■巡洋艦とコンパクト護衛艦、僚艦防空能力
日本の海上防衛に関する防衛力要求の変容に対応する巡洋艦の提案、前回にはその装備として艦砲の位置づけをみました。
今回は、その防空能力をどの程度必要とするのか、という視点についてです。海上自衛隊は護衛艦隊隷下の4個護衛隊群を構成する8個護衛隊全てにイージスシステム乃至ターターシステムを搭載する防空艦を配備しています、これにより全ての護衛隊は航空攻撃へ広域防空艦による艦隊防空能力を供しているのです。
本特集で提示しています巡洋艦は、国際平和維持活動や海賊対処任務へ長期間の外洋での行動を想定しており従来の護衛艦よりも間隔を大きく哨戒任務に対応すると共に、格納庫と大型の飛行甲板を有する事で航空機運用能力を重視し、必要であれば両用作戦や邦人救出へ人員輸送拠点へ、格納庫を物資輸送や邦人救出時の多目的区間とすることも示しました、そして艦砲を重視し、特に近年の長射程化する艦砲技術に着目し戦力投射任務や対艦攻撃に大きな変革が生じ得る点にも着目しました。
艦隊防空能力、巡洋艦についてこの能力はどの程度求められるかについて検証する試みが今回の基本ですが、巡洋艦はその任務から揚陸艦としての能力、所謂水上戦闘艦と揚陸艦の特性双方を備えた戦力投射艦としての能力付与を示唆した提案を続けてきましたが、防空能力をどう考えるかにより、巡洋艦は戦力投射艦としての運用と共に対水上戦闘に代表される海上戦闘への対処能力の大きさが均衡点として影響を受ける事となるのは間違いありません。
ここで選択肢は、広域防空能力、僚艦防空能力、個艦防空能力、以上三類型のいずれかを選定するかが論点となります。イージスシステムを搭載し艦隊防空を大きく担う広域防空能力、整備されたらば巡洋艦構想はその航空能力如何に関わらずイージス艦として類別される事となりますが建造費も大きく増大します。FCS-3系統の多機能レーダーにESSM発展型シースパローミサイルを搭載し自艦以外の限定的防空を担う僚艦防空能力、比較的費用と艦内容積は抑えられます。個艦防空能力、RAM等限定的に搭載する、一番予算は抑えられるでしょう。
防空能力を考える際、僚艦防空能力が大きな視点として当方は考えます。こう考えますのも海上自衛隊は新しくコンパクト護衛艦という新区分を整備する事業を平成30年ごろより開始する見込みとなっており、数個護衛隊をコンパクト護衛艦により整備する方針が示されている為です。コンパクト護衛艦、当初は地方隊用護衛艦、DE区分の復活か、と1200t程度の護衛艦等を彷彿させる内容でしたが、基準排水量3000t程度、はつゆき型護衛艦程度の規模となるようで、満載排水量は4000t前後、イギリスの23型フリゲイトと同程度若干小型で世界では大型水上戦闘艦に区分される規模となるとのこと。
コンパクト護衛艦は大型化を続けた汎用護衛艦の規模に一旦再検討を敷いた規模のコンパクト化ですが、併せて機雷戦能力の付与等多機能を盛り込んだものとなり、併せて防空能力を汎用護衛艦が標準装備するシースパローやESSMではなく一旦射程を改めたRAM、現在はRAMも長射程化の改修計画がありますのでこの限りではないのかもしれませんが、簡略化という方針で展開するようではあります。すると、平時における開会監視任務や有事における対潜掃討以外の船団護衛任務等は対応できるでしょうが、脅威度の高い海域での任務には僚艦防空能力を持つ護衛艦の支援が必要となる訳です。
もちろん、コンパクト護衛艦の任務をかつての地方隊護衛艦DEが担ったような後方での重要港湾での対潜哨戒や沿岸での防衛任務に限るならば必ずしも僚艦防空能力の支援を必要とするわけではありません、ただ、有事の際にコンパクト護衛艦での航空脅威などが想定される海域での船団護衛等を対処するならば、やはり僚艦防空能力を有する艦艇の支援が必要となり、ここに今回までに提示する巡洋艦構想における巡洋艦に僚艦防空能力を付与するという選択肢が出てきます。
巡洋艦の任務に戦力投射任務を重視し外洋での長期間の行動能力を想定したものを提示し、これにより少数の巡洋艦であっても海賊対処任務を一隻で対処し得るという点を示しまして、これは現在のソマリア沖海賊対処任務へ最大で回航中の交代に当たる護衛艦と訓練待機の護衛艦に行動中の護衛艦と合計6隻を運用する状況から脱却し、護衛艦の平時の南西諸島での哨戒任務への対応へ特化する可能性を示唆したものですが、有事の際に防護能力が巡洋艦に小さすぎた場合、残念ながら遊兵化する可能性があり、看過できません。
しかし、僚艦防空能力を付与し、ESSM用にVLSを8~16セル程度搭載できましたら、コンパクト護衛艦の支援、具体的には大戦中の水雷戦隊における駆逐艦と軽巡洋艦のような相互補完の関係に充てることが出来ますし、船団護衛任務へコンパクト護衛艦を投入するさいには航空攻撃からの船団防衛に寄与しますし、更にコンパクト護衛艦の掃海任務への投入を行う場合、巡洋艦の航空機運用能力の大きさはそのままMCH-101掃海輸送ヘリコプターを搭載し掃海支援任務に用いる事も出来るでしょう、こう考えますと一定程度の防空能力付与はその柔軟性を高める事となります。
北大路機関:はるなくらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
日本の海上防衛に関する防衛力要求の変容に対応する巡洋艦の提案、前回にはその装備として艦砲の位置づけをみました。
今回は、その防空能力をどの程度必要とするのか、という視点についてです。海上自衛隊は護衛艦隊隷下の4個護衛隊群を構成する8個護衛隊全てにイージスシステム乃至ターターシステムを搭載する防空艦を配備しています、これにより全ての護衛隊は航空攻撃へ広域防空艦による艦隊防空能力を供しているのです。
本特集で提示しています巡洋艦は、国際平和維持活動や海賊対処任務へ長期間の外洋での行動を想定しており従来の護衛艦よりも間隔を大きく哨戒任務に対応すると共に、格納庫と大型の飛行甲板を有する事で航空機運用能力を重視し、必要であれば両用作戦や邦人救出へ人員輸送拠点へ、格納庫を物資輸送や邦人救出時の多目的区間とすることも示しました、そして艦砲を重視し、特に近年の長射程化する艦砲技術に着目し戦力投射任務や対艦攻撃に大きな変革が生じ得る点にも着目しました。
艦隊防空能力、巡洋艦についてこの能力はどの程度求められるかについて検証する試みが今回の基本ですが、巡洋艦はその任務から揚陸艦としての能力、所謂水上戦闘艦と揚陸艦の特性双方を備えた戦力投射艦としての能力付与を示唆した提案を続けてきましたが、防空能力をどう考えるかにより、巡洋艦は戦力投射艦としての運用と共に対水上戦闘に代表される海上戦闘への対処能力の大きさが均衡点として影響を受ける事となるのは間違いありません。
ここで選択肢は、広域防空能力、僚艦防空能力、個艦防空能力、以上三類型のいずれかを選定するかが論点となります。イージスシステムを搭載し艦隊防空を大きく担う広域防空能力、整備されたらば巡洋艦構想はその航空能力如何に関わらずイージス艦として類別される事となりますが建造費も大きく増大します。FCS-3系統の多機能レーダーにESSM発展型シースパローミサイルを搭載し自艦以外の限定的防空を担う僚艦防空能力、比較的費用と艦内容積は抑えられます。個艦防空能力、RAM等限定的に搭載する、一番予算は抑えられるでしょう。
防空能力を考える際、僚艦防空能力が大きな視点として当方は考えます。こう考えますのも海上自衛隊は新しくコンパクト護衛艦という新区分を整備する事業を平成30年ごろより開始する見込みとなっており、数個護衛隊をコンパクト護衛艦により整備する方針が示されている為です。コンパクト護衛艦、当初は地方隊用護衛艦、DE区分の復活か、と1200t程度の護衛艦等を彷彿させる内容でしたが、基準排水量3000t程度、はつゆき型護衛艦程度の規模となるようで、満載排水量は4000t前後、イギリスの23型フリゲイトと同程度若干小型で世界では大型水上戦闘艦に区分される規模となるとのこと。
コンパクト護衛艦は大型化を続けた汎用護衛艦の規模に一旦再検討を敷いた規模のコンパクト化ですが、併せて機雷戦能力の付与等多機能を盛り込んだものとなり、併せて防空能力を汎用護衛艦が標準装備するシースパローやESSMではなく一旦射程を改めたRAM、現在はRAMも長射程化の改修計画がありますのでこの限りではないのかもしれませんが、簡略化という方針で展開するようではあります。すると、平時における開会監視任務や有事における対潜掃討以外の船団護衛任務等は対応できるでしょうが、脅威度の高い海域での任務には僚艦防空能力を持つ護衛艦の支援が必要となる訳です。
もちろん、コンパクト護衛艦の任務をかつての地方隊護衛艦DEが担ったような後方での重要港湾での対潜哨戒や沿岸での防衛任務に限るならば必ずしも僚艦防空能力の支援を必要とするわけではありません、ただ、有事の際にコンパクト護衛艦での航空脅威などが想定される海域での船団護衛等を対処するならば、やはり僚艦防空能力を有する艦艇の支援が必要となり、ここに今回までに提示する巡洋艦構想における巡洋艦に僚艦防空能力を付与するという選択肢が出てきます。
巡洋艦の任務に戦力投射任務を重視し外洋での長期間の行動能力を想定したものを提示し、これにより少数の巡洋艦であっても海賊対処任務を一隻で対処し得るという点を示しまして、これは現在のソマリア沖海賊対処任務へ最大で回航中の交代に当たる護衛艦と訓練待機の護衛艦に行動中の護衛艦と合計6隻を運用する状況から脱却し、護衛艦の平時の南西諸島での哨戒任務への対応へ特化する可能性を示唆したものですが、有事の際に防護能力が巡洋艦に小さすぎた場合、残念ながら遊兵化する可能性があり、看過できません。
しかし、僚艦防空能力を付与し、ESSM用にVLSを8~16セル程度搭載できましたら、コンパクト護衛艦の支援、具体的には大戦中の水雷戦隊における駆逐艦と軽巡洋艦のような相互補完の関係に充てることが出来ますし、船団護衛任務へコンパクト護衛艦を投入するさいには航空攻撃からの船団防衛に寄与しますし、更にコンパクト護衛艦の掃海任務への投入を行う場合、巡洋艦の航空機運用能力の大きさはそのままMCH-101掃海輸送ヘリコプターを搭載し掃海支援任務に用いる事も出来るでしょう、こう考えますと一定程度の防空能力付与はその柔軟性を高める事となります。
北大路機関:はるなくらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)