極寒の北国で豪快な馬喰たちの生態を描く映画かな? と思いながら観ていたのだが、(もちろんそうした場面もあったのだが)真のテーマは荒くれ男の馬喰の親爺の中に我が子を思いやる優しい父性愛が秘められていたという映画だった。
2月16日(土)午後、2月の北のシネマ塾が開催され、参加した。
映画は1951年制作の昭和初期の北海道・網走地方を舞台にした白黒映画である。
主役の片山米太郎を演ずる若き日の三船敏郎は、その風貌からいっても、その雰囲気からいっても「北海の虎」の異名をとるに相応しいはまり役だった。
また、その米太郎に恋い慕う小料理屋「桃代」の酌婦ゆき役の京マチ子のエキゾチックな彫りの深い表情が白黒映画の中で一段と映えて映ったのも印象的だった。
家庭をも顧みない荒んだ生活を送っていた米太郎だったが妻に先立たれ、一人息子の太平が残された。
すると米太郎はこれまでの生活を改め全てを太平のために尽くそうとするのだった。太平は親の期待に応えて都会の中学校に進学を決めるのだが、太平は年老い不自由な体の父親を気遣う。そのとき、ゆきが米太郎の面倒を見るという約束ができたために太平は心置きなく都会へ旅立つというストーリーである。
この「馬喰一代」の原作は留辺蘂出身の作家・中山正男であるが、ストーリーは中山正男の育った実話がベースとなっているということである。
そうした関わりからか、留辺蘂では「馬喰一代」というラベルがついた地酒がつくられているという。
シネマ塾には、その地酒を考案したという北見市留辺蘂町の「高野商店」店主、高野智子さんがわざわざ来場され、ご挨拶された。 「馬喰一代」をこよなく愛されている方のようだ。地酒「馬喰一代」を製造・販売を開始して今年の5月で15周年を迎えるそうだが、10周年のときには記念酒として「米太郎」、「太平」という酒もつくったとか…。
※ お話をするゲストスピーカーの竹島靖子氏(右側)と、高野智子氏(左側)です。
映画の中で馬を走らせるシーンは、どこか西部劇を彷彿とさせるようなシーンが2度、3度と登場するが、この日の解説者だった竹島靖子氏によると「多分にアメリカ西部劇のジョン・フォード監督の影響を受けたのではないか」と語っていた。
私には映画の最後の場面で、米太郎が札幌に向かう息子・太平を乗せた列車を乗馬で追いかけるシーンは「まるで西部劇そのもの」のように映ったのだった…。