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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 115 さよなら、アドルフ

2014-03-20 22:59:53 | 映画観賞・感想

 重く、辛いテーマである。これまで正義だと固く信じていたことが、突然否定されたとしたら…。ましてやそれが14歳の少女の身の上に起こったとしたら…。残酷な運命に晒された少女ローレの物語である…。 

            
           ※ 写真の真ん中の少女が主人公ローレです。    

 話は古くなるのだが、旅する前に見た映画である。
 新聞の映画評欄を読んで「これは見ておかねば」と思い、札幌での封切間もない2月16日(日)にディノスシネマズ札幌で見たのだった。

 アドルフとは、諸氏もご想像のとおりあのアドルフ・ヒトラーのことである。
 映画評の最初に「信じていた価値観が崩れたとき人はどんな思いを抱くのだろう。そして、何を信じて生きていけばいいのだろう。本作はナチス幹部の子供たちがたどった運命に焦点を当てた珍しい作品だ」とある。
 
 少女ローレはナチス幹部の娘である。敗戦したドイツにあって両親は連合軍に拘束され、ローレは幼い妹や弟と取り残される。頼るもののないローレは妹たち4人と遠く900キロも離れたハンブルグに住む叔母の家を目ざして旅に出る。
 旅の途中で、ナチス軍がユダヤ人を虐殺する写真を見て、ローレは父親たちが何をしていたかを初めて知ることになる。少女の心の中に微妙な変化が起きていることをカメラは長廻しで描写する。

 幼い妹たちを引き連れながらの旅は、ナチスの子供だと知ると冷たく、誰も救いの手を差し伸べてくれない過酷な旅だった。そんな中、彼女が嫌悪していたユダヤ人の青年が窮地を救ってくれ、しばらく旅を共にすることになる。

 そして何とか辿り着いたハンブルグの叔母はけっして彼女たちを歓迎してはくれなかった。
 映画はハッピーエンドで終わったのではない。余韻を残し、その後もローレは信じていたものが崩れ、世の中が変わっていく様を思春期の彼女はどのような思いで生きていくのだろうか…。

 ローレと同じような思いを抱いた日本の少女もあるいはたくさんいたのかもしれない。
 たまたま先日、NHK・BSプレミアムで、敗戦後ルバング島で29年間生き抜き生還した小野田寛郎さんのロングインタビューの番組を見た。
 彼はあるいは特別な人なのかもしれない。自分が戦前の軍隊を信じて29年間もジャングルの中で生きてきたことに悔いもなければ、そう仕向けた戦前の日本国に対して恨みもないと語る。そうした体験が今に生きているという。
 あるいは彼の場合は、曲がりなりにも自らの意志で軍隊に入隊するという選択をした結果ということも影響しているのかもしれない。
 対して、ローレの場合は、自らは何も知らない中で過酷な運命に身を委ねなくてはならなかったところにいっそうの残酷さを感じた映画だった。