泥沼のような内戦を続けているシリアにおいて、犠牲となっているのは戦いとは直接関係のない多くの市民である。戦いの地を離れ、トルコの難民キャンプに避難したシリア人へのインタビューを試みたドキュメンタリーフィルムである。
※ 顔を覆ったままでインタビューに応じる避難民です。
3月26日(水)夜、FREEDOM GRASSESという団体が主催する「いま、シリアで何が起こっているのか?」と題する映画上映 & 講演会が開催され、友人の誘いを受け参加した。
シリアの内戦は、ご存じのように2011年にアラブ世界に巻き起こった「アラブの春」に呼応するように反政府運動が起こった。このことに対して、アサド政権が武力で鎮圧を図ったことで反政府勢力も武力で対抗したことから内戦に陥ったのだが、その後対立の構図が複雑となり、解決の糸口さえ見えない状況にあることは新聞報道などで承知している方が多いと思う。関係者の言では「もうぐちゃぐちゃの状態だ」という。
映画は現在のような複雑な状態に至る前の2012年1月に撮影されたものである。つまり撮影された時期は、政府軍が武力鎮圧を図ることに対して、反政府勢力はまだ非暴力の民主化運動に望みを託していた時期である。
インタビューは、家族や友人たちが殺されるのを目の当たりにして武器を手にすることを決意した若者や、政府軍から離反し反政府軍に加わった男性たち、家や装飾品を売り反政府軍に資金提供する女性など、何らかの方法で内戦に関与した人たちや、暴力や抑圧から逃れて、平和に暮らすことを望む数多くの人たちにも話を聞いている。
この映画は国の民主化を非暴力の形で実現することを願う一人の女性監督(イアラ・リー監督 コリアン系ブラジル人)の視点で描かれた映画である。
この映画を観ただけで、あるいはシリアから遠く離れた日本の中で少ない情報を得ただけで、コトの是非を判断することは留保したい。ただ、戦いの中で紛れもなく多くの市民が犠牲になっているということは事実である。
非難した多くの人たちの行き所のない怒りや悲しみを見るとき、何時になっても争いごとを止めようとしない、そして行きつく先が暴力とは…。人間とは何と愚かな生き物なのだろうと思ってしまう。
と嘆いているだけではダメだとお叱りを受けそうだ。
映画の後に講演をしたJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)の佐藤真紀さんのように現地で負傷した人たちを懸命に支援している人たちがいる。そうした方々を後方から応援していくことが今私たちに求められていることなのだと思った…。