因数分解は発見の手段の一つだと思うようになった。
私はPauli行列という2行2列の行列をどのようにして見つけたかという疑問をもっていて、これについて一度「数学・物理通信」に書いたことがある。
これは朝永さんの『角運動量とスピン』(みすず書房)の角運動量の箇所を元にして、Pauli行列を導いた。
それ以外に、マルゲナウとマフィーの『物理と化学のための数学』(共立全書)から、やはりPauli行列を求める方法をメモをつくっていたのを最近見つけた。
そのメモの中にClifford代数との関係をメモってあった。これはどこからとったのかのメモには記載がなかったが、たぶん四元数に関係したインターネットのサイトからのメモであるのだろうと思っている。
x^{2}+y^{2}+z^{2}を因数分解するという考えからClifford代数をみたすPauli行列が出てくるという話である(注)。
四元数も同様にw^{2}+x^{2}+y^{2}+z^{2}=(w+ix+jy+kz)(w-ix-jy-kz)とi, j, kを用いて因数分解できる。そうだとするとw^{2}+x^{2}+y^{2}+z^{2}の因数分解という考えからも四元数が導出できるということになる。
だから、四元数へのアクセスとしては2次形式を因数分解するというアプローチの仕方もある。私の四元数へのアプローチは実はこのやり方ではなかったのだが、インターネットではこういうアプローチが多いという気がしている。
話が横にそれたが、E^{2}-(cp)^{2}-m^{2}c^{4}=0という粒子のエネルギーと運動量の関係を因数分解するというような感じでKlein-gordon方程式からDirac方程式が出てきたことを量子力学を学んだ人は知っている。私もそれを学んだのは遠い昔のことであったので、忘れてしまっていた。
八元数もこういう風にして導入されたかどうかは知らないが、そういう風に見ることもできないか調べてみたいと思っている。
ついでに述べると、Clifford代数をみたすものとしてPauli行列以外にgamma行列が4行4列のマトリックスとして知られている。
それにしても、CliffordはどういうことからClifford代数を考えついたのだろうか。
(注)sammaya.garyotenseiの「実数・複素数・四元数」というサイトだったらしいが、上のx^{2}+y^{2}+z^{2}は因数分解できないという結論を出している。これはそういうことはなくて、x, y, zの前にPauli行列を因子としてかければ、因数分解できる。これはsammayaさんのサイトには書かれていないので、どこか別のところで仕入れた知識らしい。