北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ジェラルドRフォード就役!トランプ大統領,130億ドルの新型原子力空母竣工を誇示

2017-07-25 20:37:59 | 先端軍事テクノロジー
■ジェラルドRフォード就役!
 新空母ジェラルドRフォードが就役しました。満載排水量101600t、自衛隊最大の護衛艦かが27000tを遥かに上回る巨艦です。

 アメリカ海軍の新型原子力空母ジェラルドRフォード級一番艦、ジェラルドRフォードが竣工しました。現在のアメリカ海軍主力空母はニミッツ級原子力空母10隻です。ニミッツ級は一番艦ニミッツ1975年就役以来、順次新造艦に最新技術が応用されていますが、本級からは新型原子炉採用と従来の蒸気カタパルトに代わる電磁カタパルトを採用しています。

 竣工式にはトランプ大統領が出席しました。膨大な建造費を要する新型空母ですが竣工を讃えました。ジェラルドRフォード級は建造費130億ドル、となっていますが、これには膨大な設計費が含められています。実際には設計費以外の船体のみであれば80億ドル程度で建造できるとされ、二番艦ジョンFケネディが2015年に建造開始、三番艦エンタープライズも来年に建造が始ります。

 世界海軍の固定翼機を運用可能な航空母艦は、ニミッツ 、ドワイトDアイゼンハワー、カール・ヴィンソン、セオドアルーズベルト、エイブラハムリンカーン、ジョージワシントン、ジョンCステニス、ハリーSトルーマン、ロナルドレーガン、ジョージHWブッシュ、フランスのシャルルドゴール、ロシアのアドミラルクズネツォフ、インドの中古ヴィクラマディーチャ、中国の中古艦遼寧のみ。

 アメリカはここに新型のジェラルドRフォードが加わり空母11隻体制となりました。上掲のニミッツからジョージHWブッシュまでの10隻はニミッツ級で、ジョージワシントン、続いてロナルドレーガンは横須賀へ前方展開しており、巨艦は入港時には横須賀市内のヴェルニー公園からも望見できます。しかし、ジョージワシントンは早期に交替しました。

 ジェラルドRフォードは新型原子炉の導入で50年間炉心交換が不要な設計となっています。原子力空母ジョージワシントンは通常動力空母のキティーホークが除籍すると同時に日本へ前方展開しましたが、1992年に建造された比較的新しい空母でありながら早期に日本を離れたのは元々2017年より数年間を要する原子炉炉心交換工事が予定されていた為です。

 ニミッツ級の利点は原子力により30ノットの最高速力で数年間航行し続ける事が、可能という点です。勿論発着器材整備や弾薬食料航空燃料の補給は必要ですが、艦船燃料の補給が不要というのは利点です。しかし欠点は原子炉炉心交換が定期的に必要である点で利点は欠点、同型艦10隻の内、1隻は炉心交換として造船所に入渠し作戦行動が出来ません。

 新型原子炉の採用によりジェラルドRフォードは50年間炉心交換が不要という事で、ニミッツ級のような常時最低でも1隻が入渠し作戦不能、という問題がありません。その上、蒸気カタパルトに代え、新型の電磁カタパルトを採用したことで整備性が向上しました。アメリカの空母は全長330mの巨艦ですが、330m船体では戦闘機を発艦させるのは難しい。

 カタパルトは戦闘機を短距離で離陸に必要な300km/hまで加速させるために完全装備で重い艦載機を弾き出すものです。第二次大戦中は火薬を用いましたが艦載機が重くなり現在は蒸気圧を利用する。ただ蒸気圧での運用は腐食へ頻繁な整備が必要であるほか、24時間発艦回数を少なからず成約していました。電磁カタパルトは成約をかなり払拭しました。

 ジェラルドRフォード、その建造費は130億ドルです。しかし、ふんだんに新技術を盛り込んだことで130億ドルに達したという実情がありまして、元々ニミッツ級原子力空母は50億ドル程度で建造できていました。艦載機も1機5000万ドル程度のF/A-18Eに代え、ステルス性を持つF-35Cが搭載されますが、1機1億ドルという高価なものとなります。

 航空母艦は空母航空団がミサイル巡洋艦やミサイル駆逐艦に守られ、先導する攻撃型原潜と共に高い機動力と防御力に打撃力を併せ持ち、一つの作戦体系を担保する戦略的価値を持つ一方、その維持と運用には膨大な人的資源と防衛費の集約を要し、海軍当局と政権中枢、のみならず国防費を所管の財務当局と議会が長期的に理解と努力が整備に不可欠です。

 日本とアメリカは太平洋戦争において珊瑚海海戦やミッドウェー海戦、南太平洋海戦やレイテ沖海戦と航空母艦同士の激戦を繰り広げてきましたが、世界海戦史に記された航空母艦同士の洋上戦闘は全て日本とアメリカとの間で太平洋戦争中に戦われたもののみとなっています、これは戦後、一部の国を除き航空母艦を保有出来なかった為に他なりません。

 ジェラルドRフォード就役でアメリカは11隻の航空母艦を揃えるに至りましたが、フランスとロシアが1隻、中国は中古空母に加え2隻目を建造中、インドも中古空母に加え2隻目を建造中です。しかもアメリカ以外の航空母艦は中型で航空団ではなく飛行隊しか搭載できません。この膨大な費用を航空母艦部隊整備に充てているアメリカは海洋自由原則等の重要性を理解している点が反映されています。 

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする