北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

能登半島沖韓国艦火器管制レーダー照射事件,韓国矛盾へ防衛省の韓国艦周波数帯開示が焦点

2019-01-15 20:08:07 | 国際・政治
■シンガポール協議,係争長期化
 能登半島沖の日本の排他的経済水域にて韓国艦の不自然な行動を確認へ向かった自衛隊機へミサイルレーダーが照準され、日本が再発防止を求めた事がこれほど長期化するとは。

 能登半島沖にて昨年12月20日1500時頃に発生した火器管制レーダー照射、韓国海軍艦艇と公船が海上に遊弋している状況を厚木基地第4航空群所属のP-1哨戒機が発見し、情報収集を行っていた最中に、韓国艦クァンゲト-デワンによる能登半島沖でのP-1哨戒機への火器管制レーダー照射が実施、危険行為として日本側が再発防止措置を求めたものです。

 岩屋防衛大臣は北東アジア地域のアメリカと共有する安全保障環境へ影響も否定できないとして13日、習志野訓練場にて実施の第一空挺団降下訓練始めにおいて、韓国側が火器管制レーダー使用を否定し、しかし使用した事は日本側の威嚇が原因とする現状に韓国側へ照射の事実を認めさせる為に自衛隊の電波記録を示すことも検討する方針を示しています。

 不毛な議論とはこういう事を示す。韓国側の主張は、“日本の威嚇飛行証拠映像”として通常の旋回飛行を示したり、“レーダー照射は正当”としつつ“やっていない”と一貫せず、“日本側が持っているのならば電波情報開示を要求”し“電波情報開示は友好国へ行う事ではない”と二転三転、日本が求めるのは再発防止措置と偶発戦闘防止だけなのですが。

 P-1哨戒機へのクァンゲト-デワンによる火器管制レーダー使用について、韓国側は日本の非難に終始しているのですが、火器管制レーダーの使用を正当化する一方で、その使用を否定するという、使ったのか使ったのかさえも明示せず、一貫しない主張を前に事実関係の確認さえできない、恰も韓国には海軍を統制する機能が無い様な状況となっています。

 火器管制レーダーは艦対空ミサイル照準に用いられるもので、国際法上は仕様は武力行使に含まれる。一月中旬となりますが未だに解決の見通しが立ちません。14日に第三国であるシンガポールにて防衛省審議官級幹部と韓国国防省李元翼国際政策官と合同参謀本部夫石鐘軍事支援本部長との間での協議が行われましたが、結局協議は平行線に終わりました。

 シンガポールでの協議では韓国側が日本側の電波情報相互開示の申し入れを無礼な要求として非難する事となりました。実はP-1哨戒機の電子戦装置には射撃管制レーダー等の照射を受けた場合にこの周波数帯と電波特性を記録する機能が備わっている為、開示したならば、韓国が日本の自衛隊機へ平時に火器管制レーダーを使用した事が明白となるのです。

 日本側がレーダー情報を開示した場合、韓国が自衛隊機へ火器管制レーダーを照射した、つまり隣国の排他的衛材水域において、対空ミサイルの照準、戦闘動作を行ったことが明らかとなるのですが、何故しないのか、と問われますと、韓国一国だけの問題ではなく、クァンゲト-デワン級の火器管制レーダーはオランダ製で、情報開示の影響が生じる為です。

 クァンゲト-デワン級が採用している火器管制レーダーは目標捕捉用がオランダタレス-ネーデルラント社製のMW-08、ミサイル本体の射撃管制レーダーは同じくオランダタレス-ネーデルラント社製STIR-1.8となっています。STIR-1.8について目標へ指向する作動方式となっているのですが、海上自衛隊公開写真にはSTIR-1.8が撮影者へ向けられています。

 P-1が受信の電波情報を開示したらば、海上自衛隊が火器管制レーダーの照射を受けられたことが確実に証明できるのですが、STIR-1.8もMW-08も日本以外では多くの国で運用されています。MW-08はギリシャ海軍イドラ級フリゲイト, ポルトガル海軍ヴァスコ-ダ-ガマ級フリゲイト等、韓国海軍以外にも数か国が20隻近い水上戦闘艦において運用中です。

 STIR-1.8は更に使用例が多く、開発国ではカレル-ドールマン級フリゲイト、日本へ幾度も親善訪問したカナダ海軍はイロクォイ級ミサイル駆逐艦ハリファクス級フリゲイト、ドイツ海軍は海軍の主力ブレーメン級フリゲイトとブランデンブルク級フリゲイト、ギリシャ海軍はエリ級フリゲイトとイドラ級フリゲイト、トルコ海軍ヤウズ級フリゲイト運用中だ。

 NATO海軍での上記運用の他に、台湾海軍のノックス級フリゲイト、タイ海軍ナレースワン級フリゲイト、アルゼンチン海軍はドイツより輸入のアルミランテ-ブラウン級駆逐艦、チリ海軍はオランダ中古取得カレル-ドールマン級フリゲイトと輸入したヤコブ-ファン-ヘームスケルク級フリゲイト、コロンビア海軍でもアルミランテ-パディーヤ級フリゲイトと。

 電波情報開示により周波数帯を突き付ければ韓国の虚構虚偽は明らかになるのですが、これは同時に有事の際にロシア軍や中国軍が妨害を行う電波情報を示す事にもなります。すると同時に、オランダ海軍、カナダ海軍、ドイツ海軍、ギリシャ海軍、アルゼンチン海軍、チリ海軍、コロンビア海軍、等の十か国近い海軍のレーダー情報も危険に曝す事となる。

 日本側が開示する事で友好国の多くに危険が生じる事となるのですが、同時に韓国海軍も安易に友好国海軍へ火器管制レーダーを使用する国として、火器管制レーダに関する供与が受けられなくなる可能性があります。この倍は韓国海軍が弱体化する事となり、朝鮮半島有事に際し北朝鮮の旧式ミサイル艇等にも敗北しかねず、日本の負担が増大しましょう。

 再発防止を韓国側が行う事が実質的に日本にとり唯一の望み、これ以上は防衛省も要求していません。繰り返しますが火器管制レーダーはミサイル照準そのものであり、戦闘行動の一環です。過去に中国海軍が護衛艦ゆうだち、に対し同様の行動を行った際は再発防止策を中国政府が約束しました、偶発戦闘を回避する為です。偶発戦闘が発生してしまえば遺憾では済まないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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