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【日曜特集】ひゅうが特別公開-横浜開港一五〇年祭,新DDH就役一〇周年(2009.09.06)

2019-01-13 20:19:36 | 海上自衛隊 催事
■全通飛行甲板型護衛艦時代
 2019年は護衛艦ひゅうが就役から十年が経ったことを意味しまして時代とは早いものです。

 ひゅうが一般公開が行われた横浜大桟橋は開港からの生き字引、大桟橋には通関施設などもあり、神戸港のポートターミナルなどと比較した場合でも優美な建築美を誇る。横浜ベイブリッジが大黒埠頭とを結び、観光地として当時の栄華を昇華の後も際だたせている。

 護衛艦ひゅうが、満載排水量19000tの全通飛行甲板型護衛艦です。ヘリコプター搭載護衛艦としては第二世代型に当たる護衛艦で、海上自衛隊では明確に区分しているわけではありませんが、はるな、ひえい、しらね、くらま、第一世代とは明確に概念が進歩している。

 第一世代にあたる護衛艦はるな型、しらね型、1973年から1981年に整備された四隻がヘリコプター巡洋艦型を採用しているのに対し、2009年から2017年にかけて整備された護衛艦ひゅうが型と護衛艦いずも型は航空機運用を重視し、全通飛行甲板型を採用しました。

 はるな満載排水量は6800t、これもFRAM近代化改修により拡大改修され6800tでして、その前であっても海上自衛隊最大の護衛艦でした。しらね型護衛艦は7200tとなっています。対して護衛艦ひゅうが型は19000t、いずも型は27000tと非常に大型化しました。

 全通飛行甲板型護衛艦という新機軸は、海上自衛隊の航空機重視姿勢を端的に示すものといえましょう。SH-60J/K哨戒ヘリコプターは1機で2000t級巡視船を上回る費用を要します。航空機運用の重要性と部隊としての能力を理解している故に巨費に耐えられました。

 もともと海上自衛隊は航空機重視で、例えば実に100機を調達したP-3C哨戒機などはその取得費用が、はつゆき型護衛艦と護衛艦いしかり、の中間よりもやや高い取得費用、護衛艦換算では、はつゆき型護衛艦70隻分を海上自衛隊は哨戒機に投入したこととなります。

 航空機は電子装備の固まりであり、しかも哨戒機であれば潜水艦の徴候を分析し海中の潜水艦位置を画定する高性能器材を持つ、同世代の戦闘機よりも遙かに取得費用が高くなることは不思議ではありません。実際、P-3C哨戒機はF-16戦闘機よりも取得費用が大きい。

 HSS-2対潜ヘリコプターの時代から自衛隊は高くともソナーとコンピュータを備えた機種を採用、もっとも日本の場合は航空自衛隊が戦闘機のロールスロイスとよばれるF-15戦闘機を採用したことでP-3Cの取得費用はそれほど飛び出たものには成りませんでしたが、ね。

 ひゅうが型護衛艦は航空機を主体として戦闘システムを構成し、特に航空機であれば機種を変更することは難しくはありません。設計当時にF-35B戦闘機、当時はJSF統合打撃戦闘機と呼称されていましたが、搭載するところまで長期展望していたのかは未知数です。

 F-35B搭載可否まで話はいかずとも、少なくとも当時搭載が決定していましたSH-60K哨戒ヘリコプターとMCH-101掃海輸送ヘリコプター、陸上自衛隊CH-47輸送ヘリコプターやAH-64戦闘ヘリコプターの比率を代えるだけでも任務遂行能力を大きく転換できます。

 SH-60Kが旧式化した将来であってもSH-101かSH-92かSH-90となるのかは現時点で判然としませんが、新型機に積み替えるだけで能力を根本から再構築できる、はるな型護衛艦もHSS-2をHSS-2A,HSS-2B,そしてSH-60J.SH-60Kへ載せ替え近代化を維持しました。

 これが護衛艦そのものの戦闘システムであれば、コンピュータ処理能力の強化程度であれば定期整備の際に実現可能ですがセンサーそのものを転換させるとなるとそう簡単にはゆきません。航空機だからこそ即座の更新を選択肢に含むことが出来る、といえるでしょう。

 飛行甲板に並ぶヘリコプターをみますと本質を錯誤しそうですが、ひゅうが型護衛艦は艦砲を搭載していないだけで、多機能レーダーに連動し僚艦防空までを担うFCS-3を搭載する護衛艦ひゅうが型の能力は実に強力です。ひゅうが、伊勢型戦艦日向を継ぐのですから。

 Mk41VLSは16セルにVアスロック対潜ロケットかESSM先進艦短射程対空ミサイルを搭載しており、ESSMはVLSの1セルに4発を搭載しますし短射程としつつその射程は50kmに達します。もちろん、近接脅威へ20mmCIWSや12.7mm機銃等を揃えています。

 FCS-3は多目標同時対処能力を備えていますので迂闊に攻撃を仕掛けますと護衛艦ひゅうが型は猛烈な反撃を加えることが出来る。ソナーを備える護衛艦、しかし、護衛艦いずも型は機雷探知や魚雷探知など対潜戦闘よりは自衛用のソナーに限られていましたが、ね。

 ひゅうが型は対潜戦闘を強く意識した装備となっています。いずも型が同様の装備搭載を断念したのは、ひゅうが19000tが猛然と潜水艦を追尾しますと艦内動揺が著しく、航空機整備などに影響が及ぶため、ともいわれまして、ひゅうが型運用実績を反映したものです。

 かが、いずも、とヘリコプター搭載護衛艦は対潜戦闘もヘリコプター主体へと転換した、ヘリコプタ運用能力が高いのだからヘリコプターに任せる設計思想の変容といわれています。すると、いずも型の艦対空能力が抑えられている背景は、もしやこれも艦載機に、と。

 一方で、ひゅうが型設計当時は護衛艦なのだから、という視点から必要な装備を、実のところ当初は76mm艦砲も検討されたほどに、搭載していますので護衛艦として高い能力を維持しているのです。76mm艦砲が搭載されていたらば、少し想像してみたりもします。

 実際、全通飛行甲板型艦艇といいますと被護衛対象、という印象がありますが、ひゅうが型についてはこの必要がありません。他方で、ひゅうが型設計は2000年に本格化しており、当時はここまで南西諸島情勢が緊迫化すると考えられていたかが難しいものがありました。

 巨大な護衛艦ですが、やはり格納庫の広さに特筆されるものを感じるとともに、全通飛行甲板の艦上において清涼飲料水の移動販売が行われていたことが驚きました。台車に氷塊ごと清涼飲料水をペットボトルごと浮かべて、それで艦上を移動販売しているのですね。

 はるな艦上でも自動販売機などはありましたが、ひゅうが艦上はそれだけ広い、ということなのでしょう。ひゅうが飛行甲板は此れだけ広いのですから、後年に横須賀から舞鶴配備となった頃に米海兵隊との共同運用を念頭にMV-22可動翼機の発着場が追加されました。

 MV-22,横幅が非常に大きな航空機ですが、この運用能力を有する潜在性が、ひゅうが型の能力の大きさなのでしょう。エレベータは見学者を多数同時に昇降していまして、見上げる護衛艦の威容、乗艦しての実際の感覚、海上自衛隊新時代の到来を痛感したものです。

 ひゅうが、この巨大な護衛艦は、兎も角この時点では次の護衛艦いずも型建造等は想像もしていませんでしたので横須賀基地に停泊していますだけで新時代を感じさせるものでした。そして、いずも竣工と共にこの時点で舞鶴母港の護衛艦しらね交代に本艦が来るとは。

 いせ、横浜での護衛艦ひゅうが初公開と同日、既に同じ横浜では護衛艦ひゅうが型二番艦いせ、が進水式を終え建造が進められている所でした。横浜まで来ているのだから、新しい護衛艦も観てゆこう、撮影の次の目的地も決まり改めて護衛艦ひゅうが、を見上げます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (2)
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