北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

大阪府北部地震M6.1,南海トラフ地震への教訓は32万名1410兆円の天文学的数字への備え

2018-06-20 20:00:49 | 防災・災害派遣
■広範囲震度六弱への対策が重要
 近畿地方を中心に激しい降雨が観測され、地震被害地域への二次被害が心配されます。

 大阪府北部地震、直下型地震は南海トラフ巨大地震への警戒態勢を強化している大阪府下で発生しました。その一つの教訓としては震度六弱の規模では広範な住宅倒壊などは起きず、ブロック塀の補強と家具の固定を行うという、現実的な経済負担で行う事のできる対策であっても、阪神大震災のような広範囲の住宅火災や地域規模での壊滅を回避できる。

 南海トラフ地震被害総額1410兆円、死者32万名、という数字が防災対策の重要性を鋭く突き付ける中、特に津波被害を念頭に独自の防災対策を進めていました大阪府において、ブロック塀倒壊や家具転倒による痛ましい地震犠牲者が生じた点に、1410兆円に32万名という数字が独り歩きし、防災対策を何か個々人の感覚と乖離させる事になっていないか。

 破滅的な災害被害、となりますと、個々人での防災には限度がありますので、いずも型護衛艦を更に建造し洋上航空拠点を、とか、F-35戦闘機の複合光学情報装置を活かした情報収集転用へ増強、一機50億のCH-47JA輸送ヘリコプターをもっと取得する、中部方面隊の師団旅団にもAAV-7水陸両用車を大量配備、と御上、政府主体の対応に目が行きます。

 防災対策、家具を固定しても震度七で家屋が倒壊しては結局無意味ですし、非常食を備蓄しても在宅時以外は意味がなく家屋が津波で流失してしまえば食べられません。万一の際の蓄えも被害1410兆円となればそもそも日本円が維持できるかが難しく、それならば米ドルやユーロにスイスフランを貯めたが良いのか、金を筆頭に貴金属か、と対策が出来ない。

 しかし、備えるべきは震度七の被害は度外視し、震度六弱への確実な防災対策を確立する事で、社会基盤と流通基盤を維持し、どうしようもない、という激甚な被害を及ぼす震度七地域や津波被災地域を支援できる体制へ、つまり震度六弱の地域を助けられる側となるか助ける地域と出来るか、という視点で考える方が重要で、ここに個々人の防災が活きる。

 第14回中央防災会議として2003年に政府が東海-東南海-南海地震同時発生を想定した震度分布では震度七は静岡県の平野部と愛知県渥美半島や三重県志摩半島の一部と和歌山県南端や高知県沿岸部に極一部発生する以外は、静岡県愛知県三重県全域と紀伊半島全域と四国南半分、大阪府と岐阜県南部が震度六弱、という水準で当然ながら震度七は僅かです。

 強震波形最大震度計算として政府が東日本大震災東北地方太平洋沖地震を教訓に、歴史地震として千数百年単位で遡った過去最大規模での想定では、静岡県と愛知県三重県高知園全域が震度六強、三重県と愛知県和歌山県と高知県の広い地域に震度七、という想定があります。しかし、この想定でも東京は震度五強、大阪震度六弱、名古屋も震度七は極僅か。

 1410兆円という数字は日本土木学会が6月7日付報道で長期的被害として明示したものです。国民一人あたりで計算しますと四人家族で5000万円の準備があれば乗り切れる数値、と少々現実離れした数字ではありますが、実のところこうした天文学的数字を示されますと逆に遠い宇宙の超新星爆発によるガンマ線バースト等の危険性を指摘されるのと同じ。

 32万という数字ですが、過去には全国紙が大学の社会安全学部長へ取材し示したM9規模の東南海南海地震の津波浸水範囲を報じ、ここには浸水地域に尼崎駅や大阪駅と大阪駅は勿論、浸水地域には遠く茨木市中心部や八尾市中心部、枚方市や豊中市まで浸水地域に含め、津波遡上地域を単純に標高で計算していないか、という怪しいものまでありました。

 大阪駅で南海トラフ地震の直撃を受けた際には高槻市の北部、出来れば京都府の長岡京市まで逃げれば安全だ、津波は地震発生後五分でやってくる、こう告げられますと現実的な対策は不可能です。しかし、津波は河川や低地に沿って遡上しますが陸地に接した瞬間にそのエネルギー減衰が始りますので、波の高さが標高の遡上高に繋がる訳ではありません。

 津波は地震発生後五分でやってくる、これも事実ではありますが津波第一波が最大波高となる訳ではありません、実際、東日本大震災でも最大波の到達まで一時間以上あったことは、2011年に同時中継を見ていた方ならば認識できるでしょう。大阪から長岡京まで避難と津波は地震後五分、これでは逃げる気力も起きませんが、科学的に検証すべきでしょう。

 天文学的数字に惑わされる事無く、津波の由良水道等を通過する事での地形減衰や速度減衰、そして浸水地域における家屋損傷の危険性の比率の計算などを予算はかかりますが産出し、その上で個人防災では出来る事は何があるのか、ブロック塀の補強や家具の固定と書架の書籍落下防止、非常食や乾電池等の可能な個人防災備蓄が促されるよう、研究を重ねるべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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大阪府北部地震M6.1,高槻市への自衛隊災害派遣の継続と広域鉄道交通障害帰宅困難者問題

2018-06-19 20:14:01 | 防災・災害派遣
■南海トラフ厳戒中の大阪地震
 大阪府北部地震が発生してから一日が経ちました。死者5名、近畿一円で地震による犠牲者はあの阪神大震災兵庫県南部地震以来です。

 直下型地震は局地的に激甚被害を及ぼしますが、昨日記事掲載時点の犠牲者は3名、しかし、転倒家具を要因として更に2名の犠牲者が増えることとなりました、単身世帯の被害という現代ならではの被害、残念です。自衛隊災害派遣は昨日に続き本日も継続、千僧の第3師団より隷下の伊丹第36普通科連隊と千僧第3後方支援連隊が高槻市での給水支援を実施し、八尾駐屯地より中部方面航空隊のUH-1Jが映像伝送を実施しています。

 高槻市、人口35万で新快速と阪急特急が停車する都市という認識で高槻城址の豊かな住宅都市という印象ですが、ここに人的被害が集中しました。近畿一円では奈良市36万に準じ、大津市31万よりも大きな都市です。熊本市74万の半分ですが、大阪と京都の中間に位置しています。今回震度六弱が観測された地域はここ高槻市と、大阪市北区、人口40万の枚方市、人口28万の茨木市、人口13万の箕面市、京阪神の都市部を直撃しました。

 南海トラフ地震、今回の大阪府北部地震は無関係でしたが、揺れ始めた直後の緊急地震速報、近畿一円が赤く示された表示に刹那南海トラフ地震の冷たい予感、現実的な脅威を突きつけられました、政府中央防災会議では最大規模で発生した場合の南海トラフ地震では京都市が震度五強から震度五弱、揺れの規模は京都市の想定南海トラフ地震と同程度であったわけです。この規模の被害であれば、京都市は同程度の揺れとなる南海トラフ地震でも助けられる側ではなく助ける側に回れるでしょう。ただ強震波形四最大震度想定では京都市も震度七の局地発生が想定されているため、準備は必要です。

 減災という地震前の準備、しかし、ブロック塀倒壊が今回の地震被害の半数を占めることとなりました。2016年の熊本地震でもブロック塀倒壊で犠牲者が出ていますが、熊本地震では1名となっており、犠牲者に占めるブロック塀倒壊犠牲者の比率が大きく、やはり地震の震災規模を抑えるには事前の減災努力の多寡が実る事を痛感させられたかたち、その他の耐震補強を含め、次に備えねばなりません。

 帰宅困難者、この問題について。帰宅困難者、今回は通勤通学困難者という問題でしょうか、公共交通機関不通による広域障害、東日本大震災を筆頭に今回も大きな問題となりました。深夜に発生した熊本地震は別として、死者には直結しないものの、帰宅困難者は付随被害を大きくします。安全確認をなおさらに遮二無二徐行運転すべき、とは言いませんが、時速5km/h程度の徐行運転をもう少し早く再開する技術研究は行われるべきでしょう。

 広域交通障害、地震はミサイル攻撃等の局地被害と異なり広域被害を及ぼします。例えば、高槻市と枚方市という隣接する二つの都市には、東海道新幹線、東海道本線京都線、阪急京都本線、京阪本線、京都と大阪の大動脈が縦貫しています。新快速と阪急特急に京阪特急、どれか一つでも平常運行していたらば、昨日の広域交通障害はかなり緩和されたことでしょう、しかし、地震という特性上一つでも烈震被害を免れるというわけには行かず、大量の帰宅困難者をどのように誘導するか、大きな課題です。

 鉄道麻痺による帰宅困難者、特に今回は通勤時間帯という通勤通学者がまさに列車に乗車している時間帯に発生しており、非常ブレーキにより停車した瞬間に交通弱者となる時間帯でした。こればかりは、通勤時間帯を可変式とするフレックスタイム制度を導入したとしても解決できるものではありません。ただ、京阪や阪急、JR新快速とクロスシート車比率が首都圏よりも非常に高く、長時間の停車においても着席旅客については徒歩で線路上を避難誘導する以外にも選択肢は有り得るのかもしれません。

 運行情報錯綜、一番の問題は鉄道会社の列車運行情報が共有されておらず、乗り換え先で、JR西日本、阪急、京阪、阪神、南海、近鉄、JR東海新幹線、大阪メトロ、利用する鉄道以外の運行情報が文字通り行ってみなければわからない、Web上の運行情報は大量アクセスにより閲覧不能、という、思わぬ情報障害の発生でしょう。首都圏であれば、利用しますとわかりますが北関東JR東日本の駅舎で首都圏南部私鉄の運行情報が分かります、が、京阪神地区ではそうした情報表示が無い。

 首都圏の鉄道情報共有はその実現背景に鉄道の相互乗り入れが在るという点で、成田空港と上野を結ぶ京成電鉄が、品川と横須賀を結び羽田空港へもアクセスする京浜急行に乗り入れているという、赤い電車の京浜急行に青いラインの京成電鉄が乗り入れている情景に驚かされたことがありますが、相互乗り入れはもはやどこがどこなのか、新宿に東武特急が登場したりで入り組んでいます。京阪神では早い時期から京都市営地下鉄に近鉄電車が乗り入れ、近鉄奈良駅に阪神電車が乗り入れ、時代もここまで、と驚かされましたが、まだまだここまで、情報共有までは至っていません。

 避難所としての駅舎、東日本大震災では首都圏でも乗客安全第一として万一駅舎が破損した場合でも乗客に被害が及ばぬよういち早く駅舎を閉鎖し、外に避難させたことが、駅前に大量の帰宅困難者が滞留させた要因であるとして行政の厳しい批判の対象となりました。もちろん今回の大阪府北部地震では比較軸が違うと指摘されそうですが大阪駅や京都駅では、駅舎閉鎖には至っていません、この点、東日本大震災の教訓が反映されたといえます。ただ、昨今の駅舎は待合室やホームの椅子等が縮小しており、運行再開を待つ待機場所、という点では駅の設計の時点から配慮が、大阪駅のような必要といえるかもしれませんね。

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大阪府北部地震M6.1,京阪神直下型烈震震度六弱と鉄道網広範麻痺&死者3名負傷者358名

2018-06-18 20:18:59 | 防災・災害派遣
■観測史上初の大阪府震度六弱
 震度五強は当方にとり東日本大震災直後の横浜市で経験して以来です。本日は予定を変更し、NHK報道を参考に京阪神の朝を襲った直下型地震の概要を提示します。

 本日0758時、近畿地方を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生しました。震度6弱を観測したのは大阪北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市。震度5強が京都市の中京区、伏見区、西京区、亀岡市、長岡京市八幡市、大山崎町、久御山町、大阪の都島区、東淀川区、旭区、淀川区、大阪府の豊中市、吹田市、寝屋川市、摂津市、交野市、島本町です。

 震源は大阪府北部13kmで、気象庁によれば大阪府内で震度6弱の揺れを観測したのは大正12年の観測開始から初めてとのことでした。しかし、この地域には活断層として警戒が続く上町断層帯、有馬高槻断層帯、生駒断層帯が存在しており、今回の地震は有馬高槻断層帯に重なる震源となっています。1099年康和地震をはじめ多くの歴史地震がありました。

 政府は0811時に官邸対策室を設置、防衛省は0812時より、舞鶴航空基地第23航空隊、八尾駐屯地中部方面航空隊、小松島航空基地第24航空隊、徳島航空基地教育航空隊、小松基地小松救難隊、など順次航空機を離陸させ、上空より情報収集を展開しました。また同時に中部方面隊、舞鶴地方隊より連絡幹部LOが府県庁舎と市町村庁舎へ派遣されています。

 交通機関への影響は京阪神近畿地方のほぼすべてのJR私鉄が運行を停止、東海道新幹線と山陽新幹線は新大阪駅と岡山駅間での停電により運転を停止し、この遅れは次第に東海道新幹線東京新大阪間の前線へと拡大してゆきます。また、伊丹空港ではこの地震を受け、滑走路の点検を実施し航空路線への遅れが発生しました。神戸空港は通常運行とのこと。

 地震による死者は3名、大阪府北部において登校中の女子児童が学校プールの遮蔽壁倒壊に巻き込まれ亡くなり、通学見守り中の男性もブロック塀倒壊に巻き込まれ、また茨木市ではマンションの室内で書架の下敷きとなり死者が出ています。大阪府内の病院へはけが人が相次ぎ搬送されましたが、通勤時間帯に重なり病院関係者が登院できない状況なども。

 高槻市下田部町では住宅地での火災が発生、火災家屋は焼け落ちてしまいましたが消防活動の結果、幸いにして周辺への延焼は避けられました。建物への被害はNTT通信施設や阪急茨木駅電光表示板の落下、建物のガラス破損や瓦の落下を筆頭に数多く、大阪府は1200時、府知事より千僧駐屯地の陸上自衛隊第3師団へ給水に関する災害派遣を要請しました。

 鉄道の影響は大きく、地震発生後一時間を経てもJR西日本は大阪京都奈良兵庫滋賀在来線全線を運休、阪急電鉄が京都線と神戸線と宝塚線等全路線で運休、阪神電鉄も全線運休、京阪電鉄も全線、南海電鉄も全線で運休、大阪市内の大阪メトロも前線が運休、京阪神近畿地方では京福電鉄や叡山電鉄、ポートライナーや近江鉄道等を除き鉄道が麻痺しました。

 新幹線は東海道新幹線について一時東京新大阪間の全線で運行中止となりましたが順次復旧、JR東海によれば1250時に名古屋と新大阪間に運行を再開しました。新大阪駅西側と大阪淀川区野中南の新幹線橋梁においてコンクリートの剥離が確認されましたが運行に影響がない事が確認され、山陽新幹線も地震から七時間を経た1500時頃全線で復旧しました。

 2000時時点で、JR東海道本線と大阪環状線は運休のまま、阪急電鉄京都本線でも運休が続いており、大阪モノレールは本日一杯の全面運休を発表しました。しかし、阪急神戸本線と宝塚本線の一部は運転再開、近畿日本鉄道、南海電鉄、京阪電鉄、阪神電鉄は全線で運行を再開しています。JR西日本も舞鶴線や草津線等、震源を離れた路線は運行再開です。

 京都市震度5強、文化財にも被害があり、宇治市の平等院では本堂壁面の一部が損傷、平等院鳳凰堂の漆喰破損被害とともに、庭園である養林庵書院でも灯篭の損壊が発生、国宝石清水八幡宮では灯篭が多数倒れる被害に遭っており、大阪府北部と中心に寺社仏閣の損傷が複数報じられています。京都市で震度5強は1995年の兵庫県南部地震や1830年の文政京都地震以来でしょう。

 原子力規制庁の発表では今回の地震による原子力施設への影響はありませんでした。関西電力高浜原発3号機と、大飯原発3号機4号機は運転中、停止中の高浜原発4号機、美浜原発、敦賀原発、石川県にある志賀原発や静岡県にある浜岡原発も影響は無く、放射線量測定モニタリングポストでも放射線値に変化ないとの事でした、僥倖といえるでしょう。

 死傷者数について、死者3名、負傷者は大阪府で319名、兵庫県で23名、京都府で11名、滋賀県で3名、三重県で2名の合計358名、直下型地震という事で大阪府北部に被害が集中した形でした。ブロック塀の倒壊による死者は1979年の宮城県沖地震以来盛んに指摘され撤去が進められるも今回も残念ながら発生、政府は対策強化を関係省庁へ支持しました。

 気象庁の松森敏幸地震津波監視課長は1600時からの第二回記者会見において“大阪府北部では活発な地震活動が続いている”とし、“揺れの強かった地域では、今後1週間程度、最大震度6弱程度の地震に注意してほしい”と余震等に注意を促しました。大阪府北部は今夜から天候が崩れる予報で、近畿北部では50mmから100mm、近畿南部では100mmから200mmの24時間雨量が予想されています。ご注意ください。

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【日曜特集】岐阜基地航空祭2014【3】技本,超兵器XASM-3型初公開(2014-11-23)

2018-06-17 20:14:09 | 航空自衛隊 装備名鑑
■岐阜飛実団&技本装備品展示
 飛行開発実験団と技術研究本部装備品展示を飛行展示の様子と共に紹介しましょう。技術研究本部は現在の防衛装備庁へ拡大改編されています。

 岐阜基地航空祭の撮影、最前列からメイン会場の飛行展示を撮影しますと、逆光ではあるのですが、離着陸の瞬間、滑走路に車輪が接地した瞬間の白煙から制動傘を展開し切り離すまでの迫力の情景を撮影することができまして、どの瞬間も格好よく撮影できます。

 この情景を撮影することができるのはメイン会場最前列のみです。開門二時間半前に並び、要領よく最前列に走り込めばメイン会場最前列を確保することができます。数名で基地へ展開し、順番で地上展示撮影及び買い出し班と撮影位置確保班に分けて航空祭を愉しむ。

 航空祭でこのようにローテーションを組めば効率よく撮影できます。しかし一人で撮影できないのかと問われればそうではありません、一人で撮影する場合は食事と水分を携行し、主立った撮影を完了した後に地上展示へと転進するという撮影方法もあり得るでしょう。

 南側会場、順光で撮影するにはこの南側会場が最適です。年々人気が増大しているのが南側会場です、勝手に南側に入り込んで撮影しているというようなものではなく、列記とした航空祭実行委員会が設定している会場です。北側のような地上展示航空機はありません。

 しかし、正門に近いことから南側会場付近には航空機保存展示地区がありまして、F86昼間戦闘機にF86D夜間戦闘機とF104全天候戦闘機にT-34練習機にT6練習機とC46輸送機などが並んでいます、エプロン地区と異なり、航空機発着施設や整備施設はありません。

 岐阜基地の南側は倉庫区画や地対空ミサイル陣地になっているのですね。正門から近い南側会場ですが、岐阜基地は実は飛行開発実験団が主力の基地ではなく、第2補給処が拠点とする基地です。航空自衛隊には3カ所しかない補給処ですので、その意味は大きい。

 実戦部隊として考えた場合にはこの岐阜基地第2補給処は日本防空を左右する重要施設です。岐阜基地正門はそのまま第2補給処に至りまして、岐阜基地司令も第2補給処長が務める。南側会場には売店も出店も手洗い設備も潤沢にありまして、航空祭を楽しめます。

 南側会場でも最前列付近は混雑することも確かなのですが、最前列を確保できなかった場合でも、順光での撮影環境はほかに代え難い。そして、メイン会場程航空機に近くない関係から、最前列競争はメイン会場ほど厳しくはありません、芝生の上に座る事も出来る。

 岐阜基地航空祭南側会場は、晴天の日に撮影しますと航空専門誌に載る写真そのものの構図で撮影することができ、最前列を確保できなくとも群衆の頭上を大編隊が飛行します。曇天の日には少々鈍ってしまう撮影条件ですが、晴天となりますと抜群の撮影環境です。

 戦闘機機動飛行も模擬対地攻撃も全部順光で頭上を一直線にメイン会場に向かう様子を撮影できます。こう書きますと、最前列を確保している面々はなにを撮影しているのかを興味深くなるかもしれませんが、実は滑走路の向こう側に北側のメイン会場が見えるのです。

 それがどうしたのかといわれますと、メイン会場には管制塔に格納庫、並ぶ地上展示航空機が滑走路の向こう側に見える。着陸した航空機はすべて滑走路を誘導路へと進みます、イーグルと管制塔、ファントムと管制塔、F2と管制塔、基地らしい迫力の写真が撮れる。

 岐阜基地航空祭、メイン会場と南側会場があります。メイン会場は飛行展示がすべて逆光になってしまいますが、離発着の迫力の様子や戦闘機の制動傘展開の様子を撮影できますし、飛行展示参加航空機の列線が間近にあり列線整備の様子から誘導路をゆく航空機まで。

 航空祭の機械音と空気た雰囲気を体感でき、そして格納庫はじめ日本初公開となる装備品や航空機も多い。初公開の航空機というと国産ステルス戦闘機への技術実証機となるX2実験機も岐阜が日本初公開、日本国産機ですので世界初公開ですが撮影できました。

 中国空母から日本を守るXASM-3についても世界初公開は岐阜基地でしたね。南側会場は順光、飛行展示も編隊飛行もすべて順光ですので快晴の日には青空に映える航空機をこれでもかというほど撮影することができます、迫力の度合いが違う、というところか。

 逆光の写真十枚撮影するよりも順光の写真一枚のほうが撮影後、特に数年後の満足が違います。昔は、それこそ逆光順光の意味を実感する前のブルーインパルスがまだT2であった時代に、何処から航空専門誌記者は順光に撮影できているのか、と不思議に思っていた。

 南側会場から撮影したならば、疑問解決、いい写真、満足できる写真、撮影できます。編隊離陸する航空機を青空背景に撮影できますと、何度もWebで使いたくなる写真を撮影できます、編隊離陸は一機の機動飛行よりも迫力があります、音が聞こえるような写真だ。

 これを順光で撮影したならば、青空と機体塗装がよく映える。好い写真を撮影できますと、別の話題の記事でもWeblog北大路機関では活用しますので、これぞ航空機だと叩きつけるような写真を撮影できる意味は大きい訳で、多くの方も撮れるならば良い条件で撮りたい。

 二者択一、ウェストミンスター方式の勝ちは総取り、メイン会場と南側会場はそのように思われるかもしれませんが両方行くこともできます。京都の北にあるかの鞍馬で天狗に十五年、師事したならば滑走路を飛び越える飛行術が使える、というわけではありません。

 伊賀で二十五年修行したならば分身の術が会得でき両方撮影できるのでもありません。京都の九条で残業を重ねればその残業代でもう一人カメラマンを雇ってメイン会場と南側会場で同時に撮影できる、という訳でもありません。シャトルバスが運行されているのです。

 シャトルバスはメイン会場の輸送機用格納庫前から南側会場保存展示区の間を結んでおり、所要時間四分、多少並ぶ時間帯もありますが、飛行展示の合間の時間帯、本来この時間こそ移動の適した時間ですけれども、時間帯では待ち時間なしで乗車することも可能です。

 シャトルバスへ長蛇の列が伸びている事もあるのですが、一般車両の通行が出来ない基地内では渋滞が起きませんので、シャトルバスは次々と臨時バスターミナルへやってきまして、列は素早く動き、時間帯を工夫することで当方は十五分以上待ったことはありません。

 飛行展示プログラムを慎重に検証し、飛行展示でもっとも迫力のある異機種大編隊飛行のようなメインプログラムの時間帯に南側撮影位置確保をおこなうにはどの時間帯に移動するかを考えまして、南側滞在時間を多めに確保して、地上展示航空機だけ、ともできる。

 岐阜らしい航空機を撮影する、例えばブルーインパルスの飛行展示時間にメイン会場で航空機地上展示や装備品展示を撮影するとともに一番混雑するブルーインパルス飛行展示を広角レンズで満員のエプロン地区の観衆とともに写し込む、という選択肢がありますね。

 また、朝一番にメイン会場へ入りましてオープニングフライト撮影と並行して地上展示航空機や装備品展示を撮影し、本格的な編隊飛行までにシャトルバスで移動する、という選択肢もあるでしょう。シャトルバスをどう活用するかが航空祭満喫への秘訣かもしれない。

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【くらま】日本DDH物語 《第四四回》はるな竣工と沖縄返還,佐世保防衛警備管区の変容

2018-06-16 20:01:46 | 先端軍事テクノロジー
■ヘリコプター搭載護衛艦の時代
 海上自衛隊にヘリコプター搭載護衛艦の時代が到来した当時は、日本の海上防衛への要求が大きく変容した時代と重なりました。

 佐世保基地、ヘリコプター搭載護衛艦くらま竣工から除籍までの母港として位置しており、現在は南西方面海上防衛の最大拠点として位置付けられています。第二次世界大戦後、我が国は主権回復後も国土の一部を占領状態に置かれていましたが、領土的野心ではなく民主主義の普及を主眼とするアメリカは順次占領状態にあった国土の本土返還を行います。

 くらま母港、くらま除籍後は全通飛行甲板型護衛艦いせ母港となった佐世保基地ですが、南西諸島防衛の要衝となり、沖止めされる日米補給艦、頻繁に出入港する護衛艦、長崎から竣工と同時に配備される最新鋭護衛艦、入渠へ佐世保を出航し、交代して南西方面警戒監視任務を終えて帰港する護衛艦、横須賀基地や舞鶴基地、呉基地母港の艦艇寄港が続く。

 しかし、1973年にヘリコプター搭載護衛艦はるな、が竣工しましたが、はるな計画当時は此処佐世保基地の佐世保地方隊警備管区は現在ほど広くありませんでした、佐世保地方隊の警備管区は大隅海峡の南方、そして奄美返還前には大隅海峡までが境界となり、沖縄県と南西諸島は沖縄返還まで、アメリカ海軍の強力な海軍力が抑止力を発揮していました。

 ヘリコプター搭載護衛艦はるな竣工、その前年にあたる1972年5月15日、念願の沖縄県本土復帰が実現しました。護衛艦はるな建造が決定した1968年には小笠原返還が実現しており、日本は第二次世界大戦以前の領域へ、ソ連による不法占領が継続する千島列島南部北方領土や韓国が戦後不法占拠する竹島を除き、その国土を回復させる事となります。

 沖縄本土復帰、これは同時に沖縄県の防衛警備管区がアメリカ軍より自衛隊へ移管される事を意味し、同時に広大な南西諸島と小笠原諸島の返還は大陸外縁弧状列島の陸上国家から、本来の海洋国家への回帰を意味するものでもありました。実際問題、この小笠原諸島と沖縄県本土復帰だけでも日本の海洋面積を復帰以前よりも急速に広める事となりました。

 海洋国家への回帰、もともと日本は大陸外縁部の弧状列島であり、大洋の島国ではなく大陸地政学的要件の影響下にはありますが、同時にその国境を海洋により隔てており、海洋交易によってのみ繁栄を約束されるとともに、海洋を防衛に用いる事で国境防備を極めて容易とする事が可能です。しかし、その為には、担保としてのシーパワーが不可欠となる。

 外洋海軍、ブルーウォーターネイビーへの転換、海洋国家として日本が復帰するには海上防衛力を沿岸防備用の限られたものから転換しなければなりません。海軍力は、沿岸海軍をブラウンウォーターネイビー、外洋海軍をブルーウォーターネイビーといい、その中間を担う海軍力と近海海軍としてグリーンウォーターネイビー、と概して区分されています。

 日本国土が第二次世界大戦後のアメリカ占領地の返還、まだロシアの占領地は日本に返還されていませんが、小笠原返還、奄美返還、沖縄返還とともに日本の海上防衛の責任は高まり、その施策としてヘリコプター搭載護衛艦が建造される事となりました、そして重ねて補給艦等、海上自衛隊は外洋での作戦能力の基盤も同時に整備してゆく事となりました。

 航空母艦だけを仮に導入したとしても戦力とはなりません、外洋作戦基盤、艦隊航空、補給体系と指揮通信体系、その上で必要な作戦能力と戦術研究を行い始めて防衛力となります。はるな建造と共に海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦を単体装備から部隊装備へと内部化してゆく事となり、そして次段階として今日の全通飛行甲板型護衛艦があるのです。

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平成三〇年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.06.16-17)

2018-06-15 20:02:45 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 梅雨時は蒸し暑いのが例年ですが、今年は梅雨冷えに助けられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 第2師団創設記念-旭川駐屯地祭、第2師団は北海道北部を防衛警備管区とし、冷戦時代には宗谷海峡の対岸、ソ連軍の北海道着上陸を正面から牽制していた陸上自衛隊屈指の精鋭師団です。師団は隷下に第3普通科連隊、第25普通科連隊、第26普通科連隊、第2戦車連隊、第2特科連隊、と重装備を誇り、今日では万一の際に西方にも転地する無言の鎮め。

 総合近代化師団として第2師団は10式戦車、90式戦車、99式自走榴弾砲、96式装輪装甲車、87式自走高射機関砲、と優秀装備を揃えており、旭川駐屯地は第2飛行隊の旭川飛行場を駐屯地内に有し、広大な駐屯地を式典会場とする観閲行進や訓練展示は、槍衾のように威容を轟かせる自走榴弾砲や大雪山を望見しつつ疾駆する戦車等、全国有数の迫力です。

 美唄駐屯地、第2地対艦ミサイル連隊の駐屯する駐屯地です、美唄市は元炭鉱町として知られ、札幌から旭川へ向かう特急カムイ号にて行く事が出来る。88式地対艦ミサイルの観閲行進は隷下中隊がすべて参加するミサイル部隊単体としては大規模なもので、式典と訓練展示終了後には隣接する美唄訓練場地区において90式戦車の体験試乗等も行われます。

 さて撮影の話題、自衛隊行事、師団規模行事や方面隊行事となりますと出店が凄いことになりますが、特筆すべきはビールを頂ける駐屯地です。その昔は日の高いうちはやめておこう、という自主規制を掛けていたのですが、この例外の最初となったのは2006年に74式戦車の空包発砲焔を撮影できた大津駐屯地祭でした、大津駐屯地祭は駐屯地内の出店でビールを呑める。

 俺を見よ俺に続け、という大津駐屯地名物の標語がありますが、2006年当時はビールサーバーがこの標語の看板の隣で野外売店営業していまして、おう、続くぜ、と。俺を見よ俺に続けとは、ビール呑んでるダンディな農協帽おじさまに続けという事だと解釈、琵琶湖からの涼しい風と初夏の日差しを木立の日陰で戦車空包発砲焔を肴に美味しく頂きました。

 EOS-KissNで当時撮影しましたが、あのカメラは毎秒2.5枚の撮影能力、74式戦車の発砲焔を撮影するのは、なかなか至難の業でした。しかし、全ての駐屯地がそうではないのですが、ビールを楽しめる駐屯地、他にもありまして、散策し見つけると何か心躍るものがあります。協力会や地元商工会が出店で地物を売るところもあり、ある意味楽しみですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・6月17日:第2師団創立68周年/旭川駐屯地開設66周年
記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
・6月17日:美唄駐屯地創立41周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新型装甲車/装輪装甲車-改開発中止(考察2)二類化すべきWAPC装輪装甲車とMRAP耐爆車両

2018-06-14 20:04:32 | 先端軍事テクノロジー
■車高増大が阻む将来発展性
 装輪装甲車-改開発中止、試作車公開時に高すぎる車高と原型で付け足した感が否めない形状に少々驚かされ、具体的にはあれはないよなあ、とおもったものでしたが。

 新型装甲車/装輪装甲車-改、96式装輪装甲車の改造、という当初の開発でしたが、試作車が防衛装備庁により公開されたと同時に、余りに高い車高に驚かされました。実際、新型装甲車/装輪装甲車-改は96式装輪装甲車は車高が2m未満に抑えられていたのに対し改造した事で3m近い車高となっており、車幅よりも遥かに大きな車高に驚かされたものです。

 局地無線搬送端局装置JMRC-C80や70式地雷原処理装置、重装備を固め機動打撃力を重視する北部方面隊の総合近代化師団や総合近代化旅団ではこれら装備品を96式装輪装甲車に車載運用しています。従って、安易に車高の高い装甲車両を導入してしまいますと、これら装備を追加した際に更に安定性に響くものとなります、高車高にいい事はありません。

 96式装輪装甲車からの大きな変容に驚かされたのは、防衛予算概算要求に際して当初提示されたイメージ図があくまで96式装輪装甲車の改良型であり、過度に高い車高などの試作車の特徴とはかけ離れていた為です。もっとも10式戦車と新戦車、16式機動戦闘車と機動戦闘車、過去数多の事例からイメージ図とはあくまでイメージ図ではあったのですが、ね。

 新型装甲車/装輪装甲車-改、全長8.40m、全幅2.50m、全高2.90m、重量20tという要目でした。しかし、96式装輪装甲車の要目は全長6.84m、全幅2.48m、全高1.85m、重量14.5t、となっていますので、大型化の域を出ている、といえるでしょう。実際、今回の新型装甲車/装輪装甲車-改は小松製作所が現在生産中であるNBC偵察車が原型と考えられています。

 NBC偵察車は化学防護車や生物偵察車の後継車両として核汚染地域の偵察や化学兵器と生物兵器の汚染状況の偵察、除染に必要な情報収集と共に自車から離れた地域への化学剤散布状況等を標定する自衛隊の車両で、全長8.00m、全幅2.50m、全高3.20m、重量20t、新型装甲車/装輪装甲車-改は高すぎるNBC偵察車の車高を抑え全長を若干延長したかたち。

 新型装輪装甲車について、要求性能から第一線装輪装甲車の形状を採った耐爆車両が求められていたのでは、との指摘がコメント欄にてありまして、それならばいろいろと納得がいくものだなあ、と感じました。そして同時に、無理に一車種にしようとした弊害が表面化したといえるのかもしれません。普通科部隊用は車幅を広げ安定性を増す設計が必要だ。

 82式指揮通信車等、そろそろ後継車両を考えなければならない車両は幾つか存在します。73式装甲車転用の通信車輌等も。今回の新型装輪装甲車原型のNBC偵察車を無理に触らず、NBC偵察車をそのまま輸送防護車、指揮通信車、通信中継車、施設作業車、装甲救急車、自走迫撃砲、近距離防空システム、等々に転用しておけばよかったのかな、と思う。

 二車種に分ける事は非合理に感じ得るかもしれませんが、例えば歩兵の第一線戦闘用と支援車両を統合化する事は逆に非合理です。アメリカもM-2装甲戦闘車とM-113装甲車を、ドイツもフクスとボクサーに分けています。特に戦車と直協する歩兵用装甲車は安易な軽装甲では直協以前に撃破されてしまいますので、年々高度化と高価格化を辿っています。

 ドイツ連邦軍フクス、連邦軍が戦域輸送車として開発し、六輪駆動と第一線用のフランスVAB軽装甲車よりも、かなり高度な性能を持つがAPCではなく弾薬輸送や支援用として導入した装輪装甲車です。連邦軍ではフクスをあくまで支援用として、第一線装輪装甲車にはボクサー重装輪装甲戦闘車を充てています、33トンもある怪物のような装輪装甲車です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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最前線国家の覚悟,米朝初首脳会談と在韓米軍撤退:朝鮮半島は日本最大の緩衝地帯と平和基盤

2018-06-13 20:18:17 | 国際・政治
■トランプ大統領が撤退言及
 歴史的な昨日の米朝初首脳会談ですが、日本にとって長期的に大きな変容と決断を迫られる状況が、生じるかもしれません。

 在韓米軍撤退の可能性に言及した米朝初首脳会談、トランプ大統領は北朝鮮との交渉移管によっては最終的に米韓合同軍事演習の終了と、延長線上に在韓米軍の撤退を示唆しました。朝鮮戦争終戦は望ましい変革ですが、米韓合同軍事演習は北朝鮮核武装以前から実施されており、在韓米軍撤退は北東アジア地域における台湾フィリピンからの撤収に続く。

 日本が最前線国家になるのではないか、在韓米軍が撤収したならば残りは在日米軍のみとなります。これは米朝首脳会談以前に韓国政府高官の在韓米軍撤退可能性に関するアメリカの外交専門誌寄稿を受け、その懸念として受け止められたものですが、トランプ大統領がグアムからの米韓合同軍事演習への航空機派遣を無駄なものであるとし是正を示唆した。

 在韓米軍3万3000名についても、トランプ大統領はいずれ帰国させなければならない、と発言、懸念は現実化しました。朝鮮半島は日本にとり緩衝地帯です、これは北朝鮮からの緩衝地帯ですが、朝鮮戦争に中国とソ連が軍事援助を行った事から分かるように、中国とロシアからの緩衝地帯として朝鮮半島は重要であり、在韓米軍は文字通りその安定の要、そして平和の基盤といえるところ。

 最前線国家となれば現在は日本国土への武力攻撃が行われるまで、自衛隊による自衛権を行使することはできませんが、今後は日本にたいし、国際法上の武力行使が行われた時点で自衛権を行使する体制へ、専守防衛のあり方を転換してゆかねば、太平洋戦争末期の本土上陸間近の状況に陥るまで打つ手なしという情勢へ転換、いや転落してゆくことにも。

 韓国軍52万名、対して在韓米軍は3万3000名、数字の上からは在韓米軍は韓国軍の十数分の一と微々たるものと思われるかもしれませんが、在韓米軍の主力、第2歩兵師団はソウル北方の議政府回廊に駐屯しており、北朝鮮が韓国へ侵攻した場合は確実に第2歩兵師団と戦闘になることを意味し、北朝鮮の韓国攻撃は即座に米軍との戦闘を意味するのです。

 南北軍事境界線を北朝鮮が戦車部隊で突破し攻撃準備射撃を実施した瞬間に北朝鮮と韓国との戦闘はアメリカにとっての戦闘になることを意味し、ここが日米安全保障条約と最前線の北海道に米軍が駐屯していなかった状況と根本的に違う。事実上の米軍自動参戦、韓国は世界最大の空軍力を持つアメリカ空軍と海軍航空隊、そして陸軍の支援を受けられる。

 米韓合同軍事演習についても、在韓米軍が韓国に駐留する米韓相互防衛条約において、有事における韓国軍の指揮権は在韓米軍司令官である第8軍団司令官にあります。実は韓国軍の指揮権、平時における指揮権が韓国政府に移管されたのは今世紀に入ってからの指揮権委譲を経てからであり、実際に北朝鮮軍100万と韓国軍52万が対峙、ソウルを護れるか。

 韓国軍はもちろん優秀な指揮官練成に絶え間ない努力をつぎ込んでいますが、戦時指揮権についてはまだ未知数です、在韓米軍撤退となればその影響ははかりしれません。しかし、この在韓米軍撤退は、北朝鮮軍が攻撃を行わないという前提で在れば韓国ではむしろ歓迎する声の方が大きい。韓国は日本からの独立実現後も強力な国軍創設は行われていません。

 これは朝鮮半島北部を占領するソ連軍を刺激しないという意図の反映でもあったのですが、有志で献金を募り練習機を購入した程度、アチソンラインとしてアメリカのアチソン国務長官がアメリカの防衛責任を示した区分を対馬海峡に引いた際にも、この努力は行われませんでした。そして歴史的経緯から逆に韓国の防衛への関心は北と共に日本もみています。

 日韓は防衛協力については特に防衛当事者に可能でしょう、防衛当事者の間では韓国国民程の対立関係は無く、その根拠として韓国海軍は強襲揚陸艦独島等配備の最大規模の海軍策源地を日本に程近い済州島に構築しました、北朝鮮特殊部隊浸透の懸念が最も低い南部に配置したという事は、同時に日本への防衛政策当事者の信頼の表れとも言えるでしょう。

 日本にとり、最前線国家という現実が突きつけられる緊迫感は大きなものがあります。最前線国家の緊迫感は、在韓米軍撤退により朝鮮半島有事に際しては、日本が直接影響を受ける、特に日本国内の弾道ミサイル脅威に際し、自国が直接脅威を排除しなければならない必然性が生じると共に、韓国へ中国の政治圧力が増大した場合、意味するものは大きい。

 日本は朝鮮半島という緩衝地帯そのものを喪失することを意味するため。勿論、中国とは今も友好関係が堅持されていますが、人権問題や防衛政策と軍事力行使への姿勢や民主主義に関する考え方で、日中はそれ程理念を共有できておらず、抑圧的な人権政策については日本が標榜する国際公序とも乖離が大きく、最前線国家となった場合には一定の覚悟が国民にも求められる事でしょう。

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6.12米朝初首脳会談:トランプ大統領・金委員長米朝首脳声明,将来的な核廃絶と体制維持で一致

2018-06-12 20:07:34 | 国際・政治
■シンガポール米朝首脳初会談
 北朝鮮核廃絶が実現するかは極めて厳しい状況は変わりませんが、両首脳が中座せず米朝首脳共同宣言まで無事漕ぎ着けた、宣言内容が曖昧であっても、まあ大きな一歩です。

 シンガポールでの米朝首脳会談が終了し共同声明が発表されました。共同声明では具体的なものが何一つなく、評価としては最初の首脳会談を無事終えた、という以上のものはありませんが、危惧された最初の一分間で首脳会談を切り上げる、という朝鮮戦争再開へ直結する行動だけは回避、即ち開戦は回避、朗報といえるでしょう。共同声明は以下の通り。

 第一に米朝両国は平和と繁栄に向けた願いに基づき新しい関係を樹立へ取り組んでいくこと。第二に米朝両国は朝鮮半島に永続的で安定した平和の体制を構築へ努力する。第三に今年四月のパンムンジョム宣言を再確認し北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に取り組む事を約束する。第四に朝鮮戦争中の捕虜や行方不明兵士の遺骨回収に取り組み返還していく。

 米朝首脳会談首脳宣言について、原則宣言として明確な非核化に関する合意を確約したものではなく、云い方を変えれば北朝鮮非核化は五年以内に実現するのか、今世紀いっぱいの2099年まで要するのか、非核化に関する自称非核化に留まるのか、具体的か核関連施設と核兵器配備状況に関する現状だけでも査察を受ける用意があるのか、具体性が全く無い。

 朝鮮戦争終戦について。トランプ大統領は、遠くない将来に朝鮮戦争が終戦となる希望を持っている、と発言、今回の米朝首脳会談において朝鮮戦争終戦宣言が行われるのではないかとの希望的観測もありましたが、首脳会談では終戦まで踏み込んだ発言は無く、云い方を変えれば現状維持、そして緊張緩和の可能性、という合意に留まる事となりました。

 停戦中でしかない朝鮮戦争終戦は、アメリカが北朝鮮から韓国を同盟国として防衛する米韓相互防衛条約に直結しています。朝鮮戦争終戦となれば、同盟条約を北朝鮮に限定したものから、多国間安全保障協力へと包括化する新米韓安全保障条約が必要となり、在韓米軍の駐留について変容があり得る為、隣国である我が国にとっても大きな関心事でしょう。

 米韓合同軍事演習について、トランプ大統領は今後の米朝首脳会談継続を示すと共に米朝交渉が良好に進展した場合には、南北朝鮮の懸案事項である米韓合同軍事演習を終了する可能性を示しました。これは可能性を示唆しただけですが、韓国軍は戦時に米軍指揮下で行動する二国間合意があり、米韓合同軍事演習終了は米韓軍事同盟の終了に他なりません。

 トランプ大統領が記者会見において具体的成果の一つとして提示したものが、北朝鮮が今回の首脳会談において主要ミサイルエンジン試験場の取り壊しに合意した、という点です。これは北朝鮮にとり国連制裁解除後に一つの産業となり得る航空宇宙産業でのロケット部門を事実上切り捨てる構図となりますが、事実であれば実効性ある措置となりましょう。

 弾道ミサイル脅威は我が国の取り切迫した脅威です。防衛省はイージス艦六隻とアメリカ海軍イージス艦とを協同したイージスBMD体制を維持しつつ、首都圏では市ヶ谷にミサイル迎撃に当たるPAC-3部隊が常駐、全国のペトリオットミサイル部隊が警戒を継続すると共に秋田山口両県へ陸上型イージスシステム“イージスアショア”建設計画が推進中です。

 初首脳会談では具体的成果は無いだろう、とは当初から考えられていました。例えば今年末までにすべての核兵器解体を専門家立会いの下で実施し、核関連施設査察へIAEAへの再加入を行う、というような具体的進展はなかなか難しいものがありました。しかし、初首脳会談が次の会談へ繋ぐ事が出来た点は、具体的であるといえ、唯一評価できましょう。平和を維持しなければ態勢を維持できないという部分を北朝鮮が理解していた点、両国の正気が国際公序に沿っていた点を確認でき、これは成果です。

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朝鮮半島有事邦人救出検証(8)韓国内での集団的自衛権行使と有志連合部隊の国内展開

2018-06-11 20:01:45 | 国際・政治
■万全ではない法整備態勢
 いよいよ明日の米朝首脳会談、その前日ですが敢えて考えたいのは万一の際の視点、朝鮮半島有事邦人救出検証、法整備の視点を集団的自衛権行使の視点から考えてみましょう。

 在韓邦人救出任務、この朝鮮半島有事という飛び越えられる対岸の火事を前に突き付けられる緊急事態を前に、5万7000名の在韓邦人救出任務を突き付けられる事前に絶対解決しておかねばならないのは、集団的自衛権行使という日本国憲法制定以来の問題です。集団的自衛権行使は、特に韓国軍と行い法整備は暫定的に為されましたが、訓練は未だです。

 韓国軍と自衛隊の集団的自衛権行使に繋がる訓練、もちろん朝鮮半島有事に際し韓国第3機甲師団を支援に陸上自衛隊第7師団がソウル北方に展開、というようなものではなく、韓国国内に設定される外国人退去拠点、その周辺警備を自衛隊が行うのか、韓国軍と自衛隊が協同するのか、指揮系統は米韓合同司令部指揮下か、自衛隊が独自に行うのか、など。

 自衛隊を韓国領内で警備任務に就けることについて、有事の際に在韓米軍戦時指揮権に基づく日米合意のなし崩し的な協定締結と、韓国国内での自衛隊派遣を強行しますと、もちろん邦人を戦闘地域に見捨てるよりは余程妥協案としては上策ではあるのですが、その後の日韓関係への影響を想定するならば、韓国国内の自衛隊部隊警備を戦時下に要請可能か。

 韓国軍協力を要請できるのか、韓国軍の軍事力は近代化されていますが、限界もあります。自衛隊が韓国国内での飛行場警備任務を担うことができるのか、交戦規定の明確化も含めて、政府間での協定、可能ならば日韓両部隊による訓練を釜山か福岡で実施することが望ましい。緊急時に想定外として邦人救出そのものを断念するという選択肢はありません。

 もちろん、邦人輸送は併せて非戦闘員退避計画として多国間部隊有志連合にて実施されることとなりますので、日韓両政府とともに横田基地の国連軍後方司令部や米軍などとの調整、これは邦人のほかにアメリカ人の緊急輸送、邦人が優先ではありますが余裕に応じ第三国国籍の非戦闘員退避支援も併せて行うこととなります。集団的自衛権の問題は複雑だ。

 有志連合部隊と協同する場合は、自衛隊と韓国にアメリカ軍以外にオーストラリア軍やフランス軍、勿論韓国国内には中国国籍居住者も多数いますので、台湾の中華民国軍と中国人民解放軍も有志連合に参加する可能性があります。自国民救出は自衛隊だけで行う必要はありません、実際過去に我が邦人も同様に救出された事例があり、相互主義の観点から。

 しかし、同時に自衛隊による邦人救出と並行して有志連合の非戦闘員退避支援を行う場合、自衛隊は日本国籍保持者に留まらず外国籍非戦闘員の救出を行う必要も生じてきます。一応、安全保障法により施設協同防備、つまりPKO任務等で宿営地が攻撃された際に自衛隊が共同戦闘を実施する事が合法化されましたが、CH-47が展開するとなれば話は別です。

 ヘリコプターにより釜山から春日基地まで邦人輸送を行うことができる、これはCH-47輸送ヘリコプターの性能からはまさにその通りなのですが、あわせて中継地となる対馬への対馬警備隊支援への緊急展開計画や航空機整備補給体制の構築、そして日韓間での救援航空機乗り入れと発着施設警備に関する取り決めがなければ、航空機性能を活かせません。

 CH-47輸送ヘリコプターを自衛隊が展開させるという前提ですので、施設協同防備は飛行場施設、そして航空機を狙う敵特殊部隊浸透、というものにも対処する必然性がありますので、安全保障法整備の際に想定された施設防護の範疇を越える可能性があり戦闘地域から非戦闘員を救出するとの性質上当然ですが、集団的自衛権行使の問題を解決すべきです。

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