遠山啓と武谷三男の両者の著作目録を作成したのは日本人では私だけであろう。武谷三男の著作目録とか業績リストは「素粒子論研究」電子版に出ている。
一方、遠山啓の著作目録は私の発行している「数学・物理通信」の11巻号外号(2021.12.24)に掲載している。ある数学教育史家の方の強力な協力を得てこの改訂版を出そうとしている。
ところが、アマゾンコムで遠山啓で検索すると新しい文庫版とか新書版が出ているのだ。武谷三男の方は調べていないからわからないが、遠山さんほどには著書(これはいずれも旧著ではあるが)が、どんどん文庫等で出される著者はあまりいないのではないか。
武谷は生前まったく教科書風のテクストを書かなかったわけではないが、一般にテクスト風の著書を書くのを嫌ったという風に思われる。しかし、岩波講座「現代物理学」の「原子炉」は小冊子ながら、名著だといわれている。
数学者の道を捨てて、数学教育者としての道をある時点で選択した遠山にはテクスト風の著書も多い。そのためだろうか。没後45年にもなろうかという方とは思われない。しかし、どこにその違いが生じる原因があるのだろうか。
私はどちらの方も好きで二人の著作目録をつくったりしている。元物理屋の私としては自分自身への影響として武谷三男の方が大きいかと思われるが、どうもそうとばかりは言うことができなさそうでもある。
(2023.11.26付記)
「遠山啓博士の著作目録」改訂版を数学・物理通信13巻号外号に掲載した。インターネットでも読むことができるはずだ。それに雑誌「数学セミナー」で桃子のお知らせが12月号には載っているはずである。まだ私は12月号を見ていないのだが。