■航空自衛隊機の艦上運用
F-35Bが艦上運用される際に海上自衛隊ではなく機体そのものが航空自衛隊へ配備される点について、その背景を視てみましょう。
海上自衛隊のセンサーノード機としてのF-35B運用に視点を戻します。海上自衛隊にとりF-35Bを運用する場合、最大の課題は自前の航空搭乗員を養成できるのか、という視点でしょう。当たり前ですが、海上自衛隊は創設以来、一度も戦闘機を運用した経験がありません。この意味するところは、必然的に戦闘機操縦要員の訓練体系が無い、ということ。
ハリアー攻撃機を導入する研究はありましたし、RF-86偵察機や高速対潜機としてF-4を導入する研究はありました。しかし、実現していません。そして海上自衛隊の航空装備体系全般を見渡しますと、F-35B戦闘機のような単座航空機も導入した経験がないのです。すると海上自衛隊にF-35Bを導入する場合、まずどの練習機で練習するか、最初の課題だ。
SH-60J/K哨戒ヘリコプターが担うセンサーノード機としてF-35Bを導入するならば、しかしSH-60J/Kは展示訓練等で時に戦闘機並みの機動飛行を見せつけますが、空対空戦闘能力はありません。海上自衛隊はSH-60J/Kの有する電子の眼を通じて敵艦を撃沈しますが、主として護衛艦のハープーンミサイルやSSM-1を誘導するものが任務、自らは、と。
ヘルファイア空対艦ミサイルをSH-60Kから搭載し、ミサイル艇などの小型目標への対処能力を有する事となりましたが、基本的に海上自衛隊には航空集団に多数の操縦要員が勢揃いするものの、空対空戦闘の経験はありませんし空対空戦闘訓練そのものもありません。F-35Bを海上自衛隊が導入した場合でも操縦要員が皆無では保有する意味がありません。
T-7練習機で初等訓練を経て、T-4練習機で最初にジェット機操縦に習熟し、更にT-4練習機による空対空戦闘機動や計器操縦訓練を実施、実際の空対空戦闘訓練は第23飛行隊や第21飛行隊の戦闘機部隊において転換教育を行い、実戦部隊において本格的な教育訓練を行う。航空自衛隊はこうして戦闘機操縦要員を錬成していますが、海上自衛隊の練習機は。
T-5練習機として並列複座の初等練習機はありますが、ジェット練習機は海上自衛隊にはありません。YS-11練習機の後継として強力なP-3C哨戒機が練習機として下総航空基地へ配備されていますが、本格的な練習機として戦闘機要員の練成は不可能、まずはT-4練習機相当の練習機と戦闘機教育転換に相応しい、日本には無い高等練習機か複座戦闘機が必要だ。
T-4練習機の生産は終了していますので、海上自衛隊の操縦要員をそのままT-5練習機での課程修了後に航空自衛隊へ一時配置換えしてT-4やF-15による訓練を行うか、中等練習機として用い得るT-4相当の練習機と米空軍のボーイングサーブT-X高等練習機を新たに導入するか、という話となります。それ程に戦闘機操縦要員の練成は簡単ではありません。
しかし、戦闘機操縦要員の練成は難しい、という事です。どういう事か、と言いますとセンサーノード機が必要である訳で、勿論AMRAAMを搭載出来ますので自衛含め空対空戦闘を全く行わない、という事にはならないでしょうが、索敵と艦上運用ならば、航空自衛隊程の戦闘機要員の教育訓練課程を踏む必要はあるのか、という視点もあり得るでしょう。
空対空戦闘はイージス艦のSM-6ミサイルが、空対艦戦闘はNSSMミサイルが、海上自衛隊の場合は対応します。F-35Bも直接脅威があればAMRAAMミサイルで自衛戦闘を展開する事となるのでしょうが、センサーノードに徹する場合、航空自衛隊の水準でなくともF-35B要員を錬成できるのかもしれません。艦上運用は、しかし大変ではあるのですがね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
F-35Bが艦上運用される際に海上自衛隊ではなく機体そのものが航空自衛隊へ配備される点について、その背景を視てみましょう。
海上自衛隊のセンサーノード機としてのF-35B運用に視点を戻します。海上自衛隊にとりF-35Bを運用する場合、最大の課題は自前の航空搭乗員を養成できるのか、という視点でしょう。当たり前ですが、海上自衛隊は創設以来、一度も戦闘機を運用した経験がありません。この意味するところは、必然的に戦闘機操縦要員の訓練体系が無い、ということ。
ハリアー攻撃機を導入する研究はありましたし、RF-86偵察機や高速対潜機としてF-4を導入する研究はありました。しかし、実現していません。そして海上自衛隊の航空装備体系全般を見渡しますと、F-35B戦闘機のような単座航空機も導入した経験がないのです。すると海上自衛隊にF-35Bを導入する場合、まずどの練習機で練習するか、最初の課題だ。
SH-60J/K哨戒ヘリコプターが担うセンサーノード機としてF-35Bを導入するならば、しかしSH-60J/Kは展示訓練等で時に戦闘機並みの機動飛行を見せつけますが、空対空戦闘能力はありません。海上自衛隊はSH-60J/Kの有する電子の眼を通じて敵艦を撃沈しますが、主として護衛艦のハープーンミサイルやSSM-1を誘導するものが任務、自らは、と。
ヘルファイア空対艦ミサイルをSH-60Kから搭載し、ミサイル艇などの小型目標への対処能力を有する事となりましたが、基本的に海上自衛隊には航空集団に多数の操縦要員が勢揃いするものの、空対空戦闘の経験はありませんし空対空戦闘訓練そのものもありません。F-35Bを海上自衛隊が導入した場合でも操縦要員が皆無では保有する意味がありません。
T-7練習機で初等訓練を経て、T-4練習機で最初にジェット機操縦に習熟し、更にT-4練習機による空対空戦闘機動や計器操縦訓練を実施、実際の空対空戦闘訓練は第23飛行隊や第21飛行隊の戦闘機部隊において転換教育を行い、実戦部隊において本格的な教育訓練を行う。航空自衛隊はこうして戦闘機操縦要員を錬成していますが、海上自衛隊の練習機は。
T-5練習機として並列複座の初等練習機はありますが、ジェット練習機は海上自衛隊にはありません。YS-11練習機の後継として強力なP-3C哨戒機が練習機として下総航空基地へ配備されていますが、本格的な練習機として戦闘機要員の練成は不可能、まずはT-4練習機相当の練習機と戦闘機教育転換に相応しい、日本には無い高等練習機か複座戦闘機が必要だ。
T-4練習機の生産は終了していますので、海上自衛隊の操縦要員をそのままT-5練習機での課程修了後に航空自衛隊へ一時配置換えしてT-4やF-15による訓練を行うか、中等練習機として用い得るT-4相当の練習機と米空軍のボーイングサーブT-X高等練習機を新たに導入するか、という話となります。それ程に戦闘機操縦要員の練成は簡単ではありません。
しかし、戦闘機操縦要員の練成は難しい、という事です。どういう事か、と言いますとセンサーノード機が必要である訳で、勿論AMRAAMを搭載出来ますので自衛含め空対空戦闘を全く行わない、という事にはならないでしょうが、索敵と艦上運用ならば、航空自衛隊程の戦闘機要員の教育訓練課程を踏む必要はあるのか、という視点もあり得るでしょう。
空対空戦闘はイージス艦のSM-6ミサイルが、空対艦戦闘はNSSMミサイルが、海上自衛隊の場合は対応します。F-35Bも直接脅威があればAMRAAMミサイルで自衛戦闘を展開する事となるのでしょうが、センサーノードに徹する場合、航空自衛隊の水準でなくともF-35B要員を錬成できるのかもしれません。艦上運用は、しかし大変ではあるのですがね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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