■回想の冷戦時代の警備艦構想
中期防衛力整備計画へ盛り込まれた哨戒艦という新しい区分の艦艇、いろいろと考えられるものがありますが今一つその概要は判然としません。
哨戒艦、海軍とは別に海洋法執行機関を有する国ではあまり重要視されていません、海上自衛隊と海上保安庁のように任務区分が行われている国、アメリカ沿岸警備隊とアメリカ海軍のように。しかし、海軍が全て担う国では漁業権保護や難民支援に駆逐艦を動員しますと無用な摩擦を誘発しますし、また高度すぎる装備体系は運用の費用もかさみます。
外洋哨戒艦として前回、オランダ海軍のホランド級を紹介しましたが、前型のフリゲイト、カレル-ドールマン級は、しかし2010年代後半にロシアのクリミア併合やウクライナ東部紛争介入を受け、従来型水上戦闘艦の重要性が再認識される、という皮肉な結果となっています、つまり軽武装のホランド級では対応できる選択肢が限られる、ということですね。
海上自衛隊は哨戒艦を建造する場合、将来発展性を考慮せねばなりません。外洋哨戒艦が必要なのか、と問われますと海上保安庁が最新鋭巡視船あきつしま型を筆頭に多くの巡視船を有していますし、武装が軽い分に一見安価な印象を受けますが、広範囲を警備するには必要なレーダー等の費用を考えますと、オランダのように却って高価となりかねません。
海上自衛隊の哨戒艦、実は似たものとしまして海上自衛隊は過去に沿岸警備艦という区分の艦を計画したことがあります。基準排水量1000tの小型艦で、実現していませんが、その設計が拡大され基準排水量1290tの護衛艦いしかり、となりました。北方警備用の護衛艦で海上自衛隊が初めて艦対艦ミサイルを搭載した護衛艦が、いしかり、となっています。
沿岸警備艦という区分は、海上自衛隊には草創期から駆潜艇という装備があり、その後継として考えられたもの。基準排水量450t程度の小型船体に対潜擲弾ヘッジボッグと短魚雷投射装置にソナーを組み合わせた沿岸の潜水艦掃討用装備で40mm機関砲を装備しており、速力は20ノット程度と護衛艦ほど速くはありませんが、哨戒艇的な任務にも対応しました。
みずとり型駆潜艇など、地方隊の重要な装備となっていたのですが、潜水艦の速力が高速化するとともに極東地域でのソ連海軍原子力潜水艦の大量配備が開始され、駆潜艇の狭い範囲を捜索するソナーでは捕捉が困難になるとともに、画期的な前投対潜装備として開発されるも、設計が第二次世界大戦中のヘッジボックでは射程が僅か250m、陳腐化していた。
ちくご型護衛艦は射程10kmのアスロック対潜ロケットを搭載する小型護衛艦として、駆潜艇を置き換えています。76mm連装砲と40mm機銃、二つの防空火器を備えた沿岸用護衛艦は実に11隻が建造されています。沿岸警備艦は補完的な位置づけとして検討される。そして北方に配備されており、19号型魚雷艇の補完の要素も有していたといえるでしょう。
いしかり、はハープーン艦対艦ミサイルを備えるとともに射程1500mのボフォース対潜ロケットを搭載していまして、ヘッジボックよりは射程が遙かに長く、一応有力な潜水艦掃討が可能であると考えられました。それでは沿岸警備艦が建造されなかった理由ですが、それは小さかったためです。搭載できる装備は勿論、小型艦は波浪に弱いという事情が。
沿岸警備艦は1000tに抑える場合、全長は80mとなってしまい、日本海の厳しい波浪に耐えることが出来ません。ただ、当時と現代では技術面で大きな飛躍がありまして、多少小型でも波浪に強い艦の研究はある。防衛装備庁では将来型三胴船という研究を行っていまして、可能性として哨戒艦とは沿岸警備艦の大きさに外洋航行能力を盛り込むという視点、将来型三胴船の技術成果を受けての新区分かもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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中期防衛力整備計画へ盛り込まれた哨戒艦という新しい区分の艦艇、いろいろと考えられるものがありますが今一つその概要は判然としません。
哨戒艦、海軍とは別に海洋法執行機関を有する国ではあまり重要視されていません、海上自衛隊と海上保安庁のように任務区分が行われている国、アメリカ沿岸警備隊とアメリカ海軍のように。しかし、海軍が全て担う国では漁業権保護や難民支援に駆逐艦を動員しますと無用な摩擦を誘発しますし、また高度すぎる装備体系は運用の費用もかさみます。
外洋哨戒艦として前回、オランダ海軍のホランド級を紹介しましたが、前型のフリゲイト、カレル-ドールマン級は、しかし2010年代後半にロシアのクリミア併合やウクライナ東部紛争介入を受け、従来型水上戦闘艦の重要性が再認識される、という皮肉な結果となっています、つまり軽武装のホランド級では対応できる選択肢が限られる、ということですね。
海上自衛隊は哨戒艦を建造する場合、将来発展性を考慮せねばなりません。外洋哨戒艦が必要なのか、と問われますと海上保安庁が最新鋭巡視船あきつしま型を筆頭に多くの巡視船を有していますし、武装が軽い分に一見安価な印象を受けますが、広範囲を警備するには必要なレーダー等の費用を考えますと、オランダのように却って高価となりかねません。
海上自衛隊の哨戒艦、実は似たものとしまして海上自衛隊は過去に沿岸警備艦という区分の艦を計画したことがあります。基準排水量1000tの小型艦で、実現していませんが、その設計が拡大され基準排水量1290tの護衛艦いしかり、となりました。北方警備用の護衛艦で海上自衛隊が初めて艦対艦ミサイルを搭載した護衛艦が、いしかり、となっています。
沿岸警備艦という区分は、海上自衛隊には草創期から駆潜艇という装備があり、その後継として考えられたもの。基準排水量450t程度の小型船体に対潜擲弾ヘッジボッグと短魚雷投射装置にソナーを組み合わせた沿岸の潜水艦掃討用装備で40mm機関砲を装備しており、速力は20ノット程度と護衛艦ほど速くはありませんが、哨戒艇的な任務にも対応しました。
みずとり型駆潜艇など、地方隊の重要な装備となっていたのですが、潜水艦の速力が高速化するとともに極東地域でのソ連海軍原子力潜水艦の大量配備が開始され、駆潜艇の狭い範囲を捜索するソナーでは捕捉が困難になるとともに、画期的な前投対潜装備として開発されるも、設計が第二次世界大戦中のヘッジボックでは射程が僅か250m、陳腐化していた。
ちくご型護衛艦は射程10kmのアスロック対潜ロケットを搭載する小型護衛艦として、駆潜艇を置き換えています。76mm連装砲と40mm機銃、二つの防空火器を備えた沿岸用護衛艦は実に11隻が建造されています。沿岸警備艦は補完的な位置づけとして検討される。そして北方に配備されており、19号型魚雷艇の補完の要素も有していたといえるでしょう。
いしかり、はハープーン艦対艦ミサイルを備えるとともに射程1500mのボフォース対潜ロケットを搭載していまして、ヘッジボックよりは射程が遙かに長く、一応有力な潜水艦掃討が可能であると考えられました。それでは沿岸警備艦が建造されなかった理由ですが、それは小さかったためです。搭載できる装備は勿論、小型艦は波浪に弱いという事情が。
沿岸警備艦は1000tに抑える場合、全長は80mとなってしまい、日本海の厳しい波浪に耐えることが出来ません。ただ、当時と現代では技術面で大きな飛躍がありまして、多少小型でも波浪に強い艦の研究はある。防衛装備庁では将来型三胴船という研究を行っていまして、可能性として哨戒艦とは沿岸警備艦の大きさに外洋航行能力を盛り込むという視点、将来型三胴船の技術成果を受けての新区分かもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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