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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第三九回):航空防衛力、基地機能の地下化推進に関する幾つかの視点

2016-07-19 21:48:02 | 防衛・安全保障
■航空基地の機能強化
 戦闘機数には防衛大綱上の上限がありますが、基地機能は上限が無い、という視点を前回示しました。

 基地機能の維持、重要となるのは防爆施設を可能な限り建設すると共に可能ならば地下化工事を推進する事でしょう。地下工事、と一概にいますと非常に大きな施設という印象が大きくなりますが、航空自衛隊では那覇基地の南西方面航空混成団司令部庁舎がそのまま施設群全て地下化されています。

 那覇基地の地下施設化、その完工式の様子は朝雲新聞“航空自衛隊の五〇年”にも大きく紹介され話題となりました。府中基地の航空総隊司令部旧庁舎や横田基地の航空総隊司令部庁舎を始め地下化された施設が指揮中枢には意外と多く、レーダーサイトなども重要設備は地下化、雪中通路という名目での諸施設の地下化は為されています。

 また、弾薬関連の施設は地下に構築される事が多く、これは弾薬保管への保安性という視点や、弾薬保存への湿度管理や温度管理などの問題もあるのでしょうが、航空自衛隊最大の弾薬庫とされる高蔵寺弾薬庫は山ひとつ刳り貫いた広大な施設を有していますし、所謂トンネル式地下施設は意外に陸上自衛隊を含め数多く存在するとのこと。

 施設地下化の利点は、航空攻撃に際してどの部位に戦闘機が配置されているのか、どの部分を攻撃すれば誘爆等二次被害が高まるかを徹底して秘匿できる部分にあり、その上で勿論地下施設の深度にもよりますが通常爆弾程度ならば弱点部位に含まれる位置へ正確に命中しても被害が及ばないという点、がひとつ。

 そのうえで、航空攻撃を展開する側には地下化されている施設は目視での位置判別が困難となり、航空攻撃での被害極限にこの位置秘匿は非常に大きな成果を発揮出来るでしょう。他方、半地下化として基本的に弾薬区画等では為されている方策ですが、重要施設を堤防で囲み直撃以外の爆風被害から防護する措置も有効です。

 極言すれば、弾道ミサイルや爆弾落下による命中を逃れた破片による二次被害の防止には、一定厚を有する土嚢による応急掩体でも一定程度航空機は防護できるもので、例えば航空団施設隊等は冷戦時代に航空攻撃の蓋然性が高い時代、土嚢による応急掩体構築訓練を滑走路被爆時応急補修訓練に並び実施していたとの事です。

 他方、これでは応急的であることは確かですしクラスター弾による攻撃に対しての脆弱性は全く払しょくできていません。地下化について、可能な限り航空機格納庫について、地下化乃至掩体収容を行うと共に設備の中で特に指揮中枢の地下化は航空団だけではなく応急部署や補給部署を含め急務であ流転に代わりはありません。

 そのなかでも資材施設や補給施設といった戦闘支援施設についても可能な限り地下化や半地下化を行う事が望ましいでしょう。勿論、掘り下げて地下化工事を行う事は理想ですが、応急的に堅固なコンクリート施設を建設し、その上に盛り土を行う地下化、強化型掩体として航空機及び施設群を防備する施策でも対応可能です。

 また、基地防空群の高射機関砲等の諸施設を掩砲場事前配置により迅速に展開できる体制を構築し、更に基地内を地下通路、交通壕により連絡する態勢構築も基地能力強化の施策となるでしょう。これにより、攻撃を受けた場合での生存性を向上させ、貴重な航空戦力を本来の任務へ集中させることが可能となる。

 更に周辺地域の住民避難が完了するまでの間、基地防空隊の行動による付随被害の問題を受動的に対応し基地機能の維持を図る、という施策も可能となります。更に副次的な要素として、原子力事故や都市部への核攻撃事案からの基地機能維持、津波対策にも気密性の高い地下化施設は有用であることも忘れてはなりません。

北大路機関:はるな くらま
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