小沼通二『湯川秀樹の戦争と平和』(岩波書店)をはじめて始めから終わりまで通して読んだ。これは優れた読み物である。
これは岩波ブックレットの1冊だが、湯川秀樹の戦争防止と平和への願いの思想とその闘いの記録でもある。またその思想に共鳴している小沼さんの闘いの書でもあろう。
発行されたときに小沼さんから「ぜひ、ご購読下さい」との要請があったので買ったのだと思うが、読んでいなかった。実は他の本を自分の書棚に探していて見つけて、ようやく昨日読んだのである。
戦争と平和とかに関心のない方はこれは湯川秀樹の伝記だと思っていただいてもよい。小沼さんは世界平和アピール7人委員会の委員や日本パグウオッシュ会運営委員をされている物理学者である。
緻密な方であり、歴史にも詳しい方であり、またリベラルな思想の方である。巻末近くでの小沼さんのご自身のお考えとか見通しとかも少しだけだが、書かれている。
私が小沼さんとまったく同意見なのはむしろおかしいくらいである。しかし、それほど小沼さんのお考えが湯川の思想の延長でご努力され、活動されていることだということでもあろう。
私も約半年の短い期間であったが、湯川さんの基礎物理学研究所に勤務していたので、昼食時とかにいつも出会った。所長室の隣の小会議室で仕出しの弁当を食べながら所員の方々と談笑する数十分を過ごされていた。食後に牛乳を1本、特に飲まれていた。
食後のある時には若い私たち研究員を相手にそれとなく研究の激励をされることもあった。これは具体的に何らかの指示をされるというようなことではなかったが、湯川の学問に対する気迫を感じさせたことであった。
学問上の孤独を恐れず、独創的な独自の道を進むという気迫である。
話が思わずまた外れたが、この小冊子を購入してできるだけ多くの方に読んでいただけることを望んでいる。定価は620円である。少しは定価の上昇はあるかもしれないが、そんなに高価にはなっていないだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます