四元数の発見への道の説明がスティールウエルの「数学のあゆみ」下巻(朝倉書店)にあると数理科学8月号で読んだ。
私の前に書いたエッセイ「四元数の発見」(愛数協の「研究と実践」掲載)とどうちがうかと思い、E大学の図書館でこの本の該当箇所をコピーしてきた。
昨日このコピーを読んだところでは一部数論で知られていたことをハミルトンが知らなかったというような説明があったが、肝心の四元数の発見の説明では私の記述のほうが詳しいと思う。
私の説明はハミルトンの論文の解読であるから、これは当然かもしれない。もっとも捉え方のキーポイントは私とスティールウエルとでまったく同じであった。
堀源一郎さんの「ハミルトンと四元数」(海鳴社)ではこの部分を1843年のハミルトンのノートの訳で置き換えている。この訳の解明もほぼ済んでいるので、私の「四元数の発見」という2008年2月に書いたエッセイを補強することもできるが、さてどうしたものだろうか。
堀さんの本のハミルトンのノートの訳には詳しい計算等がでているが、これはその後のハミルトンの論文には出てきていない。四元数の発見のノートからはハミルトンが四元数を複素数とのアナロジーで追求してきたことがわかる。
その点を追求してまた新たなエッセイを書いてみようかと思っている。ただ、私は球面三角法の導出にも最近関心をもっているのだが、この四元数が球面三角法の導出にも使えると知って関心が深まっている。この点については堀さんの本にも詳しい説明があるようである。
(2013.6.23付記) その後、四元数については現在サキュラーの「数学・物理通信」に連載している。最初は2011年9月の1巻9号から書き始めて、1巻11号、2巻1号、2巻2号、2巻5号、3巻1号、一番最近では2013年3月の3巻2号まで書き進めている。
これらは「数学・物理通信」で検索をすると名古屋大学の谷村さんのサイトに出くわすのでそこで見たり、またダウンロードすることができる。なお、この連載は続ける予定である。
(2014.1.6付記) 四元数に連載のエッセイは2013年12月の「数学・物理通信」3巻8号まで断続的に続いている。この連載もそろそろおしまいにしたいところである。
別に自慢するという訳ではないが、四元数の発見の経緯とか四元数と回転とかについて突っ込んで議論したつもりである。