映画を観る際に、前評判が良いと自分の中で期待感が自己増殖してしいて、異様な期待を抱いて映画を観たところ、どうもその期待が裏切られたような思いになることが度々ある。この映画も私の中ではその類になってしまった…。
映画「レ・ミゼラブル」の評判はテレビ、新聞などでは上々であった。さらには文藝春秋誌三月号では「大ヒット『レ・ミゼラブル』はなぜ泣けるのか」と題してフランス文学者の鹿島茂氏とエッセイストの小島慶子氏が対談までしているのである。
これでは期待せざるを得ない。やや出遅れた感はあったのだが、2月18日(月)シネマフロンティアに足を運んだ。
映画は確かに舞台装置もしっかりしていて(特に冒頭の奴隷たちが船を曳くシーンが圧巻である)、演ずるキャストも素晴らしかった。しかし、私には「涙が止まらなかった」などという場面は映画が終わるまで訪れなかった。
※ ジャンバルジャンを執拗に追いかける警官ジャベールとの対決場面。
それが何なのか? 私なりに考えてみた。
一つはこの映画がミュージカルの映画化ということで、全編をキャストがセリフを歌で通したことがあるのではないか、と思った。このことはこの映画の売りの一つなのだが、私にはミュージカルを観賞するという用意ができていなかったこともあり、どうしても映画に入り込めなかったことがある。
もう一つは、主人公ジャンバルジャンの行動原理にある。ジャンバルジャンは自らの行動を判断する際に「主(キリスト?)はどう思われるか」を判断基準としていた。キリスト教徒ではない私には、そのジャンバルジャンの心理に深く寄り添うことができなかった。
しかし、多くの人たちは映画を観て「涙が止まらなかった」と語り、感動したというのだから、映画としては間違いなく秀作の一つと云えるのだろうと思う。
不条理なことが多かったジャンバルジャンが生きた時代。世の中の不平等・不公平に学生たちが立ち上がり、民衆と共に歌い上げる「民衆の歌」を謳い上げるシーンには胸に迫る場面もあった。
※ 学生たちが蜂起し「民衆の歌」を謳い上げる場面
映画を観賞する際には、あまり過度な期待をして映画館に向かわない方が良いのかもしれない…。