65年以上昔になるが、釜山(プーサン)からバスで数時間のところにある鎮海(Tin-hage?, チネ)という小さな町に住んでいた。その当時はまだ幼稚園にも通うようにもなっていない、本当に幼児の頃である。少し字が読めるようになって見た童話が何かの本の中に知ったのがシクラメンという花であった。
とはいっても当時シクラメンという語を知っただけで、実際にシクラメンを見て知っていたわけではない。その後、私は花とか植物とか昆虫とかにはほとんど無関心だったので、シクラメンを知らないで何十年か過ごした。
結婚して子どもをもつようになって何年か経って、はじめて実際にシクラメンを見た。そういういきさつで言葉を覚えることが先行して実物はその何十年後に見るという経過を辿った。
数年前に定年退職してから、年に一度か二度か友人を呼んでパーティをするようになった。そのときに友人の奥様がシクラメンの鉢植えをお土産をもってきてくれた。鉢植えはもちろんきれいなシクラメンが咲いていたのだが、暖かくなると葉も枯れてしまった。後には大きな球根が残った。
それでもうどうしようもないかと思ったが、それでも毎日その鉢植えに水をやっていたら、冬に近くなって葉が出てきた。別に花が咲くことなど期待しないで、続けて水をやっていたら、つぼみが出てきて花が咲きそうになった。
それでも寒いときには花は咲かずもう駄目かと思っていたら、ごく最近にきれいな花が咲いた。ピンクのもの、真紅のシクラメン、真紅とピンクの混ざったもの等の4鉢が仕事場のバルコニーに咲いている。いずれも小さな鉢だが、それでもけなげに咲いている。