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【くらま】日本DDH物語 《第五二回》護衛艦しらね型構想,艦隊中枢艦となる新航空巡洋艦

2019-01-12 20:16:33 | 先端軍事テクノロジー
■未成の海上自衛隊巡洋艦構想
 ひゅうが型護衛艦からの全通飛行甲板型護衛艦時代、しかしその前の1970年代に検討された護衛艦しらね型設計には8300t型案という大きな可能性が秘められていました。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想のもう一つの注目すべき点はヘリコプター搭載護衛艦を護衛隊群の旗艦として運用するという発想です。駆逐艦隊に巡洋艦が配置されたのならば巡洋艦が旗艦を担うのはある種当然だろう、と思われるかもしれませんが、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦では編成上の位置づけは航空中枢艦として重要視されていました。

 たちかぜ、あさかぜ、さわかぜ、たちかぜ型ミサイル護衛艦としまして既に1976年から海上自衛隊はシステム艦時代に発展していました。1990年代以降の海上自衛隊を知っている方からはヘリコプター搭載護衛艦が護衛隊群直轄艦として運用されていることはむしろ自然ですので旗艦設備との認識はある種当然のようにもみえますが、必ずしもそうではない。

 たかつき型が直轄艦とされていたこともある、と記しますと驚かれるでしょうか。当時はヘリコプター搭載護衛艦2隻を以て護衛隊を構成する、という運用でしたのでかならずしも旗艦という位置づけではなく、たかつき型護衛艦が充当されることもありました。たかつき型護衛艦の性能は高いものですが、通信量増大との要素を認識しなければなりません。

 海幕指揮統制システムMOFを筆頭に海上自衛隊の通信量は年々増大しており、群規模の指揮統制を実施するには相応の旗艦設備を必要としていました。はるな型ヘリコプター搭載護衛艦であればCIC容積も大きく、旗艦には最適、以前紹介しました護衛艦はるな、ひえい、リムパック環太平洋合同演習へ展開の際は群司令は護衛艦ひえい、に乗艦しています。

 8300t型護衛艦はこの旗艦機能を一手に担う性能を盛り込み、文字通り巡洋艦としての機能を目指したものです。既に米海軍ではHSS-2の米海軍型にあたるSH-3を空母艦載対潜哨戒機として運用しており、6機がその定数でした。乾舷の高い船体内格納庫構造を採用したならば、場合によっては甲板係留により航空隊規模のHSS-2を搭載することも可能です。

 航空機だけを搭載しても運用は別問題、もちろん整備負担や燃料はじめ物資をどこまで搭載する設計かで、この運用の期間は左右されるのですが、少なくとも護衛艦はるな型では甲板係留で艦載機を短期的に増大はできません。もう少し余裕を、という観点から大型化は一つの選択肢であったともいえましょう。すると、要求は取捨選択が必要になるのです。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想とともにターターシステムの搭載が候補に挙がりますが、海上自衛隊は当時護衛隊群へミサイル護衛艦一隻を充当する運用から二隻体制へ展開する模索をおこなっていました。ターターシステムは文字通り未来の装備です、初のミサイル護衛艦となった護衛艦あまつかぜ建造当時には日本の経済力では非常に高価なものでした。

 あまつかぜ型護衛艦として二番艦が建造されることもなく、対潜装備はアスロッ対潜ロケットを搭載する余裕がなかったために後日装備とし、第二次大戦中のヘッジボック対潜擲弾を搭載し建造費を抑えねばならなかったという。後日装備は当時実際に行われる事も多かったのですが、8300t型ヘリコプター巡洋艦構想はどの程度現実的だったのでしょうか。

 アンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦、イタリア海軍は艦隊防空ミサイルを搭載したヘリコプター巡洋艦を二隻建造し、続いて更に大型のヘリコプター巡洋艦ヴィットリオヴェネトを建造しています。逆に日本の二隻に分ける方式では数が揃わないという懸念もあったのかもしれません、実際、はるな型三番艦建造遅延という問題もあったのですから、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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