■ASEAN外相会談“深刻な懸念”
ラオスで開催中のASEAN外相会談、会談における南シナ海問題は共同宣言への盛り込みにたいしカンボジア政府が強く反対したことで大きく遅れることとなりました。そして共同声明で仲裁裁判に触れず妥結しました。
これは多国間協議による問題の解決を目指すことへ中国政府が強く反対したことを受けてのもので、国際法と仲裁裁判の尊重という水準を盛り込む範疇に終わり、中国を名指しで非難する直接対立という構図は回避されることとなりました。二国間での解決を求める中国ですが、そもそも南シナ海における南沙諸島問題は、同じく南シナ海の西沙諸島問題とも密接にリンクしている問題です。
この海域に領土を有する国はフィリピン、ヴェトナム、マレーシア、ブルネイ、中華民国と多くの国が島嶼部をゆうしており、この海域へ実行支配を行っている現状さえも無視し、南シナ海全域を自国領域であるとの宣言を行っていることがそもそも無理があることから、国際仲裁裁判は勧告的意見に国際法上のある種、常識的内容を示したものです。南シナ海での問題は同時に東シナ海での問題へ直結している命題であり、特に東シナ海において防空識別圏を宣言した中国が同様の措置を南シナ海において実施する可能性を示唆したことは、何を意味するのか。
言い換えれば中国自身が南シナ海問題と東シナ海問題をリンクさせた措置であり、日本の日中間問題とも密接に関係する部分となります。中国政府は我が国南西諸島の一部を自国領土であると宣言したことで、併せて当該海域は中華民国の領域であるという宣言にもつながり、北京と台北が同様の宣言を行うに至っています、これは東シナ海での摩擦が事実上多国間の摩擦に展開しているものであり、同様の構図は、南シナ海と東シナ海において共通の自国法解釈を適用しようとする姿勢が維持される限り、結果的に関連づけられる状況も維持されているといえるでしょう。
我が国の指針は一貫しており平和的解決を求めているのですが、仮に南シナ海のこの海域に対し東シナ海と同様に防空識別圏が構築された場合、問題は東シナ海よりも複雑化します。中国はこの海域の飛行情報区を付託されていませんので、飛行情報区にもと付く航空管制の権限を有していません、一方南シナ海においては防空識別圏の設定を宣言したものの、飛行情報区は我が国の管内にあるとともに防空能力では那覇基地の第9航空団が防空識別圏を担当しており、第5航空群による紹介飛行も持続的に展開してきました。
ここへ中国戦闘機などが侵入すれば即座に対領空侵犯措置を発動し那覇基地から緊急発進を実施しています。戦闘機数においては那覇と中国沿岸飛行場では那覇基地が劣勢ではありますが、我が国は長く高い稼働率を実現するための様々な施策、NATO共通運用基盤に匹敵するライセンス生産による国内部品供給体制と定期整備基盤を構築し、更に全国の要撃飛行隊より増援の航空機を暫時ローテーションさせる戦闘加入、支援体制を構築しているため、その長期化を前にしても必要な要撃体制を維持することができました。
しかし、ASEAN諸国に関しては、フィリピンはF5軽戦闘機が運用終了となっていこう長らく戦闘機を有せず近年勧告からFA50軽攻撃機を導入することで防空体制の再構築を図っている段階、ヴェトナム空軍はSu-27戦闘機を保有していますが元々Su-27戦闘機は、中国空軍がコピーした機種も含め高い稼働率を想定しているものではない一点、そして既に西沙諸島紛争により中国軍に武力奪取され、ここへレーダー施設などを建設されているため、現時点ではこの施設を返還させないかぎり、初動では不利な態勢が構築されるに任せています。
各国の防空能力、マレーシア空軍はF/A-18,MiG-29と特筆される航空装備体系を構築していますが現時点で領域を死守しており、戦闘行動半径の関係上現時点では静観の構えです。ブルネイは特筆すべき航空戦力を有していませんが、まだ自国領域を防衛しており静観という状況です。台湾は太平島へ航空基地を2003年に建設、こちらはF-16A,経国、ミラージュ2000と有力な航空戦力を維持していますが、同時に本土防衛という重大な問題を抱え、必ずしもこの海域に対し全ての軍事力を投射できるわけではありません。
防空識別圏を設定された場合には、上記状況があるが故に、これに伴う南シナ海海域への中国軍の戦力投射にたいし、これを抑止する能力が十分ではなく、突発的な航空戦闘へ発展する可能性があります。一方、ここが問題の根底なのですが、中国は南シナ海の海域閉鎖化を示唆する施策を継続的に実施しているため、紛争の発生を根拠としてこの海域を一挙に閉鎖化する懸念があります。
この場合、我が国シーレーンが直接脅かされることを意味し、回避させるには、この海域での防空識別圏設定と排除行動を実施した場合には、強い姿勢を示すと周辺に示しつつ、その上で南シナ海東シナ海諸国との連携を図ると共に、その枠組みへ中国を迎え入れる模索を行い、平和的解決を最大限模索しつつ、必要ならばシーレーン防衛を軸とした海上警備行動を行うという姿勢を明確化するべきでしょう。
我が国領域外での海上警備行動は、ソマリア沖海賊対処任務の初期段階において既に実施の事例があり、特に我が国船舶や関連機材を運ぶ商船に対し影響が生じる蓋然性がある場合には、ソマリアにおいて実施したような、船団護衛方式による海上交通路維持の姿勢を示す必要があります。併せて重要なのは、この周辺事態や重要影響事態というべき事態を待って後手に対応する、言い換えれば紛争が本格化するまで関与しないことで深刻化を許すのではなく、予防外交の視点から、次の段階へ発展しないよう圧力、対話と圧力の姿勢を強調し、平和的解決を図ることでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
ラオスで開催中のASEAN外相会談、会談における南シナ海問題は共同宣言への盛り込みにたいしカンボジア政府が強く反対したことで大きく遅れることとなりました。そして共同声明で仲裁裁判に触れず妥結しました。
これは多国間協議による問題の解決を目指すことへ中国政府が強く反対したことを受けてのもので、国際法と仲裁裁判の尊重という水準を盛り込む範疇に終わり、中国を名指しで非難する直接対立という構図は回避されることとなりました。二国間での解決を求める中国ですが、そもそも南シナ海における南沙諸島問題は、同じく南シナ海の西沙諸島問題とも密接にリンクしている問題です。
この海域に領土を有する国はフィリピン、ヴェトナム、マレーシア、ブルネイ、中華民国と多くの国が島嶼部をゆうしており、この海域へ実行支配を行っている現状さえも無視し、南シナ海全域を自国領域であるとの宣言を行っていることがそもそも無理があることから、国際仲裁裁判は勧告的意見に国際法上のある種、常識的内容を示したものです。南シナ海での問題は同時に東シナ海での問題へ直結している命題であり、特に東シナ海において防空識別圏を宣言した中国が同様の措置を南シナ海において実施する可能性を示唆したことは、何を意味するのか。
言い換えれば中国自身が南シナ海問題と東シナ海問題をリンクさせた措置であり、日本の日中間問題とも密接に関係する部分となります。中国政府は我が国南西諸島の一部を自国領土であると宣言したことで、併せて当該海域は中華民国の領域であるという宣言にもつながり、北京と台北が同様の宣言を行うに至っています、これは東シナ海での摩擦が事実上多国間の摩擦に展開しているものであり、同様の構図は、南シナ海と東シナ海において共通の自国法解釈を適用しようとする姿勢が維持される限り、結果的に関連づけられる状況も維持されているといえるでしょう。
我が国の指針は一貫しており平和的解決を求めているのですが、仮に南シナ海のこの海域に対し東シナ海と同様に防空識別圏が構築された場合、問題は東シナ海よりも複雑化します。中国はこの海域の飛行情報区を付託されていませんので、飛行情報区にもと付く航空管制の権限を有していません、一方南シナ海においては防空識別圏の設定を宣言したものの、飛行情報区は我が国の管内にあるとともに防空能力では那覇基地の第9航空団が防空識別圏を担当しており、第5航空群による紹介飛行も持続的に展開してきました。
ここへ中国戦闘機などが侵入すれば即座に対領空侵犯措置を発動し那覇基地から緊急発進を実施しています。戦闘機数においては那覇と中国沿岸飛行場では那覇基地が劣勢ではありますが、我が国は長く高い稼働率を実現するための様々な施策、NATO共通運用基盤に匹敵するライセンス生産による国内部品供給体制と定期整備基盤を構築し、更に全国の要撃飛行隊より増援の航空機を暫時ローテーションさせる戦闘加入、支援体制を構築しているため、その長期化を前にしても必要な要撃体制を維持することができました。
しかし、ASEAN諸国に関しては、フィリピンはF5軽戦闘機が運用終了となっていこう長らく戦闘機を有せず近年勧告からFA50軽攻撃機を導入することで防空体制の再構築を図っている段階、ヴェトナム空軍はSu-27戦闘機を保有していますが元々Su-27戦闘機は、中国空軍がコピーした機種も含め高い稼働率を想定しているものではない一点、そして既に西沙諸島紛争により中国軍に武力奪取され、ここへレーダー施設などを建設されているため、現時点ではこの施設を返還させないかぎり、初動では不利な態勢が構築されるに任せています。
各国の防空能力、マレーシア空軍はF/A-18,MiG-29と特筆される航空装備体系を構築していますが現時点で領域を死守しており、戦闘行動半径の関係上現時点では静観の構えです。ブルネイは特筆すべき航空戦力を有していませんが、まだ自国領域を防衛しており静観という状況です。台湾は太平島へ航空基地を2003年に建設、こちらはF-16A,経国、ミラージュ2000と有力な航空戦力を維持していますが、同時に本土防衛という重大な問題を抱え、必ずしもこの海域に対し全ての軍事力を投射できるわけではありません。
防空識別圏を設定された場合には、上記状況があるが故に、これに伴う南シナ海海域への中国軍の戦力投射にたいし、これを抑止する能力が十分ではなく、突発的な航空戦闘へ発展する可能性があります。一方、ここが問題の根底なのですが、中国は南シナ海の海域閉鎖化を示唆する施策を継続的に実施しているため、紛争の発生を根拠としてこの海域を一挙に閉鎖化する懸念があります。
この場合、我が国シーレーンが直接脅かされることを意味し、回避させるには、この海域での防空識別圏設定と排除行動を実施した場合には、強い姿勢を示すと周辺に示しつつ、その上で南シナ海東シナ海諸国との連携を図ると共に、その枠組みへ中国を迎え入れる模索を行い、平和的解決を最大限模索しつつ、必要ならばシーレーン防衛を軸とした海上警備行動を行うという姿勢を明確化するべきでしょう。
我が国領域外での海上警備行動は、ソマリア沖海賊対処任務の初期段階において既に実施の事例があり、特に我が国船舶や関連機材を運ぶ商船に対し影響が生じる蓋然性がある場合には、ソマリアにおいて実施したような、船団護衛方式による海上交通路維持の姿勢を示す必要があります。併せて重要なのは、この周辺事態や重要影響事態というべき事態を待って後手に対応する、言い換えれば紛争が本格化するまで関与しないことで深刻化を許すのではなく、予防外交の視点から、次の段階へ発展しないよう圧力、対話と圧力の姿勢を強調し、平和的解決を図ることでしょう。
北大路機関:はるな くらま
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