北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集【第24回参議院選挙と安全保障】第六回・・・『その時』に防衛費負担増を政策化できるか?

2016-07-06 22:55:15 | 北大路機関特別企画
■防衛力整備増大を説明できるか
 危険がある中で対策を怠り、危険が具現化した際に責任から逃避する政治が行われるならば、その国民は不幸です。さて、今回は『その時』が来た場合に防衛費負担増を政策化できるか、という視点から。

 国民に我が国の防衛に関する現実を知らせ、且つ防衛力負担という厳しい現実を制作へ反映させることはできるのか、これは安全保障協力法制廃止を掲げる野党連合と安全保障協力法制を成立させた連立与党ともに突き付けられる厳しい現実です。今週、NATO北大西洋条約機構は冷戦後最大の防衛力増強計画を発表、ウクライナ内戦とクリミア併合を受けてのロシアとの関係悪化に対する必要な措置を政策へとして具体化しました。我が国では顕在化した懸念すべき脅威に対し、具体的政策をどう示すのか、と。

 南西諸島の防空、中国機が一日当たり二回の頻度で我が国防空識別圏へ侵入し、その中でも従来の中国空軍の偵察機に代わり戦闘機による接近事案が増大、この中でも同じ一回二回という回数に関わらず、複数編隊に分かれての接近事案が頻発している為、航空自衛隊は従来の要撃機二機による緊急発進では対応出来ず、四機六機と那覇基地から離陸させ対処しなければなりません、正直、此処までの状況の変化は想定外と云わざるを得ません。

 冷戦時代のソ連軍でもここまで露骨な行動をとったのは1950年代まで、大規模演習を実施する場合においては例外的な事例があったとは聞きますが、今回の様に異常な防空識別圏への侵入回数が三か月間もの期間に渡り常態化する事はありませんでした。更に懸念すべき状況は、現在の高頻度の緊急発進、戦闘機による我が国要撃機への示威的な行動が鎮静化する見通しが、現時点のところ全く見通しがたっていない、ということでしょう。

 そして、この異常な対領空侵犯措置任務の増大は、冷戦期における最も緊張度が高かった時期と同程度に達している一方、我が国は要撃機で70機当時より少なく、そして当時は補助戦闘機として使用可能である高等練習機が60機配備されており、有事の際の航空防衛力には実に130機もの差があります。幸い、現代の自衛隊には航空教育集団に戦闘機戦闘訓練用の飛行隊があり最後の際には転用できますが、これを云いますと冷戦時代の自衛隊には機関銃と爆装が可能な中等練習機が一定数配備されていました。

 冷戦後の平安な時代は終わりつつあり、また始まる厳しい緊張の時代へ戻りつつある、こうした実情を受け入れ、国土と国民を戦災の災禍に曝さず済むよう防衛政策について必要な措置を取るうえで必要な予算措置を国民に対し説明し、且つその負担の同意を合意形成至らしめる事が出来る政権であるか。防衛力を縮小し福祉に充てるという政策提案は簡単にできるものですが、提案したものの国土が戦場となった場合の国民負担はその比ではありません、だからこそ、この難題を調整できる能力が政党には求められる。

 防衛費を減らせ、しかし、他国との防衛協力は行うな、米軍基地を減らして日本だけで対応しろ、武器を輸出すれば安くなるとしても輸出するな、装備が足らなくとも徴兵制は考えるな、こうした矛盾を提唱する政党には日本の将来は任せられません。それは反原発政策と原発再稼働を、医療費圧縮と医療費負担軽減を、同時に進める施策を掲げる事と変わりない為です。現与党は一国での対応に限界があるが故の集団的自衛権行使の施策、予算圧縮下での装備調達へ共同開発と輸出を、掲げていますが野党連合はどうなのでしょうか。

 防衛費を無計画に増大しろ、という政策提案についても、やはり簡単に同意できません、無計画な施策は短期的に印象を付けた後、長期的に継続できません。当然ですが、財政的な裏付けなしに防衛力を無制限に拡大しようという政党にも歳入以上の歳出を呈示する訳ですから、やはり任せる事は出来ない、そこで主権者である選挙民が投票行動に先んじて公約を可能な限り理解し、その提示する政策を見極めなければならない。

 参院選は日本国憲法施政下では政権を選ぶ選挙ではありません、が、野党連合を形成する民進党と共産党に社民党は、同盟国と安全保障における協力を強化する、日本国の領域外において本土への具体的な被害が及ぶ可能性を抑制しようとする、との安全保障協力法制への反対を示していますが、その上で一国で防衛負担に立ち向かう必要が生じた場合、どうするべきか、万一の際に備えを怠り、あの東日本大震災の際に当時の民主党政権が乱発したような、想定外、という言葉に逃避しない政党を見極め、投票したいものです。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする