単振動の合成というタイトルのエッセイを書いたことがある。
普通に高校の数学で学ぶのは2つの\cos xと\sin xとの二つの三角関数の合成である。これは振動方向が同じ方向であると仮定されている。また初期位相もお互いに0である。また振幅も同じである。
単振動の合成とはこうい ものだとばかり思っていたのだが、そうではない単振動の合成もある。こちらは私の『物理数学散歩』(国土社)にも収録したが、互いに垂直に振動する単振動の合成について書いた。このときには振幅のちがうとしており、振動方向ばかりがちがったものではなかった。初期位相も異なるが、ただし振動数は同じである場合であった。
そしてこの場合に時間を消去すれば、軌跡は楕円となった。もちろん、x-y軸に対してある角度をなしている一般的な場合の楕円である。
では初期位相も違い、かつ、振動数もちがい、振幅も違う振動はどうなるのであろうか。これは物理とか電気振動等でよく知られたLissajouの図形というもので表される。
オシレーターとオッシロスコープがある学生実験室ではオッシロのx端子とy端子にオシレーターで発生させた二つの振動を送って合成させて、この二つの振動の周波数の比を変えて行けば、いろいろの図形がオッシロの画面上に現れることを実際に周波数を変えて観測して遊んだことがあった。
三角関数での単振動も合成について書くのならば、ここまで書かなければならないのではないかと思い始めた。これは坂江正『ピタゴラスからオイラーまで』(海鳴社)にはもちろんこのことは書かれている。さすが、電気通信大学で学ばれた坂江さんだけのことはある。
単振動の合成といってもなかなか面倒なことであるが、こういうことまで論じるのはしかたがあるまい。