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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

宇宙飛行士 山崎直子とニーバーの祈り

2013-11-04 19:30:02 | 講演・講義・フォーラム等
 日本人で2番目の女性宇宙飛行士となった山崎直子氏は、宇宙飛行士に選抜されてから実際に宇宙に飛び立つまでに11年の月日を要している。その間、くじけそうになることもあったが「ニーバーの祈り」に救われたという。その「ニーバーの祈り」とは…。

               
 
 10月29日(火)午後、共済ホールにおいて札幌市教育委員会主催の「札幌市教育フォーラム」が開催され、参加した。
 フォーラムは、講演とパネルディスカッションで構成され、その講演の部に元宇宙飛行士で、札幌市青少年科学館の名誉館長も務める山崎直子氏が「宇宙、人、夢をつなぐ」と題して講演された。
 山崎氏の講演は確かこれまでにも2度ほど聴いたことがあると記憶しているが、主たる話はそのときと重複していて、生い立ち、宇宙飛行士としての訓練の様子、実際の宇宙や飛行船での生活などについてだった。
 そうした話の中の一つとして「ニーバーの祈り」について触れたことが私には新鮮に思われた。(あるいは以前の話の中にも出ていたのかもしれないが…)

                


 山崎氏は2006年2月に宇宙飛行士として選抜されている。以来、宇宙飛行士としての訓練が開始された。宇宙飛行士の訓練はあらゆる事故を想定して、そのことに対処する訓練が相当部分を占めるという。その訓練を来る日も来る日も繰り返す日々だという。その間、いつ宇宙空間へ飛び立てることができるのか全く予想も立たない中での訓練が続けられるという。
 加えて、チャレンジャーやコロンビアの事故(いずれも乗員7名全員が死亡している)のような事故に見舞われる危険性も覚悟しなくてはいけない。
 そうした中で11年間も待つということは精神的に相当辛いものがあったという。そのとき救われたのが、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが唱えた「ニーバーの祈り」だったという。その日本語訳を記してみよう。

   神よ
   変えることのできるものについて、
   それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
   変えることのできないものについては、
   それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
   そして、 
   変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
   識別する知恵を与えたまえ。

              
 山崎氏は云う。宇宙旅行は将来的には誰もが飛び立てる時代がやってくるだろうと…。しかし少なくとも、山崎氏の場合は身体的にも、頭脳的にも、選びに選ばれた存在であり、その優秀な人が訓練に訓練を重ねながらも、目的である宇宙へ飛び立てる日がやって来るのか、来ないのか、それすらも分からない日々の中で、この言葉に出会ったという。
 山崎氏の場合は、特に4・5行目あたりの言葉に縋りたかったのだろうと想像する。

   変えることのできないものについては、
   それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

 そうして耐えた山崎氏は2010年4月5日、念願かなって宇宙へ飛び立ち、任務を完遂して16日間の宇宙飛行を終え、地球に帰還したのだった。
 私たちの人生の中には「変えることのできないもの」ってたくさんあるなぁ…。それを「受け入れるだけの冷静さ」なんて凡人の自分には永遠に与えられないのだろうなぁ…。