北大路機関

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火力戦闘車/装輪155mm榴弾砲試作車が納入(考察3)99式自走榴弾砲への統合を検討すべき

2019-01-28 20:10:11 | 先端軍事テクノロジー
■火砲300門,高性能と合理性
 火力戦闘車は新年度予算に教育所要取得が盛り込まれていますが、火砲定数が300門という時代に新装備を導入する事への合理性を真剣に考えねばなりません。

 中部方面特科隊が新年度、松山駐屯地に創設され、現在は中部方面隊に師団旅団特科としてまだ、第10特科連隊と第3特科隊に第13特科隊が残っていますが、数年内に全て中部方面特科隊に統合され、40門ほどに集約されます。この流れは東部方面隊と東北方面隊で続きますので、火力戦闘車は教育所要を除けば定数110門ほどで完結してしまいます。

 火力戦闘車の性能は未知数ですが、少なくとも量算数が110両程度となっては、量産効果を期待できません、MAN社製トラック採用の背景はここがおおきいのだと考えます。ただ、火砲定数300門ならば、思い切って全て99式自走榴弾砲に集約してしまえば、と考えたりもするのですが、つまり定数300門ならば二種類維持する事は非合理だ、ということ。

 99式自走榴弾砲は世界的に見てもまだ最新鋭の自走榴弾砲です。これは冷戦後各国の火砲開発が停滞しているためで、冷戦末期から開発を継続し1999年に制式化となった99式自走榴弾砲が相対的に最新鋭のまま、というところです。52口径155mm榴弾砲の性能は高く、最大射程は40kmといわれることから諸外国の52口径砲よりも短射程と指摘がある。

 30kmでは現在の各国自走榴弾砲の52口径火砲が50kmに迫る射程を有している事から、見劣りすることは事実ですが、実際のところ自衛隊の場合は射撃場の制約が大きく、フル装薬での最大射程射撃では40kmよりもまだ発展余地があるとも側聞します。一方で特科の方の中には30km以遠では弾着の散布界が広過ぎ、それ以上飛んでも効果が薄い、とも。

 西部方面特科連隊のFH-70榴弾砲や中部方面特科隊に集約されるFH-70榴弾砲、敢えて新型を装備することなく、元々将来火砲としてFH-70榴弾砲後継開発が開始された時点での火砲定数は600門であったのですから、300門となった現時点で北海道と本州九州四国の火砲を二類型化する事にはひとつ無理があったのだ、と認識するべきではないでしょうか。

 特科火砲統一の必要性をこうして提示しましたが、その上で、99式自走榴弾砲をみますと、装軌式車両ですので戦略機動性は限界があります。要するに重く自走も牽引も速度に限界がある、ということ。しかし、不整地突破能力は高く、この性能は島嶼部防衛など、道路未整備な錯綜地形での運用では装軌式車両の不整地突破能力がなければ対応できません。

 FH-70榴弾砲であれば島嶼部防衛に際して、例えばCH-47JA輸送ヘリコプターによる吊下空輸により山頂などの射撃陣地へ搬入することは不可能ではありません、自走して降りられませんが、掩砲所と予備陣地を構築することで陣地変換は可能ですし、山間部ではヘリコプターにより空中機動展開させるという運用法もあります。重量はあるが短距離ならば可能だ。

 山頂にヘリコプターで火砲を搬入する運用は、アフガニスタンにおいて国産治安部隊ISAFが、特にイギリス軍が実施し効果を上げた先例があります。しかし、火力戦闘車ですと重すぎてCH-47JAではつり上げられない。何が言いたいかと問われれば、牽引砲と自走榴弾砲の中間を担う装輪式自走榴弾砲は戦略機動と戦術機動の利点が中途半端だ、ということ。

 火力戦闘車を開発したのですから、勿論充分な性能があるのならば採用し、可能な限り配備するべきです。しかし、自動装填装置の不採用等の面で99式自走榴弾砲ほどの性能は期待できません。その上で冷静に火砲定数を将来的に300門へ収斂するのであれば2系統の火砲を持つ事は不合理で、性能上99式の後継とはなり得ない。ならば一方にするべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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