田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

NPOの人 東田秀美

2011-03-05 17:46:43 | 講演・講義・フォーラム等
 藻岩山の麓にその優美な姿をたたえる旧小熊邸(ロイズ珈琲館)。その旧小熊邸の保存をめぐる市民活動の中核を担った東田(とうだ)氏が淡々と語る保存にまつわる話は感動的ですらあった。

 昨年、「札幌軟石発掘大作戦」に関わった関係から、NPO法人「札幌建築観賞会」の研修会と位置付けられていた東田氏の講演会に参加した。
 2月27日(日)、札幌市資料館で開催された講演会は「歴史的建物の調査と保存~再生・活用をめぐる舞台裏~」と題して東田秀美氏を講師として開催された。

            

 詳しくは承知していないが、東田氏はNPO法人「旧小熊邸倶楽部」代表、市民活動施設「アウ・クル」運営委員など多くのNPO活動に関わり、いまや札幌のみではなく全道的にNPO活動など市民活動を支援する立場で活躍されている方である。(「札幌建築鑑賞会」にも一会員として参加しているそうである)
 私が知る限り、北海道のNPO活動をリードしている中核の一人であることは間違いないと思われる。

 その東田氏が札幌市にとって文化的価値が高かった旧小熊邸が取り壊されるとのニュースを耳にして、保存を求めて立ち上がり、賛同者を集い、協力者を探し、理解を求めて行政・企業へ要請するという精力的な活動の結果、現在のような形として保存されるにいたった経過を話された。

        
        ※ 無事に藻岩山の麓に再生・保存がなった「旧小熊邸」です。

 東田氏自身は建築の知識もなければ、保存の方法にも熟知しているわけではなかった。ただ札幌の価値ある建物をなんとか残したいという一念で各方面を駆け回ったそうだ。
 東田氏の熱意は多くの賛同を呼び、保存・移築のためには1億円以上の資金が必要だったそうだが、それも行政・企業の理解を得ることができたそうである。

 こう書くと簡単にコトが進んだように聞こえるかもしれないが、古い建物を忠実に再現するには新築するのとは違った多くの壁があったそうである。
 例えば飾りガラス(ステンドグラスのようなもの)の大きな窓を再現するために専門家に図面を引いてもらい、それをもとにガラス職人に製作を依頼するなど、一つひとつの再現に非常な時間と、人手を必用としたということだった。

        
        ※ 困難な取り組みの様子を明るく語ってくれた東田氏です。

 そんなとても困難な仕事をやり通した東田氏だが、そうした経過を楽しんだがごとく明るく語る姿が印象的だった。
 そして彼女は語る。「旧小熊邸のケースは多くの賛同と理解が得られて幸運だった。保存運動はその後も続けているが、中には保存に至らなかったケースも数多くある」と…。しかし、「これからもあきらめることなく、貴重な建物の保存のためにコーディネーター役を果たしていきたい」と彼女は明るく語った。
 そして今、彼女はこれまでの経験を生かして北海道内に広がる保存運動などに相談役としてはせ参じアドバイスを送っているという。

 東田氏のこうした姿勢は間違いなく多くのNPO活動を志す人たちに大きな影響を与えていることと思う。今後、第二、第三の東田氏が誕生してくる予感がする。