「なぜ本をもつか」というと私の場合には自分の頭があまりよくないからだと答える。
というのは例えば、いまある定積分公式を証明したいのだが、それを証明する方法をなかなか思いつかないからだ。それで何かヒントになる文献はないかと探したが、なかなか見つからなかった。
昨夜、それでも応用数学の演習書を探して見たら、その中にヒントとなる演習問題があり、ようやくこの定積分公式が証明できそうになってきた。
だから私の考えでは、なんでも自分で計算ができてしまう人には文献としての本などは不要だろう。残念ながら私の頭はそう鋭くはない。それでヒントとか証明そのものが載っている可能性の多い本をもつことが必要なのだ。
数学計算のテクニカルのところですぐにつっかえてしまう私のような者はなんでも修得することが難しい。それでも数学や物理で比較的簡単なことはいくらかは修得しているが、いつでも計算につまってしまう。
それで経路積分の本の中に出てきた有用な定積分公式のいくつかを証明しておこうとして、まだ全部は証明ができていないが、証明したい式もだんだん少なくなってきたという経過をたどっている。
いろいろな大学の理工系学科で演習書が必要なのはそういう分野ですぐに計算にすぐに手が動くようになるようにするためということであろう。しかし、現実はなかなか厳しいものである。
アメリカの大学教育では演習書としてSchaum's Outline Seriesというのがあり、いつだったかアメリカで大学院教育を受けた同僚の先生からこのシリーズのベクトル解析の演習書を借りて、テンソル解析の箇所をコピーさせてもらったことがある。そういう演習教育が日本では十分ではないが、アメリカではされているということを感じた次第であった。