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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

ジャーナリズムの現場から(1) 日ロ現場史

2013-11-07 20:42:25 | 講演・講義・フォーラム等
 北海道新聞の二つの連載記事がジャーナリズム界の主要な賞を受賞したという。その受賞を記念して二つの講演会が開催された。その講演の様子を2回に分けて報告することにする。初めに新聞協会賞を受賞した「日ロ現場史」を担当した本田良一編集委員の話を聴いた。 

          

 北海道新聞夕刊に掲載されている「日ロ現場史」は本日(11月7日)で283回を数える長期連載記事である。現在第5部の連載が進行していて、間もなく終了し、やがて一冊の本として刊行されるとのことだった。
 日本とロシアとの間に横たわる「北方領土問題」の最先端である根室市駐在の記者として長年勤めた経験のある本田記者だからそこ新聞界が認めるほどの価値ある記事をモノにできたということであろう。
 私は恥ずかしながら北海道新聞夕刊を購読していたのに「日ロ現場史」の記事に目を通すことはなかった。

 北方領土問題に関してはこれまで直接交渉の場に立ち会った元外務官僚の東郷和彦氏や丹羽實氏をはじめ多くの人たちの話を聞いてきた。(佐藤優氏の話をまだ聞けていないのが残念である)その人たちの話を聞きながら私も少しは北方領土問題の交渉経過等について学ぶことができた。
 その中で誰もが口にしたことが「国益」である。その「国益」を巡って交渉に立ち向かう人たちに大きな齟齬があったというのが私の実感だった。

 今回の道新の「日ロ現場史」は、地元根室の人たちの声を丹念に拾い集めながら国の交渉に翻弄される人たちの様子をレポートしたものである。連載の中で一貫したテーマは「国益」だったという。ところがその「国益」というものが国際環境の変化によって、あるいは 日ロ交渉に立ち会う人によって、時には揺らぎ、あるいは変わってしまうこともあったという。
 その度に地元根室の人たちは翻弄され、何一つ地元の利益には繋がらなかったと…。

 本田氏は今後の領土問題について次のように予想する。
 プーチン大統領(当時首相)から出た「引き分け論」が焦点になるだろうとし、もしその線で交渉が進めば、4島返還は難しくなり、2島返還プラスアルファとなる可能性が高いのではという。このアルファが今後の交渉のポイントになるのではと予想した。

 地元紙として政治上の重要課題である領土問題をじっくりと丹念に取り上げ、息の長い連載を続けたことが評価されたことに対して同慶の意を表したい。
 また、長い間動くことのなかった北方領土問題が今解決に向かって動き出したかの状況を注意深く見守っていきたい。