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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来小型護衛艦の量的優位重視視点【10】 最終回、その運用基盤構築と量産体制

2016-07-26 22:59:34 | 先端軍事テクノロジー
■将来小型護衛艦の量的優位重視視点
 将来小型護衛艦の量的優位重視視点、将来小型護衛艦は小型艦ですので、様々な意味で小回りが利きます。

 国内での運用としては、将来小型護衛艦は警備隊の運用ですので、様々な港湾に出入港する事となりますが、基準排水量を護衛艦いしかり同程度に抑えるならば、漁港であっても外洋大型漁船が入港する水準の港湾設備であれば接岸可能です、そして大型護衛艦ほど多くの物資を必要としませんので、様々な港での補給が可能です。

 これは言い換えれば、欧州諸国の沿岸海軍艦艇の様に2クルーによる交代が可能となる事も意味します。海上自衛隊では3クルー制度を採用し長期間の航海に対応させていますが、将来小型護衛艦は小型であり頻繁に入港するという前提ならば外洋用の大型護衛艦のような三交代制度とせず二交代制度でも対応できるでしょう。これは乗員を最小限度で運用できることを意味する。

 二段寝台を基本とし、有事の際に長期航海をおこなう場合には予備海上自衛官を招集し三段寝台として補完的に用いる事も可能でしょう。魚雷攻撃などへの損害を割り切るならば、つまり潜水艦発射の長魚雷の大型水上戦闘艦をも切断する威力に対しては船体が維持できなくなるという意味ですが、ダメージコントロールをミサイル艇程度に簡略化し、自動化を優先、二交代制度で50名程度での運用も現実的に可能となるでしょう。

 将来小型護衛艦は小型艦であるということで、これは第三国への輸出を念頭とする事が出来る、こういった小回りも考えられます。具体的には海上自衛隊が独自の運用基盤を構築する事で、日本がその周辺での厳しい国際情勢を背景に対応可能という部分を示唆し、その上で、費用を非常に大きく抑え自動化を進め、必要ならば確立した運用基盤の一部を輸出先の諸国へ供する事が出来る、という利点を示し海外へ提示する事も可能となります。

 この輸出という利点ですが、輸出向けの廉価版ではなく開発国が運用している、という意味での実績です。更に将来的には、コンパクト護衛艦、そして続いて計画されるべく技術開発が進められている将来三胴船を応用した水上戦闘艦が完成した際に、耐用年数があればとの前提ですが、余剰となる将来小型護衛艦を第三国へ安価に供与するという選択肢も考えられるでしょう。

 その上で、将来三胴船として防衛装備庁が開発を進める将来水上戦闘艦について、その将来三胴船用戦闘システムの開発基盤へ、実用化まで一定以上の期間を要する事から将来小型護衛艦により戦闘システムを完熟させ、応用させることも可能です。将来小型護衛艦の量的優位重視視点、としましたが、いきなり高跳びした技術的冒険を避ける観点から、手堅い設計を示したのはこの為です。

 将来三胴船は、基準排水量ベースで掃海艦やえやま型と同程度を志向していまして、その上で護衛艦あきづき型と同程度の航空機甲板な格納庫の付与を念頭として上部構造物の甲板面積を拡大させた設計です、将来小型護衛艦において水上戦闘艦システムを小型化し搭載する開発作業を実施しておくならば、次の技術開発へつなぐことができる。

 更に将来三胴船として甲板容積を拡大させた場合、その水上戦闘艦能力の高さに加えて航空機運用能力を付与させ、新しい水上戦闘艦の方式を構築する事も可能となります。こういった意味からも、数的不利を補い、地方隊の警備隊へ配備できる水準の水上戦闘艦を設計し配備する意味は大きいと考える次第です。将来小型護衛艦の量的優位重視視点、10回に分け、その有用性を示しました。

 実際問題、護衛艦は大型化が進み、艦長を練成し、且つ艦隊を建設し、現在の海上防衛力は極めて高い外洋作戦能力を整備する事が出来ましたが、脅威の多方面化やシーレーンへの中国海軍による海洋閉鎖化という圧力、ロシア軍の再建と米ロ対立の波及など情勢変化を鑑みますと、沿岸防備に特化し、かつ多用途の運用が可能で、加えて大型護衛艦の艦長と艦隊幕僚を錬成する新しく古い装備体系は必要ではないか、こうした視点から論理を展開しています。

北大路機関:はるな くらま
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