北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

九州北部豪雨災害派遣、岡崎レッドサラマンダー全地形車両が活躍!自衛隊にも必要な装備

2017-07-13 23:05:22 | 防災・災害派遣
■全地形車両,山岳/両用戦で活躍
 防衛災害派遣共に全地形車両は必要、今回の九州北部豪雨災害派遣を見まして改めてそう考えさせられました。本日はこの視点から。

 九州北部豪雨災害、日を増すごとに行方不明者が残念な報道となりまして心が痛みます。九州は豪雨災害が多く、嵐山や宇治市で視られるような豪雨災害とは段違いの被害を及ぼす事を今回改めて実感しました。しかし、被災地へは総務省が東日本大震災後に導入し愛知県岡崎消防が運用する水陸両用車ブロンコ-レッドサラマンダーが活躍しているとのこと。

 小牧基地航空祭においてC-130輸送機から災害派遣展示にて参加する一つの常連といえる岡崎消防レッドサラマンダーですがシンガポールのST重工により製造されています。C-130から発進する展示が多い為、遠く九州の水害という事ですから小牧基地からC-130により築城基地か大分空港へ進出したのかと思えば、今回は陸路で輸送されたとの事です。

 レッドサラマンダー、二両の車両が連接したような形状の車両は全地形車両といいまして、スウェーデンのBV-206が代表的な雪上車、雪の上から湿地帯に傾斜地から海岸線まで起動出来るもので、航空自衛隊が積雪地のレーダーサイトにおける分屯基地内輸送用に採用しており、隊本部から山頂のレーダーアンテナと管理棟との物資運搬や人員交替に活躍します。レッドサラマンダーを含め日本には十数両しかない一両が今回、派遣されました。

 全地形車両、今回は愛知県岡崎市から被災地へ展開し、発災翌日の夕刻には現地へ到達したとの事で、車体そのものが浮航しますし、急傾斜地でも50パーミルという登攀力を持ちます。路上最高速度は56km/hと、あの74式戦車よりも若干迅く重量は12tと96式装輪装甲車よりも軽量という事で、被災地の土砂崩れ等道なき道を踏破し活躍しているもよう。

 自衛隊の普通科連隊や戦車大隊等の本部にも全地形車両は必要ではないか、この視点はこれまで、特に東日本大震災以降何度も提示してきましたが、今回改めて必要性を感じました。何故ならば岡崎市から陸路で九州に展開した結果、被災地展開が翌日の夕刻となった為です。被災地近傍の玖珠駐屯地第4戦車大隊本部にあれば、即日投入できたでしょう。

 全地形車両、この車種は各国陸軍で使用されています。山岳戦や両用戦で最適だからです。BV-206を開発したスウェーデン軍では地形障害を踏破し輸送任務に充てる車両として活躍しています。自衛隊には600両以上の78式雪上車と10式雪上車が配備されていますが、雪上車は夏季に用途が無いのに対し全地形車両は通年仕様可能です。もっともBV-206は8000万円以上、雪上車よりも遥かに高く、軽装甲機動車の二倍以上です。

 防衛任務に全地形車両はどのように使えるのか、例えば隣国韓国陸軍ではBV-206全地形車両をM-30/120mm迫撃砲を不整地踏破し機動する自走迫撃砲、ミストラル地対空ミサイルを後部に搭載し山間部の稜線へ展開する機動手段として用いています。錯綜地形のおおい我が国では山間部などに重火器を展開する上で最適で、日本に多数あれば91式携帯地対空誘導弾や81mm迫撃砲、中距離多目的誘導弾等の機動に活躍するでしょう。

 玖珠駐屯地、被災地から20kmの近傍に在る玖珠にはAAV-7両用強襲車が配備されています、水陸機動団創設準備のための一時配備ですが、水上を13km/hで機動可能な水陸両用者ですが、車体重量は26tと重く車幅も3.2mもある為、今回瓦礫の下の生存者を押し潰す危険と、海岸で揚陸に用いる装甲車で山間部運用を想定しない為、今回投入されていません。

 BV-206全地形車両であれば航空自衛隊が山間部のレーダーサイトで運用実績がありますし、ブロンコはレッドサラマンダーとして今回活躍しました。市町村消防には費用が高く多数そろえる事は出来ませんが、普通科連隊本部管理中隊施設作業小隊等に各4両程度配備したならば、今回のような大規模水害、南海トラフ地震等津波災害へも寄与すると考えます。

北大路機関:はるな くらま
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