北大路機関

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のとじま除籍(MSC-682),広島三原沖瀬戸内海貨物船ジェイケイⅢ衝突事故を経て早期除籍

2020-06-11 20:02:13 | 防衛・安全保障
■ASH高速13号以来の事故除籍
 掃海艇のとじま明日早期除籍となります。のとじま、といえば舞鶴地方隊第44掃海隊所属で舞鶴市役所裏の掃海艇桟橋にいつも佇んでいました。

 のとじま除籍。海上自衛隊すがしま型掃海艇のとじま、が12日に除籍されることとなります。すがしま型掃海艇の除籍は初であり、前型である掃海艇うわじま型の2隻がまだ掃海管制艇として現役運用されている中において異例の除籍といえるでしょう。のとじま、は衝突事故を受けて船体が破損、残念ながら修理費用事業評価を経て早期除籍となりました。

 事故は一年前の2019年6月26日に広島県三原沖の瀬戸内海を航行中、貨物船ジェイケイⅢが掃海艇船体右舷後方に激突し、のとじま船体は大きく破損、浸水は乗員のダメージコントロールにより鎮圧されましたが機関部が大きく破損し自力航行不能に陥り、多用途支援艦えんしゅう曳航により最寄造船所、広島県尾道のJMU因島造船所へ緊急入港しました。

 くらまカリナスター衝突事故、艦艇の衝突事故は希有ではありますが皆無ではありません、2009年10月27日に観艦式を終えて佐世保への帰途にあった護衛艦が関門海峡の幅550m最狭部において対向するカリナスターが航路帯を大きく外れて接近し、くらま艦首に激突する事故がありました。ただ、この時には長崎にて13億円で修理が成っているのですね。

 あけぼの、いなづま衝突事故、共に先代ですが、護衛艦同士の衝突事故で艦橋破損と乗員殉職者が出た事例もありました。1960年6月4日に津軽海峡東方海域にて夜間訓練中であった二隻の護衛艦、あけぼの、いなづま、が衝突し就寝中の乗員2名が圧死、あけぼの艦橋が破損する重大事故も発生しています。しかし共に修理を受け1980年代まで現役です。

 事故で除籍となりますと海上自衛隊では1966年10月18日の特務艇高速13号沈没事故以来であるようにも。特務艇とはASHという種別でヘリコプターの性能が過渡期であった時代に航空救難に備え各地に自衛隊が航空救難船を展開しており、事故の際には35ノットで現場に駆けつけるものでしたが、揮発性の高いガソリンエンジンを採用し、一隻が停泊中にエンジンガソリン爆発事故で失われました。

 のとじま除籍。この判断は修理費用の費用対効果や修理期間と船体寿命の面から判断された、防衛省はこう発表しています。JMUによる被害検証の結果、船体修理に18ヶ月を要し、その費用は11億円と算定されました。のとじま建造費は157億円ですが、竣工は1999年となっており、掃海艇寿命は20年から24年程度であるため、この老朽化が問題という。

 うわじま型掃海艇、これは今回除籍の掃海艇のとじま前型ですが、ゆげしま、ながしま、が掃海管制艇として現役です、こちらは1995年と1996年に竣工していまして、しかし1995年に竣工した掃海艇とびしま、は掃海管制艇変更を経て2014年、6年も前に除籍されているのですね。一番艇うわじま、などは1990年に竣工し2010年に早々と除籍されている。

 はるな、海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦は1973年に竣工しつつ2009年まで現役でしたので、掃海艇の寿命は短いように思われるかもしれません、しかしこれは掃海艇の設計が影響しています。海中の機雷を処分し掃討する掃海艇は自らが磁気感応機雷などに破壊されないよう、船体を木造船体としています。故に鋼より木材は海水で腐食しやすい。

 ひらしま型掃海艇まで海上自衛隊は木造船体の掃海艇を重視してきました、木造は船体寿命こそ短いのですが、万一機雷が爆発した際に衝撃を吸収しやすいですし、爆発し船体が破損した場合でも木製船体には浮力があり、沈没だけは回避できる。ただ、海上自衛隊はもう一つの理由から2012年竣工の、えのしま型掃海艇よりFRP船体へと移行しました。

 うわじま型掃海艇まで掃海艇の建造費用は55億円程度でした。しかし機雷の高性能化により機雷掃海器具を曳航しての従来型掃海では、潜水艦から敷設し高付加価値目標だけをコンピュータで選別し攻撃するストーンフィッシュ機雷や大型地雷程度の大きさしかない非磁性のマンタ機雷、魚雷を抱き攻撃するキャプチャー機雷のようなものを掃海できません。

 すがしま型掃海艇以降は機雷探知ソナーで海底の疑わしい物体一つ一つを捕捉し水中ロボットこと機雷処分器具や対機雷用魚雷というべき機雷処分弾薬により一発一発機雷を葬る機雷掃討という運用が主流となりました。いわば掃海艇から機雷掃討艇への発展ですが、結果、建造費が150億円と三倍近く高騰し、掃海艇を量産できなくなった事情があります。

 掃海艇建造費高騰、こうして従来は20年程度で木造船体老朽化を受け除籍していた掃海艇を長期運用することとなりまして、しかしもう少し長期間を運用するべき掃海艇のとじま除籍が速まった形となりました。勿体ないようで、そして事故が原因という残念ではありますが、搭載のPAP-104など掃討装備はなんとか別の哨戒艦艇等に継承してほしいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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