宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

日本手話言語法(案)の制定で「手話を学ぶ機会の保障」を求める、全日本ろうあ連盟

2016年03月04日 16時54分56秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

 一般財団法人全日本ろうあ連盟は、「日本手話言語法案」の要綱案を、日本財団の協力をえて、とりまとめました。

 国と自治体に、すべてのろう者に対して手話を学ぶ機会を保障するよう義務付けています。

 連盟によると、平成28年2016年3月3日をもって、国内のすべての地方議会で、「手話言語法制定を求める意見書」を採択しました。

 今後国会に提出・成立を求める法案の要綱では、

 「日本手話言語とは、日本のろう者が、自ら生活を営むために使用している、独自の言語体系を有する言語を指し、豊かな人間性の涵養及び知的かつ心豊かな生活を送るための言語活動の文化的所産」と定義。

 そのうえで、

 「ろう児(乳幼児を含む。)は、手話の言語能力及び言語文化の理解を深めるために、発達段階に応じて手話を学習する機会が保障される」

 「国及び地方公共団体は、日本語獲得後に失聴した者に、意思疎通の手段として手話を学習する機会を提供しなければならない」

 などと、国・自治体の情報提供、差別の禁止、政治参加、伝達手段など包括的な内容をコンパクトにまとめたもの。

 これに関連して、最大野党・民主党の岡田克也代表は3日の定例記者会見で記者から質問を受けて「現在でも障害者基本法においては手話を言語として認めることは明記されています。それ以上に手話をさらに広げるための立法は必要ですし、中身をよく精査した上で党としての取り組みを考えていきたい」と前向きにとりくむ意向を明示しました。

 全日本ろうあ連盟に確認したら、全文引用していいとのことですから、同連盟が日本財団の助力を得て、作成した法律案の案の全文を、引用します。

全日本ろうあ連盟ウェブサイトから全文引用はじめ]

日本手話言語法案

第一章 総則

(目的)
第1条
この法律は、日本手話言語(以下「手話」という。)を、日本語と同等の言語として認知し、もってろう者が、家庭、学校、地域社会その他のあらゆる場において、手話を使用して生活を営み手話による豊かな文化を享受できる社会を実現するため、手話の獲得、習得及び使用に関する必要な事項を定め、手話に関するあらゆる施策の総合的かつ計画的な推進を図ることを目的とする。

(定義)
第2条
この法律において、「日本手話言語」とは、日本のろう者が、自ら生活を営むために使用している、独自の言語体系を有する言語を指し、豊かな人間性の涵養及び知的かつ心豊かな生活を送るための言語活動の文化的所産をいう。

(国及び地方公共団体の責務)
第3条
国及び地方公共団体は、第1条の目的の達成を遂行するため、ろう者が手話を使用して豊かな生活を営むことができるよう、手話の言語活動及び文化振興に関する施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。

(障害者基本計画等)
第4条
政府は、障害がある者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」をいう。)を策定するなかで、ろう者が、手話を使用して豊かな生活を営むことができるよう手話の言語活動及び文化振興に関する総合的な施策に関する計画を策定しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者基本計画において、手話の言語活動及び文化振興に関する施策を策定し実施するにあたっては、手話審議会の意見を聴かなければならない。
第二章 手話言語の獲得及び習得

(手話の獲得)
第5条
ろう児(乳幼児を含む。)は、手話を獲得する機会が保障される。
2 国及び地方公共団体は、ろう児(乳幼児を含む。)、その保護者及び家族に、手話及び日本語の言語に関する能力(以下「言語能力」という。)の涵養の観点から必要な情報を、提供しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、ろう児(乳幼児を含む。)の手話の獲得を選択する保護者及び家族に対し、必要な支援を行う。

(手話の習得)
第6条
ろう児(乳幼児を含む。)は、手話の言語能力及び言語文化の理解を深めるために、発達段階に応じて手話を学習する機会が保障される。
2 国は、学校教育法に定める学習指導要領に手話の位置づけを策定し、ろう児を対象にした特別支援学校等においては必須教科とする。
3 前項において、ろう児が、特別支援学校以外に在籍している場合は、手話の学習に関する必要な措置を講じる。
4 国及び地方公共団体は、日本語獲得後に失聴した者に、意思疎通の手段として手話を学習する機会を提供しなければならない。
5 国及び地方公共団体は、日本語による文字情報を手話に翻訳された映像を、学習教材として提供できるように努めなければならない。

第三章 手話の使用

(教育)
第7条
ろう児・者は、その障害に基づく差別を受けることなく、等しく教育を受ける権利を有し、手話で教育を受ける機会が保障される。
2 教育機関等は、ろう児・者の学習環境を整備し、手話を習得した教職員又は手話通訳者を必要に応じて配置しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、ろう児が教育機関等において手話を用いて教育を受けることが適切である場合は、教育機関等が必要な支援と合理的配慮を行うことができるよう必要な措置を講じなければならない。

(ろう児(乳幼児を含む。)を対象とした特別支援教育等)
第8条
国は、ろう児(乳幼児を含む。)の療育及び教育について、手話及び日本語の二つの言語による教育を推進することが望ましい。
2 ろう児(乳幼児を含む。)を対象にした特別支援学校等は、言語及び意思疎通の能力の発達向上のために、ろう児(乳幼児を含む。)の集団生活及び行動において自由に手話を使用できる環境を整備しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、ろう児を対象にした特別支援学校において、手話の言語能力の向上及びろう児の人格形成を促進するため、手話を使用するろう者である教職員の配置を促進しなければならない。
4 大学等の教員養成機関では、ろう児の手話の言語能力の向上及び人格形成の指導ができる教員を養成するため、特別支援学校免許(聴覚障害)の免許取得の過程において、手話を十分に習得できるカリキュラムを作成しなければならない。

(通信)
第9条
ろう者は、手話を用いて直接的な通信の役務を提供すること、並びに通訳を介した間接的な通信の役務の提供を受ける機会が保障される。
2 通信役務を提供する事業体等は、ろう者が手話で通信の役務の提供を行えるよう、並びにろう者が手話を的確に受信できるよう、適切な環境を整備しなければならない。

(公共施設等)
第 10 条
国及び地方公共団体は、自己の機能及び権限を行使し、公共事業体が提供する役務の利用促進及び市民に対する情報を提供するにあたり、日本語のほか手話を使用しなければならない。
2 ろう者は、公共事業体の提供する役務の利用又は行政手続きにあたり、手話の使用を選択することができる。
3 国及び地方公共団体は、国民に対して行う情報の提供にあたり、ろう者にも手話通訳を介して同等に情報が提供されるよう施策を講じなければならない。

(政治参加)
第 11 条
国及び地方公共団体は、ろう者が、手話を用いて、国政又は地方自治に関する選挙(被選挙を含む)、住民投票、住民の直接請求、請願、公の議会等における参加及び傍聴、情報の受信及び発信を行うことができるようにしなければならない。
2 ろう者は、政治に参加するため、手話を選択し、使用する機会が保障される。
3 国及び地方公共団体は、政治に関するあらゆる情報が、ろう者に手話で提供されるよう施策を講じなければならない。

(司法手続)
第 12 条
ろう者は、裁判所において裁判を受ける際、又は司法手続きに参加若しくは傍聴することを含むすべての司法関係手続(捜査段階から刑の執行終了までを含む。)において認められた基本的人権を享有し、手話を使用する機会が保障される。
2 警察、検察及び裁判所は、ろう者が、手話を選択して司法関係手続に参加することを知り得た場合は、直ちに手話通訳を配置しなければならない。
3 警察、検察及び裁判所は、ろう者が、日本語の文字で表現されている書面に代えて、手話による映像翻訳の提供を希望した場合は、それを提供しなければならない。

(労働及び雇用)
第 13 条
ろう者は、その障害に基づく差別を受けることなく、等しく働く権利を有し、その者が従事する職場等で手話を使用する機会が保障される。
2 事業主は、ろう者である従業員が、継続的に働けるよう環境整備及び合理的配慮を含む支援を行い、手話通訳者を配置するよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、事業主が必要な支援と合理的配慮を行うために必要な措置を講じなければならない。

(民間施設等)
第 14 条
ろう者は、その障害に基づく差別をうけることなく、民間施設等あらゆる場面において手話を使用する機会が保障される。
2 保健及び医療分野においては、ろう者は保健及び医療に関する情報及び自己決定の機会を、障害のない者と等しく保障される。これを実施するため、医療保健機関等は、手話通訳者を配置しなければならない。
3 ろう者に接触の可能性がある専門職(医師、言語聴覚士等を含む。)は、その養成過程において、手話の学習を義務づけられる。
4 商業及び商業役務の分野においては、手話を使用する消費者の権利を保障するため、適切な手話が提供できる環境の提供に努めなければならない。
5 国及び地方公共団体は、手話を使用するろう者に、民間施設等において必要な支援と合理的配慮を提供できるよう、必要な施策を講じなければならない。

(放送)
第 15 条
公共放送及び民間放送機関は、ろう者が障害に基づく差別をうけることなく、障害のない者と等しく放送を
視聴することができるよう、すべての放送番組において手話による提供を行わなければならない。
2 公共放送及び民間放送機関は、手話番組及び手話付き番組の開発に努めなければならない。
3 国は、公共放送機関及び民間放送機関等が、ろう者に対して必要な支援と合理的配慮を行うための施策を講じなければならない。

(文化及びスポーツ)
第 16 条
国及び地方公共団体は、手話による文化、芸術活動及びスポーツ活動の発展を奨励する施策を講じなければならない。
第四章 手話通訳制度

(手話通訳制度)
第 17 条
ろう者は、社会参加をするにあたり、手話通訳を利用料負担することなく利用する機会が保証される。
2 厚生労働大臣が別に定める基準を満たす施設には、期限の定めなく雇用された手話通訳者が配置される。
3 雇用により配置することが困難な場合は、総合福祉法で定められた地域生活支援事業において登録された
手話通訳者の派遣により配置する。
4 手話通訳者の養成及び資格認定は、厚生労働大臣が別に定めるところにより実施する。
5 その他手話通訳制度において必要とされる施策
第五章 手話審議会等

(手話審議会)
第 18 条
手話の発展、普及及び促進のため、国及び地方公共団体が実施する手話言語計画及び施策に係る主要事項を審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、意見を述べるために、内閣府に手話審議会を置く。
2 手話審議会は、次の各号の事項を審議する。
一 手話の発展、普及及び促進のための手話言語計画策定に関する事項
二 手話言語計画及び施策の実施状況の監視及び勧告に関する事項
三 手話通訳制度に関する事項
四 その他必要とする事項
3 手話審議会は、手話学、教育学及び関連分野の専門家並びに手話を使用するろう者が構成する団体の代表
によって構成される。
4 手話審議会の議事録等は、手話及び日本語で記録され、手話の映像及び日本語により国民に開示される。

(手話研究所)
第 19 条
手話の発展、使用、普及及び促進のための持続的研究及び調査のために手話研究所を設置する。
2 手話研究所は、次の各号の事項を実施する。
一 手話の調査、研究、確定及び普及
二 手話の教科の開発
三 手話能力の評価方法の開発
四 手話に関する情報の収集
五 その他必要とする事項

第六章 雑則

(手話の日)
第 20 条
国民に広く手話及び手話文化についての関心と理解を深めるようにするため、手話の日を設ける。
2 手話の日は、○月○日とする。
3 国及び地方公共団体は、手話の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。

(国際交流)
第 21 条
国は、できる限り多様な国の手話文化が国民に提供されるようにするとともに、我が国の手話文化を広く海外に紹介するために、我が国の手話の翻訳の支援、並びに外国の手話の出版物及び映像の翻訳支援を行い、国際交流を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

[全文引用おわり]

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