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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第九回):次期練習機としてのM-346,イタリア製練習機を検証する

2015-07-09 21:45:49 | 防衛・安全保障
■M-346練習機
練習機に軽攻撃機運用を想定する方式はSu-27やSu-30の脅威を想定する我が国としては難しいという視点を前回までに示したところ。

こうしますと、現在開発され入手可能な航空kにあって航空自衛隊が採用し得る将来練習機として妥当な案は、T-4練習機改良型と、海外機ではイタリアのアレニアアエルマッキ製M-346、米韓共同開発のT-50練習機、でしょう。スコーピオン練習機やホーク練習機なども一応候補に挙がりうるかもしれません、画。

M-346はイタリア空軍とロシア空軍の将来練習機計画より開始されたもので1990年代の航空機です、ただロシア空軍は軽攻撃機としての運用を重視し、練習機としての運用を重視するイタリアと温度差が生じ、結果的にイタリアとロシアの開発計画が分離、ロシアはYak-130として完成させています。

イタリアはM-346の開発に際し、イタリアが冷戦期にブラジルと共同開発したAMX軽攻撃機の部品と一部を供使させる事で設計費用を抑えると共に量産や整備基盤に部品備蓄などを効率化しました。AMX軽攻撃機は亜音速の攻撃機ですが整備費用や維持費が少なく近接航空支援などの使い勝手がよいといわれるもの。

イタリア空軍ではまず15機が配備されたほか、比較的海外での評価が高く、ポーランド空軍新練習機として2006年より検討が開始、その後災害などによる財政悪化により制式採用は2014年にずれ込みましたが8機が採用され、2010年にはシンガポール空軍がホーク練習機の後継として12機の導入を決定、2012年にはイスラエル空軍がTA-4練習機後継に30機の採用を発表しました。

練習機型に加えて軽攻撃型の提案が為されており、アフターバーナーを搭載していない事から推力に限界があると共に超音速飛行は想定されていませんが、機体には一応3tまでの装備を搭載可能、近接航空支援や航空阻止に対応し、軽装備であれば550mの滑走路で離着陸が可能です。

AIM-9Lサイドワインダー空対空ミサイルの運用能力があり近距離での空対空戦闘に対応する他、海上自衛隊も運用するAGM-65マーベリック空対地ミサイルや500ポンド爆弾、ハイドラ70ロケット弾発射器など、搭載が可能とのこと。ただ、難点はジェット練習機としては機体性能が比較的高い、というもの。

イタリア空軍ではジェット練習機としてアエルマッキMB-339と併用し運用しています。アエルマッキMB-339は1979年に運用開始した航空機で、機体重量はM-346の半分程度、ジェット練習機であるMB-339を経て高等練習機であるM-346に移行する方式を採っています。すると、無視できない問題が生じるでしょう。

この問題は、航空自衛隊のT-4練習機に当たるイタリア製の航空機はM-346ではなくむしろMB-339に当たるのですが、MB-339は改良型の生産が続いているものの機体の取得費用面ではT-4練習機と比較し特に利点がある訳ではなく、量産度合いも低下していますので費用面ではT-4練習機を近代化改修する案とあまり変わりません。そしてMB-339とM-346の二機種を導入するというのは少々非効率といえるやもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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