北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【3】国際公序海洋自由原則への脅威と権威主義国家政策決定への反撃能力

2023-08-12 20:23:02 | 北大路機関特別企画
■考えたくない事を直視
 ヘリコプター搭載護衛艦の強みは航空機を入れ替えるだけで様々な任務に対応する点であり、航空機は艦艇よりも素早く長距離を移動できるのが強みです。

 ひゅうが型護衛艦でも、F-35Bを5機搭載するならば、甲板耐熱加工さえ行えば十分可能です。短距離滑走する際に搭載するミサイルや燃料に制限は加わるでしょうが、F-35Bにはイージス艦のスタンダードSM-6のイルミネーター機能があり、その気になれば搭載ミサイルを最小限とした場合でもイージス艦の目となり、任務遂行が可能ということになる。

 F-35B,それでは5機でなんでもできるのかといわれれば、限界があることはたしかです、しかし、航空機なのですから増派すれば良い、F-35Bは超音速巡航さえ可能であり、30ノットの護衛艦よりは迅速に展開できる、航空機が載りきらなくなればSH-60KやMCH-101を陸上の航空基地などに飛行させF-35Bと交代させることができる、航空機なのですから。

 VLS垂直発射装置もVアスロックやトマホークやスタンダードSM-3,SM-6を載せ替える事だけで様々な任務が可能となりますが、載せ替えるとなりますと一旦帰港するか、困難な洋上での弾薬換装を行う必要が出てきます、これを考えると発着だけで能力を転換できるヘリコプター搭載護衛艦には柔軟性と任務冗長性がある、だから増強すべきなのです。

 センサーノード機、という運用なのですが、このほかF-35BにはEO-DAS分散型複合光学監視システムというレーダーに頼らない索敵能力もあり、艦隊が若干数でもF-35Bを装備している場合と、そうでない場合とでは全くその能力が異なる。この点に着目すれば、ひゅうが型は船体が小さくとも十分F-35Bの艦隊戦闘システムとして参画できる。

 台湾海峡有事を、たとえば懲罰爆撃的な一過性の攻撃や機雷敷設などによる海上封鎖に限定するならば、最大級の非難とともに拡大抑止に取り組むことができる。しかし、海峡有事ではなく全面戦争を試みる台湾有事が起こるならば、全力で抑止しなければなりません。すると、全面戦争を阻止するには、こうしたシーレーンの認識が必要だと考えるのです。

 800名の増員と岸壁の整備、ヘリコプター搭載護衛艦の増強には確かに難しい部分はある、けれども、沖縄戦を反省すべきだ。日本は太平洋戦争においてフィリピンの占領地とともに日本本土である沖縄を失陥したことで完全にシーレーンを絶たれた、南方資源地帯をどれだけ占領しても、本土の工場に送れねばそれは材料に過ぎません。これが先の大戦だ。

 沖縄か台湾か。1945年に連合軍が計画したアイスバーグ作戦では沖縄か台湾のどちらかを占領することで、日本本土侵攻への拠点を整備できるとしていました、台湾方面軍が増強されたことで沖縄の防衛が手薄になり、結果沖縄戦の悲劇が起きました。この点も猛省すべきですが、重ねていま台湾がこちらの世界から切り離されたならば、何が起こるのか。

 海洋自由原則は一つの国際公序ですが、中国は南シナ海人工島造成など、海洋自由原則ではなく海洋閉塞主義により、自国以外の海洋利用を制限、いや拒否する方策を世界に押しつけています。すると、台湾有事により台湾が失陥した場合、世界は利用できない海を突きつけられる、そこに日本の最も重要なシーレーンが通っているのだという認識が要る。

 平和主義としましても、平和は目的であるべきで、平和を手段として結果として戦争に巻き込まれてしまっては、戦災に命を落とす人々は胸を張って散れるのでしょうか、命こそ宝、とは沖縄の方言にあるとおりですが、そのためには平和を目的とすべきであり手段は二次的だ、手段としてあたかも戦争を周辺国が行う余地を与えてしまっては、ならない。

 新しい88艦隊について。もう一つ留意しなければならないのはロシアの存在です。有事の際にウラジオストックに反撃だ、というならば北海道に配備される改良型地対艦誘導弾だけで事足りるのですが果たして日本が隣国ロシアから大規模攻撃を受けた場合、沿海州への反撃だけで国家指導部の意志決定を左右できるのでしょうか。方法を考えねばならない。

 ロシアウクライナ戦争における戦訓は、ロシア最高指導部とその支持層の多くはモスクワ周辺とサンクトペテルブルク周辺に居住しており、反撃能力はここまで到達させなければならないということ。しかし、弾道ミサイルでこの射程を達成するには9000kmが必要となり、これでは大陸間弾道弾という射程で、こんなもの撃てば核戦争を誘発しかねません。

 ロシアが日本へ大規模攻撃を加えることがあるのか、懸念するのは能力でいまやさすがに北海道に第1親衛戦車軍や第8諸兵科連合軍が上陸するという状況は考えにくい、自衛隊の戦車はロシア軍の大規模上陸という可能性も考慮すべきとは思いますが、危機の蓋然性からは離島配備の地対艦ミサイル部隊防衛や対空挺侵攻等への機動打撃対処が現実的です。

 ランセット無人機、問題はこちらの方です、イラン製シャヘド136は射程2000km以上でロシアウクライナ戦争開戦前はイエメンからサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの石油施設を狙って使用されていましたが、イランがロシアに大量供与したものがウクライナ攻撃に用いられ、射程の長さからドナウ川沿岸まで到達する大変な脅威となっています。

 イランの協力を受けロシアはシャヘド136のロシア国産化へ工場を建設中、年間千数百から数千発を量産するとおもわれる。現状ではその多くはウクライナへ使用されるのでしょうが、停戦が実現した後には、なにしろ十年で一万発以上が整備されるのだ、これが日本まで届く。日本への攻撃手段に用いられれば、日本の防空システムは飽和されかねない。

 反撃能力で沿海州の無人機部隊を叩こうにも、発射設備が軽トラックで運べる故に、沿海州から東シベリア地域すべての車両を監視識別し反撃するのは不可能ですし、なによりこちらも数万発の反撃能力を整備しなければなりません、数千発ならば可能かもしれませんが、その十倍となっては不可能です。そしてさすがにここまでの反撃は憲法を意識する。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】JR西日本,サンダーバード-北陸トンネル幽霊列車騒動と鎮魂の日航ジャンボ123便墜落38年

2023-08-12 14:41:02 | コラム
■北陸トンネル幽霊列車
 今日は日航ジャンボ123便墜落事故慰霊の日ですがお盆ということでもう一つ考えさせられる出来事の話題を。あれさえなければ普通の無線故障事故だったのかもしれませんが心に響く。

 北陸トンネルに幽霊列車がでたという、一昨日はそんな話題でWeb上が盛り上がりました。ただそんななか、実は私はもう少し盛り上がる予定でした、福井でお寺と恐竜と美味しい焼き鳥でもいただく算段をしていましたが、ちょっと昨日寝坊し、目的地を変えたゆえ。

 幽霊列車、それも影響は甚大でなんでも特急が120分以上遅れた、つまり特急料金払い戻し対象となるほど、列車が運行できなかったのだとか。ゴーストバスターズかダムバスターズの出番か、後者だともっと列車が遅れそうですが、もう少し話はお盆らしい。

 列車防護無線が作動していて、つまり事故が発生したと知らせる緊急通知が北陸トンネルから発せられたが、JR西日本が困惑したのは、列車防護無線が列車のいない状態でも北陸トンネルから発せられ続けた、という。このトンネルの全長は13.9kmもあります。

 きたぐに、日本海、実は1962年に開通した北陸トンネルはトンネル内火災事故にさらされていまして1972年には死傷者744名という北陸トンネル火災事故が発生、内死者数は30名で原因は食堂車からの火災という。しかし少し前に似たような事故がありました。

 日本海、1969年に寝台特急日本海が同じ北陸トンネルを走行中に漏電火災に見舞われ、当時の国鉄規則では直ぐに停止が求められるところをトンネル内での消火は不可能と判断し、トンネルを出て非常停車、死傷者は出ませんでしたが運転士ら乗務員は処分されている。

 日航ジャンボ機墜落事故38年の慰霊の日でもある8月12日、幽霊列車の件は単なる無線中継器誤作動でけが人も居ませんでしたが、上記火災事故は人命よりも規則を優先した結果の大参事で、これが記憶されているからこそいまでも語られる一例なのでしょうね。

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ウクライナ情勢-東部戦線クピャンスク北東戦域の戦闘とロシア揚陸艦オレネゴルスキーゴルニャクがUSV攻撃を受け大破

2023-08-12 07:00:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ軍とロシア軍の戦闘は双方の情報が確認できない状況となっていますが共通点は双方ともに顕著な前進は無いという。

 東部戦線クピャンスク北東戦域においてロシア軍が確認できない前進などを繰り返し主張しています、ISWアメリカ戦争研究所がこの情報を8月5日にまとめ発表しています。この意図が例えば南部戦線のウクライナ軍反撃を分散させるための戦果強調、欺瞞工作であるのか歩兵などによる浸透作戦が成果を伸ばしているのかが、わかりません。

 ロシア軍は兵站線が疲弊する南部戦線と異なり、ロシア軍はロシア本土から補給を受けられる東部戦線での戦果を強調しますが、確認ができないのです。スヴァトヴェとクレムミナ線でのウクライナ軍攻撃はある程度成功しているとされ、8月4日にウクライナ軍が発表した映像では周辺地形や建物などからクレミンナの南18kmまで進出している。

 クレミンナの南18km、ヴェルフノカミアンスケまで前進していることを示しており、逆にこの方面のロシア軍はスヴァトフとクレミンナ線のジェレベツ川付近で前進の兆候があるもよう。ここはカルマジニフカの西にあたり、一方ロシア軍は部隊の突出を警戒しているのか、東部戦線の南端地域ではこの数日間顕著な動きがみられないもようです。
■ロシア揚陸艦大破
 オレネゴルスキーゴルニャクは現在浮きドックへ収容されているという。

 ロシア海軍の揚陸艦オレネゴルスキーゴルニャクがウクライナ海軍USV水上無人艇の攻撃を受け大破した、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月5日付の発表で分析結果が公表されました。攻撃は黒海艦隊のロシア本土側の基地であるノヴォローシスク基地付近、公開された映像からは船体が30度から40度傾き深刻な被害がうかがえます。

 ノヴォローシスク基地は、イギリス国防省の分析としてクリミア半島のセヴァストポリ軍港がウクライナの攻撃圏内に入る可能性から、ロシア黒海艦隊はその主力を後方に下げており、今回後方と考えられたノヴォローシスク基地付近が攻撃を受けたことは大きな衝撃でしょう。これら揚陸艦は開戦前の昨年2月に黒海へ送られた6隻のうちの一つ。

 オレネゴルスキーゴルニャクの損傷は、同艦が排水量3600tと2022年4月の黒海艦隊旗艦巡洋艦モスクワ撃沈以降、ロシア海軍が被った損傷艦艇としては最大の艦艇となっています、黒海艦隊はクリミア大橋など占領地とロシア本土を結ぶ橋梁が攻撃を受けた際、トラック輸送や鉄道貨物輸送を補完する海上輸送手段として運用されていました。

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令和五年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2023.08.12-2023.08.16)

2023-08-11 20:14:41 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 電線地下化という時代のはずなのにアンテナや建物や電線にいよいよまもなくの五山送り火が隠されてしまう今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末は自衛隊関連行事はありません、ただ、今週末はお盆休みであるとともに、台風6号一過の九州とともに台風7号の接近に備える本州という厳しい状況がありますので、護衛艦をみに基地隣接の海浜公園へ行こう、ということはお勧めできません。波が高いのではなく、台風避泊でいない可能性がある。もちろん航空基地も訓練などはありません。

 小松基地航空祭や三沢基地航空祭など、今年後半にも航空祭が多数予定されています。そこで、なのですが、思い切って家電量販店に行ってみてはどうでしょうか。家電量販店で戦闘機が飛んでるのか護衛艦が停泊しているのかあ、と思われるかもしれませんが、少なくとも暴風や豪雨には営業している家電量販店は安全で、なによりいろいろ情報がある。

 ヨドバシカメラやビッグカメラなど、家電量販店にカメラの名を冠した大型店は、多数の一眼レフや一眼カメラを試すことができますし、その場で買うことも出来ます。、、、実は昨年その場で買おうと思ったらば品薄で七か月待ちといわれて断念したこともあるのですけれども、まあ、ものによってはその場で買うことができるよ、というようなそういう。

 300mmF2.8の試用ができるかどうか、北大路機関では大型家電量販店とそうでない量販店をこう考えています、京都ヨドバシなんかは色々試せるのだ、値段を見てちょっと驚くものが多いのだけれども。こういうものは実際に使ってみて、それも試行錯誤してみないと触るだけではわからない、使ってみなければ宣伝文句に騙されるものも数多ある印象で。

 高性能を謳っていても、自分が撮る被写体に適合しているのか、巨大カメラバッグ前提の移動と肩掛けカメラバックに旅行の友とする場合では使い買っては大分違う、ストラップや使う温度や湿度環境の違いは大丈夫か、バッテリーが切れても現地では充電できない、誤操作してしまえばもう一度九州や北関東まで出かけて撮り直すのは難しい、などなど。

 ロシアウクライナ戦争による半導体不足により、またカメラの転換期と合わせて生産を絞るか、実質的に区分ごと杯盤になってしまった機種も多いですし、またカメラ関連は量産が進んで価格が下がるよりも半導体不足と世界的なインフレによりかっかうが高止まりするようなものも多くなっている、すると情報収集とともに早めに購入の決断も必要だ。

 デジタル一眼レフからデジタル一眼へ、現在進んでいるカメラの変革は30年に一度のものでして、ここでカメラの次世代への転換を誤れば一眼というものがそのままどうなるかわからない状況で、技術力がないのにミラーレスへの転換を図ったり、高性能を謳うものではあっても誤作動しやすいスイッチ類配置などから使いにくいカメラなどなどが並ぶ。

 家電量販店で面白いのは、当店の店員が撮影しました、という写真に明らかに新田原や千歳で撮影したものがありまして、おお休み採れたんだ、というよりもなかなか分かっている撮影の場所と技術のものがあります、岐阜や小松ならば多少近いのですが。特別塗装機の機体で航空祭の年度が分り、ああここわたしもいたわ、と思うような写真なども若干は。

 台風が接近しているのですから無理に遠出するよりは、家電量販店は一つの例として示したのですけれども、今回の台風7号、お盆の最中に直撃する台風は初めてではないのですけれども、台風勢力は強く、東海道新幹線と東海道本線がお盆の帰省シーズン真っ最中に計画運休の可能性を示すような、そんな台風というのは、中々ないような気がします。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・行事予定:特になし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:石川-小松,北陸新幹線開業前の小松で蕎麦とビールとスマートボール

2023-08-11 14:14:41 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 こういう店が一つあると列車の待ち時間なんてものよりも寄り道で美味しく楽しくやれる方が貴重に思えてきますね、特にランチあと昼過ぎの時間帯も営業していてくれるのだから。

 台風が近づく中ではありますが、と書きますと台風6号で大変な目に合われました方には失礼ですが、申し訳ないがこちらにも台風が向ってきている。そんな台風7号を目の前にした、台風避泊の話題、ではない三連休にうってつけのちょっと愉しい場所の話題だ。

 小松基地、コロナの最初の年は北大路機関は岐阜基地でファントムをおいまして、その次の年は小牧基地で三菱FACOから出てきますF-35戦闘機を多く撮影しました、さて、その次はといいますと、なにかこう小松に行く機会が多くなったようにおもう。

 新幹線開業間近、JR小松駅ビルからはJRの文字が削られる程にいよいよ新幹線の敦賀延伸が近づいている事を感じるのですが、そんななか駅ビルもコンビニが大きくなったり、色々な変化が有ります。そしてお昼ご飯を頂く場所も、ちょっぴり、増えたのかな。

 スマートボールがあるのかあ。小松基地の話ではなくて小松駅の話です。それは新しい遊技場が完成したというのではなく、小松駅にある飲食店にスマートボール台が多数配置されていまして、昭和の一角を再現した風情で、美味しいものとスマートボールが。

 小松駅、久々に青春18きっぷを購入しまして、小松基地への急ぎは特急で、これはもちろん特急券と乗車券を購入して、そして急がない帰路は青春18きっぷ利用となった。だからスタンプは京都駅のものよりも小松駅とか金沢駅のスタンプばかりが並ぶ。

 天ざるを。小松駅前には美味しいお店はいくつかありまして、駅前通りを一分のところにあるお寺の前のお寿司屋さんなんかは一度は行ってみたいのだけれども、F-15とかF-35を撮影しているともうランチタイムが終わっているのかまっくら人気がない。

 駅そばも小松駅では頑張っているのだけれども、それよりも改札の対面側にこういうお店ができていまして、ラーメンかお蕎麦かクラフトビールを楽しめる、あとなにかもう一品合ったが、そしてもう一つ、クラフトビールだけでは御昼ご飯にはなりません。

 お蕎麦だよねえ、こう考えたのは京都よりはマシとはいえ小松も暑い、蒸し暑くないだけまともなのですが、そんななかで熱気むんむんのラーメンを食べると大変なことになる。蒸し暑い京都でこれをやると、外に出て延々汗が流れ続けるのですよね。経験上は。

 冷たいお蕎麦、天ざるで天ぷらを楽しみながら美味しくいただこう、ということに。お蕎麦は、今庄そばのような太っいぶつぶつの、しかししばらく食べないと寂しくなるような旨い田舎そばを思い浮かべていたのですが、そうではなく細切りわたし好み。

 1000円以上食事しますと、スマートボール無料券がつくという。スマートボール、そうスマートボールだ。わたしが勝手にルミックスの老紳士とよぶ小牧基地でよく撮影されている方が、偶然小松空港展望デッキでお隣でして、ちょうどいろいろな話題を嗜んだ。

 イタリア空軍F-35を待っていたのですが、来ないらしいということは直ぐにわかりましたが、しかし兼六園に転進するのもちょっと時間が悪いということで、今日はイーグル強化日にしようと張り切っていて、その際お隣のかたと、そしてご婦人の方と雑談を。

 アサクラスマートボール、豊橋駅前にあるスマートボール場の話題も出まして、そうアサクラさんコロナ前に廃業してしまったという話題をしていて、その帰りに小松駅で狙ったようにスマートボール場ができていた、これはなにかのドッキリだろうか。

 北陸新幹線スマートボールというものがありましたので、クラフトビールを片手に夜店気分、いや夜店にあるようなスマートボールよりも固定式のこちらのほうがよほどしっかりしている造りで、のめり込みずぎずぱつんぱつん弾くのが、たぶん嗜み。

 天麩羅は、美味しかった、ビールも美味しかった、けれどもピンチョスとはいかないからせめてナチョスとか、せめてサラミと生ハム三点セットとか、ビールと合うものがほしいなあ、とおもった。ただ、それもスマートボールの楽しさを前にはどうでも。

 スマートボールというのは、もともと、客船でビリヤードを嗜もうにも、船が揺れるのでビリヤードができない、だから最初から傾いた台の上にスプリング式の遊戯装置を装着したという、パチンコ台ににているというけれども、始まりはビリヤードだ。

 アサクラさんでもにた経験しましたが、雰囲気を嗜むので短時間できればいい、というのに、けっこうこれが入ってしまうのですね、豊橋でも経験したけれども列車の時間が迫る。小松駅でも列車の時間が迫るなかでスマートボールが当たり続ける。

 ぱつんと弾いて、大当たりにはいり、もはやこれまでで列車は一時間後になるのかあ、とおもっていましたら、この大当たりは駄菓子の景品がもらえるといううれしい部分でした、しかもこれはコーラ飴、むかしは大きく感じたものですが、嬉しいあたり。

 駄菓子屋さんも昨今はイタリアンなお店になったり減り続けている、昔は夕方から奥の方のお好み焼きとか出すこ上がりででオジサンオバサンたちがビールと小さな鉄板焼をやるようなお店があったけれど、そういうものは減った、しかし小松では一つ増えたのだ。

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ウクライナ情勢-クピャンスク・リマン・バフムート・マリンカ・アウジーイウカ

2023-08-11 07:00:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 防衛線があれだけ長いのですから何処かに間隙が有るのだと信じていましたが厳しい。日本の防衛に参考になる点を考えると戦線が多数となった場合に備えて師団数や退役した装備の予備保管は必要なのか、と。

 ロシア軍が東部戦線において大規模攻撃を開始した、ウクライナのゼレンスキー大統領は3日の戦況に関する発言において明らかにしました。これは8月4日付CNN報道などで配信されています。ゼレンスキー大統領によれば、戦闘が激しい前線地域はクピャンスク、リマン、バフムート、マリンカ、アウジーイウカ、即ち東部戦線全域です。

 東部戦線での攻勢はウクライナ軍が優勢である南部戦線からウクライナ軍兵力を引き抜くための陽動であるとも考えられてきましたが、個の陽動と呼ばれた期間は既に七月いっぱい継続され八月になっても持続していることから、ロシア軍が東部地域での再攻勢を本格的に開始した可能性が出てきました。他方、南部戦線は概況が今一つつかめません。

 南部戦線でのウクライナ軍前進は徐々に見通しが出ていますが、現実は当初期待されたよりもかなり遅く、これはロシア軍が大量に敷設した地雷原によるものです。この地雷原は同時に、ロシア軍が南部での再攻勢を計画する場合にも大きな障害となる可能性があります。南部ではこれ以上の戦果拡張をロシア軍が考えていないのか、現状は不明です。
■ロシア軍電子妨害
 自衛隊は対空電子戦装置Ⅰ型を試験している最中ですが師団単位か連隊戦闘団単位か方面隊単位で薄く装備するのかどのように装備するかを考えてゆかなければなりません。

 ウクライナ軍無人機はロシア軍電子妨害を受け運用が封じられている、7月27日付CNN報道としてウクライナ軍のオレクサンドルタルナフスキー南部軍司令官の発言を報道しました。ロシア軍は2014年クリミア併合の際に広範囲への電子攻撃を加え大きな戦果を挙げており、軍用通信を攪乱し携帯電話などの使用を強いることとなりました。

 携帯電話などの民間インフラは妨害よりも欺瞞など攪乱行動に脆弱性を有しているため、ウクライナ軍行動の露呈や迷惑メールなどによりロシア軍砲兵のキルゾーンに誘致させ砲撃で殲滅されるなど大きな損耗を強いられてきました。現在のロシアウクライナ戦争ではロシア軍自身の無線機を妨害する為、電子戦が控えられたという背景もあります。

 ムルマンスクBNという高さ100m以上の複数の可搬式アンテナを用いた電子妨害装置は半径数百kmの電子通信を妨害するとされ、NATOの海上データリンクシステムなどを無力化するために開発されました。ここまで行かずとも携帯式妨害装置は軍用以外の無人機には非常に大きな効果を発揮するため、電子戦の準備の重要性を示しています。

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新しい88艦隊と反撃能力整備【2】はるな就役1973年から半世紀-2023年はヘリコプター搭載護衛艦竣工50周年

2023-08-10 20:00:41 | 北大路機関特別企画
■DDHに可能な限界点
 DDHヘリコプター搭載護衛艦は時として空母と呼ぶ方もいますが、1973年のヘリコプター搭載護衛艦一番艦はるな竣工から海上自衛隊が護衛艦の限界は何処にあるのかを突き詰めて到達した限界値です。

 一個護衛隊に一個航空隊に相当する航空部隊を収容する能力を持つヘリコプター搭載護衛艦が加われば、それは護衛隊群や航空群とまでは行かずとも任務群として機能するのが、新しい88艦隊を構成する護衛隊の提案です。仮に相手が意識する遠隔地にこうした部隊が、親善訓練など居座れば価値観を共有しない相手は意識せざるを得なくなる、抑止力となる。

 価値観の共有、というものは難しい話ではなく、現在の日本は国際公序、つまり国連海洋法条約などで強行規範となっている“海洋自由原則”という価値観を共有する側の世界に居ます、それが、海洋閉塞主義、伝統的な地政学に基づく自国勢力圏を設定し他国の接近を拒否する価値観の国家に対しては、地球が一つである以上、認識の際が生じるという。

 憲法問題から領域を超える事は簡単な話ではありませんが、臨検など仮に応用できる安保理決議や強行規範などを用いて、シーレーンに対する抑圧的な機能を行使することは、国際法上のグレーゾーンではあるものの、明確な武力攻撃に区分されるものではありません。日本が国際法上の武力行使を受けた場合の選択肢として、整備しておいても無駄でない。

 プレゼンスオペレーションとして、日本は2014年からこうした遠隔地での各国海軍艦艇や海洋法執行機関との間で親善訓練を継続しています。これは鳩山政権時代の友愛ボートを発展させた概念であり、安倍政権時代からプレゼンスオペレーションは毎年実施、二ヶ月から三ヶ月にわたりインド洋方面へ展開し親善訓練を積んでいます。しかし数が足りない。

 いずも、かが。問題を付け加えると、ローテーションの厳しさを無視するならば、本土周辺地域の防衛を、ひゅうが、いせ、中心の護衛艦部隊や基地からの航空自衛隊F-35AとF-15Jに依存するとして、いずも、かが、この2隻だけで不可能ではありません。けれども長期にわたる遠隔地での作戦を維持するには、ローテーション、即ち交代がなければ続かない。

 ソマリア沖海賊対処任務における海上自衛隊と韓国海軍の違いをみればわかるのですが、交代が行える大型水上戦闘艦が、本土から離せないセジョンデワン級イージス艦と、やや小型すぎるクワンゲドデワン級を使えず、イスンシン級駆逐艦のみしか用いれなかった韓国海軍は常時展開ではなく不定期展開しかできていません。気合だけではこえられません。

 8隻のヘリコプター搭載護衛艦があって、初めて訓練と展開を両立できるものであり、特に遠隔地での運用を考える場合にはその回航にようする日数も加味しなければなりません。いや逆に、プレゼンスオペレーションの前述した二ヶ月から三ヶ月、いずも、かが、2隻で毎年実施できているのですから、この対象を、ひゅうが、いせ他8隻へ増やせないか、と。

 航空母艦ではなくヘリコプター搭載護衛艦であるからこそできるのは、恐らくこれがF-35CやラファールF4.1を搭載する航空母艦であったならば、8隻への増強ということは簡単には主張できません、それは日本が8隻の航空母艦を保有するリソース、航空母艦という二回り以上は大きな艦を8隻維持する人口や経済力とを有していない、そんな現実がある。

 航空母艦、例えば10万7000tのニミッツ級空母であれば一回の長期航海は半年以上可能です、いやイギリスも6万5000tのクイーンエリザベスで半年以上の長期航海を行いました。ただ、自衛隊がクイーンエリザベス級空母に相当する空母を8隻や6隻を維持できるようには、なかなか想像できないのですね。人口爆発と高度経済成長が再来すれば別ですが。

 ヘリコプター搭載護衛艦は、はるな竣工の1973年に駆逐艦が可能である限界点を検討した上で生み出した日本独自のシステムです。だからこそ、航空母艦を持つべきというような未知の技術を今から構築するのではなく、ヘリコプター搭載護衛艦、空母に対しても数隻を集中する事で対抗できるヘリコプター搭載護衛艦を、増強すべきだと考えるのです。

 プレゼンスオペレーションを実施する部隊を実質四倍に増やすのですから、三ヶ月を四倍としましたら十二ヶ月、つまり恒常的に実施する事が可能となり、インド洋やアラビア海、地中海や場合によってはアメリカ東海岸やイギリスと大西洋地域において、日本のヘリコプター搭載護衛艦を中心とした艦隊が恒常展開する、ということが可能となるのですね。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋、日本がプレゼンスオペレーションを定期的に実施し、各国と親善訓練を重ねる場合においても、この安倍政権時代に提唱した海洋自由原則という国際公序に依拠した安全保障観とも合致します。そしてこの行動は、前述のとおり、古典的なゲオポリティクスによる海洋閉塞主義を試みる国には、大きな不確定要素となる。

 プレゼンスオペレーションについて、今行っている施策に各国の反応は概ね好意的です。1946年からの平和憲法が築いた、日本は領土的野心を有さない平和国家、という一つの実績といえるでしょう。1953年の建国以来日本をのぞく東西南北すべての国と戦争を重ねた国とは違う、平和の遺産、ここに依拠し国際平和に貢献する、という発想といえましょう。

 ひゅうが、いせ。果たしてF-35Bの運用は可能なのか、こうした疑問符をつけられる方はいるかもしれません、実際、船体規模に限界があることは確かです。ただ、F-35BがJSF計画として構想された当時、イギリスのインヴィンシブル級空母での運用を念頭に置いていたことを忘れるべきではありません、そして必ずしも飛行隊規模を積む必然性もない。

 インヴィンシブル級空母は、平時においては主任務が対潜作戦であったことから主力艦載機はシーキングであり、シーハリアーはこの場合5機を搭載するのみでした。もちろん、制空作戦などではシーハリアーを増強し空軍のハリアーも追加搭載していましたが。5機は即応待機を行う一つの定数として、最低限度よりは上の数で実績が積まれているのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア航空宇宙軍航空攻撃阻むウクライナ防空砲兵前線進出と占領地橋梁叩くストームシャドウ

2023-08-10 07:00:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 この状況で一定規模の航空戦力と空中機動部隊がウクライナにあればと思うのです。

 ロシア航空宇宙軍の大規模な攻撃が効果を挙げられていない、8月7日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告がその概要を発表しました。7月から8月初旬にかけて、ロシア空軍は毎日100回以上の航空攻撃を実施していますが、6月のウクライナ軍反撃開始の際程には航空攻撃が威力を発揮できていません、これにはウクライナ側の変化が。

 ウクライナ軍は前線の防空砲兵部隊を増強しており、これによりロシア軍戦闘機や戦闘爆撃機はロシア軍占領地上空よりもウクライナ側へ接近できない状況となっていて、ロシア空軍は滑空爆弾を重点的に投入しているもよう。この滑空爆弾は通常の自由落下型爆弾に翼を装着したもので、地対空ミサイルを避け目標の数km手前から投射する。

 滑空爆弾について、問題はJSOWのような精密誘導爆弾ではなく通常の爆弾に翼を装着しただけのものであるため、命中精度を確保できない状況とのこと。また同様の理由からロシア軍戦闘ヘリコプターもウクライナ軍防空砲兵部隊の第一線進出により、6月の反撃緒戦の頃のような威力を発揮できていない状況があるとイギリス国防省の分析です。
■チョンハル橋
 ストームシャドウミサイルの運用を見ますと航空自衛隊が導入するJSMミサイルには期待してしまうのだ。

 クリミア半島とロシア占領地を結ぶ橋梁の状況について、ISWアメリカ戦争研究所が8月6日に分析情報を発表しました。橋梁はチョンハル橋とヘニチェスク海峡橋があり、チョンハル橋は自動車道と鉄道橋がウクライナ軍攻撃を受け現在修理中、ヘニチェスク海峡橋も補修中で通行不能、この為危険であるか輸送効率の低い迂回路が使われている。

 ストームシャドウミサイル、従来のHIMARSから発射されるGMLRSよりも射程の大きな巡航ミサイルが橋梁の破壊に威力を発揮しており、鏑矢となったイギリスからの供与に続き、フランスから供与されたストームシャドウミサイルも実戦に投入されていることが、ウクライナ空軍のSu-24フェンサー戦闘爆撃機広報写真などからうかがえます。

 ドニエプル河西道路とチャプリンカ北東経路という迂回経路がありますが、先ずドニエプル河西道路については対岸のウクライナ軍軍砲兵射程圏内に入っておりトラック輸送は砲撃で無力化される懸念がある、チャプリンカ北東経路は砲撃の射程外にはありますが主要道路ではなく村道にあたり道路状況が悪く大型車両が速度を上げて通行できません。

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【京都幕間旅情】天龍寺,天龍寺と三つの戦争-鎌倉幕府滅亡後の混乱は南北朝の日本分断と京都騒擾応仁の乱

2023-08-09 20:23:45 | 写真
■天龍寺と三つの戦争
 嵐山のこの寺院はかつて三つの戦争に巻き込まれた、故に伽藍の多くは幾度も再興を重ねつつしかしその戦乱を回避する方法に思い浮かべれば歴史の複雑さを学ぶところから始めねば威勢だけでは進みません。

 天龍寺、嵐山と亀山の借景とともに美しい情景を醸し出す、故に冬の季節などは嵐山と亀山が早々と陽光を遮ってしまい憂国の頃には全く日陰の寂しい情景を引き出してしまう、のだけれどもそれは冬の話、今は夏です。刺すような青空がこれは逆に痛々しい。

 法堂と大方丈などは明治時代の建物となっていまして、これも寺院の複雑な歴史を建物の形で示している、けれどの曹源池庭園、嵐山と亀山を借景とした庭園は夢想礎石の作庭を継承しているというもので、文字通り国破れて山河在り、庭園の風景は不変という。

 橘嘉智子、もともとこの当地は平安時代に嵯峨天皇の皇后である橘嘉智子が開いた檀林寺というお寺がありました。檀林寺という名前の寺院は残るものの、この時の檀林寺は残念ながら廃寺となり、四百年ほど放置されていた、土地は多く悠長な時代の話です。

 後嵯峨天皇の時代、嵯峨天皇は空海とともに時代を生きた文字通り平安遷都間もない頃の天皇さんですが、その時代から放置されていました檀林寺を再興しようという機運が、後嵯峨天皇の第三皇子により掲げられました。この人はのちの亀山天皇となられる。

 檀林寺を再興する、しかし寺院として再興するのではなく亀山殿という離宮として再整備するということであったのですが、ここで前に触れました足利尊氏の時代となる。亀山天皇の在位期間は西暦1259年から1274年までですので、時期的にはやや、近しい。

 鎌倉幕府滅亡と建武の新政に南北朝時代という日本分裂、そうした時代に苦悩する新しい権力者足利尊氏は、思い悩む様子を信頼する禅僧夢想礎石に迷いと後悔を弔うべく寺院造営を勧められ、光厳上皇に奏請したうえで亀山殿の跡地を賜り、寺院としました。

 落慶供養は後醍醐天皇七回忌の法要を意識して行ったという。そして禅寺の格を示す京都五山では第一位とされました。さて、戦争と天龍寺と銘打って散策の友の知識とした今回ですが、やはりといいますか、洛中からは離れている当地も後に戦火に見舞われる。

 応仁の乱で伽藍を焼失しているのですね。いや実はこの天龍寺は火災に見舞われる事が多い寺院でもあり、開山から最初の40年間で伽藍の焼失する大火災が二回、仏殿と法堂と三門とが焼け落ちる大火災が一回、そして庫裏が焼ける火災も一回起きていました。

 京都五山第一位という格付けは、火災に見舞われるも再建を果たした背景という。つまり寺域が非常に広く今の嵐電帷子ノ辻駅あたりまで伸びていた、あの鹿王院も天龍寺の塔頭というのは納得できるほど広大で、この為に度重なる火災でも再興ができたのです。

 応仁の乱は、しかし幕府権力そのものを大きく揺るがした騒擾であり、これにより天龍寺もその原動力を剝がされることとなるのですが、他方で安土桃山時代には大火災は無く、江戸時代も文化年間の大火を除きほぼほぼ安泰に火災予防に成功し祈りを紡ぐ。

 慶長伏見地震により、これは火災ではないのですがかなりの建物が倒壊しています。いやこの時は豊臣秀吉が1720石を寄進してくれましたし、江戸時代には徳川家康が寺領7020石安堵という、大名並みの厚遇を受けて伽藍を再構築することができているのだが。

 蛤御門の変。応仁の乱という大乱を挙げましたがもう一つ、幕末の騒擾に天龍寺は巻き込まれ、今度は火砲の攻撃を受け全焼しています。太平洋戦争のB-29空襲こそ受けていないが、この天龍寺は幾度も戦災というものに直面し続けた寺院ということに、なる。

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【京都幕間旅情】天龍寺,天龍寺と三つの戦争-間もなく迎える終戦記念日を前に思い浮かべた遠い歴史の蜃気楼

2023-08-09 20:00:11 | 写真
■天龍寺と三つの戦争
 八月九日は長崎原爆慰霊の日であり今年は台風に見舞われていますがその先は直ぐに八月十五日です。

 今年も八月十五日、終戦記念日を迎えるのですが、考えてみると戦後、という感覚は日本史では江戸時代などを例外として戦乱に見舞われていない稀有な時代であった、と感謝することもあるのですね。文字通り、わたしの祖父の世代までしか戦争経験はない。

 天龍寺は三つの戦争に巻き込まれた、偶然にしてその三つに戦争にアメリカとの太平洋戦争は含まれていませんが、三つの戦争により生まれ、そして荒廃と灰燼に帰し、しかし釈迦三尊を奉じる寺院として今に至ります。その歴史を経た立地の寺院を歩んでみよう。

 応仁の乱が京都では前の戦、という言葉があるようですが、応仁の乱よりも太平洋戦争の方が戦争という意味ではしっくりくるように思います。九条を守ろう、というスローガンは烏丸線九条駅を守るのではなく憲法九条を示すものが大半、その源は先の大戦で。

 嵐山へ。平和の尊さを云々するために嵐山へ、というよりは京福電鉄嵐電の増結という季節ですので長い編成を見るついでに散歩の歩みを嵐山まで伸ばそう、と考えました次第です。しかし、ここは考えてみれば京都でも戦争というものを考えさせられる地だ。

 天龍寺。そう天龍といえば巡洋艦で船団護衛の最中に潜水艦に沈められたので平和のなどなど、なんてことは考えないのですが、この寺院は、戦争、太平洋戦争ではないのだけれども、関係のある歴史をたどっています。偶然とはいえ散策の先に歴史を見つけた。

 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町、要するに嵐電嵐山駅の目の前にありまして、京都五山の一つに数えられる禅寺であるとともに、その美しい庭園から嵐山観光の定番となっています。しかし熱い、陽炎が立つほど熱くアスファルトの地面は火傷しそうとさえ。

 八月十五日、あの日も暑かった、と様々な方が回顧しています。気温は今ほど高くはなかったにしろ冷房が全く普及せず電力は戦力といわれ扇風機さえ憚れた時代ですので、感覚からしますともっと暑かったのでしょう、いまは気候変動との戦争に巻き込まれる。

 霊亀山天龍資聖禅寺、天龍寺は正式にはこう冠せられていまして臨済宗の寺院、より正確には臨済宗天龍寺派の寺院となっています。京都五山の通り禅寺ですので日本に入ってきました仏教としては後発、創建は康永2年こと西暦1343年と京都の寺院では新しい。

 夢窓疎石を開山に足利尊氏が開基となりまして開かれた寺院なのですが、当地に寺院を開こうと足利尊氏が決意した背景には、後醍醐天皇の崩御でした。もちろん阿りのような感覚ではなく、鎌倉幕府を滅ぼし始まった建武の新政を経て天皇と足利尊氏は対立する。

 鎌倉幕府滅亡は、最後の執権赤橋守時が新田義貞との会戦で戦死し、北条家当主北条高時が生き残りの家臣と慕って付き従った白拍子たちとともに炎上する東勝寺において全員死亡するという、日本史にある三つの幕府の中では際立った最期を遂げています。

 建武の新政、鎌倉幕府滅亡とともに公家一統を掲げ親政に臨んだ醍醐天皇は、しかし政治手段とともに補佐役など統治機構や法治体系の構築に失敗し、結果的に足利尊氏と対立、吉野に逃れて南朝を興すことで日本は史上初、南北朝の分裂時代を迎えてしまう。

 後醍醐天皇崩御は、こうした南北朝対立の最中での吉野での崩御という背景があり、いわば戦争と権力闘争の末に開かれた寺院、それが天龍寺のもう一つの姿でもあるのです。しかし、天龍寺と戦争の関係はもう更に、歴史が重なるのですが、また別の機会に。

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