北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

バングラディシュテロ邦人被害、教育訓練支援という日本独自のテロ対策支援を検討すべきだ

2016-07-18 22:25:27 | 国際・政治
■法執行機関・自衛隊教育支援案
 バングラディシュ邦人襲撃事案、多くの犠牲者を出す悲惨な事態となりました。

 バングラディシュ邦人襲撃事件はレストランにて食事中の外国人を標的として襲撃したテロ事案で、バングラディシュ政府は空港や鉄道ターミナルや政府施設などへの警備強化を行うとともに高級ホテルや主要観光地など外国人が多く集まる地域へのテロ対策警備を行ってはいましたが、レストラン全てを警備することはできず、ソフトターゲットとして重要度はそれほどではないが、外国人を複数名襲撃するだけでもテロリストには世界へ自己存在誇示を行うことができるため、防ぐことができませんでした。

 さて、日本のテロ対策として実施すべき視点ですが、自衛隊には報復攻撃を行うことは国民感情、平和憲法はもちろん、これまでテロに対する不服での付随被害が次のテロの要因を醸成している実状を歴史から学んだことから、例えば航空攻撃による策源地攻撃などは支持されないでしょう。ただ、テロ対策を法執行機関によるテロ対策任務支援を行う、例えば教育訓練支援をおこなうことは可能であるはずです。

 これまで、海外の部隊との訓練は法的制約がありました。安全保障関連法制整備が実現するまでは日本国内の演習場へ自衛隊と米軍以外の部隊を招いて訓練することはできず、駐在武官などが視察を受け入れるだけに限られていました、実際、日米共同訓練は毎年国内の演習場において恒常的に実施されていますが、日本と包括安全保障協力協定を締結したオーストラリア軍は、日本国内の演習場において共同訓練を実施したことはありません。

 日本には特殊部隊が複数存在します。そこで、例えば警察のSAT,海上保安庁のSST、陸上自衛隊の特殊作戦群、海上自衛隊の特別警備隊、など特殊作戦能力を有する部隊による海外法執行機関への教育訓練支援を実施し、例えば邦人が海外において人質事件の被害者となった場合、ここで突入作戦を実施する各国の法執行機関にたいして、訓練を行うことはできるでしょう。 

 SSTなどは関西国際空港警備などを景気として創設された経緯はありますが、海上での鎮圧任務やプルトニウム輸送警備などで実績が高く、PSI拡散防止イニチアチヴ多国間訓練等では教官を務めています。SATも創設から長く経験は比較的積まれている段階にあります。特殊作戦群と特殊警備隊についてはあまりその実体は公開されていませんが、要員選抜の部隊に水中処分隊や空挺団など一応一定以上の水準の部隊から精鋭を募っていますし、教育支援を行う分野は十分あるでしょう。

 バングラディシュテロでは、法執行機関の突入までの時間が大きく、特に人質が寸秒の差で殺害されている、交渉を目的とした立てこもりではなく、人質の殺害のために密閉空間を必要とした事案であり、交渉のための時間稼ぎというものは現在報じられる範囲内ではなく、文字通り即座の対応が必要とされるものでした。この支援へ日本がどのような対応をとれるかについてですが、考えられるものについては以下の通り。

 日本の場合、法執行機関への必要な手段を講じるまでに時間を要する印象はありますが、海上保安庁SSTでは船舶暴動対処事案など一刻の猶予もない状況にさいして、即座の突入を敢行しています。一方、こうした教育支援はテロ対策にとどまらない防衛協力の道を開くこととなります、共同作戦の研究などは集団的自衛権行使につながるとして、厳しく自制してきましたが、作戦能力構築支援などは、例えば長期的に継続してきている防衛大学校への留学生受け入れの延長として考えられるでしょう。

 防衛協力へ教育訓練を含めますと、日本が実施できる分野は非常に広い分野での協力が可能となります。例えば東南アジア地域において急速に進む潜水艦部隊強化へ海上自衛隊の潜水艦教育体系を、すでに潜水艦救難装備体系や運用体系は東南アジアや中国海軍にたいしても含め自衛隊は訓練教育を実施しています、我が国友好国が独自の防衛力を運用面で強化することは、シーレーンの安全性が維持されるという意味ですので、結果的に日本本土の安全にもつながる分野です。

 また、航空自衛隊の飛行教導隊を強化し、多国間訓練を日本国内、例えば島嶼部が並ぶ小笠原諸島の硫黄島基地などを起点に実施する、場合によっては飛行教導隊の巡回訓練に、海外での教育訓練支援を含めるという選択肢も、考えられるかもしれません。日本は教育面で、防衛協力を進めるという平和的姿勢を示すことも一つの抑止力を構成するでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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