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海上自衛隊 舞鶴基地 護衛艦隊集合訓練 2006.4.23

2007-04-20 14:40:32 | 海上自衛隊 催事

■護衛艦隊集合訓練一般公開

 海上自衛隊が年に一度実施している護衛艦隊集合訓練であるが、集合訓練撮影第一日目及び、護衛艦隊集合訓練夜間電飾に続き、一般公開の第二日目の撮影を本日特集したい。

Img_1455_1   2007年度呉基地護衛艦隊集合訓練にあわせるかたちで、2006年度舞鶴基地護衛艦隊集合訓練を特集しているが、集合訓練一番の見所といえば一般公開の行われる週末である。一部の艦艇は艦内公開もしており、一度に多くの艦を見学することが出来る。

Img_1357_1  舞鶴フェリー埠頭より撮影。左からDDG176“ちょうかい”、DD103“ゆうだち”、DD110“たかなみ”、そして潜水艦が係留されている。23日はC.ジョニー氏一行も長躯舞鶴に展開し、合同調査というかたちとなった。こういうわけで、Tさんの車輌に便乗させていただき、昨日の徒歩とはうってかわり瞬時にここに到達することができた。

Img_1368  その一段後ろ、海側(右側)からASE6102“あすか”、海上自衛隊最大の試験艦で満載排水量は6200㌧、そして先日紹介した、“くらま”、“しらね”、“はるな”と並んでいる。その後ろにはミサイル護衛艦(DDG)が四隻並べられている。

Img_1369  四列目、の艦艇、汎用護衛艦である“あさぎり”型が並ぶが、その一番海側にはATS4203“てんりゅう”が停泊している。満載排水量2750㌧の訓練支援艦で、8機の高速標的機を搭載し、4機を同時管制できる。護衛艦隊直轄艦として、僚艦の“くろべ”とともに呉基地を母港とする。なお、“てんりゅう”はイージス艦に対する訓練支援能力を有していることを特筆したい。

Img_1387_1  舞鶴基地北吸桟橋の全景。なお、舞鶴基地について詳しく書かれた世界の艦船通巻478によれば、この北吸桟橋は舞鶴基地のほんの一部であり、その向こうの山には舞鶴地方総監部、対岸の造船所の向こうには舞鶴航空基地や水雷調整所、第四海上訓練指導隊、撮影地の裏手には松ヶ崎の舞鶴教育隊や自衛隊舞鶴病院、東港側には白浜、乙島の火薬庫と舞鶴湾に岩子火薬庫などなどの施設があり、主要な20以上の施設を総称したものが、海上自衛隊舞鶴基地と呼ぶようだ。

Img_1376_1  ユニバーサル造船舞鶴造船所前に停泊する輸送艦“おおすみ”、海上自衛隊初のドック型揚陸艦方式の輸送艦のネームシップで、現在3隻が運用されている。満載排水量は14000㌧に達し、国際貢献任務の増加する海上自衛隊にとり重要な艦の一つといえる。

Img_1398_1  映画“亡国のイージス”により一躍有名となった、イージス護衛艦“みょうこう”、映画で破損した部分を修理中、というわけでは全く無いが、ユニバーサル造船舞鶴造船所にドック入りし定期整備を実施している。ユニバーサル造船には大型の船舶は入渠できるドックと、船台を一つずつ有している。本州島の日本海側には、三菱重工下関造船所や函館どっく函館造船所を除き大型船舶用の造船所が無い為、貴重である。

Img_1441  こうして、一通りの撮影をしてのち、いよいよ舞鶴基地へ。自動車用駐車場は、舞鶴市役所と北吸桟橋西側にかなり広い駐車場があり、駐車して後、基地に入るための手荷物検査などを経て意気揚々と基地に入る。丁度天候も青空がのぞいている。

Img_1445  昨日同じアングルより撮影したものであるが、天候が良いと心なしか写る艦艇も活き活きしているように見えてくる。DD153“ゆうぎり”のマストには従来型の金網のようなOPS-14対空レーダーが搭載されているが、DD156“せとぎり”とDD158“うみぎり”には板状の新型、OPS-24B三次元レーダーが搭載されている。

Img_1429 輸送艦“おおすみ”を桟橋より望む。航空母艦のような形状の甲板があるが、ここは前部が車輌甲板、後部が飛行甲板である。しかし、スマトラ島沖地震津波災害に際して、車輌用エレベータと艦内車輌甲板にローターを外した陸上自衛隊のUH-60JAを搭載したことから、折畳式ローターを有するSH-60J/Kも搭載は出来たりするのかな、と想像したりする。

Img_1457  “むらさめ”型の3インチ砲(手前)と、“たかなみ”型の5インチ速射砲、海人社の“艦載兵器ハンドブック”によれば、3インチ砲は砲弾重量6kg、発射速度毎分85~100発、射程12kmで砲重量8㌧、旋回速度毎秒60°、5インチ砲は砲弾重量31.7kg、発射速度毎分45発、射程16kmで砲重量37.5㌧、旋回速度毎秒40°とあるから、前者は対空用、後者は対地対水上に向いていることが判る。

Img_1463  イージス護衛艦“ちょうかい”。ガスタービンエンジンの特色である排気用ダクトによる巨大な上部構造物が印象的である。なお、本艦の出力は100000馬力であるが、あの戦艦“大和”が推進方式こそ違えど150000馬力、その次に大きい戦艦“長門”で80000馬力である(重巡クラスだと普通であるが)。

Img_1573  “ちょうかい”艦橋からヘリコプター護衛艦である“はるな”、“しらね”を望む。設計思想も用途も全く異なる艦艇であるが、その根底にある設計哲学の発展を見る感じである。他方で、一部の艦船専門家の意見を引用すれば、“はるな”型や“たかつき”型にあった、日本型というべき設計の独創性が近年失われているのではという声も無いではない。

Img_1467  艦艇を一通り撮り終え、舞鶴地方総監部の方へ足を運ぶ。舞鶴地方隊というと、護衛艦3隻を運用する第24護衛隊、掃海艇3隻を運用する第44掃海隊を思い浮かべるが、それだけが地方隊というわけではない。教育、後方支援全てを含め、日本海の沿岸警備を遂行させる能力を付与する為の多くの装備が地方隊を構成している。

Img_1471  地方隊とは艦艇部隊の他に警備隊、基地業務隊、衛生隊、弾薬整備補給所、造修補給所、音楽隊より編成され、舞鶴警備隊には陸警隊、港務隊、水中処分隊、そして舞鶴地方隊の場合は他に新潟基地分遣隊が置かれている。人員は、世界の艦船通巻478号の数字から、陸上勤務要員約800、掃海艇定数が完全充足で一隻40~45名×3隻、ミサイル艇が乗員21名×3隻、護衛艦“みねゆき”“はまゆき”が200名、“あぶくま”が120名(いずれも完全充足時の定員)である。

Img_1478  ミサイル艇PG824“はやぶさ”とPG828“うみたか”。対岸で整備中のPG825“わかたか”と併せ、舞鶴警備隊第二ミサイル艇隊を構成する。ちなみに当初の構想では、各地方隊に二個ミサイル艇隊を編成するというものがあったようだ。

Img_1556  護衛艦“はるな”、背負式に並ぶ二門の5インチ54口径速射砲Mk42が頼もしい。砲弾重量31.75kg、発射速度毎分17~34発、射程22kmで旋回速度毎秒25°。シースパローのような短SAMが標準装備になる80年代半ばまでは、この5インチ砲が対空戦闘で重要な役割を担ったが、同時に一門あたりの重量が58.6㌧あり、これが二門となると弾幕は凄いが重量も凄いことになる。なお、連装砲の給弾装置を流用した設計である為二つの給弾装置に各20発ずつ砲弾を内臓しているが、同時使用は故障が少なくない為、毎分28発程度で使用することが多いようだ。

Img_1502  5インチ砲の後ろに配備されているのは、“むらさめ”型以前の艦艇では標準装備であったアスロック。対潜ミサイルと紹介されることが多いが、Anti Submarine Rocketの略である。ただ、弾頭はMk46Mod5などの誘導魚雷である為、誘導装置を有するロケット(つまりミサイル)といえなくもないとか。ヤヤコヤシイ。

Img_1522_1  航空機格納庫。ヘリコプター3機を運用できるが、着艦を支援する着艦拘束装置ベアトラップ(ヘリの着艦部分を虎鋏のようなものでガッチリ固定するもので、これを使うと荒天時でも着艦できる)が二機分しか無い為、最後のは手押しで格納庫に収容するとのこと。

Img_1532  “はるな”より撮影した“しらね”、飛行甲板にはSH-60Jが置かれている。順次グレーを基調としたロービジ塗装に移行中であり、こうしたカラーのSH-60Jは姿を消してゆくことになろう。対潜哨戒の他、機銃を用いた工作船制圧任務なども付与され、新型のK型はミサイル運用能力を用いてミサイル艇対策にも用いられるとのことだ。

Img_1612  さきごろ退役した護衛艦隊旗艦“たちかぜ”。本艦の退役を以て在来型ミサイル護衛艦は5隻から4隻となり、“あたご”の就役によりイージス艦は4隻から5隻となった為、名実共に、艦隊防空の中枢はイージス艦の任務となっている。

Img_1623_1  続いて、舞鶴西港へ。前日は西舞鶴駅から徒歩で展開したが、距離があるので注意が必要だ。ここでは4隻の護衛艦が停泊しており、このうちDDG172“しまかぜ”とその隣に停泊するDD102“はるさめ”が一般公開されていた。距離もあってか見学者は疎らであった。なお、西港の“しまかぜ”を含め、この集合訓練には在来型ミサイル護衛艦5隻全てが勢揃いしていることになる。

Img_1633_1  “しまかぜ”より“はるさめ”を撮影。汎用護衛艦とはいえ、満載排水量は6200㌧に達し、ジェーン年鑑では本型をミニイージス艦と評したこともあるとのこと。なお、マストから艦首にかけて伸びている線は夜間電飾用の電球で、電球が切れていないかについての点検が大変とのことだ。

Img_1646_1_1  3インチ砲と艦橋。艦橋構造物には、20㍉高性能機関砲Mk15が搭載されている。通称CIWS,最大射程は4500㍍(ただし有効射程は1850㍍程度ともいわれる)、毎分3000発の炭化タングステン弾を発射し弾幕を張る。対艦ミサイルに対する有効な対策の一つといわれているが、近年は低空超音速対艦ミサイルの普及が始まっており、より射程の長い装備も望まれる。なお、対水上射撃も可能な新型も配備中である。

Img_1698  舞鶴西港に停泊する海上保安庁の巡視艇。400隻以上の警備救難業務用船を有し高い警備救難任務能力を有する海上保安庁があってこそ、海上自衛隊が対水上対潜対空戦闘に専念できるという意味で重要だ。写真は“すずかぜ”型巡視艇64番艇の“ゆらかぜ”。満載排水量19㌧ながら、30ノットの快速を誇る主力巡視艇である。

Img_1704_1  能登半島沖工作船侵入事案を受け建造された“つるぎ”型巡視船“ほたか”。重火器での攻撃を想定し、設計時よりダメージコントロールに考慮された巡視船で、管制式20㍉多銃身機銃を搭載、重要部分には防弾鋼板により装甲が施され、速力は公表値で“40ノット以上”、50ノット以上とも一部でいわれている。しかし、その分価格も高く、長大な海岸線にたいして本型の配備数は少ない。

Img_1715  佐世保地方隊より参加したDD128“はるゆき”と、第三護衛隊群第七護衛隊のDD155“はまぎり”の横をゆく巡視船“わかさ”。1000㌧型として28隻が3年4ヶ月で大量建造された“しれとこ”型巡視船の一隻だが、一番新しいものでも1982年3月の就役であり、一斉に老朽化を向かえ、その代替整備予算の捻出が、海上保安庁の悩みときく。

Img_1732  こうして、思いがけないものも含め、二日間にわたる護衛艦隊集合訓練見学が一段落した。現在実施中の呉基地護衛艦隊集合訓練の見学に、昨年度の集合訓練の様子がどの程度参考となるかは不明ながら、多くの艦を一度に見学するには最適の機会であることだけでも、お知りいただければ幸いである。

HARUNA

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コメント (3)
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