北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

6.12米朝初首脳会談:北朝鮮核廃絶&朝鮮戦争終戦への期待と平和構築-信頼醸成への希望

2018-06-10 20:11:54 | 国際・政治
■日本と在韓米軍-最前線国家
 北朝鮮核武装放棄が明後日の米朝首脳会談において具体的に前進する事は日本の安全保障に大きな影響を及ぼします、そしてもう一つの視点も必要となるのかもしれません、最前線国家、という。

 史上初の米朝首脳会談、北朝鮮核廃絶と経済制裁解除、そして朝鮮戦争終戦が大きな議題となる、文字通り“和戦を決する”首脳会談がいよいよシンガポールにおいて開かれます。また、論題の一つ、朝鮮戦争終戦が現実となれば、米韓相互防衛条約の抜本的な見直しが行われ、可能性の一つとしてアメリカ軍の極東配置が対馬まで後退するかもしれません。

 金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールへ到着した、本日1530時頃、複数のシンガポールメディアが報じ、続いてシンガポールのバラクリシュナン外相が金正恩朝鮮労働党委員長と握手を交わす様子が発表されました。一時は開催も危ぶまれた米朝首脳会談、特に金正恩氏が朝鮮労働党委員長に就任してから、これ程長距離を空路移動するのは今回が初めて。

 トランプ大統領も現在カナダで開催中のG7サミット主要七カ国首脳会議への出席を中座し、予定を早めて大統領専用機エアフォースワンによりシンガポールへ向け出発しました。北朝鮮核開発問題に伴う核廃棄が実現するのか、また新しい論点として急浮上した朝鮮戦争終戦を話し合う、いよいよ史上初の米朝首脳会談は明後日火曜日、午前中に実現します。

 ロイター通信が今月5日に掲載のコラム“アングル:在韓米軍撤退におびえる日本、「最前線国家」の現実味”において、文正仁統一外交安保特別補佐官がアメリカの外交専門誌に寄稿した“北朝鮮と平和協定が締結されれば、在韓米軍の存在を正当化し続けることは難しい”との論文が紹介され、日本にとっての緩衝地帯が変化する可能性が指摘されました。この懸念を払しょくするには信頼醸成が必要だ。

 在韓米軍はヴィンセント-ブルックス大将以下3万名、ソウルの龍山基地に在韓米軍司令部、烏山空軍基地にはアメリカ第7空軍司令部、軍事境界線南方の議政府市キャンプレッドクラウドにアメリカ第2歩兵師団司令部、ハンフリーズ基地に陸軍航空旅団、群山空軍基地に第8航空団、が置かれ在日米軍の後方支援と緊急展開部隊と共に同盟国韓国を防衛する。

 龍山基地の在韓米軍は一見韓国軍52万名と比較し小規模とみえますが、有事の際には米韓合同司令部指揮権が在韓米軍司令官にあり、韓国軍全軍を指揮します。この為、大規模部隊の作戦運用と戦闘支援に兵站維持の面で米軍には卓越した経験と桁違いの能力があり、実質、在韓米軍の駐留有無は韓国安全保障の骨幹を担うといっても過言ではありません。

 朝鮮半島有事の際には日本が最前線となる可能性、これは北朝鮮人民軍100万と韓国軍52万という戦力差とともに、仮に核戦力を廃止した後でも北朝鮮が南進に着手した場合、人民軍100万が南北軍事境界線から南に60kmのソウル中心部まで一挙に侵攻した場合、在韓米軍とインド太平洋軍の支援なしで、韓国軍だけでは阻止できない可能性があるのです。すると、通常戦力削減、というよりも武力紛争回避への信頼醸成が必要となりましょう。

 弾道ミサイル脅威一つとっても、現在は日本国内のミサイル防衛は横田基地の日米調整所を通じ情報を共有していますが、北朝鮮方面からの日本への弾道ミサイル攻撃に際し、最初のミサイル情報を発するのは在韓米軍のTHAADミサイル用早期警戒レーダーです。北朝鮮弾道ミサイル脅威が残る中での米軍撤退が仮に行われれば、その影響は極めて大きい。

 マティス国防長官は在韓米軍撤退という、この点について“検証可能かつ不可逆的な措置が示されない限り、対北朝鮮制裁は緩和しない”今月3日、シンガポールで小野寺五典防衛相や韓国の宋永武国防相との会談後、記者会見において発言し、“米国が北朝鮮との取引の一環としてこの地域の米軍規模縮小を打ち出す可能性はない”とも重ねて明言しました。

 最前線国家という概念は、北朝鮮と国境を接し宥和的な友好国と日本の軋轢にも影響を及ぼします。その上で、核武装解除について、特に重要なのは不可逆的な、つまり核開発基盤そのものを核兵器本体の撤去と共に実施し、既に実行した核開発能力が再構築されないよう、核燃料濃縮能力や核開発技術者の退去、核兵器運搬手段の廃棄と開発能力の撤去が実現されなければなりませんが、核拡散防止の国際公序を無視した代償を北朝鮮が、そして北朝鮮に宥和的な諸国が受け入れるかも課題となる。

 検証措置が、一方的な核廃棄宣言に終わらないよう実施される必要があり、専門家立会いを待たずしての核一見城閉鎖宣言、移動式弾道ミサイル開発後の今月6日に衛星写真などから確認された平安北道亀城の大陸間弾道ミサイル実験施設の撤去等、表題には挙げられるも実質的な廃棄が検証出来ない形式的な核廃絶アピールのみ積み重ねられる可能性も。この検証を欠いて、例えば邦人拉致問題の様に一方的終了宣言となった場合では、短期的にも最前線国家となる日本への影響は大きいといわざるを得ない。

 在韓米軍の意義は北朝鮮からの同盟国韓国防衛と同時に、韓国が中国に呑込まれないよう軍事的プレゼンスを示すという点も忘れてはなりません。中国は民主化運動への過度な抑圧、他国主権や海洋自由原則への軍事的圧力、周辺国への軍事行動の実施と正当化等、国際公序には必ずしも則らない施策を継続しており、巨大な軍事力とその対外的拡大は、環太平洋地域とアジア地域の懸念事項です。

 最前線国家、という懸念は韓国が国際関係において自由主義や民主主義と抑圧的政策と全体主義的な施策如何を問う、というよりも巨大な経済圏の前に前記概念を曲げず維持できるのか、という、特に韓国民主化が1987年と歴史が浅い点からも懸念されるもので、この部分での北朝鮮に宥和的な隣国からの圧力が強まり続け、実質的な屈服となった場合には、最前線国家は、韓国から日本となる可能性、否定できません。

 我が国は、アメリカの自由主義と海洋自由原則や民主主義と人の尊厳、原初状態としての平等という価値観を共有しつつ、同時に防衛政策ではアメリカに依存する部分が大きく、仮に在韓米軍の撤退となれば、1992年のピナトゥボ火山噴火に伴う在韓米軍撤退以上に大きな影響を及ぼし、我が国防衛政策や防衛力も抜本強化へと再考を突き付けられましょう。だからこそ、平和構築-信頼醸成への希望、平和構築-信頼醸成を欠く拙速な対応が画定されないのか、重大な関心事でしょう。

 朝鮮半島平和が実現する事は、朝鮮半島を対岸とする日本にとっても非常に喜ばしい事です。しかし、その平和実現が次の朝鮮半島有事までの時間的猶予であってはなりません。またそれ以上に、平和主義を掲げる我が国に周辺国がその平和主義を悪用する形で、我が国に対し軍事的脅威を及ぼし、日本国民の平和的生存権を脅かす事があってはなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【くらま】日本DDH物語 《第四三回》二次防エセックス級検討と五次防原案ファントム案

2018-06-09 20:10:02 | 先端軍事テクノロジー
■五次防空母導入実現の可能性
 第二次防衛力整備計画と第五次防衛力整備計画、ファントム高速対潜機とエセックス級空母、この相関性について。

 海上自衛隊がファントムを高速哨戒機として計画、第四次防衛力整備計画が第一次石油危機により中断しなければ、特に当時は高度経済成長期に在り年間経済成長率は10%、つまり七年間でGDPが倍増する日本経済の史上まれに見る規模の成長時代を迎えていた為、第五次防衛力整備計画が画定していたならば、導入実現していた可能性は充分ありました。

 しかし、御承知の通り第四次防衛力整備計画そのものが中断すると共に、産業の原動力というべき石油価格の異常高騰により、インフレ率が異常な数値で継続してゆき、そもそも長期的な防衛力整備が、長期的な計画の完了時点での物価上昇率を予測する事さえ困難であった為、三年単位という中期以下の防衛力整備計画に転換せざるを得なくなっています。

 その上で、ファントム導入が実現していたならば、幾つかの新しい可能性が生じます。当時の日本は現在に続く造船大国であり、我が国シーレーンへ重大な脅威を及ぼしていたソ連海軍の太平洋進出に対し、ファントムを活用する体制、つまり高速対潜哨戒機としての導入に加えて、対艦攻撃任務や艦隊防空に活用していた可能性はあるでしょう。その上で。

 ハープーン対艦ミサイルが開発された同時期、最新鋭の対艦ミサイルを導入する目処や計画は海上自衛隊には無く、当時対艦攻撃の主力は水上戦闘艦に搭載する533mm長魚雷と127mm艦砲という旧態依然とした装備体系となっていました。実際、対艦ミサイルの実用性が証明された第三次中東戦争は1967年であり、勿論これは当時当然の趨勢といえました。

 高速対潜哨戒機、ファントムに赤外線探知装置等を搭載し浮上航行中の潜水艦を探知し超音速急降下を掛けてロケット弾により攻撃を行う、当時は対潜哨戒機P-2VやS-2艦載哨戒機等も翼端にサーチライトを搭載し索敵していましたので、技術的に的を外れたものではないのですが、それ以外センサーを搭載する余裕が限られ、目的はそれだけとは思えない。

 航空母艦を建造しファントムを搭載する壮大な計画はあったのか、最大の関心はここです。勿論、ファントム導入計画は第五次防衛力整備計画に最初の航空隊を新編する、という構想以上の水準ではなく、実際に導入されたものでもない為、その先どのような構想があったのかは想像に頼るしかありませんが、海上自衛隊創設以前から空母の展望はありました。

 エセックス級空母をアメリカ海軍より中古取得するという展望が第二次防衛力整備計画に存在した事はこれまでに記しましたし、対潜空母構想はヘリコプター搭載型から固定翼哨戒機搭載型まで構想、アメリカ海軍より護衛空母を取得する構想は海上自衛隊創設前のY委員会時代から存在、S-2哨戒機は艦上固定翼哨戒機として海上自衛隊に採用されています。

 ファントムとエセックス級、ただ、F-4ファントムは艦載機としては大型でありエセックス級艦載機として搭載するには限界に近いものがありました。一応、全く搭載出来ないという船体規模ではありませんが、アメリカ海軍ではエセックス級を対潜空母や強襲揚陸艦などに位置付け、F-4の搭載はもう一回り大型のミッドウェー級空母の任務としていました。

 第二次防衛力整備計画と見製の第五次防衛力整備計画、その間の期間は余りに長く、エセックス級は設計が第二次世界大戦中であり近代化改修は進められていましたが、自動化の度合いは第二次世界大戦中の設計の範疇を越えるものではなく導入は時機を逸していました。しかし、二つの装備の関係、ここから先は思考体操の域まで入ってしまいますが、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成三〇年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.06.09-10)

2018-06-08 20:08:33 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 梅雨入り、しかしその前に梅酒の仕込が無事終わった今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 よこすかYYのりものフェスタ横須賀基地一般公開、毎年横須賀市が開催する横須賀駅周辺での祭典です。横須賀駅は横須賀基地逸見地区に隣接し、横須賀駅ホームから逸見桟橋停泊中の艦艇が見える程ですが併せて横須賀基地も一般公開されます。横須賀基地一般公開は貴重で、舞鶴基地や佐世保基地、呉基地の様な土日艦艇広報一般公開を行っていません。

 横須賀基地一般公開では試験艦あすか一般公開、ヘリコプター地上展示が予定され、一般公開時間は土曜日日曜日共に1000時から1500時まで、入場時間は1430時までとのこと。よこすかYYのりものフェスタでは、横須賀駅にJR東日本が貴重な団体列車などを一般公開した年度もありまして、横須賀基地を一望するヴェルニー公園一帯も会場で賑わいます。

 滝川駐屯地祭、第11旅団隷下の第10普通科連隊が駐屯しています。第11旅団隷下の普通科連隊は装甲車化中隊を各1個有する。第10普通科連隊は即応機動連隊改編部隊として、350名の増員が予定されています。ただ改編にて部隊名は第10普通科連隊から第10即応機動連隊へ改名、第10普通科連隊としての駐屯地行事は今回最後となるのかもしれません。

 即応機動連隊は96式装輪装甲車を装備する3個普通科中隊と2個機動戦闘車中隊に重迫撃砲装備の火力支援中隊を有し、本部管理中隊に施設小隊や高射小隊などを有する独立戦闘能力の高い部隊です。ただ、装甲車の不足によりかつての第18普通科連隊が一手に所管した96式装輪装甲車を旅団隷下連隊に薄く配備していますが、再集約するだけ、とならないか心配だ。

 さて撮影の話題、自衛隊関連行事へ展開すると共に、敢えて自衛隊駐屯地近傍の寺社仏閣や名所旧跡を旅してみよう、という折角遠出したのだから楽しまなければ勿体ない、という趣向で遠出するようになっていますが、やはり考えてしまうのが陸上自衛隊行事や基地祭に航空祭であれば、どの時間で区切って基地や駐屯地を出て観光地へと転進するか、というところです。

 海上自衛隊の展示訓練であれば、入港時間と上陸時間という明確な時間が区切られているので、上陸ビールという美しい習慣を何杯目で切り上げるか、と分りやすいのですが、駐屯地祭や航空祭ですと訓練展示状況終了後や飛行展示完了後にも装備品展示や地上展示航空機という是非とも撮影しておきたい情景が広がっていますので、撤収時間は悩まされる。

 基地に近くに美しい城郭が、とか、駐屯地からの帰路に有名な庭園が、となりますとその場所に転進する上で乗車すべき路線バスや列車の時間から逆算する事となるのですが、漫然と散策しようと考えていますと、転進先の散策の満足度と目の前の戦車や戦闘機の撮影をどちらが優先するべきなのだろうか、迷ってしまう。それはそれで楽しいのですが、ね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・6月10日:滝川駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/
・6月9日-10日:よこすかYYのりものフェスタ横須賀基地一般公開…http://www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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火力戦闘車/装輪155mm榴弾砲試作車が納入(考察)FH-70後継と99HSP以来の新型砲

2018-06-07 20:10:10 | 先端軍事テクノロジー
■装輪155mm榴弾砲試作車5両
 防衛装備庁によれば開発中の火力戦闘車/装輪155mm榴弾砲試作車5両が先月末までに防衛装備庁へ納入されたとの事、これによりいよいよ評価試験が開始されます。

 陸上自衛隊がFH-70榴弾砲後継装備として2013年度より開発をすすめている火力戦闘車/装輪155mm榴弾砲について、その試作車が防衛省へ納入されました。火力戦闘車は装輪自走榴弾砲として開発され、52口径155mm榴弾砲を搭載、99式自走榴弾砲とともに陸上自衛隊火力戦闘の骨幹を担う装備となります。主契約企業は日本製鋼、75式自走榴弾砲や99式自走榴弾砲を開発しています。

 当初は三菱重工が自衛隊へ納入している重装輪回収車を基本車体として、ここに日本製鋼が99式自走榴弾砲で培った長砲身の155mm榴弾砲を搭載する計画でしたが、途中でドイツMAN社製八輪トラックへ日本製鋼が榴弾砲を搭載する方式となっていました。当初は部分試作として重装輪回収車ではなくMAN社製トラックを採用したと考えられていました。

 部分試作ではなく全体試作車もMAN社製トラックを採用、このまま評価試験が行われることとなり量産もMAN社製トラックを基本とした火力戦闘車となる公算が高いでしょう。整備互換性を考えるならば、派生型が広く陸上自衛隊に採用されている重装輪回収車を基本とするべきなのでしょうが、油圧ジャッキにより重装輪回収車はかなりの衝撃に耐えます。

 FH-70榴弾砲後継は、試行錯誤の連続でした。FH-70自体が非常に高性能の榴弾砲で、半自動装填装置を採用し補助動力装置による自走が可能、39口径長砲身を採用し瞬発射撃能力から持続射撃能力まで高いという装備です。しかし、世界の火砲趨勢は39口径から52口径の、つまり155mm×39という砲身の長さから155mm×52という長さに延伸された。

 長砲身、その分鋳造製錬技術が高く要求されますが装薬の燃焼効率が高まり、初速増大と射程延伸に繋がる長砲身の時代へ入り、FHー70は陳腐化することとなりました。アメリカではロケット補助推進弾にGPS誘導砲弾を併用する事で長射程化と精密射撃能力を付与していますが、これではミサイルと違い無く、実際費用面もミサイル並、普及していません。

 カエサル軽自走榴弾砲、陸上自衛隊は2000年代にフランス軍が配備を開始したトラック車載の簡易自走榴弾砲に着目することとなりました。一見安普請に見えますが、FDC火力調整所と連接するカエサルは牽引砲では長すぎて牽引に支障があった52口径火砲を車上に載せる事で機動力を確保し、駐鋤を展開するだけで即座に射撃に移行できる能力は大きい。

 FH-70では中距離以遠への陣地変換ではFH-70の自走能力だけではなく中砲牽引車に再連結します、その際に砲身を移動状態へたたむ必要がありますが、カエサル軽自走榴弾砲はそのまま車載しているので射撃後の陣地変換が早い。これは盛んな陣地変換、同じ場所で射撃を続ければ数分で弾道を評定され反撃されるためですが、この要求に応えられます。

 日野自動車の大型トラックに技術研究本部、現在は防衛装備庁でしたか、開発の52口径火砲である先進軽量砲と駐鋤を組み合わせれば即座に開発できる、聞くところによればFHー70後継開発はこのように考えられていたようです。カエサル軽自走榴弾砲をライセンス生産すればよいという意見もあったのでしょうが、結局国産の方針が示される事となります。

 日本には52口径榴弾砲を99式自走榴弾砲として現在進行形で量産しているのですから敢えてカエサルをライセンス生産する必要はない、との判断でしょうか、もしくはカエサルの車幅が特殊大型車両にあたる2.55mあったためなのかもしれません。また、フランス軍自身が自国のカエサルを100門以下しか装備しておらず、実績も未知数という事情も影響したのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新型装甲車/装輪装甲車-改開発中止(考察)鈴木良之防衛装備庁長官が小野寺五典防衛相に報告

2018-06-06 20:14:38 | 先端軍事テクノロジー
■96式装輪装甲車後継白紙に
 火力戦闘車試作車が防衛省へ納入されたという報道がありました先週末、試作車が評価試験中の装輪装甲車(改)について、開発中止が報じられました。

 陸自の新型装甲車が白紙に、共同通信の驚きの報道を当方は札幌で知りました。翌日の第1旅団祭に併せてで、真駒内駐屯地祭では即応機動連隊改編を控えた第10普通科連隊が参加、新型装甲車は96式装輪装甲車の後継装甲車として開発が進められていたもので、即応機動連隊が今後順次改編創設される中で、毎年50両程度の調達が必要となる重要な装備です。

 コマツ、小松製作所の方が馴染み深いでしょうか、装輪装甲車 (改)として、開発を担当していましたが、試作車完成後、富士駐屯地の装備実験隊における評価試験の結果、防御力に問題が指摘され、二年間の期間で防御力改善設計変更を行っていました。報道では開発中止、鈴木良之防衛装備庁長官が既に小野寺五典防衛相に報告し了承された、とのこと。

 装輪装甲車(改)は2017年1月10日に試作車納入、全長8.40m、全幅2.50m、全高2.90m、重量20t、装輪装甲車 (改)の呼称の通り当初は96式装輪装甲車改良型との位置づけでした。96式装輪装甲車は全長6.84m、全幅2.48m、全高1.85m、重量14.5t、であり全長は1.5m、全幅は1.05m拡張されています。驚くべきは車高が1m以上高く90式戦車よりも高い。

 96式装輪装甲車、現状では既に400両近くが量産され、取得費用は一億円を下回った。安くて早くてお手頃などこが悪いのか、と率直に思う。陸自が新型装甲車を開発させた背景は96式装輪装甲車の車内容積と管制式簡易爆発物IED爆発への防御の低さでした。曰く増大する小銃班装備を全員分搭載出来ない、曰く車高を抑えた為に地雷への脆弱性など。

 01式軽対戦車誘導弾は96式装輪装甲車制式化当時には完成しておらず、当時諸従犯に配備されていた84mm無反動砲よりも大型です。また、96式装輪装甲車制式化当時の個人用装具は軽量な戦闘防弾チョッキⅠ型で側面防護板を追加した現行の戦闘防弾チョッキⅢ型は着席時の占有空間が一人当たり10cm程厚く、確かに小銃班装備全般は増大しています。

 しかし、車内容積が足りなければ250キロトレーラーを高機動車のように牽引すればいいのだし、01式軽対戦車誘導弾は車体上部に発射架を追加し機動時は被覆しておけばよいでしょう。IEDについては現在爆風対策には車高を上げて外に爆風を逃がし、耐衝撃座席採用程度しかなく、車幅制限のある日本ではトップヘビーにしかならないため限界がある。

 装甲車、要求仕様にIED防御が含まれていたとされますが、そもそも日本は専守防衛、IEDは仕掛ける側であって相手が国内でゲリラ戦を続けるまで戦う事を想定する必要はない。実際問題、IED被害が多発したのはイラク戦争治安作戦の米軍等有志連合、最近では自動車型IEDがISILにより攻勢にイラクで投入された事を思い出しますが、外征軍が我が国に攻め込む場合での使用は特性上考えにくい。

 コマツは防衛装備開発では非常に経験を積んだ防衛産業です。陸上自衛隊普通科部隊の主力装甲車となった軽装甲機動車はコマツ製ですし、96式装輪装甲車もコマツ製、自衛隊初の国産装輪装甲車である82式指揮通信車もコマツ製、戦闘車両では機関砲を備えた87式偵察警戒車もコマツ製です。73式装甲車開発では三菱重工と試作合戦を繰り広げました。

 装輪装甲車 (改)の改修は当初、2017年から開始され2021年に開発完了、という開発期間延長で進められていましたが、2018年の開発中止決定は、やはり基本車輛の重心と安定性を維持しつつ、防御力強化を行う事に限界があったのでしょう。一方、同時並行し三菱重工は独自に車幅の大きな装輪装甲車を開発中で、今回の装甲車代案に提示される事も考えられるでしょう。

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【G7X撮影速報】第11旅団創設10周年/真駒内駐屯地創設64周年記念行事(2018-06-03)

2018-06-05 20:18:57 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■真駒内,16式機動戦闘車初登場
 真駒内駐屯地祭、行って参りました。総合近代化旅団は即応機動旅団への改編前年、第11師団から旅団改編を経て10周年、駐屯地創設64周年です。

 第11旅団創設10周年記念-真駒内駐屯地祭、日曜日に行って参りました。第11旅団祭は2011年以来で札幌までは中々進出する事が出来ず今回二度目、実は亡くなった大叔父が戦時中戦車十一連隊で千島防備に当っていた事を遺品整理で知り親近感が高まっていました。

 真駒内駐屯地、札幌市営地下鉄自衛隊前駅から通りの向かい側にあります。全国には第10師団司令部の守山自衛隊前駅等自衛隊前という地名は数多くありそうですが、自衛隊前駅、と明記したのは意外にも此処真駒内駐屯地前だけだったりするという選ばれた一駅という。

 札幌市、道都札幌は人口194万という大都市で名古屋市に続く日本第四の都市です。そして北海道は大陸ロシアを海峡の対岸に睨み、札幌市には此処真駒内に第11旅団司令部、そして北海道全域の防衛を担任する北部方面総監部が置かれる札幌駐屯地も置かれている。

 旅団3100名、道南地区の防衛警備及び災害派遣に当っています。第11旅団は3600名程度の規模であったと記憶するのですが、旅団行事にて部隊紹介では3100名と説明され、滝川の第10普通科連隊、真駒内の第18普通科連隊、函館の第28普通科連隊が置かれている。

 冷戦時代は第11師団として人員7000名を以て道南地区の防衛警備に当たり、幾度か現実味を帯びたソ連軍夏季侵攻の脅威顕在化へ、当時の師団は道都札幌の絶対死守と内地を北海道へ結ぶ青函地区固守を任務としていまして、師団は重装備部隊として知られています。

 総合近代化旅団と位置づけられ、戦車大隊は90式戦車を30両装備、特科隊は99式自走榴弾砲を15両装備、普通科連隊は全ての連隊に96式装輪装甲車中隊を装備しており、更に近年は中距離多目的誘導弾や軽装甲機動車中隊等、旅団はその装備近代化を継続している。

 即応機動旅団への改編、2019年度に予定されている第11旅団の改編に併せ、現在は滝川駐屯地の第10普通科連隊を第10即応機動連隊へ改編の準備が大車輪で進められています。この為、今年度は四国善通寺の第15即応機動連隊より16式機動戦闘車が初参加しました。

 旅団改編、この労力は実は大変なもので、今年度の旅団祭は改編準備の影響か、訓練展示模擬戦は行われませんでした。同日は上富良野駐屯地祭や青森駐屯地祭も行われており、現地では模擬戦無にがっかりの声も少なくない。師団よりも旅団は改編準備負担が大きい。

 第12旅団の即応近代化旅団改編時にも、相馬原駐屯地祭にて、訓練展示模擬戦を中止しヘリボーン展示という、快晴の空からUH-60JAからロープ降下するだけの展示となった事が。施設中隊と通信中隊を施設隊と通信隊に拡大改編する、比較的大規模な旅団改編でしたが。

 第11旅団の即応機動旅団改編前夜、といいますか準備中の本年は、観閲行進に即応機動連隊を思わせる後身、第10普通科連隊を第10即応機動連隊に改編した際に編入される高射特科装備等を観閲行進で協同させる、という出来る範囲内での式典演出が為されました。

 第11戦車大隊の90式戦車観閲行進に先立ち、第15即応機動連隊の16式機動戦闘車が観閲行進に参加、驚いた地元の方が、もう旅団に配備されているのですか、と尋ね、乗員の人が、はい旅団に配備されています、と。配備部隊は第11旅団でなく第14旅団ですが。

 16式機動戦闘車参加、は本年の真駒内駐屯地祭の目玉でしたが、第11戦車大隊に先行配備されているのではなく、善通寺からの参加、今年三度目の16式機動戦闘車は善通寺を長躯フェリーと高速道路で進出したとの事、即応機動連隊の機動力を見せつけられたものです。

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【17】F-35Aに至った回想のF-X選定と珠玉のF-X候補

2018-06-04 20:13:32 | 先端軍事テクノロジー
■F-15J後継機を展望する
 新防衛大綱とF-35B&EA-18G、F-15J後継機を展望する視点からF-X選定を振り返ってみましょう。

 F-35B戦闘機の方が主力戦闘機として一種理想的な要素があったのではないか、F-35Bの難点は戦闘行動半径について、F-35Aよりも小さい点です。この要因には垂直離着陸に必要なリフトファン部分を追加しているために搭載燃料総量が減少したという事情があるのですが、F-35Bの設計は垂直離着陸能力の意義を航続距離よりも大きく見た為でもある。

 F-35Bであれば、例えば九州南西諸島の防空について、新田原基地や那覇基地、鹿屋航空基地や鹿児島空港、嘉手納基地や普天間飛行場の他に様々な地方空港や誘導路が確保されているならばヘリポートを代替滑走路として運用する事も出来たでしょう。また、専守防衛の観点から戦闘行動半径が小さいほうが他国へ脅威を与えないという建前も強調出来る。

 F-15J戦闘機と比較しますと、実は戦闘行動半径は空軍型のF-35Aであっても小さくなっています、もともとF-15Jの原型であるF-15C戦闘機が制空戦闘機として、敵制空権に乗り込み敵迎撃戦闘機を全て撃墜する事で制空権を奪う、という年頭の戦闘機ですので、広大な戦闘行動半径を有しており、F-35Aはそこまでの運用能力は求められませんでした。

 F-35A戦闘機とした背景は、喫緊のF-4EJ改戦闘機、原型のF-4が初飛行を行ったのが1959年であり、流石に老朽化が進み過ぎているためという要求と同時に、将来的に初期型のF-15Jについても代替を行うという構想があった事は確かです、逆に現在に42機で製造を終了する予定ならば三菱FACO,最終組み立て施設への設備投資を行う利点がありません。

 F-15E戦闘爆撃機、航空自衛隊が純粋に広大な戦闘行動半径を求めるのであれば、多少F-15J戦闘機と互換性が期待でき、使い勝手もよかったでしょう。全く別の機種といわれるF-15CとF-15Eでも整備要員の相互人事が実際米空軍において行われていますので、戦闘行動半径だけを考えるならば次期戦闘機選定ではF-35AよりF-15Eに説得力がありました。

 F-X選定の候補機は欧州共同開発のEF-2000,ボーイングF-15E等が提示されていましたが双方ともに第4.5世代戦闘機であり、将来戦闘機としてのステルス性には限界があります、第4.5世代戦闘機もデータリンク能力等は伍する水準に引き上げられるのですが、ステルス性は後付けできません。第五世代戦闘機としての能力を重視し、F-35Aが選定されました。

 F/A-18E戦闘攻撃機とF-35B戦闘機のハイローミックスを念頭に当面はF-15J戦闘機とF-35B戦闘機のハイローミックスを行う、理想的な運用体系はこの方式であったのかな、と考えています。無論、ハイローミックスのローに戦闘機のロールスロイスとよばれたF-15を提示する事は若干違和感を覚えないでもないのですが、ハイろーミックス、ということで。

 F-15Jはまだ運用寿命が残っていますが、機種そのものの寿命を忘れてはなりません。F-15J戦闘機はアメリカ空軍のF-15C戦闘機との段階近代化改修プログラムに歩調を合わせる事で第一線能力を維持しています。その上でF-15Cについてアメリカ空軍では高コストであるとして早期退役の可能性が示されており、ここが機種として分水嶺となるかもしれない。

 F/A-18E戦闘機とF-35B戦闘機のハイローミックスを提示の背景には、F-15Jにアメリカ空軍が実施している段階近代化改修を航空自衛隊が独自プログラムにて代替わりする能力には限度がある為、それならば当面アメリカ海軍において延命計画が提示されていると共にライセンス生産や費用面で有利なF/A-18Eに置換える事で長期間の能力維持が可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【07】訓練展示状況開始(2017-07-09)

2018-06-03 20:07:01 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■富士教導団訓練展示発動
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭、今回も写真と解説が外れている点、重ねてどうかご容赦を。

 12式地対艦誘導ミサイルシステム、88式地対艦誘導ミサイル,こんな強力なミサイルはロシア軍から戦術核で狙われる可能性もあるので、坑道掘削装置により地下に掩砲所を建設して地下に配置する事となっているのです。これは一部方面施設団に配備されています。

 自衛隊では南西諸島へ配備を重視している、熊本の健軍駐屯地に最初に配備されており、加えて新設される奄美駐屯地へも配備されるとの事、更に例えば那覇駐屯地と石垣駐屯地に配備したならば、尖閣諸島を含めミサイルの射程に収める事が出来る、日本には心強い。

 特科教導隊第303観測中隊、遠隔操縦観測システムFFOS等を装備しています。後方の1t半トラックは遠隔操縦観測システム簡易追随装置、FFOSはGPSに頼らない自律運用を重視しすぎ、システムが巨大化しすぎ、支援車両6両と大袈裟な支援が必要となっている。

 FFOSは50km先の目標を観測する無人偵察機ですが、無人機、同統制装置、追随装置、簡易追随装置、無人機発射装置、機体点検装置、機体運搬装置、と大型化しすぎています。ただ、GPSや衛星通信システムへ過度に依存する事は必ずしも良策と云えない事も確か。

 広範囲の電子妨害システム、ロシアのムルマンスクBNのような強力な電子妨害システムが開発されている今日、自律飛行とGPS依存度への難点が強調されますが、せめてここまでシステムが巨大化するならば無人機を10機程度同時管制できる能力が欲しいですね。

 ちなみに2015年にOH-1不時着水事故が発生して以降、検査飛行以外のOH-1観測ヘリコプターの運用が停止されているというお話、一旦飛行再開が行われたものの別の事情で予防着陸事案があり、自衛隊観測ヘリコプターはOH-6DとこのFFOSのみとなっています。

 JMMQ-M5気象観測装置や対砲レーダ装置JTPS-P16が続く、JTPS-P16は40km圏内の複数大隊程度の部隊より投射される同時多数の砲弾を 同時に補足追尾し射撃位置を評定することが可能で、30から60までの砲弾を自動処理できる、ロケット弾も追尾できる。

 対砲レーダ装置JTPS-P16は、車両そのものの費用も高いのですが、その情報処理装置と火砲への情報伝送装置が同程度に高い費用を要します。逆にこの重要性を予算面で認識しているかどうかが、砲兵近代化への立場というものを明確に示すものだといえるでしょう。

 JTPS-P16は砲弾さえ探知する強力な電波を放出するため、窪地等で電波を敵に標定されないよう配置すると共に、地中マイクロフォン等で敵の砲撃を感知した瞬間に電波を発します。これは音響標定といい、これだけでも大まかな敵火砲の位置を探る事が出来ます。

 音響標定は一切電波を出さず、複数のマイクロフォンへ伝播した音響の所要時間から計算し射撃位置を探るもので、ロケット弾を標定出来ないのですが、対砲レーダ普及前は対砲兵戦の標定における主流でした。自衛隊では音響とレーダーを併用し二重の確度を目指す。

 JMMQ-M5気象観測装置は湿度や風速などを地上観測装置とゾンデ追尾装置により精密観測します、気象というものは長距離砲撃にはかなりの影響を及ぼすので気象観測は重要な任務です、何しろ一切誘導しない砲弾を砲口から発射し、30km先を狙うのですから、ね。

 特科部隊の縮小と共に情報中隊から化学科部隊へ異動する事例もあり、これは化学剤散布等の分散状況を把握するためにも気象観測が重要である為です。しかし、火砲が縮小される分、一門当たりの責務は増大するのですから情報優位の質的向上の施策も必要でしょう。

 教育支援施設隊の観閲行進、陸上自衛隊には施設学校として、施設科の戦闘工兵任務や建設工兵任務の戦術研究や幹部教育を行う期間が茨城県の勝田駐屯地にありますが、富士学校は普通科部隊の陣地攻撃や機甲科部隊の通路啓開等に施設科部隊の支援は不可欠です。

 特科部隊の陣地構築にも必要ですので独自の施設科部隊に教育支援施設隊を有しています。富士教導団には衛生隊や後方支援連隊に当たる部隊はありませんが、東富士演習場ではこの施設隊を加える事で独立した運用を行う事が出来る。逆に、こうしないと演習できない。

 施設科部隊は、考えてみますと普通科連隊にも施設作業小隊が隷下に置かれているように、隊員が施設科隊員が居なければえんぴでせっせと陣地構築し、対戦車ミサイル用の掩体を掘るだけでも実に長時間かかる。ここで施設科部隊が支援したらば掩体など一発で掘れる。

 もともと蛸壺陣地として一人用の個人掩体が組織的に運用されたのは1861年の南北戦争ですが、蛸壺に個人携行品と予備弾薬や糧食を備蓄するには限度があり、蛸壺陣地と横につなぐ戦術が一般化します、これが塹壕、これ以前にも攻城用の通路としては存在した。

 野戦築城として散発的に掘られていた塹壕が陣地として定着してゆきました。従来、工兵の任務は攻城戦における敵城塞の破壊という基本があり、これを排除するために攻城戦は野戦へと変容してゆきました、逆にこの頃に包囲された場合単独で撃退が難しいとされた。

 この為、攻城戦では工兵の支援に当っていた砲兵が野戦では野戦砲兵として威力を発揮し、その上で地域制圧を行う歩兵と機動打撃力としての騎兵との連携が行われていたのですが、陸戦技術と戦術変容は此処に変革を強いた。攻城技術の発展が籠城を厳しくした訳ですね。

 工兵は銃という第一線火力の性能向上とともに再度野戦築城という任務、この野戦築城を踏破する障害処理という形で意義を深めていったわけですね。この技術変化の戦術への影響は時として生じるものでして、歩兵や騎兵に砲兵と工兵が順次主役を変えてゆきました。

 攻城戦闘主体の時代には、現在のような歩兵主体の時代ではなく、歩兵より工兵が重視されていた時代がありますし騎兵優位時代もありましたね。騎兵主体の時代は主兵装が弓矢の時代で機動力と相乗させる事で優位性を確保できましたが、小銃火力発展の前に潰える。

 92式地雷原処理車、爆導索という爆薬を連結させたロープをロケット弾で遠方に投射するもので、爆薬24個を連結しています。地雷は特に対戦車地雷などは、自衛隊が用いる92式対戦車地雷で爆破したならば高圧のジェットが2000mまで吹き上げる、というもの。

 この高圧ジェットを戦車の底部に叩きつける事で戦車を破壊します。このため、地雷原処理車は幅5m、長さ200mの地雷原を強力な爆薬で一挙に誘爆させ、通路を造りだします。略称はMCVといいますが、このMCV,16式機動戦闘車のMCVと呼称が被ってしまった。

 91式戦車橋、74式戦車の車体に戦車用架橋装置を搭載したもので、20mの橋梁を架橋させることができます。90式戦車を含め全ての装備品が通行可能で、北部方面隊を中心に装備しています、河川を越えるというよりは対戦車壕などを突破する際に用いる装備品です。

 戦車部隊に必要な装備です、このため装備数は30両ほどではありますが、この他に自衛隊には81式自走架橋柱や07式機動支援橋が装備されています。こちらのほうが橋長は大きいのですが、しかし架橋に時間がかかり、戦車部隊の攻撃前進等には、不向きの装備です。

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多用途運用母艦導入与党提言,航空母艦-強襲揚陸艦中間“Power Projection Ship”の可能性

2018-06-02 20:16:43 | 防衛・安全保障
■空母の役割を担う新型艦を提言
 NHKが先月25日付と今月1日付で報じました多用途運用母艦とは何か、先週に引き続き今週も考えてみましょう。当方は妙な新艦種よりもヘリコプター搭載護衛艦を増強すべきと思うのですが、ね。

 与党自民党が政府へ提案しました、防衛計画の大綱改訂提言、ここに明示されていました多用途運用母艦とは、いったいどのような艦艇を示すのでしょうか。航空機の運用を重視している、と伝えられることから全通飛行甲板を有する大型艦となる、少なくともここの部分は明確に示されているのですが、排水量の規模も含め、それ以上の情報が曖昧です。

 空母の役割を担う「多用途運用母艦」、という表現はNHK1日付報道“中国念頭に“空母”導入検討を首相に提言 自民”に示されていました。ただ、航空母艦を導入、という表現を避けた背景には、先日豪州海軍が横須賀親善訪問へ派遣したキャンベラ級強襲揚陸艦のような、空母の役割を担う多目的艦を指しているのではないか、という視点をひとつ。

 航空母艦なのか、という視点、大きな関心事はここに収斂する事となるでしょう。実は自民党が示す多用途運用母艦は必ずしも航空母艦を示すものではないのではないか、幾つかの根拠を持ってこのように推察しています、もっとも、航空機の母艦機能を有するならば、はつゆき型護衛艦や、やしま型巡視船はもちろん、ヘリコプターが発着できる客船等も全て航空母艦だ、という論調は無視します。

 内閣法制局統一解釈では憲法上保有できない装備として専ら相手国の国土を壊滅させることに用いる装備で、攻撃空母は保有できない、しかし防御用空母は保有できる、という見解が現在も維持されています。攻撃空母は一時期アメリカ海軍が航空母艦の多様化を前に、対潜空母や攻撃型空母とを分けた際、特に後者はA-3攻撃機による戦略核攻撃能力を有していたため、これを指すと考えられる。

 飛行機を積めるならば全て空母だ、という論調は無視すると書きますと、何か辛辣な突き放したような印象があるかもしれませんが、実はこの視点、2013年に海上自衛隊がスキャンイーグル無人偵察機を導入し、護衛艦などから運用する計画を示した際に、とある報道機関が、これは憲法上禁止されている航空母艦に当たるのではないか、という指摘を行ったことに端を発します。なんでも航空機が運用できるならば全て航空母艦という。

 しかし、航空母艦と言うには相応の資格があるものでして、例えば巡洋艦をクルーザーと呼称するといって、例えば往年の映画大スターがクルーザーを購入し神奈川県内にて漏電にて火災事故を起こした際に、"映画俳優保有の大型巡洋艦が神奈川県で大火災沈没”と書くようなものです。またはSNS等で新しく聞いた内容を略して新聞によれば、と書くようなものともいえる。軽空母や航空母艦、STOVL空母やCTOL空母と明確に区分する事ができるのですから、航空機が運用できるならば全て空母、とは暴論にほかなりません。

 多用途運用母艦が航空母艦ではない、という推察の論拠は、ここの部分で、対潜空母は保有できる、という政府統一解釈があるため、憲法上自衛隊は航空母艦を保有することができると考えられます。ただ、核兵器を搭載し核攻撃専用機、厳密にはA-3攻撃機や後継のA-5攻撃機さえ無く、核攻撃専用機は無く、そもそも自衛隊は戦術核さえ保有していないのですが、ここの部分に一つ。

 攻撃空母以外であれば保有でき、そもそも核兵器を保有せず、その計画さえない自衛隊には上記定義にあう攻撃空母は概念上あり得ない点から、航空母艦が必要ならばそのまま装備できるのです。その上で敢えて多様と運用母艦という呼称を用いている。これは例えば低速であるとか、航空機以外の運用支援に当たる母艦、掃海母艦や輸送艦としての機能を有する艦艇を示しているのかもしれません。

 輸送艦としての能力、実のところ多用途運用母艦とは航空母艦としての機能よりも、アメリカ海軍の強襲揚陸艦に似た機能、アメリカ海軍の強襲揚陸艦と言いますと余りに巨大ですので、もう少し小型のオーストラリア海軍が運用する強襲揚陸艦キャンベラ、イギリス海軍のコマンドー空母オーシャン、イタリア海軍の戦力投射艦カヴール、と同様の艦艇を示している可能性はないでしょうか。

 コマンドー空母、強襲揚陸艦、戦力投射艦、輸送艦、表記しますと全く違うように見えますが、要するに全て同じ用途のもの。近年は指揮司令母艦という名称も含まれるのでしょうか、カタカナではパワープロジェクションシップともいう。これは冷戦後、従来の水上戦闘艦体系に当てはまらない、空母や揚陸艦の中間あたりの艦艇が、冷戦時代にそれほど重視されなかった軍隊による人道支援任務や災害派遣任務へ対応する必要性から醸成された区分の一つ。

 列島線防衛、輸送艦としての機能を有すると推測するもう一つの背景は、自民党提言が中国の海洋進出と共に南西諸島から台湾にかけてを“第1列島線”と区分している点を念頭に日本も“列島線防衛”を掲げ、多用途運用母艦の必要性を提示している点です。これは逆に考えるならば、列島線防衛、制空権維持だけではなく水陸両用作戦能力も当然必要になるだろう、というもの。

 ヘリコプター搭載護衛艦、海上自衛隊はすでに護衛艦いずも型として満載排水量27000tの全通飛行甲板型護衛艦2隻を建造し、ひゅうが型護衛艦として先んじて満載排水量19000tの護衛艦を建造しています。仮にF-35B戦闘機を艦上固定翼哨戒機として運用するだけの母艦が必要ならば、いずも型と同程度の護衛艦でも格納庫搭載に併せアメリカ海軍のように甲板係留を並行することで20機程度のFー35Bは搭載可能でしょう。

 護衛艦と輸送艦の違い、最たるものは速力とこれを構成する機関出力です。輸送艦は護衛艦と違い、最高速力はそれほど必要とされません、護衛艦は瞬間的に最高速力を発揮し、例えば対潜水艦攻撃や対艦ミサイルなどへの艦隊運動による回避能力を求められます。輸送艦にもあっても困らないものですが、その分、機関部や吸排気系統が大型化し、その分装備を積めなくなります。

 多用途運用母艦は、護衛艦や航空母艦として運用するには低い速度を、しかし、通常の輸送艦、海上自衛隊は満載排水量14000tの輸送艦おおすみ型3隻を運用していますが、これよりも大型で航空運用能力を相応に重視した艦艇を想定している、だからこそ多用途運用母艦は航空母艦ではないし護衛艦でもない、こうした想定が自民党提言の背景に、あるのかもしれません。

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平成三〇年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.06.02-03)

2018-06-01 20:11:16 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 梅雨という憂鬱が実感される今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の自衛隊行事紹介です。

 真駒内駐屯地祭、札幌市真駒内に旅団司令部を置き、道南地区を防衛警備管区とする第11旅団の創設記念行事です。第11旅団は近く即応機動旅団へ改編され、16式機動戦闘車の配備が予定されています。青函地区と札幌防衛の重責を担うべく、90式戦車装備の戦車大隊、各普通科連隊には96式装輪装甲車中隊、旅団特科には99式自走榴弾砲、と重装備だ。

 青森駐屯地祭、東北北部を防衛警備管区とする第9師団の創設記念行事です。青函地区という津軽海峡を挟む防衛上の要衝を担当する師団であり、冷戦時代はソ連軍北方有事に備える内地の北辺防衛に当たる重責の師団で、北部方面隊に準じた重装備師団として知られます。東北の兵隊は強い、とは戦時中だけではなく先日東部方面隊の方に聞いたお話です。

 上富良野駐屯地祭、ドラマ北の国から、で有名となった北海道の観光地は道北防衛の第2戦車連隊、は10式戦車と90式戦車を装備、そして特科団隷下の第4特科群が駐屯しています。MLRSとともに203mm自走榴弾砲を装備しています。203mm自走榴弾砲は約90両調達されましたが先日九州から引退し、残るは北海道と僅かに富士学校等で残るのみ。

 名寄駐屯地祭、第2師団隷下第3普通科連隊、第2特科連隊第2大隊、第2偵察隊などが駐屯しています。陸上自衛隊最北の普通科連隊であり、道北北部宗谷海峡に最も近い普通科連隊として冷戦時にはソ連、現在はロシア軍を対岸に睨む普通科連隊です。有事際し即座に連隊戦闘団を編成できるよう、特科大隊が駐屯、ホーク地対空ミサイルも配備される。

 防府南基地、防府北基地、土曜日と日曜日に一般公開されます。日曜日の北基地にて航空祭が行われ、第12飛行教育団の置かれる山口県の航空自衛隊基地です。第12飛行教育団にはT-7練習機が配備、陸上自衛隊防府分屯地が隣接し第13飛行隊のヘリコプター部隊が分屯しています。防府南基地は航空自衛隊の空士教育を担う第1教育群が置かれています。

 奈良基地、航空自衛隊幹部候補生学校が置かれる奈良県唯一の基地です。幹部候補生学校、将来の三等空尉を養成する奈良基地は、飛行場施設を持たないため、航空祭のような展示は行われませんが、近傍の、といっても電車ではすごく遠い、岐阜基地や小松基地より航過飛行による飛行展示が行われます。また白山分屯基地からミサイル等地上展示される。

 大滝根山分屯基地、第27警戒群がおかれている航空自衛隊のレーダーサイトです。福島県双葉郡に所在し、あの2011年東日本大震災では福島第一原発事故に際し、原発30km圏内唯一の自衛隊基地施設として機能していました。大滝根山は標高1192m、田村市と川内村の境界に位置しJ/FPS-3Aレーダーを運用しています。鉄道での探訪は距離があり厳しい。

 さて撮影の話題、自衛隊行事の帰路に地物を逸品と汽車の前に地酒を一献、新幹線や新快速での行事展開故の楽しみというところ、そういうのも自動車を運転する場合に地物はともかく地酒はできません。寿司はランチタイムに並寿司を頂く場合、他のランチとお値段は違いません。ただ、注意しなければならないのは、ランチタイム終了時刻と駐屯地閉門時間がほぼ同じ。

 日曜日に特にオフィス街なんかはビジネスマン狙いのお店、日曜祝祭日ともにランチ営業していないお店も少なくないのですが、陸上自衛隊駐屯地や航空自衛隊基地、海上自衛隊基地の周りですと日曜日もランチ営業しているところが、まあ少なくないように感じます。しかし、駐屯地を1300時くらいに出なければランチタイムが終了してしまうのですよね。

 美味しいご飯を頂くのにお店を選ぶ中、終日営業となりますと、ラーメン屋さんやチェーン展開のファミリーレストラン、限られてしまいます。ただ、せっかく遠出して駐屯地や基地に行くのですから、日本全国どこでも頂けるもの、というものでは味気ない、が、遠出したのだから装備品展示等もしっかり撮影してゆきたい、ここはいつも迷うところです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・6月3日:名寄駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/unit/butai/nayoro/index/index.html
・6月3日:上富良野駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/unit/butai/kamifu_station/index.html
・6月3日:第11旅団創設記念真駒内駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/
・6月3日:第9師団創設記念青森駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/
・6月3日:大滝根山分屯基地祭…http://www.mod.go.jp/asdf/ohtakine/
・6月3日:航空自衛隊幹部候補生学校創設記念奈良基地祭…http://www.mod.go.jp/asdf/nara/
・6月3日:防府南基地開庁記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/hofuminami/
・6月3日:防府北基地航空祭…http://www.mod.go.jp/asdf/hofukita/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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