田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

林心平 × エゾホトケドジョウの人

2011-03-03 14:54:57 | 札幌学 & ほっかいどう学
 林心平氏の「北海道 動物の人対談シリーズ」の第5弾である。ゲストの桑原禎知氏は林氏の大学の先輩であるという。そんな間柄から林氏の容赦のない突っ込みが対談を和やかにし、桑原氏の活動を浮かび上がらせてくれた。 

 エゾホトケドジョウ…、一般人にはほとんど関心も持たれていない水棲の小さな生き物を追い続けているというマニアックな人、桑原氏が今回のゲストであった。
 桑原氏の紹介が場を和ませた。二人で相談のうえ考え出したのが「学術用途に耐えうる写真を撮っている人」が桑原氏であると林氏から紹介があった。

 今回の対談はこれまでとは違い、時間いっぱい二人が対談する形で進められた。
 対談の内容は大きくいって二つの話題が提供された。
 一つは、桑原氏の研究対象である「エゾホトケドジョウ」のことについて、もう一つは、生き物(特に水棲説物)を撮影する苦心談についてであった。

        
        ※ エゾホトケドジョウを語る桑原禎知氏です。

 桑原氏が「なぜエゾホトケドジョウにはまったのか」ということについては、エゾホトケドジョウが夜行性のうえ、きわめて撮影が困難なために、それまで研究対象となっていなかったことが大きかったようだ。
 それにしてもエゾホトケドジョウなどは何の役にも立たない雑魚である。だから誰からも注目もされていない生き物である。そんな生き物を20年以上にもわたり追いかけている桑原氏に、林氏は「なぜそんな生き物を一生懸命追いかけているのか」と問うと、彼は「面白いし、楽しい。見続けることはぜいたくな時間を過ごしていると感じている」と話す。う~ん。やはりマニアックな人だ。

 20数年エゾホトケドジョウを見続けることによって、さまざまな生態を明らかにしてきたが、特に謎とされていた産卵期の生態を解明したということだ。
 そうした観察活動の中で、生態を記録に残すために写真撮影には苦労し、いろいろと工夫を重ねたらしい。

 水深10cmほどの水中のエゾホトケドジョウを撮影することは素人が考える以上に難しいようだ。カメラを工夫し、ドジョウの通り道を予測し、じーっと辛抱強くカメラの前を通過するのを待つという。
 自作の水中カメラを実際に見せてくれた。今やその機材を改造する技術も専門家並みらしい。

        
        ※ 自作の水中撮影用のカメラを手にした桑原氏です。

 話を聞いていて、その辛抱強さ、観察力、機材を工夫する技術等々…、大変な努力をされていることを知ることができた。
 しかし、桑原氏はそんな苦労を聞いている者に苦労と感じさせない明るさがあった。

 桑原氏のような存在が自然の中にある不思議を一つ一つ解明していってくれるのだと改めて思わせてくれた土曜日の夜だった。

        
        ※ 桑原氏から話を引き出すナビゲーターの林心平氏です。