解散時期明示を断らなかった。

 ではなぜ、両親議員総会でこのような発言をしたのだろうか。考え得る理由は建前上、このように発言せざるを得なかったということだろう。

 だが、両院議員総会の自分の発言を自分から、無意味としてしまった。

 国会対策委員長会談で提示した「社会保障と税の一体改革の関連法案が成立したあかつきには、近い将来、信を問う」が、「近いうちに信を問う」へと、漠然とした広範囲な時間帯から手前により引き寄せたより狭い時間帯の提示で公明党も加わって3党合意に至った。

 かくまでして「社会保障と税の一体改革の関連法案」の参院成立に解散時期の提示を必要とした。

 参院成立のみに必要として、衆院成立時には必要としなかったのはなぜなのだろう。

 最後の疑問となる。法案成立と交換の解散の密約があったからだとしなければ疑問は解けない。

 だが、その密約が衆院成立後当てにならなくなった。確認書の形で紙に書いて残して露見した場合、政治的な一大スキャンダルとなる。口頭で交わすしかなかったはずだ。

 野田首相は口頭をいいことに、と言うよりも、解散できる状況になかったことと、露見したら一大スキャンダルとなる密約であるために谷垣総裁の方も露骨に解散を要求できまいと高を括って解散先送りの挙にそろり、そろりと出たといったところではないのか。

 但し谷垣総裁にしても自身の自民党総裁という進退がかかっているから、解散先送りを見過ごすことはできない。第三者には「無理筋」と見える解散時期明示ではあっても、新たな何らかの確約を得ないわけにはいかなくなった。

 しかし密約は密約だから、その存在自体を暴露するわけにはいかず、「近い将来、信を問う」を「近いうちに信を問う」の不確かな“確約”に代えるのが精一杯だった。

 《党首会談後の谷垣総裁会見要旨》MSN産経/2012.8.8 23:46)

 谷垣総裁「社会保障と税の一体改革関連法案は速やかに成立させる。この法案が成立した暁には、近いうちに国民の信を問う。この2点を確認した。

 重い言葉と受け止めている。解散の確約でなくてなんなのか。必ず信頼に応える行動をしていただけると思っている。民主、自民、公明3党合意の責任を誠実に果たす。衆院選の「1票の格差」是正は今国会中に当然やらなければいけないと思っている。

 野党6党が提出した内閣不信任決議案と首相問責決議案については、可及的速やかに一体改革関連法案を成立させるのに支障のない対応を取らないといけない。自民党独自の不信任案と問責案は当面は提出しないが、事態の推移によってはいろいろあり得るかもしれない」

 「解散の確約でなくてなんなのか」が精一杯の不確かな時期明示であることは輿石民主党幹事長の発言が証明してくれる。

 《玉虫色決着、火種残す=「近いうち」解釈に違い》時事ドットコム/2012/08/09-00:22)

 輿石幹事長「『近いうち』にこだわる必要はない。一人一人解釈してもらえばそれでいい」

 ここで思い出すのは2011年6月1日野党提出の内閣不信任決議案が与党民主党内同調の動きが出て可決の情勢にあったときの菅仮免の取った行動である。

 6月2日午後採決の午前中に鳩山前と会談、民主党内造反予定組の賛成から反対への態度変更を交換条件に自らの退陣を約束した。

 契約の内容は次ぎのとおり。

 ▽民主党を壊さないこと
 ▽自民党政権に逆戻りさせないこと
 ▽大震災の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと

 〈1〉復興基本法案の成立
 〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつけること

 確認書を取り交わしたが、菅は言葉巧みにサインをしなかった。

 そのうち「第2次補正予算の早期編成のめど」がついたならが、「一定のメドがついたら、退陣する」に変わり、その「一定のメド」がいつなのかは決して明示しなかった。

 だが、明示を求める声がやまず、6月27日の記者会見で、確認書の「第2次補正予算の早期編成のめどをつけること」とした退陣時期を大きく逸脱させる図々しさを見せて、「今年度第2次補正予算案の成立、再生可能エネルギー特別措置法案の成立、特例公債法案の成立」を挙げて、これを以て「一定のメド」とし、さんざん居座った末に2011年9月2日に退陣している。

 野田首相は菅仮免同様に可能な限りの解散引き伸ばしに出るだろう。自身の地位よりも民主党自体の存在がかかっているからだ。次期総選挙で大方が予想しているように民主党が大惨敗した場合、「民主党は議席を大きく減らして歴史的な政権交代を短期間で終わらせることになったが、消費税増税を果たしたのだから」と、その成果は慰めの対象となるだけのことだろう。

 但し消費税増税で日本の経済を現在以上にダメにしなければの話しである。

 しかも消費税増税が当たり前になると次第に忘れられて、折角果たした政権交代を無にして政権を失った首相としてのみ名を残すかもしれない。

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前原・枝野の野田首相反原発団体面会反対奇妙発言から見る国民代弁率、あるいは国民代表率

2012-08-08 11:52:29 | Weblog

 野田首相の反原発団体代表者との面会に横槍が入った。

 先ず面会に向けた経緯を見てみる。

 《菅氏、脱原発抗議行動メンバーと意見交換》asahi.com/2012年7月31日22時49分)

 7月31日、私から見ると、福島原発事故対応で情報提供の失態・不手際から多くの住民に放射能汚染の被害を与えるなどの加害を重ねながら、ウソと責任転嫁で自己正当化を企んで原発を語る資格を失っているはずの菅仮免を筆頭とした超党派の国会議員約10人が首相官邸前で反原発の抗議行動を呼びかけている「首都圏反原発連合」メンバーと国会内で意見交換した。

 「首都圏反原発連合」は13の市民団体・個人による連絡組織だという。

 メンバー「デモを呼びかけている責任上、野田首相にも声を届けたい」

 対して菅仮免は最近電話で話した首相が「会って話を聞くことはやぶさかではない」と語っていることを明かしたという。

 反原発が今後の自身の最適な活躍の場面と思い定めて飛びついたのだろうが、福島原発事故対応の失態を謝罪し、責任を取るとなると、国会議員辞職でも追いつかない大きな責任だから、折角飛びついた活躍の場を失うことになる。

 そんなことよりも持ち前の図々しさで名を売ることの方が大切というわけなのだろう

 菅仮免「(面会が)実現する可能性はあると思う。段取りについては今後、いろいろな方と相談して進めたい。皆さんの行動は、野田総理にも大きな影響を与えている」

 同席していた菅仮免キンギョの糞。

 江田五月・元参院議長「ここで一緒に気勢を上げるのが私たちの役目ではないが、脱原発をどうすべきか与党としての政策に仕上げるのが私たちだ」

 だが、大飯原発再稼動を止めることができなかった。首相官邸前での抗議行動は大飯原発再稼動の延長にある場面である。

 8月に入って3日午後、内閣記者会のインタビューで野田首相は面会の意思を示す

 記者「官邸周辺でのデモの声は公邸からも聞こえるか」

 野田首相「窓を開ければ聞こえる」

 記者「デモ参加者は首相との面会を求めている」

 野田首相「さまざまな声は基本的にできるだけ聞きたい。(面会は)やり方、日程含めて調整している。遠くない将来に実現できると思う」(以上時事ドットコム

 同じ8月3日、橋下徹大阪市長が野田首相が反原発団体との面会を受け入れる方針を決めたことに忌避感を示している。

 《橋下氏、首相のデモ団体との面会に疑問 「会わせてくれと言って会えるものではない」》MSN産経/2012.8.3 21:04)

 橋下市長「社会にはルールがあり、一国の首相と会わせてくれと言って会えるものではないと思う。とにかくデモをやれば民主的なルールをすっ飛ばせるというのは違うと思うし、直接会えば原発問題が解決するという話ではないと思う。

 国会議員が有権者の意見を集約して首相に伝えていけばいい」

 どうも言っている意味が素直に入ってこない。「一国の首相と会わせてくれと言って会えるものではない」としても、首相の方から会うと言っているのだから、問題はないはずだ。

 「デモをやれば民主的なルールをすっ飛ばせるというのは違う」と言っていることも、ピンと来ない。デモ自体が民主的なルールの一つであって、届出をし、暴徒化しないといった規制の範囲内での集団抗議行動であるなら、民主的なルールに則った一つの政治的行動、あるいはその他の行動と見做されるはずだ。

 橋下市長は市民の支持率を政治遂行の大きな武器としている。支持率とは市民・国民の声の現れである。デモも、民主的なルールに則った市民・国民の声の集団抗議行動であって、デモが大規模化すれば、当然、その声は大きなものとなる。

 デモを手段として、その声を政治、その他に伝える。

 このことを裏返すと、自分たちの声が政治、その他に届いていない状況にあるからこその、その反動としてある直接的な意思伝達の手段であるはずだ。

 それとも政治家が市民・国民の声を代弁すればいいのであって、デモという集団行動で自らが自らの声を代弁するものではないと見ているのだろうか。

 その思いがあるからこそ、「国会議員が有権者の意見を集約して首相に伝えていけばいい」という発言となったのかもしれない。

 だとすると、民主的なルールの一つとして認められているデモを否定している発言となる。

 大体がデモは、自分たちの声を伝える方法として選挙のときに1票を投じる、あるいは「国会議員が有権者の意見を集約して首相に伝え」るといった極々当たり前の一般的な民主的ルールに則っていたなら埒が明かないと見たときの直接行動として現れる。

 当然、デモはそれら極々当たり前の一般的な民主的ルールを超えた場所に位置していることになる。

 つまり一般的な政治行動で律するには無理が生じることになるはずだ。

 橋下市長は大飯原発再稼動絶対反対の姿勢から容認へと転じたブレた姿勢の手前、反原発デモの存在は絶対反対の姿勢を貫いている象徴に見えて精神的な苦痛の種、少なくとも穏やかではない風景となっているのかもしれない。

 「直接会えば原発問題が解決するという話ではないと思う」という言葉もデモ否定の延長にある発言であろう。

 反原発団体にしても、「直接会えば原発問題が解決する」とは思ってもいまい。なぜなら、原発ゼロの戦いは長い道のりを覚悟しているはずだからだ。長い道のりを制するには無視できない大きな声にしなければならない。

 首相に面会し、自分たちの声を伝えるのは長い戦いの一里塚に過ぎないだろう。

 橋下市長の反原発忌避発言から4日後の8月7日、今度は詭弁家枝野が野田首相の反原発団体代表との面会に反対の声を上げた。《野田首相と市民団体面会に反対=公平・透明性に疑問-枝野経産相》時事ドットコム/2012/08/07-10:20)

 閣議後記者会見。

 枝野「(面会に)私は反対だ。(特定団体代表者との面会は)公平性、透明性を考えれば、誤解を招く可能性がある」

 これまで特定団体代表者との面会は一切なかったのだろうか。8月1日に支持母体である連合の会長と首相官邸で会談したが、公平性、透明性を欠いた、誤解を招く可能性のある会談だったことになる。

 政府が将来のエネルギー政策に関する意見聴取会を全国11都市で開催、枝野は国民から広く意見を聴取したこういった機会を例示して――

 枝野「全ての国民が参加可能なシステムがある。経済界をはじめ、直接意見を聞くことはしていない。統一して徹底したい」

 記事が書いている「将来のエネルギー政策に関する意見聴取会」とは、6月29日開催のエネルギー・環境会議で政府が提示した2030年の原発比率「0%」・「15%」・「20~25%」の3選択肢に対する全国11カ所意見聴取会のことだが、共同通信が参加者の約3割に当たる88人に聞いたところ、約7割が「0%」支持の回答だったそうで、これがそのまま実現する保証があれば反原発団体の利害と一致してデモは必要なくなる。

 だが、野田政権の黒いフィクサー、大飯原発の再稼動に主導的役割を果たしたと言われている仙谷は「0%は非現実的」だと言って、15%を支持、経団連の「20~25%が妥当」の主張も反原発団体の主張と利害を異にする。

 いわば「全ての国民が参加可能なシステム」の決定が国の政策の決定となる“システム”であるなら、反原発団体にしても何ら問題にしないだろうが、だが、決してそうなる保証はない。

 そうである以上、枝野の言っていることは相変わらずの詭弁に過ぎない。

 「全ての国民が参加可能なシステム」を選挙のときの投票と考えると詭弁かどうか理解しやすい。選挙時の投票は満20歳以上の「全ての国民が参加可能なシステム」ではあるが、そのシステムは民主主義の多数決の原理に則って運営される。

 多数決が殆どの政策を多数者の意思に帰着させた場合、多数決の政策から排除された少数者が自らの政治主張をデモで訴えたとき、「全ての国民が参加可能なシステム」での決定だからと言って、そのデモを排除・否定することができるだろうか。

 枝野の発言はこのようなケースのデモを排除・否定するのと同じ次元の言葉であり、それをさも正しいことのように言うのは詭弁そのものだということである。

 野田首相は新たなエネルギー政策を巡る意見聴取会で全発電量に占める原子力発電の比率を「ゼロ」にすべきだという意見が多かったことから、「ゼロ」にする場合の課題整理と克服策の検討を行うよう、古川国家戦略担当大臣ら関係閣僚に指示した。(NHK NEWS WEB) 

 この指示は党内の反原発派を宥める手段だと書くマスコミもあり、そう遠くない次の総選挙で脱原発が争点となった場合の備えと見ることもできる。

 直ちに実現確実と断定はできない情勢にある以上、反原発団体は矛を収めるわけにはいくまい。

 同じ8月7日だが、午後の記者会見だと書いてあるから、こちらが後なのだろう、今度は前原口先番長が野田首相の面会に異を唱えた。

 《前原氏、首相の原発デモ面会に懸念 「一活動家が代弁者なのか…」》MSN産経/2012.8.7 19:40)

 前原口先番長「多くの方々が(デモで)集まる中、面会する人が代弁者たり得るのか懸念を持つ。一活動家がすべてを代弁する形で会うことがないようにしてほしい」

 こうまで野田政権内程度の低い実力者が続けて首相の面会にケチを付けるというのは野田首相退陣の狼煙かと勘繰ってしまう。内閣不信任案に民主党内造反者が出て可決されたとしても、参院で問責決議案が可決されたとしても、解散せずに首相退陣で凌ぐという手もある。

 「面会する人が代弁者たり得るのか」否かは、あるいは「一活動家がすべてを代弁する」のか否かは、面会の場にテレビカメラを持ち込めば分かることである。

 「時事ドットコム」記事が、〈面会はインターネットで中継され、公開される見通し〉と書いている。

 デモ参加者が判定してくれるだろう。

 首相官邸周辺のデモは「反原発」を最大公約数としていて、デモ参加者のすべては「反原発」を共通の認識としているはずである。誰が代表となっても、この構図に変化はないはずだ。

 野田首相の側から言いうと、誰と会っても、反原発で攻めてくることに変わりはないはずである。

 いわばデモ参加の誰もが「代弁者たり得る」資格を有する。

 前原口先番長は理由にならない理由を論(あげつら)って、ケチをつけているに過ぎない。

 大体が野田政権自体が国民の代弁者たり得ているのだろうか。政権交代時は高い国民支持率を誇っていた。だが、野田政権となって、内閣支持率は30%前後の低空飛行で低迷している。

 内閣支持率とは国民代弁率、あるいは国民代表率と翻訳することもできるはずだ。国民の声を代弁していないと国民に見られているから、内閣支持率は下がる。当然、国民を代表している確率も下がることになる。

 内閣支持率30%前後ということは30%前後の国民代弁率であり、30%前後しか国民を代表していないということである。

 前原は「面会する人が代弁者たり得るのか」などと懸念するよりも、野田政権の国民代弁率の低さ、国民代表率の低さに懸念を表すべきだろう。

 自分の頭のハエを追えということである。トンチンカンな男だ。

 野田首相は社会保障・税一体改革関連法案の参院採決や「国民の生活が第一」など中小野党による内閣不信任決議案の提出によって国会日程が流動的となり、調整が困難になったと判断して、面会を延期したという。

 程度の低い詭弁家枝野と程度の低い口先番長前原のパンチが効いたということなら、その程度の低さに負けた野田首相の主体性喪失を意味することになって、その運命や風前の灯と言うことにならないだろうか

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菅の一国のリーダーとしての人となり、自己判断なき無責任な姿が象徴的に現れた東電テレビ会議録画シーン

2012-08-07 09:26:07 | Weblog

昨日8月6日(2012年)、東京電力がテレビ会議映像を公開した。当時の菅首相の人となり、一国のリーダーとしての資質を象徴的に伝えている記事がある。

 その部分のみを参考引用するが、リンクを付けておいたから、閲読したい向きはアクセスを願いたい。

 太字は記事のママで、解説部分である。蛍光ペンは筆者による。菅の資質が象徴的に現れている個所。

 《「(首相は)説明すると、さんざんギャーギャー言う」…東電公開映像 現場の様子克明に》MSN産経/2012.8.6 21:57)  

 東京電力が6日公開した福島第1原発事故直後からの社内テレビ会議の録画映像。一部映像には音声も残されており、大声が飛び交う現場の生々しい様子が克明に記録されていた。公開された映像から判明した主なやりとりは以下の通り。(肩書は当時)
     ◇
 《震災翌日の平成23年3月12日午後11時。音声付きの映像は、官邸中枢からの指示に困惑する東電幹部の様子から始まった。事故直後から官邸に派遣されていた武黒一郎フェローが本店に戻って会議に加わり、こうぼやいた》

 武黒一郎フェロー「大体まあ、首相補佐官とか副長官みたいな人が事前の仕切りをするんですね。ご承知のように、民主党政権は若い人たちがそういう役になってますから。『イラ菅』という言葉があるけれども、あれから比べると吉田さん(吉田昌郎福島第1原発所長)のドツキなんてものは、かわいいものだと思いますけど」

 《官僚らを強圧的に怒鳴り上げる姿から付いた菅直人首相のあだ名「イラ菅」という言葉が飛び出した》

 武黒フェロー「昨日も、退避・避難の区域を決めたときに、最初は菅さん(菅首相)とかに呼ばれて『どうすんだ』『どうすりゃいいんだ』って言うわけですね。私と班目さん(班目春樹原子力安全委員長)が説明すると、『どういう根拠なんだ!』『それで何かあっても大丈夫だといえるのか!』とさんざんギャーギャー言うわけです

 《すでに、過剰な政治介入をうかがわせる》

 記事解説は、《すでに、過剰な政治介入をうかがわせる》で終わっているが、別の読み方もできる。

 「退避・避難区域」決定について、菅仮免は国会事故調参考人招致で次のように証言している。

 桜井委員「次に避難区域の設定、避難指示ということについてお伺いします。3キロという、避難を当初政府は決められておりますが、これはどういう根拠、どういう経緯で決定されたのでしょうか」

 菅仮免「避難につきましては、本来なら、後程議論になるかもしれませんが、オフサイトセンターなどからですね、現地の状況を踏まえて何らかの指針が出されて、それが本部長に対して承認を求めると、そういう形になるのが本来のルールであると思いますが、残念ながら、オフサイトセンターはその時点を含めて機能をいたしておりませんでした。

 そこで原子力・保安院、そして原子力安全委員会委員長、あるいは東電の関係者に集まって貰って、状況把握をしておりました。特にこの避難については必ず原子力安全委員会、当時は班目安全委員会委員長が一緒にしていただいている時間が長かったと思いますが、そのご意見を聞きながら、最終的にその意見に添って決めたところであります

 要するに班目原子力安全委員会委員長の意見を主とした原子力の専門家の「意見を聞きながら、最終的にその意見に添って決めた」としている。

 一見専門家たちの議論・検討を冷静、合理的に指揮・統率して決定したかのように見えるが、決定過程の実際の姿は、「『どうすんだ』『どうすりゃいいんだ』」、あるいは、「『どういう根拠なんだ!』『それで何かあっても大丈夫だといえるのか!』」といった冷静、合理的な指揮・統率とは正反対の冷静さを欠いた、指導者としては理性を失った非論理的な指揮・統率を展開させていたわけである。

 狼狽した姿さえ浮かんでくる。

 このこととは別に国会事故調参考人証言とテレビ会議録画映像発言とは相互対応した一つの姿を炙り出している。

 国会事故調参考人証言では、「そのご意見を聞きながら、最終的にその意見に添って決めたところであります」と言っているが、総理大臣が任命を受けることになっている原子力災害対策本部会議を指揮・統率する原子力災害対策本部長は断るまでもなく最終責任者の立場に位置している。

 最終責任者である以上、最終決定に関してはそこに自身の判断とその判断に対する責任がなければならない。

 だが、「最終的にその意見に添って決めた」という言葉には菅自身の判断を窺うことができない。

 菅自身の判断が不在だから、当然、その判断に対する責任意識など探りようがない。「退避・避難」は首相指示として行なっている。指示する以上、そこには指示者の判断の介在が必要不可欠となる。原子力の専門家の判断に従って、私が指示を出しますでは、自身の判断がないばかりか、責任の所在を原子力の専門家に預けることになって、何のための最終責任者か意味を失う。

 いわば最終責任者の自覚、責任意識の自覚を欠いていることから、自身の判断とその判断に対する責任意識を欠いた言葉となったのだろう。

 もし菅が最終責任者の自覚を持っていたなら、「彼らの意見を参考にして、最終的に私が判断しました」と言ったはずだ。

 そう言ってこそ、首相指示は責任の所在が明らかになる。

 東電テレビ会議録画の武黒フェロー証言菅発言である、「『どうすんだ』『どうすりゃいいんだ』」、あるいは、「『どういう根拠なんだ!』『それで何かあっても大丈夫だといえるのか!』」という言葉にも、原子力の専門家の意見を参考にした自身の判断に賭ける最終責任者としてのリーダーの姿はなく、第三者の判断にのみ依存しようとする、リーダーにあるまじき他力本願の姿しか浮かんでこない。

 特に、「それで何かあっても大丈夫だといえるのか!」という発言は、「何かあっても大丈夫だといえ」る絶対的な確証が証明されない限り自ら判断できないという意味となるばかりか、相手を信用も何もしていないにも関わらず、責任保証を相手に求める矛盾した言葉となる。あるいは責任の所在を自身にではなく、相手に置く矛盾した言葉となる。

 当然、その言葉は最終判断回避と責任回避を対応意識としていることになる。

 東電テレビ会議録画の武黒フェロー証言から浮かんでくる菅の姿というのはリーダーとしての自らの判断もない、責任意識もない姿が象徴的に現れているシーンとなっているということである。

 自らの判断もない、責任意識もないリーダーは他人に判断を任せ、責任まで任せて責任転嫁を専らとする。

 そして国会事故調参考人招致発言がこのことの明確な傍証になっているということである。

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政局の手段と化した民自公3党合意「社会保障と税の一体改革」

2012-08-06 11:12:44 | Weblog

 ――自民・公明党の消費税増税案賛成は解散を勝ち取って政権復帰を果たす道具に過ぎない――

 元々谷垣自民党総裁は消費増税法案成立と引き換えに衆院解散を確約させる「話し合い解散」を求めていた。民主党内消費税増税反対派の動きと参院与野党ねじれ、そして野田内閣30%前後の支持率低迷を睨んでの戦術であったろう。

 野田政権からしたら、党内反対派と参院与野党逆転情勢から、自民党を与野党修正協議に引き入れ、社会保障制度改革で妥協してでも消費税増税案を成立させる決意でいた。

 だとしても自民党の解散要求に内閣支持率から言って、簡単には確約を与えることはできない。当然、解散についてはその場凌ぎに耐え、修正協議の合意を目指すことになる。

 対して公明党は消費増税法案否決・解散総選挙の構えを基本姿勢としていたが、選挙をするにしても自民党の協力を得なければ、勢力拡大は覚束ない事情を抱えていたため、当初拒否していた修正協議に自民党が応じると、公明党も土壇場になって参加を決めた。

 いわば自民党と同じく、解散を条件とした消費税増税案賛成・成立の戦術転換を図ったということなのだろう。

 こうして与・野党同床異夢の3党修正を開始、6月15日(2012年)、民主党、自由民主党、公明党の3党は「社会保障・税の一体改革に関する確認書」に合意、3党合意に基いて修正・追加された社会保障・税一体改革関連法案は6月26日、衆議院本会議に於いて賛成多数で可決、参議院に送付された。

 では、自民党が模索していた法案成立協力引き換えの衆院「話し合い解散」はどうなったのだろう。自民党の要求に屈して解散・総選挙に打って出たなら、勝ち目はないどころか、野田政権は2009年総選挙の歴史的勝利とは真逆の大惨敗さえ予定表に組み込んで置かなければならない状況に立たされているのである。

 7月2日、小沢元代表とそのグループが離党、新党「国民の生活が第一」を結成し、なお一層、総選挙を行った場合の党勢の縮小・衰退と政権を手放す事態が視野に入ってきた野田政権にしたら、いくら自公が参院で生殺与奪の権を握っているとは言え、消費税増税法案成立、ハイ、解散ですの確約とはいかない。

 解散回避の思いが参院採決先延ばしの戦術に出たに違いない。1日でも先延ばししていたなら、内閣支持率が少しでも上がるかもしれない、上がったなら、選挙に有利に働くと根拠のない一縷の望みを託して。

 先延ばしとは、自民党が求める8日採決、あるいは「お盆前採決」に対し8月20日以降採決の提案である。

 池口民主党参議院国会対策委員長「消費税率引き上げ法案などを、お盆前に採決することは難しい。党内に、法案への反対論がないと言えばうそになるし、自民・公明両党以外の各党が、早期採決に反対していることも考えないといけない。

 参議院の特別委員会で、今月16日と17日に質疑を行ったうえで、20日の週に採決したい」

 野田首相があれ程「不退転」を言い、「決める政治」を言っていながら、それらの決意に反して「決める」ことの先延ばし戦術に出た。

 但し自民党側には消費税増税法案参院賛成と引き換えに野田政権が解散に応じる確約を示さなければ、自民党側から野田政権を解散に追い込む奥の手がある。3党合意破棄、参院消費税法案反対である。

 8月1日、小泉進次郎自民党青年局長を始めとする若手衆院議員7人が党本部で谷垣禎一総裁と会い、3党合意破棄、参院法案否決を求めた。

 勿論谷垣総裁は直ちに応じなかったが、解散の確約がなければ、こういう手もあるんだぞという牽制の演出であろう。
 
 同じ8月1日に野田首相が支持母体である古賀連合会長と会談。平成25年度予算編成に意欲を示した。

 翌日の8月2日午後の谷垣自民総裁の記者会見。

 谷垣総裁「首相の足元の状況を見ると、来年度の予算編成なんておやりになる力はもう残っていない。足元をよくごらんになる必要がある。

 (民主党の求めに応じて自民、公明両党が予算編成にも協力するのかの質問に)俺にけんか売っているのかという気持ちを正直、持っている」(MSN産経

 いつまでも解散の確約をしない野田首相に対して相当に頭にきている。

 大体が野田首相が先延ばしを謀ったからといって、解散回避の展望が開けるわけではない。自民党が奥の手一歩手前でちらつかせている衆院で内閣不信任案、参院で問責決議案を提出した場合、どちらも可決される可能性は否定できない。

 但し、衆院で諸費税増税案その他に賛成をしておきながら、解散の確約がないからといって、衆院内閣不信任案、参院問責決議案を提出するというのはどこかおかしい。

 新党「国民の生活が第一」の小沢代表が批判したが、当然の反応であろう。

 8月2日、〈共産、社民、みんなの野党3党が国会内で幹事長・書記局長会談を開催、今国会での消費増税関連法案の成立を阻止するため、参院での法案採決の前に衆院に内閣不信任決議案を提出すべきだとの認識で一致、3党はこの後、共同提出を目指し、新党「国民の生活が第一」、きづななどに党首会談を呼び掛けた。〉(時事ドットコム

 翌3日午後、「国民の生活が第一」やみんなの党など野党7党の党首らが会談、消費税率引き上げ法案の成立を阻止するため、法案が採決される前の内閣不信任決議案提出に合意した。

 「MSN産経」記事は、自公を除く野党7党の内閣不信任決議案提出合意の、〈「陰の主役」は「国民の生活が第一」の小沢一郎代表だった。〉と書いている。

 消費税増税反対、その法案成立阻止の姿勢を主張していた以上、持てる政治力を駆使した当然の動きである。

 この野党7党の不信任案提出に自民党が内閣不信任案を出すまでもなく乗ったとしたら・・・・・。

 乗った場合の可決の可能性は野田首相の解散回避の是が非でもの欲求を打ち砕くことになる。
  
 いわば解散回避の前に不信任案提出回避を計らなければならなくなった。まさしくその場凌ぎの戦いとなっている。

 同じ8月3日の記者会見――

 城島民主党国対委員長「何が何でも20日以降だと言っているわけではない。自民党は『8日の採決だ』と言っているが、日程の協議をすることはやぶさかではない」(NHK NEWS WEB

 野田首相も呼応した。8月5日、広島県福山市で記者団に対して。

 野田首相「今の国会でいちばん大事な法案は社会保障と税の一体改革に関連する法案だ。自民党にも公明党にもご苦労をおかけしながらまとめたもので、しっかりと成立させることが最優先だ。

 お盆明けとかお盆の前とかいろいろな議論があるが、自民党や公明党もいろんな事情もあるだろうから、柔軟性をもって対応しようということで認識が一致した。

 (「国民の生活が第一」を始めとし他野党7党内閣不信任決議案共同提出の合意について)

 大事なことを先送りしないで『決められる政治』ができるのかという、大変、厳しい状況なので、当然、与党内がしっかりまとまり、心ある野党と連携しながら、粛々と否決するのがわれわれの姿勢だ」(NHK NEWS WEB

 先送りしない「決められる政治」と言いながら、先送りを図ったことを狡猾にもゴマカシている。

 そして同じ5日、自民党 独自に不信任案提出の動きに出た。

 これは野党7党内閣不信任決議案共同提出の動きに対して、それに乗るのではなく、逆の形を取るための動きであると同時に民主党に対するなおさらの牽制であろう。

 だが、野田首相が消費税増税法案参院可決、法案成立を優先して、自民党に対して解散を確約した場合、自民党は提出を見合わせるだろうし、野田首相側にしたら、内閣不信任案賛成可決という不名誉は回避可能となる。

 解散を確約しなければ、3党合意破棄、参院採決反対か内閣不信任案提出で内閣総辞職というわけにはいかず、解散せざるを得なくなり、どちらに転んでも同じ選択が待ち構えている。解散確約、「話し合い解散」に持っていった方が泥をかぶる量が少なくて済む。

 このように民自公の動きを見てくると、3党合意「社会保障と税の一体改革」は醜いばかりに政局の手段と化している。

 目的が政局手段と化すのは動機自体に怪しいものを含んでいるからだろう。言っている通りに社会保障の持続可能性、国民の安心、現役世代と将来世代の公平性の確立等を真に動機としていたなら、政局の手段とすることはできないはずだ。例え野党側が政局の手段としたとしても、不退転の野田首相は発言通り不退転を示すことによって相手の政局に乗ることはできないはずだ。

 公明党の山口代表はここに来て3党合意を尊重し成立を図るべきだと言っているが、元々は消費増税法案否決・解散総選挙の構えを基本姿勢としていたのである。それを選挙で自民党の力を必要とする手前、自民党に引きずられた。

 公明党の“不退転”も自民党の政局次第の無節操であることを既に証明済みである。

 そこにいくら美しい言葉を連ねて素晴らしい絵を描こうとも、「社会保障と税の一体改革」を政局の道具とするような野田政権、自民党、公明党に満足な「政治は結果責任」の実現を求めようがない。 

 最もこのような見方を間違っているという向きもあるだろうが、いずれは正体を曝すことになるに違いない。

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森本防衛相の「想像していた以上に」なかなかの役者だと思わせるオスプレイパフォーマンス遊覧試乗

2012-08-05 12:12:03 | Weblog

 我が日本の森本防衛相が訪米、日本時間の8月4日未明、ワシントン郊外の国防総省でパネッタ国防長官と会談したあとオスプレイに約1時間試乗、その安全性を確認した。

 《防衛相“想像以上に飛行が安定”》NHK NEWS WEB/2012年8月4日 9時5分)

 1時間試乗して安全性を確認できるということは最初からその安全性に疑いもないことを前提としているからだろう。

 乗用車の試乗販売展示会に出かけて、一回り試乗、なかなかいい車だと契約するのは、最初からその車の安全性を前提としているからだ。

 要するに森本オスプレー試乗は安全性を確認するための試乗ではない。安全性を確認すると称したパフォーマンスに過ぎない。実質は遊覧試乗といったところだろう。

 パフォーマンスの遊覧試乗だというのに、「想像していた以上に飛行が安定していた」とは、なかなかの役者だ。政治家の中には菅や野田首相や仙谷や前原といった役者が揃っているが、民間評論家出身の森本防衛相までが役者だとは、隅に置けない。

 隅に置けない役者同然だから、防衛相として政治の表舞台に立つことができたのかもしれない。

 試乗後の記者会見。

 森本防衛相「想像していた以上に飛行が安定していて、短距離で離着陸するので、全体としては市街地にあまり大きな影響を与えることはないだろう。

 私が乗っただけで沖縄の人たちを説得できるとは思わないが、今月中、できるだけ早い時期に沖縄に行き、仲井真知事に説明したい」

 パフォーマンスに過ぎない約1時間の遊覧試乗を以ってその安全性をオスプレー配備に反対している地元首長や地元住民に保証できると考えている根性の点でも、「想像していた以上に」なかなかの役者だと思わせる。

 根性はときに図々しさを必要とする。森元首相の根性の場合、図々しさが優っているようだ。100%中、90%は図々しさが占めているに違いない。

 森本防衛相パフォーマンス遊覧試乗の間のオスプレイの飛行はヘリモードでの離着陸や、ヘリモードから水平固定翼への変換と水平飛行、その逆の飛行、そして高度を下げて地上近くでホバリング態勢に入り、着陸して直ちに離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を行ったりしたそうだ。

 要するにこれまでの墜落等の事故を設計のミスではない、機体上の欠陥ではない、操縦などの人為的ミスだとして公表している人為的ミスの内容通りに条件づけた飛行は試していない。

 ミスした操縦なのだから、真似しなくてもいいと言うかもしれないが、オスプレイの2001年から2012年までの11年間の事故発生件数は40件だそうで、これらの事故はオスプレイが機体上の欠陥は抱えていないとするなら、全て人為的ミスとなって、あまりにも発生頻度の高い人為的ミスの誘発は機体上の安全性の裏に隠れた何らかの欠陥、あるいは欠陥を隠した安全性が誘発していると考えないと、あまりにも多過ぎて不自然である。

 このことを証明する記事がある。《オスプレイ“小さな操縦ミスも事故に”》NHK NEWS WEB/2012年7月14日 11時50分)

 アメリカ国防総省の関係機関である国防分析研究所でオスプレイの性能に関する分析を行い、2003年に評価書を纏めたレックス・リボロ元分析官がNHKのインタビューに応じて明らかにしたという。

 レックス・リボロ元分析官「沖縄の空港周辺を飛行しているかぎりは、現在、普天間基地で運用されているヘリコプターより安全だ。

 (但し)通常の航空機と異なり、オスプレイの場合は、パイロットの小さなミスが大事故という結果をもたらすことは当初から明らかだった。特に戦場で使用された場合に事故が懸念される。

 (米軍・モロッコ軍合同訓練中のモロッコ墜落事故は)回転翼を動かすスイッチを数分の一秒、長く押したために発生したものだ。パイロットのミスではあるが、ひどい操縦だったとは言い切れない。

 オスプレイの事故発生率は今後、悪化していくだろう」――

 「パイロットのミスではあるが、ひどい操縦だったとは言い切れない」「回転翼を動かすスイッチを数分の一秒、長く押した」だけで合同訓練中の米兵2名死亡・2名重症の墜落事故を起こす人為的ミスは機体上の安全性の裏に隠れた何らかの欠陥の存在を考えなければ理解できないはずだ。

 あるいは欠陥を隠した安全性を考えなければ、理解できない。

 とすると、レックス・リボロ元分析官が「沖縄の空港周辺を飛行しているかぎりは、現在、普天間基地で運用されているヘリコプターより安全だ」と言っていることは、「特に戦場で使用された場合に事故が懸念される」と言っていることと併せて考えると、訓練時や戦闘時のような急旋回、急降下、急上昇を伴わない飛行をしている限り、あるいは急旋回を伴った急降下、急旋回を伴った急上昇といった操縦を行わない飛行をしている限り、そのような限定条件下では現運用のヘリコプターよりは安全だする趣旨の発言となる。

 この趣旨からすると、森本試乗は安全性を保障された試乗ということになって、まさしくパフォーマンス遊覧試乗そのものだったと言うことができ、この表現は妥当性を得る。
 
 但し沖縄空港周辺飛行が常に急旋回や急降下、急上昇を伴わない好環境の飛行条件を常に約束するのだろうか。次の記事がその懸念をもたらす。

 《オスプレイ:「弱点」指摘…米軍系研究所、03年に意見書》毎日jp/2012年07月14日 02時33分)

 再びレックス・リボロ元分析官の登場である。この記事ではレックス・リボロ博士(68)となっている。

 元空軍パイロットで米国防総省の国防分析研究所(IDA)でオスプレイの分析官だったレックス・リボロ博士が同研究所のもとでオスプレイの危険性に触れた8ページの意見書を纏めた。 

 国防総省の責任者はオスプレイ開発に否定的な意見書の受け取りを最初は拒否した。

 〈リボロ氏によると、マニュアルには角度を変えて飛行モードを切り替える際の規定が明確に定められているが、戦闘任務や実戦を想定した訓練では規定を超えた急な切り替え操作を迫られる局面があり、墜落の危険性もあるという。〉――

 レックス・リボロ博士(7月11日の毎日新聞の取材に)「平時に飛ぶ限り何の問題もないが、戦闘任務では事故が続くだろう」

 要するにオスプレイーは戦闘任務向きではない、民間任務向きだと言っている。

 レックス・リボロ博士(日米両政府の説明には)「事実の歪曲(わいきょく)がある」

 どういうことかと言うと、〈米海兵隊は離着陸時に両翼のエンジンが同時停止した場合、降下による空気抵抗で回転翼を回転させ、揚力を利用して着陸するオートローテーション機能があると説明してきた。

 しかし、試験飛行では落下速度を十分に抑えることはできず、墜落を防ぐためエンジンを再起動せざるを得なかったという。〉――

 実際のエンジン停止の場合、オートローテーション機能は役に立たないということである。

 レックス・リボロ博士「『オートローテーション機能はないが、両エンジンが止まる可能性は極めて低い』と沖縄の人に説明すべきだった」

 班目原子力安全委員会委員長の福島原発事故海水注入時の、「再臨界の可能性はないが、ゼロではない」の発言同様に、「両エンジンが止まる可能性は極めて低い」としても、ゼロではないはずだ。

 このゼロではないとする根拠は記事の次の記述から証明できる。

 〈ヘリは急降下した場合、回転翼による下向きの風と下降することによって生じる地面からヘリに吹き上げる風がぶつかって「渦巻き状態」(VRS)と呼ばれる不安定な状態に陥る。とくにオスプレイは二つの回転翼があるため、より複雑な気流が発生し、操縦不能になりやすいという。〉――

 このことは明らかに機体上の欠陥である。この機体上の欠陥に、「回転翼を動かすスイッチを数分の一秒、長く押」す条件が重なった場合、墜落が起きないと保証できるだろうか。

 〈地面からヘリに吹き上げる風〉が大した風でなければいい。そこに強風という悪条件が重なった場合、操縦不能は最悪の影響を受けるはずだ。

 沖縄は台風地帯である。台風の大雨を受ける前から、強い風の影響を受ける。いわば大雨が降っている時間よりも強風が吹いている時間の方が遥かに長い。

 穏やかな風ばかりを提供してくれるとは限らない気象条件下での飛行の機会が操縦不能の可能性をゼロとしないはずだ。

 また、台風という条件下で急旋回や急上昇、急降下、急上昇、あるいは急旋回を伴った急上昇、急降下といった訓練時、戦闘時のような飛行を強いない保証があるのだろうか。

 モロッコ墜落事故は人為的ミスだとしているものの、風が影響していることを森本防衛相自身が米側の説明として発言している。一度ブログに使ったが、6月26日の記者会見。

 森本防衛相「(フロリダの墜落について)射撃訓練中、プロペラを上向きと前向きの中間の位置で飛行している最中に墜落し、炎上した。

 (モロッコの墜落について)プロペラを上向きから前向きに傾ける動作を行いながら、追い風を受ける方向に旋回したことで、機体がバランスを崩した」

 モロッコの墜落は風の影響を原因の一つとしているが、両事故とも、プロペラが垂直方向と水平方向の途中にある飛行時点での事故となっている。

 ここに操縦上の欠陥、もしくは弱点があり、風という条件が加わると、操縦不能に陥りやすいことの証明であろう。

 以上見てきたようにオスプレイは機体上の欠陥、もしくは弱点、操縦上の欠陥、もしくは弱点を抱えている。このような機体上・操縦上の欠陥、もしくは弱点と同じ条件を課さないたかだか1時間程度の試乗を以て安全性が確認されたとすることはできないはずだし、遊覧飛行だと言われても反論はできない。

 例えば強風の日を選んで、プロペラを垂直方向と水平方向の中間の位置に置いた状態で急旋回や急降下、急上昇、あるいは急旋回を伴った急降下、急上昇の飛行実験や、米側はオートローテーション機能を有していると言っているのだから、飛行中に両エンジンを停止して、降下による空気抵抗で回転翼を回転させ、揚力を利用して着陸する実験を何回か行なって見るべきだろう。

 そういう過酷な条件下の試乗を行なって何事もなかったとき初めて、「想像していた以上に飛行が安定していた」と言うべきである。安全性を前提とした安全性確認のパフォーマンス試乗ではないことになり、役者であることを免れることができる。

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福島原発事故対応に於ける菅の大罪は3月15日政府・東電統合本部設置情報一元化が象徴している

2012-08-04 13:18:07 | Weblog

 ―2010年9月民主党代表選挙での間違えた選択が菅政権の東日本大震災に於ける地震・津波対応、福島原発事故対応の混乱を招いた―

 少し前の7月24日(2012年)の記事になるが、菅政権下で首相補佐官を務めていた細野豪志環境相が福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)のヒアリングで、菅が日本を救ったと発言していたという。

 《「菅元首相は日本を救った」と細野環境相》MSN産経/2012.7.24 23:45)

 民間事故調がホームページで公開した発言だそうだが、インターネット上を探したが、見つからなかった。

 細野環境相「菅直人元首相は何の躊躇(ちゅうちょ)もなく『撤退はありえない』と言った。日本を救ったと今でも思っている」

 素晴らしい判断力だと思う。

 細野は7月15日(2012年)日曜日のフジテレビ「新報道2001」に福島の川内村遠藤村長と共にテレビ中継出演していた。国会事故調のメンバーを務めていた野村修也中央大法科大学院教授がスタジオ出演していて、政府の現場に対する過剰介入等の不適切な対応が原発事故の混乱を招いた一面があるといった趣旨の指摘に対して、次のように功罪相半ばを謀っている。

 細野環境相「当時の専門家としてのですね、関わり方に不明確な点があった部分はあったと思います。つまり現場の作業をやっていいる所長を始めとした皆さん課せるべき部分(皆さん課せるべき部分=任せるべき部分)と東電の本店が介入すべき部分、そして政府の班目委員長を始めとした技術者がアドバイスすべき部分、そこが半ば渾然一体となっていて、役割分担が不明確であったことは問題であったと思います。

 ただ、その一方で、政府の介入が問題だったとのみの指摘があるのですが、トータルで見ると、私はそうではないと思う部分があると思っています。残念ながら役に立他なかったものはありましたけども、例えば、電源車ですとか、水源車を大量に現地に送ることができたのは政府のバックアップがあったからです。

 コンクリートポンプ車というものを現地に送りましてプールへの放水を本格的に行うことができるようになりました。これは非常に大きかったんですね。

 で、そこについては政府がバックアップしたことが非常に私はプラスの効果をもたらしたと思います。

 そん中で最大の反省点は何かということを申し上げたいと思います。それは当時の原発の状況に目を奪われる余りですね、福島の皆さんが当時どういう状況だったのかということに対する想像力なりですね、そこに対する、本当の意味でのしっかりとした情報提供というのは私は疎かだったと思います。

 改めて今川内村に来ていてですね、この福島に来るたびに、そのことをですね、思い出します。

 ですから、それが一番大事で(手を上下に振って強調する)、そういう皆さんにどういう情報を出し、何ができたのかということを政府として相当深刻な検討が必要だと思います」

 情報提供に疎漏があった、的確・適切な疎漏のない情報提供が一番大事な肝心要なことだと言いながら、電源車や水源車、コンクリートポンプ車を手配し、現地に送ったといった、政府の役割としては二次的な補助行為に過ぎないことを論(あげつら)って、過剰介入を免罪しようとしする矛盾を平気で演じている。

 菅が補佐官等に指示して手配させれば片付く問題であり、各関係自治体や住民に対する肝心の情報提供という政府自身が専念しなければならない役割を疎かにしたのでは政府としての意味を失う。

 だが、細野にはこのことは気づいていない。

 コンクリートポンプ車について言うと、「スポニチ」(2011年3月17日 23:21)記事によると、三重県四日市市の建設会社が3月17日、所有する、旧ソ連チェルノブイリ原発事故封鎖に活躍した重機と同型のドイツ・プツマイスター社製コンクリートポンプ車を原発への放水に利用してほしいと国に申し出たのが発端となっている。

 細野と共に中継出演した遠藤川内村村長が原発事故を知った経緯について発言している。

 遠藤村長「富岡町の町長が避難指示が出た、その避難先として川内村に避難させてくれと依頼を受けたとき、原発事故を知った。3月12日の朝の6時半頃だった」

 富岡町の避難先だった川内村も全域が警戒区域と緊急時避難準備区域に指定されて全村が避難することになった。情報非共有、情報停滞がどれ程に自治体や住民を混乱に陥れたことだろうか。

 福島原発事故対応の菅の功績を多くが東電全面撤退阻止と3月15日政府・東電統合対策本部設置による情報一元化を挙げる。 

 福島原発事故対応検証チームの「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)は菅の東電撤退阻止を「東電を現場に残留させたことが菅氏の最大の功績」とし、政府・東電統合対策本部設置を「危機対応のターニングポイントになった」と大評価している。

 同じ検証チームの「政府の事故調査・検証委員会」は、一部必要人員を残した部分撤退を計画していたとし、東電の全面撤退そのものは否定したものの、統合対策本部設置を、「結果的には情報共有が図られるようになり状況は改善されたが、事故対策本部の在り方には問題を残した」と、統合対策本部設置そのものは評価している。

 「国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(国会事故調)は東電の全面撤退に関しては、「東電が全員撤退を決定した形跡は見受けられない」と否定、統合対策本部設置に関しては一切評価せず、「政府の本来の役割は住民避難などオフサイト(原発外)対応にあり、事故対応の責任は第一義的に事業者にある」と結論づけている。

 私自身は何度もブログに書いてきたが、東電の全面撤退に関しては、菅のマスコミとのインタビュー時の発言と国会事故調参考人証言時の発言が異なっていること、清水社長と官邸で会う前に現場の吉田所長と電話で会話していて、吉田所長の「まだやれます」という言葉を聞いていながら、清水社長の全面撤退との食い違いを指摘して、その意志の確認を怠ったまま、菅が「撤退はあり得ませんよ」と言ったのに対して、清水社長が「ハイ、分かりました」と簡単に応じたと国会事故調で証言していることから、清水社長には実際には全面撤退の意志はなかったと見ている。

 3月15日政府・東電統合対策本部設置の適切性を見てみる。

 3月11日(2011年)14時46分に東日本大震災発生。
 3月11日15時42分に東電、政府に対して原子力緊急事態発生の原災法第10条通報。
       16時45分に東電、政府に対して一段上の原子力緊急事態発生の原災法第15条通報。
 3月15日5時35分に東電本店に政府・東電統合対策本部を設置。

 原災法第15条通報の3月11日16時45分から3日半後の政府・東電統合対策本部設置である。

 いずれの検証チームも設置の早い・遅いを見ずに、情報の一元化に役立ったとか、役立たなかったとか評価している。

 東日本大震災発生の約5カ月近く前の2010年(平成22年)10月21・22日に当時の菅首相を原子力災害対策本部本部長とする中部電力浜岡原子力発電所第3号機、原子炉給水系故障による原子炉冷却機能喪失、放射性物質外部放出事態想定の、政府、地方自治体、その他関係事業者等による「平成22年度原子力総合防災訓練」を行なっている。

 この訓練は「原子力災害対策特別措置法」第13条に基づいて国に義務付けている。

 訓練とは万が一の本番に備えた危機管理を頭に記憶させ、身体に覚えさせる学習機会である。当然訓練とは言え、第13条は本番となった場合と同様に原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の内閣府設置、原子力災害現地対策本部(本部長:副大臣)のオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設や原子力防災センターと呼ばれている)内設置を規定している。
 
 だから、原子力災害対策特別措置法に基づく「原子力緊急事態宣言」の発出が東電の原災法第15条通報の16時45分から午後19時3分と約2時間20分も遅れたこと自体が奇異なことである。

 遅れた理由を当時の海江田経産相が証言している。

 海江田元経産相「私は、あのー、事務方から、あー、報告受けましたから、えー、すぐに、うー…、まあ、そのー、すぐに(原子力緊急)事態宣言を、オー、発して、貰えるものだと思っておりました。

 法律の、おー、“たてつけ”と申しますか、ま、そういうことについて、えー、質問がありました。ま、うまく答えられなかったと、言うこともあって、ま、時間がかかったと思います」(TBSテレビ「官邸初動5日間 原発事故緊迫の舞台裏 初動を検証」

 2010年(平成22年)10月21・22日の「平成22年度原子力総合防災訓練」に関係大臣として参加していたのは大畠経産相である。自身が知らなかったとしても、事務方に問い合わせれば、如何なる法律に基づいた原子力緊急事態宣言の発出か直ちに理解できたはずだが、総理執務室の隣の首相秘書官室で秘書官たちが六法全書を開いて探し、探し当てた条文のコピーに時間を取られたという。

 インターネット上から捜し出して、ペーストアンドコピーで直ちにパソコンに取り入れて印刷すれば短時間で済むというのにである。

 あるいは直接印刷に回すこともできるが、パソコンに保存しておけば、必要箇所を即座に検索可能となる。

 何れにしても、菅の頭から平成22年度原子力総合防災訓練で行った原子力緊急事態宣言発出が抜け落ちていた。

 そもそもの出発点から、判断能力を欠いていたのである。

 原子力安全・保安院のHP記事――《News Release 平成22年度原子力総合防災訓練の実施について》(2010年〈平成22年〉9月29日)には次のような記述がある。

 〈原子力施設において、放射性物質が環境に大量に放出されるおそれが生じるなどの緊急事態の発生に備え、原子力災害対策特別措置法に基づいて、国、地方公共団体、事業者等が一体となって、周辺住民の安全確保等のための応急対策を講じることとされています。

 本訓練は、同法第13条等に基づき、こうした緊急事態対応の訓練を行うものであり、今年度は静岡県の中部電力株式会社浜岡原子力発電所における緊急事態を想定した訓練を10月20日(水)及び21日(木)の2日間実施します。〉・・・・・

 〈訓練実施項目

 内閣総理大臣による緊急事態宣言発出、政府原子力災害対策本部及び現地対策本部の設置などに係る訓練〉・・・・・

 文部科学省のHPには、当たり前のことだが、「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」のモニタリングシミュレーション実施の記述がある。

 問題は原子力安全・保安院のHPに記述がある、訓練で行ったはずの原災法第17条に基づいた現地対策本部の設置である。

 原災法第17条は次のように規定している。〈原子力災害現地対策本部の設置の場所は、当該原子力緊急事態に係る原子力事業所について第12条第1項の規定により指定された緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンターのこと)(事業所外運搬に係る原子力緊急事態が発生した場合その他特別の事情がある場合にあっては、当該原子力緊急事態が発生した場所を勘案して原子力災害対策本部長が定める施設とする。 〉・・・・

 〈事業所外運搬に係る原子力緊急事態〉とは、核燃料等を外部運搬中に事故等を原因として放射能が漏出・拡散する事故を指すのだろう。

 いずれにして、〈特別の事情がある場合にあっては、当該原子力緊急事態が発生した場所を勘案して原子力災害対策本部長が定める施設〉に「原子力災害現地対策本部」を設置しなければならないと規定している。

 福島原発に関わるオフサイトセンターは福島第1原子力発電所から約5km、福島第二原子力発電所から約12kmの大熊町内の地点にあるという。

 この大熊町の「原子力災害現地対策本部」を中継地点として、官邸内「政府原子力災害対策本部本部」、経済産業省、関係市町村、福島第1、第2原子力発電所、及び東電本店等がテレビ会議システムによって情報共有を図る構造となっていた。

 菅が原子力災害対策本部本部長として陣頭指揮に当たった平成22年度原子力総合防災訓練でもテレビ会議システムを活用、情報共有や情報交換を行なっている。

 HP、《平成22年度原子力総合防災訓練実施要領》(平成22年10月)には次のような記述がある。
 
 〈テレビ会議システムの活用

トラブル通報後、原災法第10条に基づく通報事象に至る可能性があると判断された後の初動態勢の確立及び原子力緊急事態の発生後の緊急事態応急対策の実施等に際して、テレビ会議システム等を活用して現地と中央の意見交換を行う。〉・・・・・

 〈放射性物質放出のおそれがなくなった後の緊急事態解除に関して、政府対策本部、静岡県浜岡原子力防災センター及び関係地方公共団体の間でテレビ会議システムによる情報共有及び意見交換を行う。このうち、住民防護対策に関する政府現地対策本部長からの指示に係るテレビ会議と放射性物質放出のおそれがなくなった後の緊急事態解除に係るテレビ会議には、原子力安全委員会も参加する。〉・・・・・

 〈現地対策本部長から関係地方公共団体の長に対する避難等の指示は、静岡県浜岡原子力防災センター(オフサイトセンターのこと)と静岡県庁をテレビ会議で結んで実施する。〉・・・・・

 以上のことから、県庁もテレビ会議システムの連絡網に組み込まれていることが分かる。

 この広範囲な即時性を持たせた連絡網は放出放射線量によっては拡散範囲が即座に拡大していく放射能の特性に対応した措置であろう。

 オフサイトセンターの活動状況について、東電のHP――《福島第一原子力発電所事故の初動対応について》東京電力株式会社/2011年〈平成23年〉12月22日)が次のように記述している。
 
 〈(5)オフサイトセンターでの活動状況

 当社から行われた3月11日16時45分の原災法第15条報告により、約2時間後の同日19時03分に、内閣総理大臣から原子力緊急事態宣言が発令されるとともに、官邸に原子力災害対策本部が、現地の緊急対策拠点であるオフサイトセンターに原子力災害現地対策本部(原子力災害合同対策協議会)が設置された。

 オフサイトセンターは、原子力災害発生時には情報を一元的に集め、緊急時の対応対策を決定する重要な機関となっている。このため、その開設時には、福島第一、第二原子力発電所からの要員派遣の他、本店からは原子力・立地本部長等が派遣され、即座に判断できる体制としていた。〉・・・・・

 要するに浜岡原発事故想定の平成22年度原子力総合防災訓練でも、オフサイトセンターが原子力災害発生時の情報一元的収集と緊急時対応対策決定の重要な機関となっていたはずであり、原子力災害対策本部本部長として訓練に参加した菅はこのシステムを学習していなければならなかった。

 例え失念していたとしても福島原発事故発生と同時に記憶に呼び覚まさなければならなかった。

 (上記東電HP)〈内閣総理大臣から原子力緊急事態宣言が出された19時03分にはオフサイトセンターへの要員派遣の準備は整っていた。しかしながら、オフサイトセンターの原子力災害現地対策本部は、地震による外部電源の停電や非常用ディーゼル発電設備の故障の影響もあって当初活動ができない状態となっており、一部要員を除き、オフサイトセンターが開設された翌12日まで待機した。(武藤原子力・立地本部長は待機の間に大熊町、双葉町を訪問し、状況説明等を行っていた。)〉・・・・・

 オフサイトセンターは官邸や福島原子力発電所、東電本店、福島県庁その他をテレビ会議システムで結んで情報一元的収集と緊急時対応対策決定の重要な機関と位置づけている以上、何事も緊急を要する事態にあった、あるいは緊急事態の拡大・悪化を想定しなければならない状況にあった以上、活動できない状態に陥ったなら、原子力災害現地対策本部本部長の菅は、原災法第17条が例外として規定しているようにオフサイトセンターを別の場所に移動し、そこを情報一元的収集と緊急時対応対策決定の重要な機関に替えるべきだった。

 だが、そうしないで、翌日の3月12日まで待機した。菅の頭は福島現場視察で一杯だったのかもしれない。

 (上記東電HP)〈(3月)12日3時20分に活動が開始されたとの情報を受け、当日中には合計28名(14日は最大で38名)が同所での活動を実施した。本店緊急時対策本部から発電所支援のために来ていた原子力・立地本部長以下5名の本店の要員についても、活動開始以降12日中にオフサイトセンターへ入っており、上記人数に含まれている。

 オフサイトセンターの当社派遣要員は、当社の使用ブースに設置され、地震等による被害を受けず機能が維持されていた当社所有の保安回線を介するTV会議システムや保安電話等を活用して、発電所及び本店の対策本部との間でリアルタイムの情報共有を図ることが出来た。

 その後、原子力災害の進展に伴い、オフサイトセンター周辺の放射線量の上昇や食料不足などに伴い、継続的な活動が困難との判断がなされ、15日に現地対策本部は福島県庁に移動した。〉・・・・・

 なぜここに首相官邸が加わって、〈リアルタイムの情報共有〉を図っていなかったのだろう。加わっていたなら、少なくとも3月15日に福島県庁に現地対策本部を移動するまでの間、〈リアルタイムの情報共有〉を図ることができていたはずである。

 だが、菅は官邸に座っていて、情報が上がってこないと騒いでいた。

 また、例え福島県庁に現地対策本部を福島県庁に移動したあとも、県庁とオフサイトセンターはテレビ会議システムデ繋がっていたはずだから、官邸と福島県庁をテレビ会議システムで直ちにつなげれば、大熊町オフサイトセンターの代用となり得たはずだ。

 政府事故調の報告書にはテレビ会議システムに関する官邸の認識を次のように記述している。

 〈官邸5階のメンバーの中で、東京電力本店が福島第一原発とテレビ会議システムでつながっていることを知っていた者はおらず、統合本部は同システムを活用するとの意図で提案されたものではなかった。これらのメンバーは、3月15日早朝、東京電力本店に出向いて初めてテレビ会議システムの存在を知ったのであり、統合本部の設置は、結果的に予想以上の情報格差の改善効果をもたらしたと認められる。〉・・・・・

 要するに偶然が幸いした政府事故調の「結果的には情報共有が図られるようになり状況は改善されたが、事故対策本部の在り方には問題を残した」統合対策本部設置評価であり、民間事故調の「危機対応のターニングポイントになった」統合対策本部設置評価ということになる。

 首相官邸は平成22年度原子力総合防災訓練で行った、オフサイトセンターを中継地点とした官邸、原子力発電所と中電本店、静岡県庁との間のテレビ会議システム活用の情報一元的収集と緊急時対応対策決定を福島原発事故という本番で何ら活用しなかった。

 平成22年度原子力総合防災訓練で行った原子力緊急事態宣言の発出を始め、SPEEDIモニタリングシミュレーション、テレビ会議システム活用の情報の一元化管理、オフサイトセンター設置の原子力災害現地対策本機能活用等々が菅の頭から全てすっぽりと抜け落ちていたことが、原子力災害対策本部本部長として自らが担わなければならなかった情報共有や情報発信等の情報管理システムの的確・迅速な構築以前に3月12日早々に現場を視察するといった過剰介入を招いた。

 あるいは放射能避難住民に対する的確な情報提供を怠ることになった。

 SPEEDIに至っては福島原発事故発生直後から文科省が放射性物質拡散予測を行なっていながら直ちに公表せず、菅はその存在すら知らなかったと言っている。

 政府は3月23日にSPEEDIの予測結果を一部のみ公開、5月2日になって公式に公開を開始しているが、一事が万事と言っていい程のあまりにも遅過ぎる情報公開であった。

 全ては菅自身が合理的な判断能力を欠いた指導者であったことが原因の危機管理無能力に発している。

 既に触れたように政府事故調のテレビ会議システムの活用に関する報告は、官邸5階のメンバーは〈3月15日早朝、東京電力本店に出向いて初めてテレビ会議システムの存在を知った〉と記述しているが、この「官邸5階のメンバー」は菅も入っているはずだ。菅が知っていたなら、他のメンバーも知ることになる。

 だが、菅は政府事故調の証言よりも後の国会事故調の参考人証言で、3月15日に東電本店に乗り込んだ時の様子を次のように発言している。

 「入ってみると、大きなテレビ会議のスクリーンが各サイトとつながっていて、24時間、例えば第2サイトとの状況もが分かるようになっていました。

 ですから、あとになって、私があそこで話したことはそこにおられた200名余りの皆さんだけではなくて、各サイトで聞かれた方もあったんだろうと。私はそれを公開するとかしないとかの話がありましたけどけれども、私自身は公開して頂いても全く構わないというか、私は決して止めるわけではありません」

 前段のところでは、さもテレビ会議システムの存在を知っていたかのように話している。

 だが、後段のところで、「あとになって、私があそこで話したことはそこにおられた200名余りの皆さんだけではなくて、各サイトで聞かれた方もあったんだろうと」と言っているように、「あとになって気づいたのだが」と言いそうになって、前段と矛盾することに気づいたのだろう、「気づいたのだが」という言葉を咄嗟のところで飲み込んだ。

 「気づいたのだが」という言葉を付け加えなければ、後段の意味は全体として通らないことになる。

 政府事故調の報告にあるように東電本店に乗り込んでから一定の時間が経過後、テレビ会議システムの存在を知ったのである。

 その部屋にいた東電幹部を怒鳴り散らすことができたのも、第1現場にも繋がっていることを知らぬが仏でできたことと疑うこともできる。

 飛んでもないウソつきであるということばかりか、こういった程度の低いウソつきを国家の指導者に奉ったことは国の悲劇である。2010年9月民主党代表選挙で小沢一郎元代表を選択すべきだったが、民主党は満足な判断能力を有しないウソつきを代表に選択した。

 代表選択の間違った判断能力が未だ罷り通っているからだろう、菅が国を救ったという言辞を許すこととなっている。

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野田政権の消費税逆進性対策複数税率拒絶反応は国民の安心よりも国家財政優先

2012-08-03 12:11:33 | Weblog

 ――消費税逆進性対策は複数税率であるのとないのとでは安心が違う――

 消費税増税には反対である。社会保障制度改革推進法案は「受益と負担の均衡の取れた持続可能な社会保障制度の確立」を謳っているが、その持続可能性自体が何ら保証がない。

 再びリーマン・ショッククラスの不況に見舞わないとも限らないし、東南海地震といった3連動型地震、日本の中枢を麻痺させるに違いない首都直下型地震に襲われた場合、その復興・再建に国家財政だけでは賄い切れず、一方で緊縮政策、もう片方で消費税やその他の税を増税せざるを得なくなって勢い向かうことになる国のサービス低下は社会保障制度にも影響して、その持続可能性を断ち切らないと誰が言えるだろうか。

 このデフレ不況下で今日の安心となる満足な雇用も満足な収入も保障されていない、多くの若者を始めとする低所得層にとって、社会保障制度で少しぐらいの安心を手当されたからといって、根本的且つ本質的な安心の手当とならないばかりか、社会保障制度の持続可能性を謳ったその持続性の安心が社会状況や経済状況によって崩れて、安心が安心でなくなった場合、二重の裏切りを受けることになる。

 先ずは十分な雇用と十分な収入が生活の本質的な支えとなって保障することになる今の安心を担保してから、今の安心によって十分相殺可能となる消費税増税の痛みを求め、社会保障制度の安心を訴える手順を取るべきだろう。

 そのような手順こそが、国民により強い安心を与えるはずだが、野田政権はその逆を行こうとしている。

 世論調査で支持率が上がらない理由がここにあるのではないだろうか。

 新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ参議員から、「人をおちょ食った答弁しかしない、あなたの答弁はいらない」と拒絶反応の肘鉄砲を食らわされた、あの安住財務相が8月1日の参議院特別委員会で、消費税増税の逆進性対策として「複数税率」(軽減税率)の導入に否定的な考えを示したという。

 このことはただでさえ今の安心から見放されている低所得層の国民に対してなお一層の安心を奪う残酷な仕打ちとならないだろうか。

 《財務大臣 複数税率に否定的》NHK NEWS WEB/2012年8月2日 21時20分)

 安住財務相「食料品のほぼすべてに導入した場合には、8%に引き上げた際に1兆円台半ばから2兆円程度、10%で2兆円台半ばから3兆円程度の、いわば『大きな浸食』があると推計される(ことになるんですね)」

 「複数税率」(軽減税率)を導入した場合、税収が“大きく侵食される”と言っているが、政治の無策がつくり出した格差社会の一現象としてある無視できない数の低所得層の安心が“大きく侵食される”ことにはとんと目が行かないらしい。

 これは国家税収にしか目が行っていないことの反映としてある国民無視の姿勢であろう。この国民無視は「国民の生活が第一」とはなっていないことの最たる証拠となる。

 岡田副総理も安住財務相と連携プレーに及んでいる。

 岡田副総理「食料品全体にかければ、消費税率1%分を超える規模の税収が減ることになる。税率を5%引き上げると言いながら、結果的には4%上げたことにしかならず、その分、社会保障を減らすのかという議論になる」

 安住財務相と同じ仲間の同じムジナだから右へ倣えで税収にばかり目が行っている。

 「社会保障を減らすのか」と言っているが、社会保障の安心が十分な雇用と十分な収入が保障することになる今の安心に取って代わることができるわけでもないし、前者の安心自体の持続可能性が絶対的ではないにも関わらず、自分たちの社会保障制度を葵の御紋であるかのように振り回す程度の低い判断能力を示している。

 要するに社会保障制度でこれだけの安心を与えます、これだけの安心を約束しますと言うことができるということは、不十分な雇用と不十分な収入を前提として制度を考えているからだと言える。

 だからこそ、社会保障制度の安心を売りつけることができることになる。

 その証拠となる記事がある。《低所得者に5千円給付 政府が年金支援給付金法案を閣議決定》MSN産経/2012.7.31 11:42)

 2015年(平成27年)10月の消費税10%増税に合わせて低所得年金受給者に対して一定程度の給付金を支給する等の「年金生活者支援給付金法案」を7月31日に閣議決定したと書いている。

 ●年間所得が77万円以下の低所得の年金受給者らに保険料を納めた期間に応じ月最大5千円を
  支給する
 ●受給額の「逆転現象」が起きないよう、所得が年77万円超で87万円未満の約100万人にも
  給付を行う
 ●保険料免除の手続きを取っていた年金受給者には、期間に応じ月最大1万666円を別途支給す
  る。
 ●支給対象年金受給者
  老齢基礎年金受給65歳以上のうち――
  (1)市町村民税が家族全員非課税
  (2)年金収入を含む年間所得合計が77万円以下

 ●一定所得以下の障害基礎年金の受給者約180万人、遺族基礎年金の受給者約10万人にも給付
  金を支給
 ●障害1級の年金受給者は月6250円、そのほかは一律月5千円。いずれの給付金も通常の年金
  と同じように2カ月ごとに支給される

 以上であるが、この記事には触れていないが、「NHK NEWS WEB」記事には、〈障害年金や遺族年金の受給者のうち、年間の所得が単身の場合でおよそ460万円以下の人など、一定額を下回る人に対しても給付金を支給する〉、「毎日jp」記事には、〈給付金は年間所得約460万円以下の障害基礎年金と遺族基礎年金受給者にも支給する。金額は一律で、障害1級の人は月6250円、同2級と遺族基礎年金受給者は月5000円。190万人が対象となる。〉と書いてあるが、この年間所得の「460万円以下」の意味が分からない。

 一般の低所得年金受給者は年間所得が77万円以下か、77万円~87万円未満が対象であって、年間所得460万円以下近辺とあまりにも開きがあり過ぎる。

 年間所得77万円以下、あるいは77万円~87万円未満の低所得年金受給者の存在は一般的には十分な雇用と十分な収入が保障されなかったことの反映としてある、低所得年金であるはずである。

 いわば格差社会がつくり出した一つの縮図とも言える。

 この低所得年金受給者に対する安心の支給は不十分な雇用と不十分な収入しか保障できていないことを社会的前提とした社会保障制度であるからこその構図を取っているはずだ。

 十分な雇用と十分な収入の保障可能な社会を構築できていたなら、こうまでも社会保障制度の安心を売り込む必要はない。

 社会保障制度が約束する安心はあくまでもセーフティネットの安心でなければならないということである。雇用と収入から手に入れる根本的・本質的安心とは似て非なるものである。

 十分な雇用と十分な収入の保障による安心を第一意義とせずに社会保障制度の安心に重点的に取り組むのは主客転倒も甚だしい。

 3党合意自体が主客転倒の産物でしかない。

 例えば新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ参議院議員が国会質疑で、「平成22年の一世帯当たりの平均所得は538万円で、ほぼ23年前の水準。平成6年のピーク時から比べると、130万円も落ち込んでいる」と問題視していたが、だからと言って、その落ち込みのセーフティネットとして社会保障制度を充実させるのか、あるいは平均所得自体を上げる経済政策を打つのか、どちらを優先させるかというと、明らかに後者であろう。

 森ゆうこ議員も後者の文脈で所得再分配機能の強化を訴えていた。

 もし数の力で消費税増税案を成立させたとしても、根本的且つ本質的な安心とはならない社会保障の安心を謳って国の税収増を優先させるよりも、例え3兆円の税収減を招こうとも、軽減税率導入によって不十分な雇用と不十分な収入を強いられて手に入れることができない今の安心のせめての埋め合わせとすべきではないだろうか。

 政府は10%増税後は「給付付き税額控除」を導入方針だそうだが、給付や税還付が低所得者の食料品消費額を十分に補う額であったとしてもその安心は十分な雇用と十分な収入の本質的・根本的な安心を直接的に保障するものではない。

 逆に食料品その他に対する軽減税率導入によって直接的に可処分所得を増やす形にすることができる安心を与えることによって消費行動を促した方が、経済活性化とそのことによる税収増を促すことになるように思える。

 とにかく優先すべきは社会保障の安心よりも、十分な雇用と十分な収入保障の安心であり、そのような安心に国民の多くは飢えているはずである。

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国民にとっての本質的な安心は野田首相が描く社会保障制度充実のバラ色の安心ではない

2012-08-02 12:18:59 | Weblog

 8月1日(昨日)のブログでもこの発言取り上げたが、野田首相は自らの社会保障制度改革の効能を次のような持論としている。

 7月31日(2012年)「社会保障と税の一体改革特別委員会」に於ける新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ議員の質問に対する国会答。

 野田首相「一体改革はこうした状況(各種の社会的悪化状況)を改善し、分厚い中間層を復活させることを目指し、若者や女性や高齢者や障害者など働く希望を持てる全ての人に就労促進等の強化を図ること、あるいは短時間労働者に対する厚生年金と健康保険の適用を拡大すること、国民健康保険の保険料をや介護保険の高齢者の保険料の経営者所得者軽減強化など行なって、国民が安心して生活できる、重層的なセーフティネットの構築を図って行きたいと考えています」

 いわば社会保障制度改革によって、「国民が安心して生活できる」社会をつくるのだと言っている。

 そして消費税増税は決して経済を損なう要因とはならず、その税収を社会保障費に当てることによって、逆に消費を生む動機となるということを持論としている。

 野田首相「消費税の引き上げ、それは国民の皆さんにとってもご負担をお願いをする話でありますけども、社会保障にすべてを当てる話しであって、将来に対する安心というものは確保することができるならば、それは安心して消費に回る。経済活動におカネが回っていくという可能性も十分に期待できる、と思っています」

 消費税増税の税収を財源とした社会保障制度が「安心」という名の将来的なバラ色の世界の提供を約束している。

 二つの発言を総合すると、社会保障制度の充実が「就労促進等の強化」や消費動機となって現在の安心を生むと同時に将来的な老後の安心をも生むと。

 その安心が放つバラ色が国民一人ひとりの瞳に鮮やかなピンク色で輝き映っているのだろうか。全身に希望の力を漲らせる程の輝きで以って。

 次の記事が野田首相の社会保障制度が約束してくれる現在及びバラ色の世界から、そのバラ色の輝きを奪ってしまう。

 《製造業 中期的に国内生産縮小》NHK NEWS WEB/2012年8月1日 18時24分)

 日本政策投資銀行が今年6月に纏めた調査だそうだが、長引く円高を背景に中期的には国内生産の縮小方針の製造業が増加しているという。

 製造大企業の今年度計画の設備投資金額
 
 国内――昨年度実績比+12.2%
 海外――昨年度実績比+31.5%

 好調なエコカーやスマートフォン関連の生産を強化することが要因となっているというが、設備投資額は国内向けよりも海外向けが断然上回っている。

 この傾向は次の数値も証明している。

 中期的な国内生産態勢見通し(同製造業)

 「強化する」――18.7%(前年32.8%)
 「縮小する」――11.8%(前年4.5%)

 日本政策投資銀行「海外進出した企業が、部品も現地のメーカーから調達する傾向を強めており、産業の空洞化が進み、雇用に悪影響を及ぼさないか懸念される」――

 記事はこの生産拠点の海外移転=国内産業の空洞化は長引く円高を背景としているとしているが、急激な少子高齢化の加速がもたらす労働人口の減少を見据えた動きでもあるのではないだろうか。

 野田首相は同じく昨日の「社会保障と税の一体改革特別委員会」で、現在の所得格差も自らの社会保障制度がその是正に役立つとバラ色の夢を描いた。

 野田首相「あの、社会保障そのものがですね、(所得)再分配機能、があると思いますが、その中でも、特に今回の改革の柱というのは給付は高齢者中心、負担は現役中心という、その構図を改めて、給付・負担両面に於いて、世代間の公平を図っていくという中で、特に給付の面で、人生前半の社会保障、子ども・子育てのところに力を入れていく、充実をしていくということでございますので、あの、(所得格差の)解消にはつながっていくと、基本的には、あのー、考えておりますし、先程、所得税の等のことがお話がございました。

 これは25年度の税制改正の中で所得税や資産課税について再分配機能強化という視点で改革を行なっていくことについては、その3党間の合意をしたところでございます」

 所得税や資産課税強化に所得再分配機能を持たせるが、負担と給付の世代間の公平化と、「特に給付の面で、人生前半の社会保障、子ども・子育てのところに力を入れていく」ことによって、社会保障そのものが所得再分配機能を持つことになって、所得格差解消の有力な手段になるとバラ色の約束をしている。

 充実した子ども手当・子育て手当の支給を受けて、親が安心して子どもを育てることができても、その子どもが成長して社会に出て得る安心は就労機会であり、給与の保証であろう。

 就労機会が満足に恵まれなかったり、恵まれたとしても、非正規の就労機会に限られ、安価な人件費に応じた保険料の積立で、老後の受給として所得比例年金と最低保障年金を組み合わせた公的年金制度から、最低額の月7万円程度を受け取ることができたとしても、その安心を目指して生きるわけではあるまい。

 最低額の月7万円程度はどうにか生活ができるとしても、あくまでも止むを得ない人生の結果であって、目指すべき目標では決してない。

 何よりのバラ色の安心は成人として社会を生きる間の十分な労働報酬を伴った就労の機会に恵まれることであろう。決して社会保障制度が与える「就労促進等の強化」や負担と給付の世代間公平化等々が与えるバラ色の安心ではないはずだ。

 例え満足な子ども支援・子育て支援を受けなくても、社会に出て働けば、人間としての安心、生活していけるという安心を得ることができるという社会的了解事項が社会保障制度が約束する安心を上回るはずだ。

 社会人としての十分な労働報酬を伴った就労の機会が、また十分に生活をしていくことのできる老後の年金を約束する。政府が年金制度を食い物にしたりの余程酷いことをしなければの話だが。

 高度成長時代には満足な子ども支援・子育て支援はなかったが、就労機会が保障され、社会に出て働けば、十分に生活していけるという社会的了解事項が存在した。

 だが、今は社会に出て働けば、十分に生活の安心を得ることができるという社会的了解事項は一部の人間のみに効く約束事となり、少なくない国民がその了解事項から見放されている。

 社会保障にその代わりとなる安心を与える役目を担わせようとしている。出産手当や子ども支援・子育て支援に始まって、高校授業無償化、そして低所得者に対する消費増税時の逆進性対策として一定程度の現金の給付。さらに年金と所得を合わせた額が年間77万円~87万円未満の年金生活者に月額5000円を基準とした給付金の支給等々、手厚い(?)安心を約束しようとしている。

 約束していると書かずに、約束しようとしているとは、税との一体改革だと言いながら、税だけが決まり、社会保障制度改革の全体像は未だ決定していないからなのは断るまでもない。

 より多くの国民に就労機会が保障され、社会に出て働けば、十分に生活していけるという社会的了解事項が与える安心が保障されなければ、いくら社会保障制度で安心を与えようとしても、本質的な安心とはならない、ダメだということである。

 出産手当や子ども支援・子育て支援の充実を受けて多くの女性が出産意欲を高めたとしても、生まれた子どもが成長して社会に出て働くことになったとき、社会保障に依るものではない、自律的経済活動に支えられた就労機会が保障されなければ、前以て予防線を張って出産意欲を抑える方向に動かないとも限らない。

 野田政権は7月31日、環境、医療、農林漁業の3分野を中心とした2020年度までの平均で実質2%成長を目指す成長戦略を盛り込んだ「日本再生戦略」を閣議決定した。

 生産拠点の海外移転=国内産業の空洞化の加速に逆らって、この流れをどのくらい逆転し、現在の若者に、そして今後社会に出て若者となっていく世代に十分な労働報酬を伴った就労の機会をどれ程に約束し、安心を与えることができるのだろうか。

 このことを言い換えると、現在3人に1人と言われる年々増えていく非正規社員の数を減らし、逆に正規社員を増やして安心を与えることにどれ程に役立つ「日本再生戦略」となるかである。

 また社会保障制度が所得再分配機能を果たすことよりも、それ以上に企業が自らの利益を労働者に対する報酬として還元する十分な所得分配機能の役目を担わなければならない。

 だが、国際競争力確保の名の下、人件費を抑制し、社内留保に回す力学を企業倫理の主流としている。

 その結果の非正規雇用者の増加となって現れた。

 野田政権の「日本再生戦略」は菅政権が2010年6月閣議決定、成果確認項目は約1割程度に過ぎない「新成長戦略」の焼き直し項目が多く、新味に欠けるとか、具体策がないと批判するマスコミもある。

 そもそもからして社会保障の安心だけを約束するのではなく、十分な労働報酬を伴った就労の機会を保障可能とする経済回復を以て安心を約束する材料とすべきだが、安心の材料を前者に重点を置いている認識からして、その合理的判断能力を疑わざるを得ず、合理的判断能力を欠いているということなら、この能力が基本となるリーダーシップ(=指導力)にしても期待できないことになり、マスコミが批判するように野田政権の「日本再生戦略」は菅前政権の「新成長戦略」同様の成果しか期待できないように思えてくる。

 要するに本質的な安心とはならない社会保障の安心だけを訴えて終わることになりかねない。

 いや、合理的判断能力を書き、リーダーシップ(=指導力)を欠くということなら、その安心さえ当てにならないかもしれない。

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森ゆうこ「国民の生活が第一」参議員7月31日社会保障と税の一体改革特別委員会質問と不甲斐ない政府答弁

2012-08-01 13:40:16 | Weblog

 7月31日(2012年)「社会保障と税の一体改革特別委員会」で、新党「国民の生活が第一」の森ゆうこ議員が質問に立った。NHK中継から、文字化してみた。

 森ゆうこ議員「『国民の生活が第一』の森ゆうこでございます。明日、私共『国民の生活が第一』は党本部をお披露目させていただくことになっております。

 えー、それから、国民の皆様に対してしっかりと我々の、えー、目指すべき国民の生活が第一の政治を、えー、ご理解頂くように活動してまいりたいというふうに思います。

 あの今程、公明党議員から、もうこの議論は熟したというふうなお話がありましたけども、(声を強くして)飛んでもない話だと思います。

 重要な論点について全く真摯なご答弁がございません、というふうに思いますので、えー、その重要な論点についていくつか、私はすべて、えー、総理に対して質問させていただいておりますので、ご答弁を頂きたいというふうに思います。

 先ず、デフレ下での消費税増税で、ホントーに税収が増えると総理はお考えでしょうか」

 野田首相「えー、足許の経済状況によりますと、1月から3月期、実質成長率の4.7%という形で緩やかに回復傾向にあると思います。

 但し、復興需要を背景にしておりますので、えー、25年度はまさに民需主導の経済成長にと移行させていかなければならないと考えております。

 ま、今日も閣議決定で日本再生戦略を纏めさせていただきましたが、しっかり経済対策を講じてですね、デフレから脱却し、経済の活性化を図って、えー、今回のご審議いただいている一体改革の法案、その付則の18条に経済の好転と書かれておりますので、そうした状況を実現できるように全力を尽くしていきたいと考えております」

 森ゆうこ議員は「デフレ下での消費税増税で税収が増えるのか」と二つの条件設定を行なって聞いた。対して野田首相は現在まだ増税していない「デフレ下」という片方の条件設定のみで、いわばもう片方の「消費税増税」という条件設定を抜いて、税収が増えることもあり得るとトンチンカンなことを答えている。

 だから、森ゆうこ議員の次の発言を引き出すことになった。

 森ゆうこ議員「私の質問に、あのー、きちんと、ストレートにお答えいただきたいんですが、総理はデフレの状況下で増税した場合に税収は増えるとお考えなのか、デフレ下では税収は増えないとお考えなのか、どちらなのか、ご答弁いただきたい」

 野田首相「ま、現時点に於いて、デフレから脱却できていませんけども、先程申し上げたように経済的な見通し等々を含めてこうした見通しを前提にして消費税率を引き上げた国・地方併せてやった場合に平年度増収未確認(見通し?)は2015年度時点で5%相当額は13.5兆円となりますので、税収確保につながると、考えております」

 5%から10%に消費税増税した場合の計算上の税収見込額13.5兆円を以って税収確保につながると答えている。消費税増税がもたらす一種の強制的な徴収による機械的増収を聞いているのではなく、消費税増税を受けた場合の個人・企業等を含めた自律的経済活動による増収が期待できるか聞いているのであって、自律的経済活動が消費税増税によってブレーキが掛かった場合、消費税増税による税収見込額もマイナスの影響を受けることになるが、野田首相は消費税を上げることにのみ目がいっているらしい。

 森ゆうこ議員「あの、デフレ下でも税収が増えると今、おっしゃったのですか。今のご答弁、ちょっと理解ができないのですが、デフレ下でも増税して税収は増えると、いうふうにお答えになった。その前提でのその数値を、えー、言われたんでしょうか」

 委員長「安住財務大臣」

 森ゆうこ議員「(着席した状態で手を前に出して遮るようにして)いや、安住さん、いらないですよ」

 安住財務相「ちょっとだけ」

 森ゆうこ議員「いいです。あなたの人をおちょ食ったような答弁いらないです」

 委員長「指名しております」

 安住財務相「あのー、小泉政権下で、えー、2003年度から2006年度に於いて、これは、あの、GDPデフレ下はマイナス、先生ご存知のように、であったわけでございますが、その間、税収は好景気ということで、上がっておりますので、デフレだからと言って、あのー、税収は下がるわけではないというふうに私共は思っております」

 野田首相と同じ趣旨の不甲斐ない答弁となっている。

 1988年の竹下内閣時に3%の消費税法が成立、その年の12月30日に公布、翌年の1989年4月1日に施行。村山内閣に内定していた3%から5%への引き上げを1997年4月1日に橋本内閣が実施。

 2001年4月から2006年9月までの任期の小泉政権下では消費税増税は行なっていないのだから、「デフレ下での消費税増税」という条件設定は存在しなかったにも関わらず、その条件抜きにデフレ下でも増収はあると、景気が良くなればそうなるのが当たり前のことを言っている。

 まさしく人をおちょ食った答弁そのものだが、安住は森ゆうこ議員の非難さえ気づいていないのではないのか。

 森ゆうこ議員「今、私は、デフレ下で、このように消費増税、大増税をしても、税収は増えるんですかって言ったんです。だから、あなたの答弁いらないって言ったんですよ。

 人をおちょ食ったようなね、答弁の繰返しは全く不愉快です、もう、答弁いりません。総理に聞いています。

 デフレ下で大増税をして、ホンートーに税収は増えるんですかと聞いているんです。どちらなんですか。

 どうしてこういうことをはっきりと(テーブルを指で叩いて)答えないんですか。デフレ下でも税収は増えるのか、増えないのか。私はそのことだけを聞いてるんですよ。

 先ず、そのことにきちんとお答えください」

 もしかしたら、腹の中で、「ボンクラ揃いめっ!」と舌打ちしながら罵ったかもしれないが、罵って当然。

 野田首相「先ず現状に於いてデフレから脱却しておりませんけれども、いっとき37兆円に落ち込んでいた税収は今44兆円台にまで回復しております。

 一方で、消費税の引き上げ、それは国民の皆さんにとってもご負担をお願いをする話でありますけども、社会保障にすべてを当てる話しであって、将来に対する安心というものは確保することができるならば、それは安心して消費に回る。経済活動におカネが回っていくという可能性も十分に期待できる、と思っています」

 同じ答弁の繰返しであって、森ゆうこ議員の質問に対する直接の答とはなっていないばかりか、「将来に対する安心というものは確保することができるならば」以下は推測を混じえた可能性に過ぎない。あるいは最悪の希望的観測に過ぎないかもしれない。

 急速な少子高齢化が労働人口の減少に直結して招く経済の縮小が、少子高齢化に対する政治の無策も重なって、社会保障制度の持続可能性を食い潰す危険因子となった場合、「将来に対する安心というものは確保することができるならば」といった可能性、あるいは希望的観測などは吹っ飛んでしまうかもしれない。 


 森ゆうこ議員「ま、何回質問しても、このシンプルな質問にさえ、きちんとお答えいただいていない。デフレ下で大増税して、消費税は増えるのか。あ、ごめんなさい。税収が増えるのか、増えないのか。

 この認識についても、お答えいただかない。全く残念でございます。命賭けて、命賭けてやってらっしゃるんじゃないですか。心から、心から、心からお願いしているんじゃないんですか。

 何でこういう質問にきちんと答えないんですか。

 じゃあ、お聞きしますけども、デフレ解消しなければ、消費税増税はしないんですか」

 野田首相「あの、先程も申し上げたとおり、デフレ下でも税収は上る可能性はあります。先程申し上げたとおり、消費税だけで13.5兆円。実質1.1%の成長の慎重な見通しでつくっておりますが、そうなります。

 加えて、経済に対する、あるいは将来に対する不安はなくなったときに、それは負担だけで見なければ、私は経済の活性化にもつながると、先程申し上げたとおりであって、デフレ下でも税収は伸びる可能性はあるということでございます。

 で、よろしいでしょうか」

 森ゆうこ議員「デフレ下に於いて大増税して税収が伸びた。そんな歴史はありません。デフレ下に於いて消費大増税をして、税収が落ち込み、さらに財政が悪化し、僅か1、2年で、財政の、おー、赤字が3倍、約3倍、程度に増えた。

 これは例えばアメリカのフーバー政権であります。そして日本の歴史に於いてもあります。

 こういうシンプルな説明、えー、質問にきちんとお答えいただかないと、いう、いけないと、いうふうに思いますし、何か、あのー、増税推進派の議員がですね、あの、地元に帰って、デフレ下、あー、では、絶対増税しないんだ。だから、大丈夫なんだ。

 それはウソですよ。今おっしゃったでしょう。デフレは解消しなかった場合には、消費税増税は絶対しないのかといった質問に対しては、ま、そうではないと。デフレ下でも消費税増税するんだと。

 ホントーに大丈夫なんですか。で、総理は、総理は、今、国民がどのような生活、苦しんでいるのか、ホントーに国民の皆さんの生活の実感をご存じないでしょうか」

 野田首相「あの、デフレ下で税収は上がるのかどうかという話に私はお答えを致しました。デフレ下という中で増税をするという言い方をしていません。

 それをちょっと質問と食い違っているというふうに思います。あくまで18条が、これ法律案の中に出ていまして、経済の好転という条件があります。それは、実質名目成長率であるとか、物価等々、よく勘案しながらよく判断をすると。

 そういうことでございますんで、ちょっと前提の質問の条件と違うと思います」

 前提を間違えているのは野田首相の方だということに気づかない。「デフレ下での増税」という二重の条件設定の内、相変わらず「増税」という条件設定を抜かしている。

 森ゆうこ議員「いやー、呆れましたね。私の質問はデフレ下で消費大増税をして、その場合に税収は伸びるんですかと、いうことを何度も繰返して質問をしているにも関わらず、自分、あの、総理ご自身が全く違う答弁をやっていると。

 あの、もう一回説明して、何なんですか、その答弁。何言ってるんですか。ホントーに。

 で、あのー、今の私の質問に全然答えてないじゃないですか。

 これは厚生労働省が発表を致しました。えー、社会、あのー、一世帯当たりの平均所得金額の年次推移でございます。えー、パネルをご覧頂きたい。

 皆さまのところでは資料をお配りさせていただいておりますが。えー、平成22年の一世帯当たりの平均所得は538万円でございます。ほぼ23年前の水準。

 平成6年のピーク時から比べますと、130万円も落ち込んでおります。子どものいる世帯では、658万円と。

 これも約20年前と同じ水準、ということで、平成8年のピーク時に比べますと、同じように130万円減っているわけです。生活が苦しいと答えた世帯、過去最も61.5%。特に子どものいる世帯では、70%の世帯が生活が苦しいと回答しているわけでございます。

 こういう実態を総理はご存じないんでしょうか。なぜこういう状態になっていると思うんですか」

 野田首相「え、急速な少子高齢化、あるいは雇用や家族、地域社会のあり方が変化をしています中で、所得格差についても拡大をしている傾向が見られると思います。

 あの、今資料をお示しいただきましたけども、えー、貧困格差問題が大きな課題となっていると認識をしております。一つには非正規雇用者の数が、割合が増えてきているということ。それから生活保護受給者の数が増えてきていること等々、他の数字からもこうした傾向は認められると思います。

 また、えー、相対的貧困率は、97年には14.6%であったものが、2009年には16.0%になっています。子どもの貧困率は97年に13.4%デあったものが、09年には15.7%に上昇をしています。

 今回の一体改革はこうした状況を改善し、分厚い中間層を復活させることを目指し、若者や女性や高齢者や障害者など働く希望を持てる全ての人に就労促進等の強化を図ること、あるいは短時間労働者に対する厚生年金と健康保険の適用を拡大すること、国民健康保険の保険料をや介護保険の高齢者の保険料の経営者所得者軽減強化など行なって、国民が安心して生活できる、重層的なセーフティネットの構築を図って行きたいと考えています」

 この答弁を行なっている間中、殆ど原稿に目を落として熱意もなく読み上げている。お笑い芸人ふうに言うと、「評論家かー」と言いたくなる。単に現状を説明しているに過ぎない。こういった社会的悪化状況に政治が無策、あるいは無力であったことの反映としてある悪化拡大であるという認識をどこにも窺うことができない。

 自公政権下の出来事であったとしても、そういった無為・無策・無力の政治を止めることができなかった野党の責任もある。勿論、国民にも責任はある。

 その責任意識があったなら、熱意もなく現状を書き記した文字を単に読み上げるだけといったことはできないはずだが、実際には単に読み上げただけで終わっている。

 だから、森ゆうこ議員から、「他人事(ひとごと)のような答弁」だと言われる。まさしく的確に言い当てている。 

 社会の悪化拡大状況に与野党含めた政治は無力であり、無策であり、無為であった。消費税増税して、国の税収がいきなり増えるからといって、日本の政治はいきなり力をつけることができると期待できるのだろうか。実行力のない首相ばかりが続くのである。

 森ゆうこ議員「ま、他人事のような答弁。大変呆れるんですけども、これだけ厳しい家計の状況になってるんです。別に厚生労働省から調査を報告して貰うまでもなく、我々は、国民の代表として、毎日、えー、様々なお暮らしをされている皆様から色んな声を頂き、その場に出かけていって、暮らしを見て、それで、本当に苦しい、こんな状況の中で消費税増税したら、却って大変なことになる。

 経済は落ち込み、税収落ちて、財政は悪化している。だから、我々は別なことをやろうと。国民の生活が第一の政治をやろうと、いうふうに決めたのではなかったのかというふうに思います。

 2016年、まあ、試算しますと、300万円の年収の世帯では、2016年では257万円になるんですね。こんなんで暮らしていけるんでしょうか。

 えー、ホントーに国民の生活が分かっていない。残念で仕方がありません。

 で、総理、今お答えになりました、子供の貧困でございます。あのー、前にも予算委員会で議論させて頂いたんですけども、OECD加盟諸国の中で、ま、税と社会保障の一体改革と言うのであればですね、ま、少なくとも所得再分配機能が高まる。今はOECD諸国で唯一、えー、税と社会保障で本来、えー、所得再分配機能が強化されなければ、いけないわけですけれども、逆機能と言って、却って格差が広がっているんですね。

 で、窺いますけれども、今回の税と社会保障の一体改革を行ったのち、この逆転機能、えー、社会保障の逆転機能というのは、えー、解消されるんでしょうか。具体的にお答えいただきたいと思います」

 提示したパネル「所得再分配の前後で見た子どもの貧困率の水準(2000年代中頃)」の日本の場合は――

 再分配前 12.4%
 再分配後 13.7%

 と書いてあって、子どもの貧困率は却って再分配後の方が拡大・悪化している。

 小宮山厚労相「えーと、委員ご指摘のその子どもがいる世帯の、えー、非常に所得が大きかった、それは、まあ、雇用者の所得が大きく減少したことが、えー、子ども手当による所得の増加分というか、あるわけですけども、えー、全体としてですね、今回の所得補償の中で、再三申し上げているような、全世帯対応型ということで、子ども・子育て、しっかり支援をしていく。

 そうした中で、えー、結果として、その、えー、再分配機能が高まっていくというふうに考えていますし、また税の方でも、そのような、あの、対応が次第に取られて行く形をとっていくというふうに考えています」

 社会保障と税の一体改革を行えば、「結果として(所得)再分配機能が高まっていくというふうに考えています」と、単なる見通しを述べている。
 
 森ゆうこ議員「あまりにも曖昧な、漠然としたお答えで分からないんですけども、こういうふうにOECDの調査では完全に逆転しているわけですね。

 で、えー、百歩譲って大増税には反対ですけれども、最初民主党案提示されたときには、少なくとも、この所得再分配機能を高めるために高額所得者の皆さまから少し我慢をして頂いて、年金の財源に当てるとか、こういう所得再分配機能を高めることが中に入っていたわけですけれども、それを結局3党談合の中でなくなってしまいました。

 あのー、総理、ホントーに、ま、具体的にお答えください。所得再分配機能、逆機能、これ解消されるんですか」

 野田首相「あの、社会保障そのものがですね、再分配機能、があると思いますが、その中でも、特に今回の改革の柱というのは給付は高齢者中心、負担は現役中心という、その構図を改めて、給付・負担両面に於いて、世代間の公平を図っていくという中で、特に給付の面で、人生前半の社会保障、子ども・子育てのところに力を入れていく、充実をしていくということでございますので、あの、解消にはつながっていくと、基本的には、あのー、考えておりますし、先程、所得税の等のことがお話がございました。

 これは25年度の税制改正の中で所得税や資産課税について再分配機能強化という視点で改革を行なっていくことについては、その3党間の合意をしたところでございます」

 森ゆうこ議員「ま、しかし、今以てその具体像は示されておりません。すべて先送りなんです。その、一体改革と言いながら、すべて先送りでございますが、その国民会議で一体何をお決めになるんですか。

 そして、後期高齢者医療制度の廃止はもう諦めたんですか」

 安住財務相「森先生、文部副大臣をおやりになっていましたから、ご存知だろうと思います。税制改正は何もやっていないのではなくて、年度改正はこの年末にやるわけですから、あの、先送りしているわけではございません。

 その中で、あの、先生が言うように少しおカネ持ちの方の方(かた)に税金を少し納めて貰うような、工夫をしたらどうだろうかということについては、3党で、総理が今お話があったように合意しておりますから、累進率を高めるような方向で、税制調査会等が纏めていきたいと思っております」

 森ゆうこ議員「安住大臣の詭弁には私は飽きあきしてるんですよ。あの税制改正、税制改正は私は、税制改正は、あの、政府税調のメンバーでしたよ。だけどね、こういう今度言ったようなまともな議論をしてもですね、全くお答えがない。

 そしてそのまま強硬に消費税増税ありきでどんどん進んでいってしまった。ま、だから、法案が提出されたときに文部科学副大臣、もうこれ以上やることはできないと言って、辞表を出して辞めさせていただいたわけでございます。

 で、年度で(税制改正を)やりますよ。だけど、今、税・社会保障、税の一体改革で消費税のこと議論してるんじゃないですか。一体改革と言うなら、他の税にしても、きちんと議論をする。

 それで初めて、税と社会保障の一体改革じゃないんじゃないでしょうか。

 で、あの、総理、いいですか。(安住が手を上げたのに対して右手を前に出して押しとどめようとする仕草をする)本当に、もいういいですから(声を強める)。

 で、総理、総理、後期高齢者医療制度廃止、諦めたんですか。いいですよ、総理に聞いているんですよ。命懸けでやるんでしょ。命懸けでやってるんじゃないですか。総理自らお答えください」

 安住にはストーカーの気(け)があるのかもしれない。

 野田首相「あの、諦めたということじゃなくて、この国会の審議に何度も議論になってますけども、公的医療制度、あ、すみません、高齢者医療制度と公的年金制度等についてはですね、えー、合意に向けて3党で協議をすると。そういう場所で私共の主張というものをしっかりと行なって行きたいと思いますし、国民会議を、えー、開催をさせていただくときも基本的にはそういう姿勢で望んでいきたいと思います」

 森ゆうこ議員「成立の見込みはあるんですか。で、今回のこの国会では、もう審議する時間はございませんよ。

 えー、次期国会、そして通常国会。きちんとお出しになるんですか。そしてですが、最低保障年金は、えー、法案はいつお出しになるんですか」

 小宮山厚労相「総理もお答えになりましたように後期高齢者医療制度については改革会議で纏めたものを何とか出せるように調整をしておりましたが、今回は3党で合意をされましたのでそれは国民会議の中で主張して参ります。

 それから、あの、新しい年金制度についても、えー、これは24年度に出すと、いうことでやってまいりましたが、これはその前提として3党合意があり、国民会議で議論をするということになりましたので、その中でしっかりと主張させていただきたいと考えております」

 与野党の力関係が決めた、単独提出断念と3党合意への先送りであり、その力関係はのちのちの議論にも当然、影響していく。

 森ゆうこ議員「まあ、しっかりと主張をすると。つまり何も決まっていない、ということですし、えー、だから、先送りと言われても、もう否定できないわけです。

 でも、しっかりやるんだ、あの、しっかりやるんだ、必ずやるんだと、まあ、強弁をされるわけですけども、先程来、自民党、公明党の議員の皆さんの委員会の中で色々お話をされましても、まっーたく意見が食い違ってる。

 だから、社会保障については全く先送り。何も決まっていない。国民会議で何をキマ、どういう方向で決まるか分からない。

 しかも、最低保障年金に対しては先程公明党の議員の質問にもありましたけども、年金の枠外だと。えー、低所得者の、低年金の人たちに対しては枠外だと、全く出す方向とは違う方向に言っているわけですございます。

 で、あのー、中村哲治理事が本当に論理的な真摯な質問をして、えー、それに対してきちっとお答えがないんですけども、ホントーに日本は財政難何でしょうか。パネルを出してください。

 (当の中村哲士議員が隣席に座っていて、パネルをテーブル上に出す。

 「野田政権発足以降の主な対外的資金のコミット表明」

 対外融資や資金拠出、途上国支援等――16兆8133億円
 平成23年の為替介入――14兆2970億円

 合計31兆1103億円) 

 ま、野田総理が政権についてから、何回もやりますけどもね、もう世界に行って、大盤振舞い、大盤振舞いなんですよ、ホントーに、びっくりいたしますけれども、えー、大体、為替介入も入れて、合計31兆1103億円、おカネ、あるじゃないですか。

 何で先ず、今傷んだ国民の生活を、えー、再建し、そして安住大臣、被災者、えー、被災地の人たちを救おうとしないんでしょうか。

 そして、私は昨日、孫が、息子夫婦が来まして、えー、孫が泊まったんですけども、その、今朝、お嫁さんがね、こういうものを(A4版程度の髪を手に取って)、お母さんって言って出されました。保育所入所不承諾通知書でございます」

 委員長「お纏めください」

 森ゆうこ議員「理由は定員超過のため。名古屋に住んでおりますけども、大変な待機児童ということで、ま、今回ですね、3党合意――、3党の中で、えー、当初出し――」

 委員長「時間が過ぎております」

 森ゆうこ議員「分かりました。すぐ、今纏めます。当初出した、えー、総合こども園の法案、後退をしております。あの、株式会社の参入、これ削られました。

 これで(こども園が)全く増えるのかどうか、ということも申し上げて、私の質問を終わります」(以上)

 野田内閣の「社会保障と税の一体改革」は参議院に於ける野党の与党を上回る数の力が全体的な力関係を決して、その優劣が影響して後退し、変質することになった。

 既に触れたようにこの力関係は今後の国民会議でも着実に作用していく。

 野田首相にこの力関係を跳ね返すだけの指導力があればいいが、力関係に流されるだけの指導力しかない。

 当然、自分たちが当初想定した成果とは異なる成果を迎えることになるばかりか、デフレ下での増税と税収増との対立関係に影響を受けた場合、国民の負担だけが残るという悪結果を招く危険性が予見される。

 森ゆうこ議員が懸命にこの流れを押しとどめようとするが、野田政権側に聞く耳を持たないのは、国民の生活よりも税収だけに目がいっているのは答弁のその不甲斐なさからでも窺うことができる。

 労働人口の減少と経済の縮小を招くことになる急速な少子高齢化に対して政治が今以て何ら有効な対策を打ち出し得ていないことも懸念材料となる。

 いくら子ども・子育てのところに現金給付して、出産率向上を計っても、なお進行していくかもしれない消費税増税の前に萎縮し、現在のように出産意欲を損なわない保証はないし、そうでなくても、現在進行中の少子高齢化を是正する抜本策とならないことは目に見えている。

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