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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

現代の「聖地」としての世界遺産

2013-11-17 23:07:01 | 大学公開講座

 現代人にとっての「聖地」といえば、「世界遺産」が思い浮かぶ。「世界遺産」という冠をいただけば世界的な有名観光地リストに載ったようなものとも言える。その「世界遺産」登録への背景を聴いた。 

 北大公開講座「現代の『聖地巡礼』考」~人はなぜ聖地を目指すのか~」の第三講は11月11日(月)夜、「現代の聖地、世界遺産を楽しむ!」と題して、北大観光学高等研究センター長の西山徳明教授が講師を務めた。

          
          ※ 今年念願かなって世界遺産登録された「富士山」です。

 西山氏はまず「世界遺産」の基礎知識から講義を始めた。
 「世界遺産」がユネスコの総会において採択されたのが1972年、発効したのが1975年だという。発効してからまだ38年しか経っていないのだ。しかも日本が世界遺産条約を批准したのは1992年というから、私たちが「世界遺産」ということを意識し出してからわずか21年しか経っていないということになる。
 現在世界遺産として登録されているのは、世界的には981件、そのうち日本では17件が登録されている。

 世界遺産が世界遺産たる価値を有している否かは、次の三点が基準になっているという。
 (1)顕著な普遍的価値
 (2)完全性
 (3)真正性
 それぞれの意味について関心を持たれた方は別途調べていただきたい。
 とここまでは、関連書物などに触れられれば簡単に分かることばかりである。西山氏は登録にいたるまでの裏舞台について語ってくれた。

          
          ※ 2007年に世界遺産登録された「岩見銀山」です。

 世界遺産の登録を申請する場合は、自然遺産が「国際自然保護連合」、文化遺産は「国際記念物遺跡会議」という諮問機関に申請し、現地調査を踏まえて「世界自然遺産委員会」に勧告される仕組みとなっていて、その勧告が事実上の登録か否かを決めているという。
 その勧告は3段階になっており、第1段階のみが当該年度の登録になるということだ。

 そこで氏は2007年に登録された「石見銀山」を例にとった。「石見銀山」は勧告段階では顕著な普遍的価値の証明などが不十分ということで第3段階の勧告だったという。その勧告を受けて日本はその価値の証明などのロビー活動をかなり展開したらしい。その結果、勧告を覆して登録にいたったということがあったという。この例をみると、登録には政治的な力学も見え隠れしているようだ。
 ところでこの「岩見銀山」だが、登録前まではそれほど日本人に知られた存在ではなかった(と思う)。我々にはむしろ「佐渡金山」の方が名高いのではないか。しかし、世界的に見ると「石見銀山」の産出量の最盛期には世界的にその名が轟いていたという。したがって、世界的に見たときには「石見銀山」の方が顕著な普遍的価値が認められるということになる。

 国内的には世界遺産の登録を待っている暫定リストが現在11件あり、そのうち「富岡製糸場と絹産業遺産群」と「明治日本の産業革命遺産~九州・山口および関連地域」の二つが次期の世界遺産登録を期して諮問機関に申請中とのことだ。
 来年6月に開催される世界遺産委員会の結果が注目されるということだった。

 世界各地において「世界遺産」に登録されたことによって、訪れる観光客が倍増するなど観光業的には大きな効果をあげているという。だからこそ各国・各地が競って登録申請をするのだろう。
 しかし、「世界遺産」の登録数が間もなく1,000件を超えようとしていると聞いた。私は「世界遺産」の価値の一つはその希少性にあると思っている。登録数が増え、その希少性が薄れてきたとき、「世界遺産」というブランドは現在のような価値を保ち続けることができるのだろうか?